2019年7月7日日曜日

テーミス7月号でLIXILについてのインタビューが(2)

(略)
最初はプロのスター経営者を次々と招聘して、院政を敷いてきたオーナーという評価がある。

「潮田氏は’11年にリクシルの取締役会議長になり、いわば第一線から距離を置いた。そして同年8月、米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身の藤森義明氏を社長に招いた。

だが、’15年にM&Aでグループ入りしていたドイツの水栓金具大手、グローエ傘下の中国企業、ジョウユウの不正会計が表面化して、660億円の特別損金を計上すると、藤森社長を退任させ、後任に工具通販大手、モノタロウ会長だった瀬戸氏をスカウトした。

その瀬戸氏も今回、高層ビル外壁の政界最大手、ペルマスティリーザの関連損失が545億円発生したことを挙げて退任させた」
(前出・山田氏)

(この項 続く)

2019年7月6日土曜日

テーミス7月号でLIXILについてのインタビューが(1)

「潮田洋一郎リクシル会長『道楽経営』が醜態招く」


(略)
自らもプロ経営者としての実績のある山田修氏が語る。

「潮田氏はリクシルの経営に真剣に取り組んでいるとは思えない。たとえば’15年から税金の安いシンガポールに住んでいるが、年間の半分以上を日本で生活すると居住者となって、日本の税制を適用されてしまう。

潮田氏は昨年11月に瀬戸氏を放逐して自らCEOに就いたが、それならシンガポールを引き上げて、全身全霊で経営をやらなければいけない。

現在の経営は半身のままでやろうとしているという意味で”道楽経営”みたいなものだ。」

(この項 続く)

2019年7月5日金曜日

グループ社長・役員に戦略策定法を指南


大手商社の子会社社長約10名と役員の方10名強、計25名ほどの方を教えた。

これらの社長さんたちは「新任社長」ということで、グループ全体の子会社の数はよほど多いと思われる。

社長さん方なので、1日限定で駆け足で戦略策定を演習してもらった。もちろん、戦略カードを使っての「課題解決型戦略策定法」を走らせた。

最後は3名グループで早々に作った戦略を発表してもらった。各グループで発表者は社長さん、聴講(チャレンジャー)側2名は執行役員の方々(別法人同士の組み合わせとした)として、20分1本勝負とした。

執行役員の方たちは、現役トップの経営者が策定した戦略を聞き、それを討議するということでとても勉強になったと言っていた。たしかに他のやり方ではそのような成果は得られないだろう。

2019年7月4日木曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(7)

株主総会で会社側提案が実質的に否決されることは珍しいことだし、LIXILのような大会社では稀有の出来事となった。

 私は、今回の事例によって議決権行使助言会社からの助言の関与度が下がってくるとは見ていない。むしろ、助言会社の助言がこれほどまでに注目されたことはなかったし、これを機会に機関投資家はいっそう慎重に助言会社の推奨リポートを参照する度合いが高まっていくと見ている。

 その上で、機関投資家も個人投資家も、これからは会社側提案を簡単に鵜呑みにして白紙委任状を出す率が下がっていく方向に進んでいくのではないか。

 いわゆる「シャンシャン総会」の比率が下がっていき、総会で議決議題について会社側と株主側の真剣な討議を交わしていく傾向となる。その結果、株主総会の開催時間は長くなるだろう。特に総会の前年度で大きな経営課題をさらけ出した会社ほど、厳しい株主総会に直面することを覚悟しなければならない。

 考えてみれば、その方向は健全な株主資本主義の現出ともいえる。後世になって、今年のLIXIL株主総会は「株主総会のあり方」の大きなターニングポイントだったと振り返られるかもしれない。

(この項 終わり)

2019年7月3日水曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(6)

落選した2候補はISSが「反対投票」を推奨した結果だ。2社が推奨した「瀬戸氏側候補への全体としての反対投票」は効を奏さなかった、ということが重要だ。

 結果として、瀬戸氏側候補の選出数が会社側候補の数を上回り、瀬戸氏側に勝利をもたらしたことになる。2大助言会社の推奨は「骨」のところで反対の結果となったことになる。

 繰り返すが、3つの議案ごとだけでの投票だったとしたら、会社側2人の落選はなかったと思われる。そうすると、瀬戸氏側が全員当選したとしても、8対8の同数となり、総会後の取締役会でCEO選出をめぐり大いにもめることとなっただろう。

会社提案が精査選別される時代の幕開けか



 LIXILの株式で、機関投資家の持ち分は約30%弱だ。機関投資家は基本的にスチュワードシップにより、議決権行使助言会社の意見を参考にしなければならないとされている。そして、個別の議決案件への投票について開示しなければならない。

 このような縛りのなかで、米インダス・キャピタル・パートナーズや英マラソン・アセット・マネジメントなどの機関投資家は総会の事前に瀬戸氏側への支持と投票を明らかにしていた。さらに、助言会社が推奨しなかった瀬戸氏側候補が全員選出されたということは、LIXIL全株式の約40%を占める海外株主を含めて、個人株主などが雪崩を打って瀬戸氏のカムバックに票を投じたということだ。

(この項 続く)

2019年7月2日火曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(5)

2大助言会社の推奨リポートは概ねでは共通していた。それは、「会社側候補を推奨、瀬戸氏側候補に反対」というものである。本記事では両リポートが掲げていた理由は省略する。今となっては「詮無いこと」だからだ。

 ただ、第1号議案と第3号議案で個別の候補について上述した異なった見解を示した。このような推奨に対応した投票をするとしたら、3議案を分割して、個人投票にまで降りていくしかないのだ。

 今回の総会には特に世間の注目が集まっていたので、LIXILとしても透明性のある投票方法を考えるしかなかったのだろう。総会が近くなり、瀬戸氏側が東京証券取引所に総会での投票立会を求めたことも、うまい圧力となったと思う。

議決権行使助言会社が行った助言には、株主たちの投票に反映された部分とそうでない部分が出た。

 個別投票となり、最も得票率が高かったのが第2号議案の2名で、それぞれ94%強を獲得した。この2名は瀬戸氏側候補と自認していたが会社側も候補としていたので、両方から支持が集まった。

 それ以外の全候補のなかで最も得票率が高かったのが濱口大輔氏で、64%強を獲得した。これは、グラス・ルイスが「瀬戸氏側候補のなかで唯一、濱口氏を推奨する」としたことの影響とみられる。ちなみに、当選した他の全候補とも得票率は50%前半で、全員が辛うじての当選となっていた。

(この項 続く)

2019年7月1日月曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(4)

このような異例な方式の採用に至った経緯として、議決権行使助言会社の存在があった。世界で2大議決権行使助言会社として知られているのが、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と米グラス・ルイスである。

取締役選出で2陣営が対決する構図となった今回の株主総会での投票について、どのような助言が出るか、総会の前に注目を集めていた。

 世間の耳目を集めていた案件だけに2大助言会社も慎重になったのか、予定より遅く6月12日になって「推奨リポート」をそれぞれが発表した。それによると、2社とも瀬戸氏側候補の第3号議案へは反対を推奨した(グラス・ルイスは濱口大輔氏<前企業年金連合会運用執行理事>だけには賛成投票を勧めた)。

 第2号議案(会社側、瀬戸氏側が共に候補とした2名)については両社とも賛成投票を勧めた。会社側提案の第1号議案については、両社とも賛成投票を勧めたのだが、ISSはこの中で前出の福原氏と竹内氏だけには反対投票を勧めた。両氏は結果として選出されなかった。

