2020年6月28日日曜日

子会社売却で「いきなり!ステーキ」に特化 ペッパーフードサービスは再生できるか(3)

「一瀬社長がCMに出て、店の看板にも社長の写真が出ています。こういう会社は、めったにありません。要は、出たがり屋なんですね。派手な経営をやりたがる、猪突猛進タイプの経営者です。ですから、店舗の売り上げがマイナスに転じても、店舗拡大にブレーキがかからなかったのでしょう」
 急速に店舗を拡大したため、従業員教育が間に合わず、接客サービスの低下を招いたとも言われる。それが客離れにつながったという。さらにアメリカ進出も足を引っ張った。
「いきなり!は、17年にアメリカに進出しました。米ナスダックにも上場しています。ステーキの本場に進出して、ナイフとフォークを持ち立って食べるなんて、アメリカ人からすれば違和感があったと思いますよ。だから、全然相手にされずに、すぐに撤退しました。明らかに、マーケティング分析が不足しています。国内の店舗も同様ですね。イケイケドンドンで店舗展開しましたが、店同士が近接したところにあって、客を奪い合っています。消費動向など、しっかり調べたとは思えません。会社の規模が急激に大きくなると、経営管理能力が問われますが、それを補佐する人材が不足していると言わざるを得ませんね」
 ペッパーフードサービスは、今後どうなるか。
「株価が暴落しているので、新株予約権で増資することができません。ペッパーランチを売却して100億円が入っても、一時しのぎにしかならないでしょう。レストラン業界はコロナの影響で、営業を再開しても密をさけるため、客の間隔を倍にしています。当然売上も半分になるわけで、こんな状況下では、いきなり!は立ちゆかなくなる可能性が大きいですね。お先真っ暗とみています」
 お先真っ暗とは、打つ手がないと言われたも同然である。
「将来的には、会社全体がフード系大企業の傘下になるのではないかと思われます。あるいは、ファンドに身売りして、それから他の外食企業の傘下になるかです。一瀬社長は会社を売却することで、創業者利得が入ります。どこの傘下になるかはまだわかりませんが、いろんな業種をどんどん取り込んでいる、甘太郎やかっぱ寿司、フレッシュネスバーガーを展開する『コロワイド』あたりが、狙っているのかもしれませんよ」

(この項 終わり)

2020年6月27日土曜日

子会社売却で「いきなり!ステーキ」に特化 ペッパーフードサービスは再生できるか(2)

ペッパーフードサービスは、18年度は1億2100万円の赤字、19年は約27億円と赤字が拡大している。さらに4月30日、新型コロナウイルスの影響で2020年12月期第1四半期(1~3月)の決算発表の延期を発表した。
「開店から15カ月以上経った店を既存店と言います。『いきなり!ステーキ』の既存店は、昨年の夏から毎月3割以上減り続けているのです。そこへ新型コロナでさらに売上が悪化しました。ペッパーフードサービスの売上は、いきなり!が84・6%を占め、ペッパーランチが13%、残りはレストランや通販になっています。メイン事業のいきなり!は売るわけにいかないので、ペッパーランチの売却を考えたわけですね。実際、今年4月から売却準備を進めていて、ペッパーランチを6月1日に子会社に移しました。売却しやすくするためです」
 ペッパーランチの売却額は、100億円を見込んでいるという。

舵取りを誤る

 なぜここまで赤字が拡大したのか。
「ひとつは、『いきなり!ステーキ』の急速な店舗展開にあります。2013年に1号店を開店し、それから急速に拡大しています。17年末には188店、18年末は397店、19年末は493店と、わずか6年で500店近く増やしています。フード系で500店といえば、大規模チェーン店です。普通は20~30年かけてその規模にします。6年間でこの数は早すぎです。しかも、いきなり!は18年4月から対前年同月比でずっとマイナスが続いているのに、18年は200以上も出店しています。経営の舵取りを誤っていますね」
一瀬邦夫社長はシェフ出身という。
(この項 続く)

2020年6月26日金曜日

子会社売却で「いきなり!ステーキ」に特化 ペッパーフードサービスは再生できるか(1)


「いきなり!ステーキ」オフィシャルサイトより

子会社売却で「いきなり!ステーキ」に特化 ペッパーフードサービスは再生できるか

デイリー新潮2020年6月26日掲載
6月18日、「いきなり!ステーキ」や「ペッパーランチ」を展開するペッパーフードサービスが、ペッパーランチ事業の売却を検討していると報じられた。同社の2019年12月期は、2年連続となる27億円の赤字を計上。さらに、新型コロナで追い打ちをかけるように業績は悪化している。「ペッパーランチ」売却は、起死回生の一手となるか。
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 ペッパーランチ事業売却の報道を受け、ペッパーフードサービスは「決定した事実ではない」とコメントを発表している。
「決定した事実ではないとはいえ、完全否定のコメントではなかったので、19日株式市場は好感して株価が15%上がりました。ところが、22日はまた下がっています。要するにマーケットは、経営回復を信じていないと見ているということでしょう」
 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。
「昨年12月期決算の有価証券報告書には、“継続企業への懸念”と監査会社から指摘されました。つまり、倒産の危機があるということです。こういう指摘が出ると、銀行は融資をしてくれません」
 (この項 続く)

2020年6月24日水曜日

赤字60億円の「RIZAP」 3人の大物経営者にも逃げられ、もはや打つ手なし?(3)

