2012年7月31日火曜日

『超実践的経営戦略メソッド』(拙著)に厳しいコメントが  書評145(5)

6月25日のブログで、国際経営戦略研究学会の研究会に出席したことを書いた。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/06/blog-post_25.html

高橋正泰氏(明治大学・経営学部・教授)が「実践としての戦略とその視覚」というタイトルで報告されたわけである。経営戦略をその実践面にフォーカスして研究を進めようという提言をなさった。

出席した学者の皆さんとの最後のやりとりで、企業へのアプローチや深く内部に入り込んでの経営戦略の実践事例観察の有効性と並んでその困難性が指摘された。

私は幸いなことに、自分の中に多数の経営戦略実践例を抱えている。そして、その直接事例にフォーカスして発信したり、至らないながらも分析したり、演繹してセオリー立てを試みてきている。

広く世界の先進的な(そして突出的で異例な)成功企業の分析よりも、狭く深く自例を紹介し、それらを使って戦略セオリーを分かりやすく説明していくのが私の役割であり、アドバンテージだと自覚している。

(この項 終わり)

2012年7月30日月曜日

『超実践的経営戦略メソッド』(拙著)に厳しいコメントが  書評145(4)

当時のキッチンハウス社のCEO経営者は、
「問題は価格帯だったわけで、相手先のキッチンにどんなに新奇な技術要素があったとしても、そこに降りていくことは当社にとって自殺行為だと思ったわけです」

としています。山田修という方です。写真は同社の製品の1例で、一般家庭用のキッチンです。この展示例だと大体400万円くらいの価格と成ります。

前項(7月29日ブログ)で要約した三つ星レビューで「b)革新的技術の不存在により、破壊的イノベーション理論の事例に不適」とされたことは、実はそれが満たされたとしても当社における戦略的判断には変わりは無かった、ということです。

(この項、本当にあと1回で終わります)

2012年7月29日日曜日

ルネサス 赤尾泰社長 工場売却・閉鎖計画はてぬるい

半導体大手のルネサス社の赤尾泰社長が、国内18工場うち最大10工場の売却あるいは閉鎖を発表した。

ところが、この実行については詳細日程が明らかにされず、「3年以内に売却または閉鎖する」としかしていない。売却するのか、閉鎖するのかについては、「売却先が見つからなければ閉鎖する」といった程度の絵図しか書いていない。

断言するが、こんな曖昧な計画(計画というか願望でしかない)では、決してこれらのことは実現しない。3年後に起こっていることは、工場個別の問題ではなく、この会社全体が存亡の危機に陥っている、ということである。それを避けるには、「今」の段階で、向こう6月にはどこどこを、12ヶ月の間にはどこどこを、という具体的な日程であり、そのためには「どこどこと提携、あるいは売却先として」などのシナリオである。赤尾泰社長が戦略的リーダーであるとか、経営者であるようには私には見えない。

『超実践的経営戦略メソッド』(拙著)に厳しいコメントが  書評145(3)

本項(1):7月22日ブログで取り上げた、3つ星レビューの方の批判は次のように要約できる。

1)「破壊的イノベーション理論」の場合、a)廉価な製品 と b)革新的な技術 の2つの要素が必要だ。
2)山田の事例ではb)が欠落しているので、「イノベーションのジレンマの事例」として不適格である。

「b)が欠落している」というご指摘はそうでしょう。しかし、それだからすぐにキッチンハウスでのケースがイノベーションのジレンマの議論事例として不適格とはならないのです。

先行メーカーとして確立されていたキッチンハウスが、安価メーカーの製造委託先と成ることを選択しなかったわけです。では、その際にその安価メーカーのものにb)革新的技術が備わった場合、キッチンハウスの経営者は、その安価メーカーの製造物を併存、あるいはシフトしたのでしょうか。

(この項 終わる予定だったけど、もう少し)

2012年7月28日土曜日

『超実践的経営戦略メソッド』(拙著)に厳しいコメントが 書評145 (2)

3つ星レビューをしてくださった方は、経営戦略セオリー各説にお詳しい方だ。おそらく、経営学の先生かと拝察する。

まあ、もちろん私の学殖の不足、当該書の紙数の制限など、当方に至らないところもある。

ただ、私の著書の原則は、「セオリーを説明するのに、自分が体験した経営実践例による」というものだ。それについては、別に当該書で謳ったわけではない。しかし、他企業の事例を掲げた場合とは、私が取り上げた先行文献(ほとんどが戦略セオリー学術書)が立論に引用したものであり、それの正当性の吟味、批判という形でしかない。