(この項 続く)

2019年6月30日日曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(3)

株主総会では、議案ごとに採決が取られるのが通常だ。よって、上記3つの議案は個別に採決が取られるものと思われていた。つまり8名、2名、6名がそれぞれグループとしてまとまって採決されると見られていた。

 ところが今回の株主総会では、前代未聞のマークシート方式による選任投票が採用された。すなわち、16名の候補に対して、株主は一名ずつ賛否のチェックをすることとなったのである。

その結果、第1号議案に含まれていた2人の候補、福原賢一氏(前ベネッセホールディングスCEO)と竹内洋氏(前日本政策投資銀行常務)が落選したのである。会社側の候補で当選したのが6名、瀬戸氏側候補は第2号議案の2名も含めて8名全員が当選して6対8となり、雌雄が決せられた。

皮肉な役回り、投資助言会社

 

大手企業の株主総会で取締役選出を個別投票のマークシート方式で行うなど、およそ聞いたことがない。16名候補全員への持ち株数当たりの投票数を個別に集計するために休憩時間が取られ、それがさらに延長されるなど、今回の総会は5時間近くにわたる長時間となった。

(この項 続く)

2019年6月29日土曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(2)

異例のマークシート方式個別選出



 今回の株主総会には、会社側から提案されていた取締役候補8名(以下、「会社側」)と、瀬戸氏を盟主とした株主提案による取締役候補の8名(以下、「瀬戸氏側」)の計16名が、候補として挙げられていた。LIXILの取締役の定員は16名だったので、両陣営の全員が選出される可能性もあった。

 総会後の取締役会で選出されるCEO候補として、会社側は三浦善司リコー元社長、瀬戸氏側は同氏を提示していた。

 取締役選出の総会議案としては、LIXILは16名の候補を3つの議案に分けて決議事項としていた。第1号議案には8名の会社側候補、第2号議案には会社側と瀬戸氏側両方から候補とされた2名、そして第3号議案には瀬戸氏側の6名である。第2号議案の2名の方たちは瀬戸氏側候補との認識を示していたので、第1号議案候補8名が会社側、第2号議案の2名と第3号議案の6名の計8名が瀬戸氏側8名と、拮抗していた状況だったのである。

(この項 続く)

2019年6月28日金曜日

LIXIL内紛、大波乱の瀬戸氏勝利の舞台裏…「株主総会=会社側有利」の崩壊(1)

LIXIL新CEOの瀬戸欣哉氏(写真:日刊現代/アフロ)
注目されていたLIXILグループ(以下、LIXIL)の株主総会が6月25日に行われた。

復帰なるか、世間の耳目を集めていた瀬戸欣哉前CEO(最高経営責任者)は取締役に選任されただけでなく、総会後の取締役会でCEOに選任され、同社経営のトップに返り咲いた。

 私は本連載記事などで、「創業家で元CEOの潮田洋一郎氏による瀬戸氏のCEO解任が不当だったところにコトの発端があるのだから、瀬戸氏のCEO復帰が正道だ」と主張してきた(『LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない』)。

 瀬戸氏復帰までの紆余曲折を振り返ると、大企業における株主総会での機関投資家といわれる大株主たちの意思決定に、大きな変化があったことが観察される。そして今回のこの変化は、機関投資家の投票行動が今後変わっていくきっかけとなる可能性がある。


異例のマークシート方式個別選出


(この項 続く)

2019年6月27日木曜日

LIXIL、元CEO・瀬戸氏側が不利な情勢…議決権行使会社、会社側を概ね支持へ(2)

同ペーパーはLIXILの株主総会に向けて20ページにわたる詳細なものだが、取締役候補関連の議案に関する結論だけを報告する。

1.会社側提案候補について

 鈴木氏と鬼丸氏を含む全員に対して選出投票を勧める。

2.株主提案候補について

 濱口大輔氏(前企業年金連合会運用執行理事)についてだけ選出投票を勧め、他の5名(瀬戸氏も含む)に対しては反対投票することを勧める。

 同ペーパーには上記提案の根拠として、詳細な分析・評価が記載されている。それについては別の機会があれば触れたいが、「過去、あるいは現状との決別」というセオリーが採用されている。株主提案候補で推奨されなかった5名の候補は、現任のLIXIL幹部たちである。

 株主提案候補のなかで濱口氏のみが選出投票を推奨されているが、同氏を含む6名は今回の総会では3号議案としてまとめられている。議事進行上、濱口氏だけ別扱いとされることはないだろう。結果、同ペーパーは株主提案候補全員への反対投票を進める助言として受け止められるだろう。

 そしてISSは、会社提案の取締役候補8人のうち6人について賛成を推奨しており、LIXILは「大勢としては会社提案を支持した」との見解を発表している。さらにISSは、瀬戸氏の取締役選任について反対を推奨しており、事態は瀬戸氏側に不利な様相を見せてきたが、その展開に注目したい。

(この項 終わり)

LIXIL、元CEO・瀬戸氏側が不利な情勢…議決権行使会社、会社側を概ね支持へ(1)

LIXILグループ(以下、LIXIL)の株主総会が開かれる6月25日が近づいてきた。今回の総会で注目されているのは、会社側の指名委員会が提案している取締役選任議案と、元CEOである瀬戸欣哉氏側が株主提案している取締役選任議案が対抗していることだろう。

そんななか、大手議決権助言会社である米グラス・ルイスが会社側の取締役選任案を株主に対して推奨していることがわかった。


2つの取締役選任案



 会社側の取締役選任案は10名。松崎正年氏(現コニカミノルタ取締役会議長)を取締役会議長に、三浦善司氏(前リコーCEO)を暫定CEOに充てるというもの。ちなみに鈴木輝夫氏(元あずさ監査法人副理事長)と鬼丸かおる氏(元最高裁判所判事)は当初会社側提案の取締役としても発表されたが、両氏は「了承していない」としたため、会社側は株主提案と重複する両氏を除く8名への賛否を問う1号議案と、両氏のみについての2号議案に分けた。

 一方、株主提案となった3号案件は、鈴木氏と鬼丸氏を除く6名となり、瀬戸氏がCEO復帰への意欲を示している。

 両陣営の取締役選任案は計16名で、LIXILの取締役定員も16名なので、全員が選任される事態も理論的にはありうる。

 LIXILの株主構成は、機関投資家が約4割、機関または個人を問わず海外投資家が約7割とされる。このなかで機関投資家の投票に影響力を持つとされるのが、議決権行使助言会社である。機関投資家はその行動を制約する「スチュワードシップ」によって、助言会社の助言を参考にしなければならないからだ。


グラス・ルイスは会社側の取締役選任案を支持



 米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と並んで世界の2大議決権行使助言会社といわれる米グラス・ルイスの文書「PROXY PAPER:LIXIL GROUP CORPORATION」(6月12日付け)を今回、筆者は独自ルートで入手した。

(この項 続く)

2019年6月26日水曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(16)

しかも、瀬戸氏解任に当たり指名委員会の委員長だった潮田氏は、瀬戸氏には「委員会の総意だから」と告げ、取締役会では「瀬戸氏から辞任の申し出があった」と、両者を愚弄するような対応をしたとされている。ここで両者を愚弄した、というのは株主をも愚弄したというに等しい。

