2016年6月30日木曜日

カリスマ・孫正義と柳井正は、後継者を育てることなど不可能である…鈴木敏文の失敗(2)

総会前日の発表は問題ない


アローラ氏が退任するという発表が株主総会前日だったことを問題視する論調がある。つまり、総会での提案議題としては同氏の再任が盛り込まれており、総会本番でそれが覆されたので、事前に株主投票や委任状を提出していた株主は意思表示をする機会が奪われた、というのだ。

 しかし、アローラ氏の退任が6月になり急遽決定されたということなので、上場企業としての適宜開示の原則のほうが優先されるべきだろう。そして何より、孫氏の社長続投という意思決定によるものなので、それが企業価値の増大に益するものかどうかという可能性によって評価されるべきだ。

 58歳になる孫氏は、「(来年8月11日に迎える還暦の誕生日に)古くからの友人やソフトバンクの幹部を集めて僕の誕生日パーティーを開いて、そこでみんなを驚かせようと思っていた。『実は明日からニケシュが社長になります』とね」と株主総会で吐露した。しかし、人工知能AI)が人類の知能の総和を超える「シンギュラリティ」の到来を前に「(経営への)妙な欲が出てきた」として、「情報革命」のチャンスが広がったことが引退撤回の真相だとしている。

(この項 続く)

2016年6月29日水曜日

カリスマ・孫正義と柳井正は、後継者を育てることなど不可能である…鈴木敏文の失敗(1)

(つのだよしお/アフロ)
ソフトバンクグループは株主総会前日の6月21日、副社長で次期社長候補だったニケシュ・アローラ氏の退任を発表し、株主ならずとも世間から唐突な感じを持たれた。

 2014年、米グーグルに在職していたアローラ氏に孫正義社長がほれ込み、契約時のボーナスも含めて約165億円を支払い入社させ、さらに15年度も約80億円に上る巨額報酬が支払われ話題となった。

「2年間で240億円の社長後継者候補」の突然の退任ということで騒がれているが、私は孫社長の続投宣言という視点のほうを重視したい。株式市場も孫社長続投について好感を示し、総会の前週末6月17日の株価から、23日終値ベースで9.1パーセントも値を上げた。

総会前日の発表は問題ない


(この項 続く)

2016年6月27日月曜日

株主総会 立て続く

6月は株主総会の季節だ。3月末決算の会社が一斉に総会を開催する。

私も関与している二つの会社の株主総会に出席した。株主側でなく、ひな壇にすわらされた。

ひとつは、監査役として冒頭監査報告を述べた。

社外監査役なのだが、私に対して株主の方の期待があるのか、株主質問が私に向けられて、議長社長が想定外の成り行きで戸惑ったりもした。

いずれにせよ、関与・指導している会社が順調に業績を伸張しているのはうれしいことだ。来年もまたそのような報告を出す総会に出席したいものである。

2016年6月25日土曜日

リーダーズブートキャンプ 白熱第2講

リーダーズブートキャンプは本日第2講。

「組織戦略」と「マーケティング」を私が講義。前者では私の経営実体験事例も。具体的に組織をどう動かしたか、実例を示しながらその意図や効果を説明した。

第2講に入り、課題図書の報告と討議を2セッション、早くも戦略策定第1発表を数名がグループで行った。

長野、大阪、金沢から参加者が来ている。第3講からは広島から途中参加してくれる経営者も。

次講にはいよいよ箱田忠昭特別講師が登壇する。

2016年6月24日金曜日

グローバリゼーションの終焉(3)

Lim准教授が

「日本の企業も国際適応力を増していくだろう。私のMBAクラスには日本人が5名来ている」
と説明したので、私は挙手をして

「5名のうち4名、または5名全員が帰国すると外資に勤務するだろう」
と意見を述べた。

すると教授は
「何人かは日本の会社に戻ることになっている」。

私は再び
「日本の会社に戻った学生は、欲求不満となり外資に転出するか、起業するだろう」
と見解を述べた。

ラウンド・テーブルから笑いが出た。

(この項 終わり)

2016年6月23日木曜日

グローバリゼーションの終焉(2)

いろいろなデータが示されたが、面白かったのが、「国による美人の尺度」。

すっぴんの若い女性の写真を、各国の若手デザイナーがそれぞれ思う美人にCGグラフィックする、というもので、同じ人とは思えないほど国により異なって加工されていた。

ASEAN各国の価値基準の計数化という興味の有るデータも報告されていた。それによると、共通的な数値をしめして次のようにグループ化できるとされた。

日本
インドネシア・マレーシア
シンガポール・香港・韓国
中国・タイ
インド・フィリピン

私は挙手して「インドとフィリピンが近接したのはどのように理解すればいいのか」と訪ねた。Lim准教授もこの結果については必ずしも納得していないようなやり取りとなった。