私の、このような執筆ポリシーで書かれた経営戦略のセオリー本は近年少ないはずだ。というより、そのような境遇(多数の実経営実践経験)に恵まれた著者がこの分野で私の他に執筆しているというのを聞いたことが無い。

(この項 後1回だけ)

2012年7月26日木曜日

流通チェーンからサービス業チェーンへ

先週、某流通チェーンの新社長に「経営塾」という形で指導申し上げ、最終的に「自社3年経営戦略」を策定して貰ったプログラムが終了した。3週間おきに7回で完結した。プレゼンを受けたメインバンクの満足度が大きく、私も嬉しい結果と成った。

回数をあらかじめ決めて展開するプログラム型でのコンサル(経営者向け)は、ゴールも事前に設定するしスケジュール的にも区切りがあらかじめ分かっているので、受け入れて貰いやすいのか、今週はもう某サービス業チェーンの社長さんを年末まで指導するプログラムが始まった。取り扱いサービスの追加と、店舗展開政策について主として助言し、年末までには新しい方向で動き出していることをゴールとした。

2012年7月24日火曜日

(株)エニグモ バイマ 本日上場

バイマを展開している(株)エニグモが、本日東京証券取引所マザースに上場を果たした。経営者ブートキャンプから上場企業の経営者を輩出したわけである。


須田将啓社長は、一昨年経営者ブートキャンプの第1期に参加して勉強してくれた。最終講でバイマの経営戦略を発表して、「これをほぼそのまま社内で発表します」と張り切っていた。


須田さんは今年のダボス会議に日本の経営者を代表される立場で参加された。経営者ブートキャンプから大きく羽ばたいていく経営者を見ることが出来るのは、主任講師として至上の喜びだ。

2012年7月22日日曜日

来年9月に組織戦略セミナー

大手シンクタンクから、組織戦略に関する1日セミナーへの出講依頼をいただいた。東京と大阪で同内容を講じてもらいたい、と。

それが2013年の9月実施のセミナーとのことである。ありがたいお話しで喜んで受けさせて貰った。どうかそれまで元気でいたい。

『超実践的経営戦略メソッド』(拙著)に厳しいコメントが 書評145(1)

昨年上梓した拙著(日本実業出版社)。アマゾンで今まで6つの読者レビューが全て5つ星をくださっていた。初めて3つ星評点のレビューがアップされた。一部を転載する。
http://www.amazon.co.jp/dp/4534048602

「なお、破壊的イノベーション理論の批判で、
著者が経営していた企業の高級システムキッチンの例を挙げていますが、
高級ブランド品と廉価普及品と比較して
イノベーション理論が使えないとの結論となっています。
破壊的イノベーション理論の場合、
廉価な製品に新しい革新的な技術が使われていないと意味をなしません。
価格と機能の比較であれば単純な棲み分け論です。
エルメスが安物を作らないのと同じ話となります。
他者の理論に対してはこのような誤解に基づく批判が多いようです。」

(私の見解は次回に)

2012年7月21日土曜日

原子力発電所 国会事故調 報告書を読む

本日は九段クラブ。A会員が、福島第一原子力発電所事故に対する国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の「調査報告書」を報告、解説してくれた。

初めの資料として、5月26日の日本原子力学会(!)で公開シンポジウムの形で行われた下記の資料が示された。報告者は東京電力の社員。報告時に聴衆から罵声が飛んだとも言われる。まあ、言ってみればデフェンシブでエクスキューズな立論と成っている。

東京電力福島第一原子力発電所事故対応の概要:
 http://www.aesj.or.jp/information/20120526fukuda.pdf

次に下記資料が示され、上記資料の主張と対比された。こちらの方は、結構過激で、事故発生を「人災」と断定して、安全委員会及び保安院の組織的な限界(原発を推進する省の中に存する組織)を指摘し、かつ規制対象である電力会社との情報及び知識格差により、いいように丸め込まれてきた、と指弾している。
幾つか興味深い提言もあるが、あの事故が数百年に一度のものだとしたら、全ては「後の祭り」あるいは「ガス抜き」ということになろう。空しい感を持った。