 となれば、この実績のあるプロ経営者が希望しているのだから復活の出番を与えるのがガバナンスの王道というものだろう。

 瀬戸氏自身はLIXILの経営風土として「深く根付いた忖度文化が立ちはだかっていると感じたのは一度や二度ではありません」(「文藝春秋」<文藝春秋/2019年6月号>記事『私は創業家に屈しない』より)と、指摘している。

 LIXILは、このたびの取締役選任争いを奇貨として瀬戸氏が指摘しているような忖度人事から決別すべきである。潮田氏は社外に出て、ただの一般株主のステータスになるはずだ。つまり在野の存在となる。この際、トップ人事という大事を透明性のある議論で決定する方向に舵をきるべきだ。

 幸い、指名委員会が提出した8名の候補のなかには、社内の候補は1人しかいない。瀬戸氏側と合わせて16名全員を新取締役として選任し、瀬戸氏がCEO代表取締役に選任され復帰するのが、成り行きからみてLIXILの大義だと私は思う。

 さらにこの機会に、形骸化していた同社の指名委員会を実質機能させ、社外のオーナーもどきの人たちの影響や関与(クビキ、呪縛といったほうがいいのか)から、同社のステークホルダーの皆さんが完全に解放されることが望まれる。

(この項 終わり)

2019年6月25日火曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(15)

今回、LIXILの指名委員会で取締役候補の選出を主導し、発表したのは菊地義信取締役だった。同委員会で唯一の社内取締役で、潮田氏と近いと評されている。指名委員会による候補者のなかには、瀬戸氏側の候補者からの選抜がなかった(鈴木輝夫氏と鬼丸かおる氏は会社側候補となることを拒否)ことから、菊地取締役は瀬戸氏側と対立的な構図を現出させた。

 潮田氏は4月の会見で、「取締役退任後も相談事があれば」とコメントして、院政への関心があるかのような態度を示してもいる。菊地取締役がその受け皿、あるいはパイプ役を果たすのではないかと危惧する向きもあろう。

 LIXILの次期取締役選任に対する私の意見は簡単である。それは瀬戸氏をCEOに復帰させろ、ということだ。単純に瀬戸氏はCEO在職中に大きな失策を犯していない。瀬戸氏の失脚は、潮田氏の気まぐれ、あるいは潮田氏が主導したイタリア建材のペルマスティリーザ社のM&Aでの大きな損失計上の失敗の押し付けによるものだった。

(この項 続く)

2019年6月23日日曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(13)


瀬戸氏をCEOに復帰させるのがスジ


 瀬戸氏側と会社の指名委員会側と、2つの取締役候補案が提案された状況を受けて、執行役などのLIXIL幹部が指名委員会に「意見書」を2回にわたり提出した。幹部たちが自発的に、自社の重要人事を差配する委員会に意見書を提出するということは相当重大な決意の表れと取ることができる。

 4月に提出された1回目の意見書では潮田経営への批判、2回目5月に提出されたものには次のような指摘があったという。

「5月13日の指名委員会・取締役会の発表で、真に中立的な候補者名簿にならなかった理由をお聞きしたい」
「我々は提案された候補者名簿に潮田さんの影響が及んでいる理由を推定しています」
「我々上級執行者は多額の費用を必要とする委任状争奪戦を回避する全ての努力を支持し、瀬戸さんの建設的な提案(Olive branch:和解)を歓迎します」
(以上、5月24日付日経ビジネスオンライン記事『LIXIL幹部らが再び「意見書、委任状争奪戦回避訴え」』大竹剛より)

 つまり、幹部たちは瀬戸経営の復活を支持しているのだ。

(この項 続く)

2019年6月22日土曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(12)

潮田氏が昨年11月にCEOに復帰してから、LIXILの株価は急落した。昨年12月25日は昨年来安値となる1,270円となり、昨年高値3255円(1月23日)より60%も下落した。現在も1,359円のまま(5月24日)である。潮田氏への評価を市場も共有していると見ることができる。

 創業家出身の経営者への評価は、それぞれの実績で決まることも多いのだが、経営実績の矩を越えて存在感を発揮してしまうのが、私の言う「オーナーもどき経営者」ということだ。オーナーもどき経営者を実質的に支えてくれる「番頭経営者」がいない場合は、オーナーもどき経営者は、その会社に益をもたらすことは少ない。いっそ、「君臨すれど統治せず」のポジションに入ってくれたほうが、皆の幸せとなる。


瀬戸氏をCEOに復帰させるのがスジ


(この項 続く)

2019年6月21日金曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(11)

また、潮田氏はそもそもLIXILの株式を3%程度しか保有していない。これらの事実から、同氏はLIXILのオーナーではない。資本持ち分的には経営支配権を有しないし、指名委員会議長や取締役会議長でもなくなったので、機能的な支配権も失った。6月の株主総会で取締役も辞任すれば、一般株主と同様な立場の関与者となる。

 そんな潮田氏が、LIXILの本社をシンガポールに移転することを画策していたというのだから呆れる。前回記事に書いたことだが、シンガポールに居住している潮田氏は自らへの税制の制約から、日本には年の半分以上滞在できない。シンガポールと日本との往来を忌避して、自らが預かった会社のほうを自宅近くに持ってこようとしていたのだとしたら、経営者の道楽、いや、わがままもこれに極まれりというほかはない。

 株式所有が少数でも、創業家出身者が実質オーナー経営者のように振る舞っている上場企業は珍しくない。トヨタの豊田章男社長が所有するトヨタ自動車の持ち株比率は0.1%にすぎないが、その求心力はいうまでもない。

(この項 続く)

2019年6月20日木曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(10)

それが経営の不調ということでもなく、あるいは経営路線の乖離という真摯な議論の結末でもなく、オーナーもどきの気まぐれから更迭され、そのトラック・レコードに理由なく傷を付けられていく――。

藤森氏と瀬戸氏に起きたのは、そのような不条理といってよいハプニングだった。経営人材として世に希少な2人のプロ経営者をないがしろに扱い、リスペクトを示していない潮田氏を支持するわけにはいかない。

 潮田氏のLIXIL経営への関心度が、同氏にとってほかの文化的趣味と同程度のものだったとしたら、6万人を超す同社の従業員の不幸は大きなものがあったといわざるを得ない。


オーナーもどき経営者は去れ


 私が潮田氏のことを「オーナーもどき」と呼ぶのは理由がある。潮田氏は創業家であるが、2代目で創業者ではない。またLIXILは数社が統合された会社なので、ほかにも創業家が存する。

 (この項 続く)

2019年6月19日水曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(9)

つを指摘した。本記事はその3つ目から始まる。

プロ経営者を道具扱いするな





 日本GE会長だった藤森義明氏と、瀬戸氏のCEO招聘は、趣味人である潮田氏にとっては、茶道の名茶器をコレクションするような感覚だったのではないだろうか。世間で名器として評価されているお道具(名経営者)を自らのものとし、それをみせびらかして自慢する。名前だけが重要で、その実質的な機能には頓着しない。そもそも茶器の場合なら、あまり使いもしないだろう。

 だから招聘した両氏がCEO経営者として実際に機能するようになると、それは潮田氏が要望したこととは外れたことだったのではないか。潮田氏はその都度「路線の違いがあった」と説明していたが、実際には連れてきたスターたちがパペット(操り人形)ではなかったということへの“趣味人の対応”として理解できる。

 しかし、招請され短期で解任された2人にとっては、たまったものではない。プロ経営者は、預かった会社の業績伸長や回復に命を削って取り組むものだ。そして、幸いに実績を出すことができると、それをトラック・レコードとして次の活躍の場を求めていく。