(この項 続く)

2016年6月22日水曜日

グローバリゼーションの終焉(1)

国際経営戦略研究学会の月次発表会が6月22(水)に中央大学後楽園キャンパスであった。

今回は初めて通訳なしの英語によるラウンド・テーブル型の報告会となった。報告者はナンヤン技術大学のLewis Lim准教授。

シンガポールにある同大は、今月の「アジアにおける大学ランキング」で、シンガポール国立大学とともに東京大学の上位にランクされたばかりだ。

リム准教授の報告はThe End of Globalizationとされた。内容は、アジアとりわけASEAN諸国では西洋諸国と同じ画一的なマーケティングは通用しない、というもので各国の違いを実証的な調査の報告により説明するというもの。

展開して、それでは日本はどのようにその地域でビジネス展開すればうまくいく可能性があるのか、ということも示唆された。

(この項 続く)

2016年6月20日月曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(8)


それから、株主配当がある。株主総会での支援獲得争いで久美子社長は一株当たり80円の配当を公約した(勝久氏は120円)。会社は赤字でも配当資産があれば配当していいので、赤字見込み修正となってもそれは実行される。

同社の筆頭株主はききょう企画で189万株、個人株主では勝久氏と奥さんの千代子氏が合わせて223万株。ききょう企画の代表取締役は久美子氏だ。分かりやすく言えば、久美子氏側には1億5千万円、勝久氏側には1億8千万ほどのキャッシュがこの赤字会社から渡される、ということだ。

私が株主なら、久美子社長が退陣しても惜しむことは無いだろう。

(この項 終わり)

2016年6月19日日曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(7)


大塚家具の株価の推移を見てみると興味深い。父娘の経営権争いが勃発する2015年春までは1,000円前後で推移していた同社の株価は、父娘の対決となった株主総会のころに2,500円に急騰し、久美子社長が「お詫びセール」を展開した4月、5月は2,000円ほどで推移した。

父娘対決で久美子社長側について大いにこの祭りを煽ったともいえる海外ファンドはその持ち株をこの時期に売り抜けたと見られる(大蔵省への大株主報告から外れた)。

そして、今回の下方修正を受けて、株価はまた1,000円に近づいてきた。つまり、何年も掛けて久美子社長がようやく手に入れた経営権も、株価的には「行って来い」というむなしい推移と言う他は無い。
 
(この項 続く)

2016年6月18日土曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(6)


それよりも、春日部店の6月オープンが発表されているので、こちらの方が大塚家具にとってはよほど脅威だろう。というのは匠大塚の新店舗は床面積1.5万坪ほどもあり、駅を挟んだ大塚家具の店舗の3倍にもなるという。大塚家具春日部店は喉に匕首を突きつけられたような気分だろう。

 

l  経営ごっこと株式ゲーム


経営者は結局業績によって評価される。株主総会で支持を集められるか、ガバナンスでどう優位に立てるか。そんな祭りが終わってしまえば、成長と利益両面の冷徹な数字が突きつけられる。

 

経営権の争奪合戦とそれに続いた久美子社長の戦略取り回しによって、大塚家具の企業価値は損なわれてきたと私は見る。しかし、そんな中で利を得た人たちがいる。

 
(この項 続く)

2016年6月17日金曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(5)


  l  匠大塚の脅威は始まっていない


大塚家具の経営権争いで一敗地にまみれた勝久氏は、匠大塚社を昨年7月に創業した。爾来、大塚家具の管理職や社員たちが50名以上も転職しているという。

匠大塚での新事業開始の資金として勝久氏が大塚家具の株を一部売却したこと、大塚久美子氏側の資産管理会社となったききょう企画との裁判で15億円を勝ち取ったことが報じられた。

 

しかし、大塚家具の今回の業績下方修正には、匠大塚の影響は全く勘案する必要は無い。匠大塚は4月22日に日本橋デザインオフィスを第1号店として開店したが、これは設計者やデザイナーなどの業界プロを相手にした特殊な形態の店舗だ。B-to-CならぬB-to-P(rofessional)というもので、大塚家具の顧客層と全くぶつからない。

(この項 続く)

2016年6月16日木曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(4)