国会事故調報告書ダイジェスト版:
 http://naiic.tempdomainname.com/pdf/naiic_digest.pdf

マガジンハウスから 8月9日 (3)

農業自給率の怪

先週、経営者大会に招待された際、浅川芳裕氏の「日本は世界一の農業大国になれる!」という講演を聴いた。浅川氏は雑誌『農業経営者』の副編集長で、『TPPで日本は世界1位の農業大国になる』(KKベストセラーズ)を著している。

浅川氏によると、
1.日本は世界第5位の農業生産大国で、フランス(6位)より上位。
2.農家の生産性はこの半世紀で6倍となった。
3.「自給率」は日本だけが採用している指標で、カロリーによって計算している。結果、野菜などの生産量は自給率に反映されていない。畜産品は70%が国内生産だが、「飼料自給率」によって、その四分の一しか参入されない。
4.長期的にも短期的にも世界穀物増産率は世界人口増加率を上回っていて、食糧危機ということはない。

終わって私が質問したのは、
日本の食品メーカーが海外に直接作付けしたり、契約農園を設定している。商社が北米のエレベーター(穀物貯蔵庫)を入手し、今や世界の穀物メジャーの仲間入りを果たした。このような海外における食料権益を日本資本が確保しているのも、「自給率」にインパクトを与える数値と成ってきているのではないか。

そんな統計や調査は無いらしい。

2012年7月17日火曜日

経営戦略発表に立ち会う

流通チェーンの地場企業の次期社長と、この2月から「経営塾」という形で勉強をしてきた。

本日、その次期社長が役員会で当社の3年経営戦略計画を発表してくれた。私もメインバンクの役職の方々と共に、陪席させてもらい聴講した。

スライド40余枚を駆使して、50分間も熱弁を振るってくれた次期社長に、出席者一同は大きな感銘を受けた。当社はこれから、この方のリーダーシップによりターンオーバーの途を歩き始める。当社とご本人の繁栄と発展を願ってやまない。

マガジンハウスから 8月9日 (1)

2012年7月16日月曜日

「マーケティングは愛 (銀座ママ麗子の成功の教えシリーズ)」高橋朗 書評144





ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2005年刊。書名にかぶせて、「小説」と謳っている。

元コンサルタントという麗子ママにアドバイスを求める化粧品トップメーカーと、そこをクライアントとして智恵を絞る大手広告会社を設定し、若年男子向け化粧品のリバイバル・ストーリーを展開している。その展開の間に、近年のマーケティングの施策や整理の仕方などのセオリーを1章ごとに説明している。

読みやすく、おもしろいので、通読しているうちにこの頃実際に大手クライアントと広告会社が展開している手法(ここでは特にb-to-c)が理解できるようになっている。優れた仕掛けと文章力、そして専門知識。医学ミステリーで傑出している海堂尊(本職は医師)を彷彿させる。こんな才人がいるんだ。

2012年7月14日土曜日

全国経営者大会 第116回を視察訪問


日本経営開発協会と関西経営管理協会が共催で半期に一度3日間にわたって開催している「全国経営者大会」。今週がなんとその第116回だという。

参加者も日本全国から500名前後もいる。三日間にわたり、講演やら分科会講演やら20以上もの日程が組まれている。初日の立ち上がりは、大前研一氏で最終日のオオトリは桜井よしこ氏。このお二人がここ数年の看板講師ということだ。他にも境屋太一氏や、北尾吉孝氏など大物スピーカーが動員されている。

私はいつも招待してもらっていて、今回は2日目に聴講に訪れた。すると、経営相談を頼まれてしまって、結局3日目もそのために足を会場(帝国ホテル!)に運ぶことと成った。まあ、このご時世に盛会で結構なことである。


2012年7月11日水曜日

太平洋クラブ 民事再生を申請

国内で17のゴルフコースを運営している、最大手ゴルフクラブの太平洋クラブが、民事再生を申請した。同業のアコーディア・ゴルフの支援を受け、アコーディア傘下となる(下記URL参照)。

この報に私は感慨深い。1973年(!)に初就職したのが同社だったからだ。当時、太平洋クラブは平和相互銀行の子会社として創立してまもなく、破竹の勢いだった。「全国に100のゴルフ・コースを開設」などと謳って会員募集をしていた。ゴルフだけでなく、スキー場も4つ所有していた。