(この項 続く)

2019年6月18日火曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(8)

潮田氏のそんな側面と絡めて、同氏の経営への関与を“趣味人経営”と評する報道もあった。そう評されるとき、それは潮田氏の文化的趣味を“道楽・数寄(風流の道)”ととらえ、同氏のLIXIL経営への取り組みもしょせんは同氏の道楽の一つと断ずる見方だったであろう。

 確かに潮田氏は2012年に取締役会議長に上り詰め、いわば経営の第1線から距離を置いた。しかし、外部から藤森氏、瀬戸氏と続けてスター経営者を招聘して、自らはオーナーのごとく院政を敷いてきた。

 2氏を連続して更迭したことで、もう次にスター経営者を外部招聘できなくなったことから、昨年暮れに急遽自らがCEOに復帰しなければならなくなった。この時も、指名委員会の議長本人が自らをCEOに指名するという、利益相反的な行動をごり押ししてしまっている。正常なガバナンスとは言えない、やりたい放題のオーナーもどきだった。

 この時のトップ人事の不透明性を海外機関投資家から非難され、今春その是非を問う臨時株主総会の開催が決まると、潮田氏はさっさとCEOを辞任してしまった。そして、6月の定期株主総会での取締役辞任も表明して、臨時株主総会の開催をつぶしてしまう。

 ひとたび公の席で説明責任を果たさなければならない状態が発生すると、その責任をあっさり投げ出してしまった。まるで自分のほかの趣味と同様に軽く対応したその様は、「道楽経営」「海外居住者のパートタイム経営」などと謗られても仕方がないのではないか。

(この項 続く)

2019年6月17日月曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(7)

2世経営者の趣味の広がりが


 潮田氏は瀬戸氏の前には、日本GE会長だった藤森義明氏をCEOとして招聘し、これも短期かつ唐突に解任している。潮田氏は藤森氏を招請した2011年以降は、LIXILで指名委員会議長だったが、創業2代目として実質的にオーナーが意思を行使したのと同じようなことだった。

 経営に創業家が直接乗り出さなくとも関与を続ける形態はいくらでもある。問われるのはその関与モデルの是非ではなく、個々のケースでそれがうまく機能しているかである。

 潮田氏は資産家の子息として育ち、大変な趣味人となったことで知られる。それこそ東西の古典から茶道、建築にいたるまで文化への造詣が深く、フィランソロピー(文化への啓蒙、援助)活動も活発にやっている、文化スポンサー的な立場の人だ。関西ではこれを“大旦那”と呼ぶ。

(この項 続く)

2019年6月16日日曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(6)

洋一郎氏が日本の税制に疑問を感じたことは自らも明言してきたことである。シンガポールは住民税がなく、所得税の最高税率は22%でしかない。日本人の富裕層が多く移住していることで知られる。

 しかし、日本の税制では「10年ルール」というのがあり、海外に10年以上居住を続けないと、その資産の相続税や贈与税の免除が適用されない、ということになっている。15年に移住した潮田氏は2025年まで日本に本格帰国できないはずだ。その間、日本に年間半年以上滞在すると、日本の居住者として本邦の課税適用の対象となってしまう。

 さて、年の半分までしか滞在できない日本で、年商1兆8000億円、従業員数6万人以上という大企業のCEO職の責任を果たせると、潮田氏は昨年11月にCEOに復帰したときに本当に考えていたのだろうか。経営者の「覚悟と責任」を潮田氏がどのように認識しているのか、機会があればぜひインタビューしたい。

2世経営者の趣味の広がりが


(この項 続く)

2019年6月15日土曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(5)

創業者の息子として、社内では独裁者的に振る舞ってきたのだろうか。誰からも指弾・意見されるようなこともなかったのだろう。それが欧米の機関投資家などが仕掛けてくるであろう直截な議論や難詰に直面する可能性が見えると、すぐさま辞任してしまうという経緯となった。

 私は、このような潮田氏の「経営者としての覚悟と責任」に大きな疑問を持つ。そして現在展開している次期CEO争奪戦は、すべて「潮田氏問題」に端を発していた、ということになる。

 経営者としての潮田氏の問題点を、大きく3つ指摘しておく。


シンガポール居留で大企業の経営ができるのか


 潮田氏がシンガポールに移住したのは2015年と報じられている。その前年にLIXILの前身であるトステム社を創業した父、健次郎氏が死去している。健次郎氏の死亡に伴い、洋一郎氏の姉が相続税の申告漏れを指摘され、60億円強を追徴された。


 (この項 続く)

2019年6月14日金曜日

LIXIL、元CEO・瀬戸氏側が不利な情勢…議決権行使会社、会社側を概ね支持へ

LIXIL前CEOの瀬戸欣哉氏(写真:日刊現代/アフロ)
LIXILグループ(以下、LIXIL)の株主総会が開かれる6月25日が近づいてきた。今回の総会で注目されているのは、会社側の指名委員会が提案している取締役選任議案と、元CEOである瀬戸欣哉氏側が株主提案している取締役選任議案が対抗していることだろう。そんななか、大手議決権助言会社である米グラス・ルイスが会社側の取締役選任案を株主に対して推奨していることがわかった。

2つの取締役選任案


 会社側の取締役選任案は10名。松崎正年氏(現コニカミノルタ取締役会議長)を取締役会議長に、三浦善司氏(前リコーCEO)を暫定CEOに充てるというもの。ちなみに鈴木輝夫氏(元あずさ監査法人副理事長)と鬼丸かおる氏(元最高裁判所判事)は当初会社側提案の取締役としても発表されたが、両氏は「了承していない」としたため、会社側は株主提案と重複する両氏を除く8名への賛否を問う1号議案と、両氏のみについての2号議案に分けた。

 一方、株主提案となった3号案件は、鈴木氏と鬼丸氏を除く6名となり、瀬戸氏がCEO復帰への意欲を示している。

 両陣営の取締役選任案は計16名で、LIXILの取締役定員も16名なので、全員が選任される事態も理論的にはありうる。

 LIXILの株主構成は、機関投資家が約4割、機関または個人を問わず海外投資家が約7割とされる。このなかで機関投資家の投票に影響力を持つとされるのが、議決権行使助言会社である。機関投資家はその行動を制約する「スチュワードシップ」によって、助言会社の助言を参考にしなければならないからだ。

グラス・ルイスは会社側の取締役選任案を支持


 米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と並んで世界の2大議決権行使助言会社といわれる米グラス・ルイスの文書「PROXY PAPER:LIXIL GROUP CORPORATION」(6月12日付け)を今回、筆者は独自ルートで入手した。

 同ペーパーはLIXILの株主総会に向けて20ページにわたる詳細なものだが、取締役候補関連の議案に関する結論だけを報告する。

1.会社側提案候補について

 鈴木氏と鬼丸氏を含む全員に対して選出投票を勧める。

2.株主提案候補について

 濱口大輔氏(前企業年金連合会運用執行理事)についてだけ選出投票を勧め、他の5名(瀬戸氏も含む)に対しては反対投票することを勧める。

 同ペーパーには上記提案の根拠として、詳細な分析・評価が記載されている。それについては別の機会があれば触れたいが、「過去、あるいは現状との決別」というセオリーが採用されている。株主提案候補で推奨されなかった5名の候補は、現任のLIXIL幹部たちである。