大塚久美子社長の経営で大塚家具は低迷している。

戦略的には勝久氏の高級路線を否定して中級路線に打って出ようとしていると理解できるのだが、それが徹底しないか、消費者にうまく訴求できていないか、だ。パブリシティ的には昨年の経営権争奪合戦からこれ以上無い注目と露出があるのだが、それを活かす知恵が足りない。つまり戦略が無いか、的を外れている。

 

2009年3月の株主総会で久美子氏は社長に就任したのだけれど、その年の年商は580億円だった。

爾来、今回の年商下方修正見込みに至るまで久美子社長の経営の元、大塚家具が600億円以上の年商を記録したことは一度も無い。ちなみに同社の最高年商は2003年の730億円だった。

勝久氏が2014年に久美子社長を更迭したのも理由の無いことではなかったし、会社のトップもボトムも何年も低迷させている経営者はその資質を問われる。
 
(この項 続く)

2016年6月15日水曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(3)


 l  「売れないポジション」へ自らシフト


家具業界での勝ち組はニトリとイケアの低価格路線と、カッシーナ・イクスシーの高級路線である。大塚家具では創業の勝久氏は高級路線を選択して、順調に成長した。

しかし、富裕層は無限に存在しない。その証拠にカッシーナ・イクスシーの年商は100億円強で、店舗数は大都市に4つにとどめている。大塚家具は本日現在17店舗有しているけれど、高級路線としては成長限界に来ていて過大な店舗数だ。

一方、ニトリは5月末現在で391店を展開している。

 

大塚久美子社長の経営で大塚家具は低迷している。
 
(この項 続く)

2016年6月14日火曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(2)


  l 赤字転落の原因は売上高の急落である


赤字転落の原因は売上高の急落である。トップが落ちればボトムは大きく損なわれる。

今回の修正発表では、今期の売上高は前期比42億円減の538億円と、マイナス7%強の落ち込みを予想している。過去15年間で最低になる売り上げ見込みだ。

この数字だけを見ると、昨年の株主総会で公然と対立して実父会長を追放してまで得た経営権を、大塚久美子社長は活かしきれなかったと指摘されても仕方が無い。

 

今期の通期売り上げを下方修正したのだが、「これで終わるのか」という不安は残る。というのは、年が明けてからの月次の売り上げ傾向がジリ貧で始末が悪いのだ。1月から既存店の減少傾向が続いており、引越しシーズンだった稼ぎ時の3月には前年同月期比11.8%減となってしまった。あわてて5月は「大感謝会」と銘打った集客策を実施したものの、今年は不発に終わり、同46.2%減とほぼ半減した。
 
(この項 続く)

 

2016年6月13日月曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(1)


週刊ポストから、大塚家具についてのコメントを求められた。同誌面(624日号・発売613日)では簡単にまとめられてしまうので、本記事で意を尽くすことにする。

 

大塚家具が63日に201612月期の業績予想の下方修正を発表したのが発端だ。

営業利益を見ると、前期210512月期の実績が4億円の黒字だった。今期の従来予想ではそれを上回る5億円が発表されていた。それが、今回一転して15億円強の赤字に修正した。これはリーマンショックの影響で14億円の営業赤字に陥った、200912月期をも超える赤字幅である。最終損益も6年ぶりの赤字に転落すると修正発表された。

 

週刊ポストからの取材のポイントは二つあった。

1.  一転しての赤字予想となった原因は何か。

2.  大塚久美子社長の父で前会長でもあった大塚勝久氏が昨年創業した匠大塚社が大塚家具のビジネスを奪ったのか。

(この項 続く) 

2016年6月11日土曜日

リーダーズブートキャンプ 発進!

経営者やそれに準ずる各界リーダーの学びの場となるリーダーズブートキャンプが賑々しくスタートした。

以前に教えていたコースの関係者、OBの皆さんの暖かい励ましとご協力、ご尽力のおかげだ。

コースの運営にも万全を期し、「リーダーズブートキャンプ」を商標登録などもした。短い準備期間の割には盛況となり、懇親会で参加者の皆さんに話をうかがっても、その満足度は高い。

今回は全8講と時間もとったので、今日もしっかり内容を話すことが出来た。まだ途中からの参加希望が来ている状況だ。市場での評価に感謝している。

2016年6月9日木曜日

大塚家具 再び

日本経済新聞より
昨日(6月8日)九州で講演をしていたら、携帯にしきりに電話が入って、困った。会場に時計が無かったので、マナーモードにして壇上に隠しておいた。

ブザー音でもマイクが拾ってしまわないかと、そのたびにステージ上に歩み出て話をした。終了して、返電したら週間ポストで、「来週の記事にコメントをお願いしたいので、何度もすみません」
と。