「M&Aで有名なのは、日本電産の永守重信会長です。彼はM&Aを行う際、10年以内に元が取れるという指標を設けています。それができない会社は買収すべきじゃないとしています。ところが瀬戸社長は、そんなポリシーはない。手当たり次第に買いまくっていったのです。私の知り合いにM&Aの仲介会社を経営している人がいますが、彼によると、仲介業者から瀬戸会長はいいカモにされていたそうです。彼のところに売り案件を持っていくと、高い確率で買ってくれたといいます」
 そんなに赤字会社をたくさん抱え込んで、今後どうするつもりか。
「赤字会社を売ろうとしても、買った時の値段より安く売れば、その分損益となりますから、売れば売るほど赤字が膨らみます。とはいえ、売らずに所有したままだと、赤字を垂れ流すだけです。どっちに転んでも赤字なわけで、瀬戸社長は非常に難しい立場に来ていますね」
 新興企業のRIZAPには、経営に長けた人材がほとんどいないという。
「瀬戸社長は、経営者としてはまだまだ未熟です。そのため、これまで大物経営者を3人招聘しています。最初はジョンソン&ジョンソン日本法人の社長を務めた経営評論家の新将命氏を、2011年に招きました。新氏が経営セミナーを行っていたところ、聴講していた瀬戸社長がセミナー後、いきなり名刺交換して経営指導をお願いしました。新氏は社外取締役に就任しました。18年の6月には、カルビーを立て直した松本晃氏を招聘しています。松本氏のカルビー退任が報じられると、即日に直接電話を入れて、RIZAPへの協力を求めたのです。松本氏はCOOに就任しました。その際新氏は社外取締役を退任しています。19年6月には、住友商事で副社長を務めた中井戸信秀氏を社外取締役に就任させています」(同)
 しかし、新氏以外の2人も、1年も経たずに辞任している。
「松本氏は、RIZAPの子会社を見て回ったのですが、子会社を“ひっくり返したおもちゃ箱”と評していました。ガラクタばかりという意味です。グループの内情を知って、呆れかえったのです。それですぐにM&Aを凍結させました。彼は就任して4カ月後にはCOOを辞任しています。もう手の打ちようがなかったようですね。自分の名に傷がつくのを恐れてRIZAPから逃げ出したわけですよ」(同)
 中井戸氏も、今年3月に社外取締役を辞任している。大物経営者から逃げられ、RIZAPは今後どうなるのか。
「2021年3月期も赤字だったら、身売りするしかないでしょうね」(同)
 6月29日には、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで株主総会が開かれる。冒頭でも触れたように昨年、瀬戸社長は株主を前にして「今期赤字は絶対にありえない。黒字にならなかったら、この場にいないということだ」と明言した。今年は、“大荒れ”の総会になりそうだ。
(この項 終わり)

2020年6月23日火曜日

赤字60億円の「RIZAP」 3人の大物経営者にも逃げられ、もはや打つ手なし?(2)

「RIZAPは、今年3月期決算の赤字は新型コロナの影響があったと説明していますが、グループ企業全体を調べてみると、ボディメイキングの事業は、19年3月期の売上が413億円。20年3月期は売上が401億円と、業績は決して悪くないのです。では、何が足を引っ張っているかというと、80社以上もある子会社です。子会社のうち、MRKホールディングス、HAPiNS、ジーンズメイト、イデアインターナショナル、ワンダーコーポレーションなど、上場している子会社は業績が回復しています。残りの未上場の子会社70数社の多くが赤字で、回復が難しいと見られています」
 事業を急拡大したことが、アダとなったようだ。

ひっくり返したおもちゃ箱

「RIZAPグループは、ボディメイキングや英会話、ゴルフスクールなどのコーチングだけに特化すればよかったんです。それをIT、CDの販売、アパレルなど畑違いの事業にまで手を出してしまったので、経営が行き詰まってしまったんです」(同)
 なぜ、積極的なM&Aを繰り返したのか。
「赤字会社をその会社の資産より安く買収すれば、安く買った分だけ利益を計上できます。“負ののれん”と言われているもので、見せかけの利益なんですが、決算上は利益になる。瀬戸社長はこれに味をしめて、次々に負ののれんとなる会社を買収していったのです。営業で儲からなくても、M&Aをするだけで利益を計上できるので、急成長したように見せることができるのです」(同)
 通常、企業を割高で買収したときは、のれん代を払うという。瀬戸社長が行ったのはこの逆だった。赤字企業をその資産より安く買収し、利益を計上するので負ののれん、つまり割安購入益となるわけだ。
(この項 続く)

2020年6月22日月曜日

赤字60億円の「RIZAP」 3人の大物経営者にも逃げられ、もはや打つ手なし?(1)

今年の3月期決算で、2年連続となる赤字を計上したRIZAP(ライザップ)グループ。2年半で60社以上ものM&Aを繰り返してきたツケが回ってきたようだ。グループ経営再建のために招聘した3人の大物経営者は次々辞任した。いったい何が起きているのか。
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 RIZAPグループの2019年3月期決算は、純損益が193億円の赤字だった。今年3月期も60億円の赤字と低迷は続いている。さらに、2021年3月期の業績予想は未定というのだ。
 瀬戸健社長がRIZAPグループの前身である「健康コーポレーション」を立ち上げたのは2003年。当時は、豆乳クッキーダイエットを販売する会社だった。12年からボディメイク事業を始め、16年に社名を「RIZAP」に変更、積極的なM&Aを行って事業規模を急拡大させた。16年に20社ほどだった子会社は、18年末には85社まで増えた。
「昨年の3月期決算で193億円の赤字を計上した時、瀬戸社長は株主総会で2020年3月期も赤字になったら社長を辞めると明言していました。ところが、今年3月期決算で60億の赤字になったのに、退任については口を閉ざしています。どうするつもりでしょうか」
 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏である。同氏は外資系企業4社、日本企業2社の社長を務めたキャリアを持つ。
(この項 続く)