 株主提案候補のなかで濱口氏のみが選出投票を推奨されているが、同氏を含む6名は今回の総会では3号議案としてまとめられている。議事進行上、濱口氏だけ別扱いとされることはないだろう。結果、同ペーパーは株主提案候補全員への反対投票を進める助言として受け止められるだろう。

 そしてISSは、会社提案の取締役候補8人のうち6人について賛成を推奨しており、LIXILは「大勢としては会社提案を支持した」との見解を発表している。さらにISSは、瀬戸氏の取締役選任について反対を推奨しており、事態は瀬戸氏側に不利な様相を見せてきたが、その展開に注目したい。


2019年6月13日木曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(3)

一部報道では、2グループの対立が先鋭化していけば互いに相手候補を否認することも含む委任状闘争(プロキシーファイト)の可能性も指摘されていた。

しかし、株主総会が迫っている現時点でその動きが始まっていないこと、本格的にプロキシーファイトをするには双方に多額の資金が必要なことから、その実現の目は少ないと私は見ている。会社側がそれを行えば、株主や社会からの非難を浴びることになるだろうから、抑制的にならざるを得ない。

LIXILの定款では取締役の最大定数は16名なので、双方の候補全員が選出される事態もありうる。その場合は、株主総会後に初となる取締役会で代表取締役およびCEOが選出されることになるので、どちらのグループから選出されるか、大いに興味が持たれる。

 現状での候補者数が同数なので、瀬戸氏側が恐れているのは、会社側が(つまり指名委員会が)さらに候補者を追加することだ。ただし、私はそのような事態にはならないのではないかと見ている。そんなことになると株主総会での取締役選出手続きが紛糾してしまい、今回の成り行きがLIXILほどの大企業のガバナンス不在として、ますますクローズアップされてしまうからだ。

逃亡と言われるか、潮田氏の唐突辞任


(この項 続く)

2019年6月12日水曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(2)

2つの取締役候補案





 最初に発表されたのが、瀬戸氏を中核とする8名の取締役候補案。瀬戸氏は、取締役に重任されることにより、その後の取締役会で再び代表取締役CEOへ復帰することを目指している。

 瀬戸氏を含む8名は、会社からの指名推薦ではなく、株主提案として4月に発表された。LIXILの指名委員会はその後5月13日に、会社側の次期取締役候補としてこれも8名を発表した。ところが、そのなかで鈴木輝夫・元あずさ監査法人副理事長と鬼丸かおる・元最高裁判所判事の2人は、瀬戸氏らが株主提案で候補者とした人物だった。

 鈴木・鬼丸両氏は会社側からの指名プロセスに問題を感じたなどとして、「会社側の候補としては受けない」として株主提案側の候補となることを明言し、いってみれば旗幟を鮮明にした。

すると、LIXIL指名委員会は新たに別の2人を候補として追加したのである。指名委員会のメンバーには社内取締役である菊地義信氏がいること、同氏が潮田氏と近いとされることからも、指名委員会の動きは瀬戸氏グループと対立、あるいは排斥するものとして受け止められている。

(この項 続く)

2019年6月11日火曜日

LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない(1)

LIXIL・潮田洋一郎会長(写真:東洋経済/アフロ)
LIXILグループ(以下、LIXIL)では6月末の株主総会を前に、取締役候補案が2つ提案される事態となり、世の耳目を集めている。会社の指名委員会が選出した候補は8名なのに対し、昨年にCEOを実質解任された瀬戸欣哉氏は自身を含む8名の候補を提案している。言ってみれば、前者が与党、後者が野党的な立ち位置だ。

 私は、瀬戸氏を実質解任して自らがCEOに復帰した潮田洋一郎氏が行使していた「オーナーもどき」のクビキから、LIXILが解放されるためにも、瀬戸内閣が再組織されることが同社にとってはよいことだと考えている。

2つの取締役候補案


(この項 続く)

2019年6月6日木曜日

M&Aが周りでマイブーム

経営者ブートキャンプのOBの社長さんからの相談を受けた。

展開している事業を急速に伸ばしたい、という。

その業界と地域性を分析すると、撤退を考えている同業をM&Aしていくのが最有効な成長戦略と助言した。「ロールアップ戦略」という。「纏め上げる」という意味だ。

すると、足りないのが資本となる。私は「投資ファンドを探して、出資してもらうのが良い」とも助言した。

すると、「すでにいくつかアプローチされていたが、話を聞くところまでは踏み切れていなかった」と言うではないか。私は彼の背中を押した形となった。

この三ヶ月の間に私が関与している会社で3件目のM&A相談となった。いずれも買収を申し入れられている。業績と成長性が認められているということだ。ファンドや大手の事業会社と組むことは決して悪いことではない。今後ともこんな相談が増えてくるのではないか。

2019年6月5日水曜日

テーミス6月号でRIZAPについてのインタビューが

「RIZAP・創業者VSプロ経営者の相克」

2ページの記事の副題は、「直情径行型創業者と実績を誇るプロは最初こそいいものの必ず対立した挙句に」とある。

私のコメント自体は、

「半年かけて瀬戸氏がM&Aで買収した企業を(松本晃氏が)精査し、売れるところは数社だが売却した。しかし、他は反対があったり、売っても赤字が嵩むだけだったりして諦めたようだ。それもあって、V字回復するための処方箋だけ書いて、本人はおさらばしたというのが真相だと思う」

あるいは

「中井戸氏がいた住商は優秀な人が多く、小さな会社の経営を任せられる社員はかなりいる。しかし、RIZAPグループではそうはいかないだろう。瀬戸氏も自分では出来ないから、二人目の中井戸氏を引っ張ったののだろうが、住商とは人材の層が決定的に違う。プロ経営者が投げ出したRIZAPであるだけに、中井戸氏にとっても厄介だ」
など。

中井戸氏は大変だろうが、腕の見せどころとであるとは、本ブログで指摘したとおりだ。私は期待、応援している。

2019年6月4日火曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(13)

2つ目は、極端な悪業績が現出したことによる、組織内の危機意識の醸成である。一部には倒産の可能性さえ報道された。こうなると従業員や役員までもが改革を望み、受け入れる状況が出来上がる。

 3つ目が、社内に充満していたであろう“松本アレルギー”だ。中井戸氏を連れてきたのが松本氏と距離をおいていた新最高顧問ということもあり、今度は意外と受け入れられるのではないか。経験豊富な中井戸氏はうまく人心一新をアピールできるかもしれない。

 RIZAPを企業再生させるには、子会社群の「選択と集中」しかない。その方向性はすでに示されている。そちらの方向に舵を切った松本氏は悪役を買って出た上で舞台から退場した。「選択」ということなら、RIZAPで知られている「結果にコミットする」というコピーに合致した、あるいは関連した事業に絞るということだろう。RIZAPが自ら掲げている「自己投資産業No.1へ」に回帰しなさい、ということだ。

 最悪期という、機は整ったRIZAPをこれから中井戸氏がどう浮上させていくのか。手腕の発揮どころがきた。

(この項 終わり)

2019年6月3日月曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(12)

中井戸氏はRIZAPをどこへ連れて行くのか


 では、プロ経営者が匙を投げた会社を引き受けた中井戸取締役会議長は、RIZAPを立て直せるのだろうか。

 私は、松本氏のときほど中井戸氏はこの会社の経営に手を焼かないのではないかと見ている。

 ひとつは、同社の業績が今どん底にあるような状況だということ。発表された19年3月期の決算数字、特にその利益額は恐ろしく悪かった。そうすると、「これ以上は悪くならない」という状況でもあるのだ。底を打った業績を回復させることは、実は絶好調の業績をさらに伸ばせと要請されることより容易なのだ。