「大塚家具が今期の業績を下方修正したことについて解説をお願いしたい」

「大塚家具の不調は、前会長(父親)大塚勝久氏が創業した巧大塚社の影響、顧客の奪取という要素はどのくらいあるか」

など。見解を伝え、6月13日発売号で記事となるという。週間ポストとは別に私も別途記事を起こすことにした。

講演のほうは、北九州地区の経営者の皆さんが150名も集まってくださり、大盛況。

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(8)

社外取締役への需要はこれから急増していくのだが、対応できる現役経営者の数的制限、制度的な制約の増大、時間的な制約などを考えると、これからは「プロ経営者」に続いて「プロ社外取締役」という概念が生まれてくるのではないか。

 つまり、経営者の現役を卒業して、「他社・他業界のことでも説明を受ければ構造的に理解できる」「当社経営の構造的な問題を直覚的に把握できる」「業界的な桎梏(しっこく)の延長線上での惰性的な経営執行の理解」、そしてそれよりも何よりも「そんなことを忌憚なく指摘できる」という性向だ。指摘できれば良く、その解決策を社外取締役が考え付く必要はない。それは社内経営陣の解決責任となる。

(この項 終わり)

2016年6月8日水曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(7)

もうひとつ候補者とすり合わせをしなければならないのが、社外取締役となった場合のスケジュール確保だ。原則、月1回の役員会だけの出席だが、年にすれば12日である。加えて株主総会がある。地方企業の取締役を受ければ、前泊も必要となる。役員会の前の別日に社外取締役だけにブリーフィングを行う企業も出てきた。

 ソフトバンクは社外取締役にファーストリテイリング社長の柳井正氏、日本電産社長の永守重信氏という超大物お二人が社外取締役におり、役員会では実際に丁々発止と孫正義社長に切り込んでいるという。それはソフトバンクにとって幸せなことだが、現役経営者が他社でも取締役として活動することは時間的な制約があるし、何より自社の株主から注文が付けられることにもなりかねない。

 特定の人材が社外役員を何社も掛け持ちするのを防ぐ動きも出てきている。3月の段階で日経平均株価採用の225社のうち71社がなんらかの制限を付けていた(QUICK ESG研究所調べ)。

(この項 続く)

2016年6月7日火曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(6)

しかし、そんな要件の設定もあり、1部上場企業以外では社外取締役の選任は緒に就いたばかりだ。東証2部企業の2割、ジャスダック上場企業では4割もが独立社外取締役の選任に至っていない(コーポレートガバナンス報告書の集計による)。

当面需要が急増している社外取締役であるが、実際に着任している人材は重複していることも多い。理由は、ガバナンス・コードの導入により「とりあえず需要」が起こったこと、それから1部上場大企業に見られる「実績優先」から、他社での着任実績を優先したことにある。

社外取締役のほうも責任を果たしたい


 しかし、もうひとつの理由は「本当はうるさくない社外取締役を」という企業側の本音がある。私もガバナンス・コードが導入される状況が明らかになった昨年のある時期に、関西の1部上場企業から社外取締役就任の打診を受けた。しかし、その会社の総務担当執行役員との面談で「役員会の案件にできるだけご理解をいただき、ご支援をお願いしたい」などと言われ、結局着任しなかった。独立的な立場にある社外取締役候補なら誰でも、「それならお友達を連れてきなさい」と思うのではないか。

(この項 続く)

2016年6月6日月曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(5)

候補は少なく掛け持ちにも制限が


 セブン&アイHDでの伊藤教授のようにアクティブな役割を果たす社外取締役は、これからも増えていくだろう。

社外取締役は、東証1部上場企業では幅広く設置されるようになった。きっかけは、昨年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の適用が始まったことだ。東京証券取引所金融庁による同指針では、上場企業に2名以上の社外取締役の選任を求めている。それ以来、東証1部企業では9割以上が選任済みとなった(2名以上選任したのは6割)。

 ガバナンス・コードでは社外取締役の要件として、「経営から独立した立場」を求めている。つまり、現経営陣の「社外のお友達人脈」による馴れ合い的な経営行動の承認を忌避しようとしているわけだ。

(この項 続く)

経営相談会を帝国ホテルで、7月

恒例の経営相談会を開催します。
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2016年6月5日日曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(4)

私自身も数社で実質的に社外取締役として活動している(1社で社外監査役、同族企業2社で特別顧問として役員会に毎月出席)が、着任するまでその会社はもちろん当該業界について知識があったわけではない。