スキー・フリークでもあり、実質的な学生プロでもあった私は、スキー場の経営に携わることを夢見て同社に就職した。初年度、太平洋クラブマスターズの運営などをさせて貰い、なんと1年間で退職することになった。世界的なゴルフ・トーナメントの運営事務局に入ったことで、私は初めて英語の勉強をすることになる。ちなみに、大学での専攻は国文学「伊勢物語」であり、英語とは全く縁のない人生と成るはずだった。

http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/15801812aa9f14616fda8253da0af963/

2012年7月9日月曜日

「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」福島文二郎 書評143

中継出版、2010年刊。大変売れた本らしい。2011年6月には既に21刷りとなっている。また、アマゾン読者レビューは本日現在200以上の書き込み。私がビジネス・経営書の書評を始めて、最大の書き込み数だ。

本書の利点は幾つもある。ベストセラーには理由がある。
まず、短い。そして活字が大きい。さらに、ページ・レイアウトがスカスカ。200ページ強の本だが、一昔前の版組なら、100ページにも成らない原稿量だろう。

著者がディズニーに実際勤務していたのが何よりの強み。私がキッチンハウス社の社長時代に採用した金竹さんが、ディズニー・グッヅを販売する子会社のコントローラーをしていた。それから王氏港建日本社の社長時代の秘書だった林さんが、ディズニーに転職し、数年後「ディズニー・アンバサダー」に選出され、フロリダのディズニー・ワールドで1年間勤務するという栄に浴した。

金竹さんでもこの本は書けたと思う。林さんならもっとぴったりだったろう。でも、もちろん書き上げた福島氏と出版社の手柄だ。
(今回は、書の周辺事象のことで失礼する)

2012年7月8日日曜日

新将命(あたらし・まさみ)特別講師、経営者ブートキャンプ 登壇


経営者ブートキャンプ第5期の第3講が7月7日(土)に。
午前は私の講義(モチベーション、意思決定)と課題図書(柳井正の経営)。

午後中、特別講師の新将命氏が出講してくれた。前半2時間は、各自の戦略策定の途中経過グループ討議。新氏も1グループ4名を受け持ってくれて、各自に半時間ずつの直接指導。

後半の2時間は、「リーダーの資質」について、1.5時間の講義と、半時間の質疑応答。活発な討議と成り、参加者も新講師も充実感に溢れた。

2012年7月6日金曜日

スワニー社 板野司社長 カンボジア製造進出

手袋製造の世界的大手であり、アジアでの製造展開を早くから進めてきたことで知られるのが(株)スワニー。板野社長からご案内をいただいた。

「先週の金曜日(6月29日)に日経CNBC ASIA エクスプレスの「ASIAマネー」という番組に生出演させていただきました。

スワニーのアジアでの手袋生産の国際分業体制についてお話しさせていただきました。出演時間は13分弱です。お時間があるときにご覧いただければ幸いです。」
下記URLにアクセスすると動画が見られます。
http://www.swany.co.jp/etc/CNBC_384x216.wmv
スワニー社では、数年前に事業部別戦略立案のお手伝いをさせていただいた。

【実践!戦略立案技術】(25)

戦略を立てたなら、発表しよう

◆戦略はコミュニケータブルでなければ



そのパワーポイントのスライド一つにつき、残した戦略カードのそれぞれ1枚の表の文章を書き写していきます。各スライドには小タイトルがついているので、どのカードをどのスライドに書き写せばいいかわかります。このようなブランク・スライドのことを「テンプレート」と呼んでいます。このテンプレートに戦略カードを書き写せば、あとはそれを見せながら手元のカードの裏を読んでいけばいいのです。

このテンプレートを、私のサイトから誰でもダウンロードできるようにしました。どうぞご活用ください。
<<HPのご案内>>
「テンプレート」は、著者HPからダウンロードが可能です。

(この項 終わり)

2012年7月5日木曜日

【実践!戦略立案技術】(24)