 おもしろいことに決算発表がされた5月15日の同社の株価終値は288円だったが、個人投資家の予想株価は419円(株式投資の総合サイト「みんなの株式」より)だった。つまり、一般投資家はRIZAPは今底を打ったような状況だと思っていると読むことができる。

(この項 続く)

2019年6月2日日曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(11)

パートタイムでは企業再生はやりとげられない


 松本氏のRIZAPにおける最大の蹉跌は、氏の多忙さということに尽きるだろう。瀬戸社長の要請を受けてRIZAPに乗り込んできた松本氏は、瀬戸社長に対して、外部ですでにコミットしてしまっている業務の続行を条件とした。

 その結果、名が知れたこの会社のCOOが週に一度程度の稼動という態勢しかとれなかった。そして、管掌業務は80を超すといわれる子会社群の担当及び立て直しとされた。週に1度しか顔を出さないトップがどうやって業種、業態、規模が異なるそんな数の会社群の経営、あるいは経営指導ができようか。

 RIZAPに着任した松本氏は、すぐにそれまでのM&A拡大路線の無理筋を読み取り、それをストップさせた。しかし、すでに買収してしまった企業群の立て直し、さもなければ売却は短期間では不可能だ、およそ豪腕を誇る自分でも難しいことだということも悟った。

 ところが、社内では瀬戸社長以外は四面楚歌、自らは社外活動もあり経営にフルコミットできない状況である。当然ながら実績、業績は確保できないだろう。そんな判断を下したプロ経営者は半年もたたずして当社の代表取締役COOの座を自ら滑り降りた。

「RIZAPは手に負えない」

というのが、松本氏の苦い判断でなかったか。

(この項 続く)

2019年6月1日土曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(10)

人間というものは、それまで自分が正しいと思って一生懸命やっていたことを否定されるとおもしろくないものだ。まして、その結果として好成績が出ているとすれば、それに異を唱える人物に対しては不信感を抱く。そして、それは理由のない嫌悪へとつながることがある。

 松本氏の「M&A路線凍結」提言を受けた瀬戸社長自身も、路線変更に当初は大いにためらいがあったとされている。しかし、結局新参COOの提言を受けて、18年秋に路線変更を発表した。その結果のひとつとして、財務担当とM&A担当役員が年末に解任されている。突っ走っていた組織に鉈をふるってしまった再生経営者が、既存の組織成員からは反感を持たれることは覚悟の上のことでもあったろう。

「週に1回しか出社しないのに年俸1億円だって?」

 吐き出すように話したRIZAP社内の人の言葉が、私の記憶に残っている。念のために書き添えると、松本氏のRIZAPでの報酬は開示されていないので、この金額が事実かどうかは確認できない。

 居心地の悪い会社、それが新任COO松本氏にとってのRIZAPだったと私は見ている。

(この項 続く)

2019年5月31日金曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(9)

松本氏に対する社内からの反発は、さらに強いものがあった。瀬戸社長が松本氏を電光石火に招聘決定した昨年3月のRIZAPの決算数字が、未曾有の好結果となったことがあげられる。

昨年5月に発表された2018年3月期のグループ売上高は1,362億円(対前年比43%増)、経常利益120億円(同25%増)と大幅な増収増益であり、株価はその時点で964円と18年の最高値をつけていた(今回の決算発表翌日5月16日の株価は245円)。

 いわばグループ挙げての好況感に沸いている状態で、社員や関係者はさぞ“ハイ”な心理にあったことだろう。

 一方、松本氏が着任する数年前から加速していたM&A路線の結果、18年9月の段階でグループ傘下の企業数は85社までに拡大していた。いわば、2週間に1社、外部企業の買収が発表されてきたのである。そんな好決算とM&Aフィーバーに水をかけたのが、外部からひとり落下傘降下してきたプロ経営者だったのだ。

(この項 続く)

2019年5月30日木曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(8)

瀬戸社長が新氏に事前に相談していたら、松本氏の着任はあのような電光石火の展開にならなかったのではないかと私は思っている。というのは、新氏は1990年まで8年間ジョンソン&ジョンソン日本法人の社長を務めていた。松本氏は93年に同社に参画し、やがて社長を務めた。

J&J社で2人の社歴が重なり合っているわけではないが、同じ会社で近い時期にCEOであった経営者同士が意識し合わないことはない。そんな事情を忖度せずに松本氏招聘に走った瀬戸社長の行動は、拙速だったのではないか。

 招聘された松本氏は昨年6月の株主総会で代表取締役COOに着任した。すると、その総会で新氏は取締役を退任して最高顧問という職に引き下がってしまった。新しい首相が決定したらそれまでの与党幹事長は入閣に応じずに無役に下ってしまったような現象が見られたのである。

私は、新氏が松本氏にとっての反対勢力だった、と言っているわけではない。しかし、着任したRIZAPで「J&Jつながり」がある有力者から協力体制を取り付けるかたちは取れなかった。

(この項 続く)

2019年5月29日水曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(7)

外部から舞い降りるプロ経営者が直面するのが社内の抵抗勢力


 松本氏がカルビーからの退任を発表したその日に、RIZAPの瀬戸健社長が自ら松本氏に電話を入れてRIZAPへの入社を懇請した。この迅速さ、率直さに打たれた松本氏は、その要請を受け入れたわけだ。

 瀬戸社長の電光石火の働きかけは、創業社長でなければできないものだ。また、相手の懐に飛び込むという率直さは、新将命(あたらしまさみ)現最高顧問を迎え入れたときにも発揮されていた。まだ若手経営者といってもよい瀬戸社長の年齢(41歳)もあり、瀬戸社長には「ジジ殺し」の性向があるのだろう。

 松本氏を招聘したとき、そのタイミングや成り行きから、瀬戸社長が社内で衆議に諮ったとは考えられない。「経営家庭教師」ともいうべき新社外取締役(当時)にも相談せずの行動だったと思われる。

 (この項 続く)

2019年5月28日火曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(6)

数十社の赤字が集積するという悪夢


 4月に入りRIZAPはグループ企業の再編を発表している。そこに添付された「RIZAPグループ体制図」によると、子会社群は10の中核企業群に集約されたかのように見える。しかし、内部を精査して見ると、たとえば中核会社の一つとされたRIZAP株式会社の下には10社以上の子会社を収載したりして、トータルすると、いまだに子会社の数が数十社という規模感のままである。18年9月現在では85社あると発表されていた。

 RIZAPがこれらの数十に上る多くが不調な子会社を保持していけば、毎年莫大な赤字が発生する。18年11月の発表では「1年以内にグループ入りした企業の赤字合計額が増加している」とされた。RIZAPは買収した会社の建て直しが得意な会社ではないのだ。売却できたとしても足元を見られ、多額の売却損を覚悟しなければならない。

 私にも観察できるこんな悪夢を、松本氏のような「プロ経営者」が短期に見抜けないわけはない。招聘されたところが実は“蟻地獄”だったことに、松本氏は現場を回ってすぐ気がついたのだ。

社内の抵抗と反発


(この項 続く)

2019年5月27日月曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(5)

それぞれの子会社を再生できればいいのだが、プロ経営者といえども、不調の会社の業績をターンアラウンドさせるには尋常でない集中を必要とする。つまり、数年に一つずつしか行えないのだ。