それぞれの会社での役員会では、社外取締役という異分子である私への説明責任は、会社側にある。

 執行役でもある社内取締役の大部分は、長年その会社に勤め上げて出世の報酬として役員会に名を連ねている。社内の役員たちには自明なことでも、社外の当方には合理的、整合的な説明が必要となる。そして、当方は経営の仕組みについては経験が深い。そんな私を社内取締役の皆さんは納得させ、説得しなければならない。そこで「ムラの論理」の限界が露呈する。

そして、まさにそれが社外取締役の起用によって実現が求められている企業ガバナンスの発露となるのだ。

(この項 続く)

2016年6月4日土曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(3)

社外取締役は、ビジネスの内容に精通する必要はない


 日本取締役協会の会長、宮内義彦氏(オリックス シニア・チェアマン)は社外取締役の役割について次のように述べている。

社外取締役の導入に反対する人の意見に『高度で複雑な我が社の事業内容が外部の人にわかるわけがない』というものがあります。ごもっともですが、私に言わせれば、わかる必要は必須ではありません。『事業内容はさっぱりわかりませんが、ひどい業績ですな。なぜこれしか利益を出せないのですか』と質問し、答えを引き出して、評価できればいいのです」(4月17日付日本経済新聞電子版)

(この項 つづく)

2016年6月3日金曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(2)

企業ガバナンスの本家としての矜持


伊藤教授は実は単なる経営学者ではない。経済産業省が取り組んだ「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトで座長を務め、2014年秋に「最終報告書(伊藤レポート)」をまとめた。伊藤レポートは日本における企業ガバナンスへの本格的な提言として、海外でも高い評価を得た。

 また、1月に日本取締役協会が初の「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」としてブリヂストンを大賞とするなど5社を選出したおりにも、審査委員に名を連ねている。日本のコーポレート・ガバナンスにおける理論面の総本山みたいなお立場の人だ。

 企業ガバナンスについて強い信念を持つ伊藤教授だからこそ、セブン&アイHDのカリスマだった鈴木氏が提示した井阪更迭案件に対しても、強い姿勢で臨めたのだろう。会社側がもし「お飾りで名目だけの」社外取締役としての役割を期待して伊藤教授を招聘していたのなら、その当ては外れたことになる。

(この項 続く)

2016年6月2日木曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(1)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)の株主総会が5月26日に開かれ、鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が取締役を退任し、名誉顧問となった。24年ぶりのトップ交代となった引き金は、新たに社長に就任した井阪隆一氏の処遇をめぐっての年初来の出来事だったのは周知のとおりである(本連載『老害化した天才経営者・鈴木セブン&アイ会長、なぜ退任に?一介の雇われ経営者の末路』)。
鈴木敏文会長(ロイター/アフロ)

 鈴木氏が策動した井阪氏更迭の動きに対して、イトーヨーカドー創業家の伊藤家やアクティビスト・ファンド(物言う投資家)である米サード・ポイントが批判的となった。

しかし、セブン&アイHDの内部で正式なガバナンスとして機能したのは、2人の社外取締役がいる指名・報酬委員会であった。同委員会で否決された案件を、鈴木氏はあえて4月の取締役会に諮ったのだが、ここでも社外取締役の伊藤邦雄氏(一橋大学特任教授)の「無記名投票にゆだねよう」という動議の結果、否決されたことからて鈴木氏の急転直下の辞任会見へと展開した。

企業ガバナンスの本家としての矜持


(この項 つづく)


2016年6月1日水曜日

九段クラブ 月例会でIoT/CPSを学ぶ

月例の勉強会「九段クラブ」に私が入会してから、今年でちょうど30年がたつ。

恩師だった故水谷栄二先生に誘っていただいた。先生の教え子有志が結成していて、教え子など先生と関係がある人たちが集まって今日に至っている。

「隠れた日本の知性」とお呼びしていた先生のお弟子さんたちで向学心に燃えたメンバーが切磋琢磨して30年を過ごしてきた。キャリアの現役を終了した会員たちの到達点は高い。博士も何人もいるし、1部上場企業の大取りを務めた人も。

5月28日の例会ではIBMで今年定年を迎えたI会員が「IoT/CPSを活用した競争優位」というテーマで講話をしてくれた。大変興味深い話だったので、リーダーズブートキャンプで話してもらおうと相談した。

I会員は世界の著名B-スクールでエグゼクティブ・プログラムに参加してきた方だ。ハーバードとスタンフォードの両校を制覇したリアル・パーソンとして私が唯一知っている方だ。