戦略を立てたなら、発表しよう

◆戦略はコミュニケータブルでなければ

シナリオ・ツリーを構成した戦略カードには、表にはそれぞれ短い文章が一つ、裏にはその理由書きがしてあります。

これを順次提示していけば、「経営戦略の発表」となります。でも経営者なら、形のよいものに仕上げて発表したいことでしょう。

そこで、プレゼンテーションなどの形式に慣れていない経営ために、パワーポイントいう発表用ソフトを使った便利な発表ツールを用意しました。パワーポイントは、次々とスライドを見せるという点で、「紙芝居型」の発表ソフトです。

(この項 後一回)

2012年7月4日水曜日

「ネルソン・マンデラ私自身との対話」 書評142(3)

マンデラの発信した書誌を読んでいくと、まずこの人が非常な知識人だと言うことに気づく。ローマ、ギリシャなどのヨーロッパで先行した文明についての該博な教養があり、シェイクスピアなどの古典を広く引用している。刑務所に27年間という隔絶した環境で、これらの知識を書簡の中で自在に示すことは、通常人には至難のことだろう。また自身、弁護士でもある。

文章家としても優れている。感情的な表出を、理知的に説明できる人だ。その結果、読む人への浸透力や影響力が大きく、言論活動を通じて、刑務所の刑務官や受刑者の尊敬を広く集め、外に於いては南アの民衆の支持を強く得るに至ったというのが、私の感想だ。

次に王族出身という出自からの、揺るぐことのない誇り-自身と民族に対する誇りーだ。そして変わらぬ意思の強さ。本書はまた、革命家本人による記録であり、手段として暴力や軍事をもいとわなかった先鋭的な革命家の記録でもある。それらを断行した強い決意と主張は、世に稀な読み物として本書に高い位置を占めさせている。圧倒的な読み物だ。

(この項 終わり)

2012年7月3日火曜日

「ネルソン・マンデラ私自身との対話」 書評142(2)

本書の珍しい「文献と資料のミックス」は、しかし本書をドキュメンタリーとして読むとき、とても効果的な記述法だ。

というのは、「刑務所で執筆された未発表の自伝原稿から」を除いて、いずれも公刊されることを前提に書かれたモノではない。それが一層、巧まない記録性、客観性を高めている。「、、未発表の自伝原稿から」でさえ、ばらばらに分解された断簡が各章の中に背配置されているという構成を取ったことにより、より資料的な扱いと価値を高めている。

(この項 続く)

2012年7月2日月曜日

「ネルソン・マンデラ私自身との対話」 書評142(1)


明石書店、2012年刊。

巻を開くのにたじろぎがあった。国際関係の分野は、私の興味の分野ではないし、500ページを越える大冊である。経営書を取り上げている本ブログでの書評シリーズとしても異質だ。

本書の構成がまた、異質だ。こんな構成の本は初めて読んだ。南ア大統領かつノーベル平和賞に輝くネルソン・マンデラの自伝、、、かと思ったらそうではない。彼を取りまく種々の資料のごった煮のような体裁である。未刊の伝記の数小節、マンデラが様々な人に出した書簡、彼の伝記を書こうとしている編集者との対話、そして、ノートや年表、登場人物に関する簡単な説明、地図などの資料類。

そのような、一貫していない、そして後に活字として読まれることを予定されていなかった書誌が、マンデラの時間経緯を元に時間的に編集されている、というか並べられている。

それだけの変わった体裁、そしてとても長い、、。しかし、巻を開けば「巻を置く能わず」という表現が思い起こされる。

(この項 続く)

2012年7月1日日曜日

ローソン 新浪剛史社長 ランチェスター戦略 (2)

セブン・イレブンに比べ、シェア2位のローソンをランチェスター戦略的には「弱者」と見るわけだ。

弱者の戦略は、局地戦による一点突破である。全面的に広がった戦線の全てで戦いを挑めば、必ずシェア1位の「強者」が勝利する。

新浪社長が選んだのが「ダイバーシティ(多様性)」という戦場だった。さらにダイバーシティの分野で戦える、幾つかのフロント(戦線)を意識的に選択した。それらが、「店形態の多様化」、「人財」の多様化というわけである。

興味深いのは、ここまでランチェスター戦略的に説明できるご自身の戦略選択を、新浪社長ご自身はランチェスター戦略に引きつけて解説しようとしていない。ハーバードBスクール出なので、日本ローカルの戦略論として発展してきたランチェスター戦略には興味がないか、知らないか、偏見が有るように私はこの記事を読んだ。
(この項 終わり)