「数十もの会社を再生してほしい」とか「そうでなければその数の再生経営者を同時に育ててほしい」などということを期待したとしたら、それは“ないものねだり”というほかはない。

この構造をすぐに見抜いた松本氏は、不調会社の切り離し、つまり再売却に動いた。しかし実現したのは、SDエンターテイメント(昨年11月に一部譲渡)、ジャパンゲートウェイ(19年1月に売却)、タツミプランニング(同3月に一部譲渡)など、指を折るほどの数にもならなかった。それも松本氏がCOOから離任したあとの実現だった。

 会社を売却することは、買収するよりはるかに難しい。売却先候補を見つけ、資産査定を相互で行い、交渉する。弁護士など多くの専門家が関与し、1件だけでも気の遠くなるような時間と労力が必要だ。それを何十社もしなければならないというわけで、松本氏は慄然としたはずだ。

数十社の赤字が集積するという悪夢


(この項 続く)

2019年5月26日日曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(4)

整理しきれない子会社群


 瀬戸社長が松本COOに期待したことは、膨れ上がった子会社群の経営であり、建て直しだった。ところが、一回り現場を回ったこのプロ経営者は、瀬戸社長に重大な経営方針転換を提言したのだ。

 それはRIZAPが突き進んできたM&A路線の凍結であり、子会社群の整理であった。松本氏はRIZAPの子会社群を当初「おもちゃ箱のようだ」とそのバリエーションの広がりを評していたが、内実を吟味するにつれ「壊れたおもちゃも、あるかもしれない」と、それまでのM&A路線を酷評するようになった。

 2年半に60社強を手当たり次第に買い漁ってきたといわれる子会社の多くが赤字に沈んでいた。RIZAPはそれらの不調会社を、評価資産価格以下で買い叩いてきた。そうすると、財務的には「逆のれん代」(適正評価額との乖離額を利益として計上する)として本社の決算数字がよく見えるのだ。この「逆のれんM&A」を永遠に回せれば、個別の会社の経営状況など関係のない、という事態が生まれる。しかし、永久運動機関が存在しないように、そんなM&Aは持続するはずもない。

 赤字の会社を連結決算していけば、RIZAP本体の各年の経常利益は大きく損なわれていく。買収した会社の事業内容をそれぞれ迅速に改善できなければ、RIZAPは早晩行き詰まる。

(この項 続く)

2019年5月25日土曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(3)

松本氏の主要な業務管掌は、多数・多岐に渡ってしまっていたRIZAPの子会社群の経営建て直しということだった。着任した松本氏はカルビー時代同様に、それぞれの事業所(子会社)を自ら回って現場の社員の声を聞くことから始めた。

松本氏はしかし、正式着任して半年もたたないうちにCOOを離任してしまう。昨年10月にそれが発表され、肩書きは「構造改革担当」ということになり、代表取締役も外れた。取締役としての籍が正式に外れるのは6月の株主総会だが、RIZAPでの経営トップとしての活動は昨年の10月に終了してしまったという状況だった。「プロ経営者の半年逃亡劇」と私が評する所以だ。

 創業経営者に丁重に迎え入れられたプロ経営者は、なぜ半年も持たずにその会社を見限ることになったのか。私は3つの要因があると見ている。


整理しきれない子会社群


(この項 続く)

2019年5月24日金曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(2)

拙速果断な招聘とプロ経営者が直面した3つの困難


 松本氏はジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長在任9年の間に年間売上を4倍に伸ばし大幅な黒字を達成、続くカルビーでは8期連続で増収増益を続けるなど、「カリスマ経営者」との呼称をほしいままにしていた。

 ところが絶好調を続けたカルビーの業績は、2018年第3四半期(17年10月―12月)に久しぶりに対前年比で大幅に悪化してしまった。私はこの時点でカルビーでの松本経営が限界点に来たことを指摘し、「外に出て次の機会を見出したら」と提言した(18年2月16日付記事『カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機』)。

 この拙記事が松本氏の目に留まったとも仄聞しているのだが、同氏が唐突にカルビー退任を発表したのがその翌月のことだった。そして松本氏の退任報道に即応したのが、RIZAPの瀬戸社長だった。瀬戸社長は即日、松本氏に直接電話を入れ、RIZAP経営陣への参加を懇請した。

 松本氏は瀬戸社長の迅速な要請に打たれるところもあって、RIZAPへの入社を受諾したという。松本氏は昨年6月の株主総会でRIZAPの代表取締役COO(最高執行責任者)に着任した。

(この項 続く)

2019年5月23日木曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(1)

(写真:東洋経済/アフロ)
RIZAPグループ(以下、RIZAP)は6月の株主総会で中井戸信英(のぶひで)氏を取締役会議長として選任し、創業経営者である瀬戸健社長を強力にバックアップする体制に入る。外部から再びプロ経営者を招聘したかたちだ。

 瀬戸社長が昨年、「プロ経営者」の松本晃氏を招聘し、COO(最高執行責任者)として経営の建て直しを委嘱したことは記憶に新しい。中井戸氏の前に短期間在任した松本氏の去就を振り返り、RIZAP改革の道に横たわる困難を概観してみる。

拙速果断な招聘とプロ経営者が直面した3つの困難

(この項 続く)

2019年5月22日水曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(7)

RIZAPが買い集めてしまった企業群は不調にあえいでいたところが多い。つまり、それらの経営者の資質には疑問点が残るだろう。一方、住友商事のような一流商社は、人材の宝庫といっていい。任せられる経営者人材の不足に直面する中井戸氏に、新しい挑戦が待ち受けている。

プロ経営者、松本氏はなぜ逃げ出したのか


 今回のトップ人事に至った、松本氏のCOO半年辞任、私は評論としてそれを「逃亡」と呼ばせてもらう。次稿ではプロ経営者の名声が高い松本氏をしてRIZAP経営から逃亡するに至った事由を検証する。


※後編に続く

2019年5月21日火曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(6)

大会社の経営者がRIZAPで直面するチャレンジとは


 住友商事、そしてSCSKで名声をほしいままにした中井戸氏が、瀬戸社長の要請に応えてRIZAPをV字回復させることができるのか。大いに注目されるところだ。

 中井戸氏は、しかしRIZAPで大いに戸惑うことになるのではないか。少なくともその着任当初は。

 ひとつめの理由は、組織規模の違いである。住友商事やSCSKは大手で、業界で先達的な企業だった。一方、RIZAPは創業社長に率いられて上場してきた、まだまだ新興の会社で、中井戸氏が在任した2社と比べて企業成熟度が大きく遅れている。大会社、大組織を率いてきた中井戸氏がその違いにうまく、そして素早く対応できるかということだ。

 2つめの理由は、RIZAPが拡大しきってしまった子会社群をどう統治していくか、ということだ。住友商事のような総合商社には、事業部門も子会社も無数にあり、一見構造的に類似する構成のように見える。しかし、決定的に異なるのは、それらの多数の会社を経営していくための経営者人材のプールだろう。

(この項 続く)

2019年5月20日月曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(5)

さて、新氏は03年から11年まで、住友商事でアドバイザリーボードメンバーとして経営幹部の指導の任に当たっていた。この期間、住友商事で要職にあった中井戸氏の知遇を受け、両氏は肝胆相照らす信頼関係を構築し、中井戸氏がSCSKに転出した後もその関係は続いていた。

 松本氏がCOOの退任を発表したのが昨年の10月だった。瀬戸社長としては、松本氏を失った後に残るRIZAPの惨状をどう舵取りしていくか、自分だけでやっていくことに自信が持てなかったに違いない。経営家庭教師である新顧問に相談したところ、新氏自身は高齢なこともあり現場復帰に興味がないこともあり、知友の中井戸氏を推挙した、といういきさつである。

 中井戸氏は16年にSCSKでは相談役に退いていたところでもあり、要請に応じられる状況だった。同氏は今年72歳で、経営者として現場復帰にまったく問題がない年齢であり、経営意欲も十分なことだったろう。

 私のこの推定についてRIZAPの広報に確認したところ、「瀬戸社長が10年来師事を仰いできた方が、20年来のお知り合いというかたちで中井戸氏を推挙された」と、実質的に肯定された。

大会社の経営者がRIZAPで直面するチャレンジとは


(この項 続く)

2019年5月19日日曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(4)

中井戸氏登板の背景には大物最高顧問の存在が


 危急存亡の秋(とき)を迎えているようなRIZAPの瀬戸社長が、ここでなぜ中井戸氏を招聘できたのだろうか。まさか中井戸氏がRIZAPでボディメイクに励んでいたわけでもないだろう。

 中井戸氏を瀬戸社長に推挙したのは、著名な経営評論家の新将命(あたらしまさみ)氏だった。新氏は自身がジョンソン&ジョンソン日本法人など大手外資数社で社長を務めてきた「伝説の外資経営者」で、『経営の教科書』(ダイヤモンド社)など多くの経営書を通じてのファンが多い。

 新氏が11年にとあるところで経営セミナーを行っていたところ、聴講していた瀬戸社長が感心して、その場でRIZAPでの経営指導を懇請した。新氏はRIZAPで社外取締役でもあったが、松本氏が着任した昨年の株主総会で取締役を退任した。現在はRIZAPの最高顧問という肩書きである。いってみれば、瀬戸社長の経営家庭教師のような存在だと私はみている。

 瀬戸社長は創業オーナー経営者にありがちな直情径行的な、よくいえば率直で果断なところがある。新氏を招聘したときもそうだが、昨年松本氏のカルビー退任が報じられるや、即日に直接電話を入れてRIZAPへの助力を求めたと報じられている。松本氏は瀬戸氏の即応性と意気に感じてその招聘を受けたとされた。

(この項 続く)

2019年5月18日土曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(3)

SCSKは法人向けのITサービス会社なので一般的な知名度は高くないが、年商3000億円超で従業員数1万人以上、業界第6位の大企業だ。

住商情報システムと業界の草分け的存在だったCSKが11年に合併してSCSKに商号変更した。合併当時から住商出身の中井戸氏がトップを務め、任期中に同業界のBest of CEOに選出されたこともある。16年からは相談役として同社では非常勤となっていた。

 中井戸氏を迎えることになったRIZAP側の業容はというと、連結では従業員数こそ7000人超でその年商は1360億円(18年3月期、以下同じ)だが、それらの数字には2年半で60社以上を傘下に入れたといわれる子会社群のものが含まれる。いわば水ぶくれした連結数字である。本業ともいえるボディメイク事業を行っているRIZAP株式会社の年商は約329億円にすぎない。

 いってみれば、新興の上場企業に1桁上の大企業から大経営者が舞い降りた、というのが中井戸氏の着任なのだ。

中井戸氏登板の背景には大物最高顧問の存在が


(この項 続く)

2019年5月17日金曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(2)

創業経営者である瀬戸健社長は報酬の全額返上をすでに表明してその決意を表していたが、今回は中井戸信英(のぶひで)氏を取締役会議長として招聘し、多くを委任したかたちである。中井戸氏は6月の株主総会で正式に着任する。

 瀬戸社長は、昨年は「プロ経営者」としてその名も高い松本晃氏をCOO(最高執行責任者)として招聘した。ところが昨年6月に就任した松本氏は10月には早くもCOOを退任し、6月の株主総会では取締役からも離任するという。いわば助っ人のエース経営者が交代するわけだ。

 期待を集めた松本氏の早期退任と、入れ替わるかたちとなる中井戸氏の登場の背景を分析する。本稿ではまず、中井戸氏着任の事情から検証したい。

またも大物経営者、中井戸氏の登板


 前COOの松本氏がカルビーというよく知られた食品会社を立て直して抜群の知名度を持っていたことに比べると、中井戸氏はそれほど知られていない。しかし、経営者としての「大物感」とその経営実績は赫々たるものがある。中井戸氏は総合商社の住友商事で代表取締役副社長まで勤め上げ、09年からSCSKの代表取締役会長兼社長だった。

(この項 続く)

2019年5月16日木曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(1)

RIZAP GROUP(ライザップグループ、以下RIZAP)が5月15日に決算発表(2019年3月期通年)を行った。

 年間売上は2225億円で対前年比82.3%増となった。通常の単一事業会社の決算としたら、すばらしい進捗である。しかし、RIZAPの場合、今回の発表で注目されていたのが、利益のほうである。前年の18年3月期は136億円の営業利益をたたき出し、年度初めの19年3月期利益予想額は230億円と野心的なものだった。

 ところが、昨年11月に修正予想として33億円の営業損失と大幅な減額が実施された。今回の発表前には100億円の赤字になるとの予想も報道されていたのである。正式発表された営業赤字は94億円で、100億円まではいっていなかったものの、1年前の大躍進感が打って変わって株式市場では「墜ちた偶像」的な銘柄と成り果てた。

 RIZAPにとって最大の興味は、この「底を打った」と評することもできる状況から、未来に向けてどのようにターンアラウンドを実現していけるかだろう。

(この項 続く)

2019年1月17日木曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(7)

「ブランディング」というのは、著者のセルフ・プロデュース、つまり「自分ブランド」が著書刊行により形成される、ということだ。

 しかし私には、この形態の場合、著者となる社長さんの個人ブランド形成よりも、その人が率いる会社のプロデュースや商品の販促に使えるとみえた。何しろ、本となると200ページ以上で字数にして10万字くらいの情報量が普通だ。パンフレットとは桁違いな情報発信だ。それも書籍として構成展開される「ストーリー」を持っているので、説得力が段違いである。取引先や既存客、見込み客へのPR、はたまた社員募集にも強力なツールとなるだろう。だから、会社の広告経費として出費すればよいのだ。

 このような強みを持つブランディング出版は、当然ながらこじんまりとした自費出版より経費がかかる。私に説明してくれた編集者の話では、「ライターが付いて概算で500万円、6カ月で出版します」としていた。

 通常の商業出版と思われているブランディング出版の数は以外に多く、その出版社だけで1600冊以上の実績があるというではないか。「もしかすると、あの本も」という状況なのだ。新聞広告や雑誌広告と比べるとどうなのだろう。効果・機能的には明らかに異なるアプローチである。なにより、広告であると気が付かれずに強い説得力や影響力を発揮することになる。

 私は、今までいくつもの会社の経営者や独立系コンサルタントに商業出版の紹介の労を取ってきた。正直言って、商業出版の壁はずいぶん高い。しかし、自費出版やブランディング出版なら経費を負担する予算があれば、お勧めだと思った。興味のある向きは連絡してくれれば、紹介することも可能だ。自社と自分個人の広告のバリエーションとして知っておいてよいだろう。

(この項 終わり)