2015年3月31日火曜日

『孫正義の参謀: ソフトバンク社長室長3000日』嶋聡 書評220(1)

東洋経済新報社、新刊。著者は昨年3月末まで社長室長として孫正義に仕えた。

前身は、3期務めた衆議院議員。それも民主党で、現役時代が民主党政権だったことから、政界に太いパイプを持ち、孫社長の種々のプロジェクトで政治的な対応が必要なものの折衝に当たった。

スプリントの買収、太陽光発電、東北大震災後の救済あるいは復興プロジェクトに対して、筆者とソフトバンク社というより孫社長がどう考え、どう意思決定をし、どう立ち回ったかがよく分かるメモリアル・ノートだ。とても興味深い。

(この項 続く)

2015年3月30日月曜日

大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償(4)

●支持を得られなかった最大の理由

 さらに勝久氏の妻、千代子相談役も株主として発言したが、久美子氏を諌めるような長い発言の途中で一般株主から失笑が漏れたり、「もうやめろ」などと野次を浴びる有様となってしまった。

勝久氏は最後に次のように訴えたのだが、将来のビジョンや方策を示すことがなかった。それが一般株主の支持を得られなかった最大の理由だろう。

「会社が10年前、15年前に戻れるようにしたい。元気な会社になるのに1年、2年かからないと思う。会社が悪くなったのではない。会社を悪くしてしまったんだ。私がこれだけ深刻に考えているということが伝わらないのは残念。存続できるのは私しかいないと思っている」

 勝久氏がもし冷静に自らのこれまでの貢献を振り返り、これから先のビジョンや展望を話すという切り口で臨んでいれば、総会の空気は随分変わったのではないか。勝久氏は総会前までは「基礎票」を握っていたのに、対応に失敗した。単純に「自分を信じてくれ」では、他人である一般株主に対して通用しない。

 総会当日も結局、久美子氏の「知」と勝久氏の「情」の対決となり、「知」つまり「論理」を前に出した久美子氏が支持を得た。


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大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償(3)

例年の10倍となる約200人もの株主が出席し、通常の約3倍となる3時間強を要した総会の議長は、社長である久美子氏が務めたが、淡々とした調子で冷静に議事を進行した。勝久氏は取締役席ではなく、あえて平場の株主席から株主として発言した。

「クーデターによって、1月28日、社長の座を奪われた大塚です」という言葉で始まった勝久氏の長い発言の後、久美子氏は次のように切り返した。勝久氏は発言内で「私には5人の子供がいて、最初の子供はとても難産で」などと家族のことに触れ、それが一般株主に強い違和感を覚えさせた。その後、一般株主が何人も質問に立ったが、勝久氏の独善的な差配を指摘したり、今回の騒動を批判する発言が続いた。


 ところが、勝久氏はそんな成り行きを無視するかのように「(勝久氏の三女の夫である)佐野(春生)取締役に聞きたい。佐野取締役がクーデターの本人だ」など感情的な指摘を続け、「会社をこれからどう再建し軌道に乗せていくのか」といった一般株主の興味から離れていった。総会には報道機関が入ることは許されなかったが、音声が一部流出。勝久氏の発言は感情的なトーンとなることもあった。

(この項 続く)

2015年3月29日日曜日

大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償(2)

金融機関などの機関投資家や個人株主などの一般株主は、「雪崩を打って」久美子氏支持に走ったのだ。ということは逆に、株主総会までは優勢だった勝久氏が「下手を打った」と評することができるが、一体何が両者の明暗を分けたのだろうか。それは、コミュニケーション力の差であった。

●「知」対「情」


 株主総会当日、再び『ワイド!スクランブル』に出演した筆者は、久美子氏の基本的なコミュニケーション姿勢を「知」、勝久氏のそれを「情」だと解説した。まだ総会での帰趨が決する前の時間帯だった。久美子氏は国立大学を出て大手銀行でもまれ、自らコンサルティング会社を立ち上げた経験もあり、中期経営計画の策定やプレゼンなどに長けている。記者会見にも一人で出席し自らの主張を説明している。

それらの論理的なアプローチが、総会前に米系投資ファンドと2大議決権助言会社の支持を取り付けた。一方、勝久氏は子飼いの社員
たちやフランスベッドなど取引先株主の支持を取り付けていた。この「知」対「情」アプローチが、株主総会で両者の明暗を分けたのである。

例年の10倍となる約200人もの株主が出席し、通常の約3倍となる3時間強を要した総会の議長は、社長である久美子氏が務めたが、淡々とした調子で冷静に議事を進行した。勝久氏は取締役席ではなく、あえて平場の株主席から株主として発言した。

「クーデターによって、1月28日、社長の座を奪われた大塚です」という言葉で始まった勝久氏の長い発言の後、久美子氏は次のように切り返した。

(この項 続く)

2015年3月28日土曜日

大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償(1)

3月27日に大塚家具の株主総会が開かれ、ここ数カ月間世間を騒がせていた父娘対決は娘・大塚久美子社長側の勝利に終わった。

久美子氏ら10人を取締役とする会社提案が議決権株式で61%の賛成を得て、父・勝久会長の株主提案への賛成は36%にとどまった。

 筆者はこの委任状争奪戦(プロキシファイト)が明らかになった時から、勝久氏が優勢との見方を示してきた。2月27日に『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)に出演した際もそうコメントしているが、勝久氏はなぜ敗れてしまったのだろうか。「ワイド!スクランブル2/27筆者コメント場面動画映像」

株主総会開催直前までに両者が取り付けた支持株主に関する調査結果が、筆者の手元にある。それによれば、勝久氏は議決権株式28.2%の支持を集め、久美子氏のそれは21.2%と、勝久氏優勢の展開だった。

ところが株主総会では、事前に態度を表明していた株主以外の実に81%が会社側提案、つまり久美子氏支持に回ったと、総会後の記者会見で久美子氏が明らかにしている。

(この項 続く)

2015年3月26日木曜日

「ワイド!スクランブル」TV出演 3月27日(金) 大塚家具株主総会中継解説

大塚家具の父娘プロキシファイトに決着が付くのか。

「ワイド!スクランブル」が株主総会を実質生中継する。カメラは入れない模様。スタジオで解説コメントをすることになった。11時前から出演。

2015年3月24日火曜日

武田薬品、壮大な実験?外国人幹部主導の「根こそぎ国際化」(4)

日本板硝子買収した英国法人社長を本社社長としたが、家庭の事情で退任してしまった。ソニーのハワード・ストリンガー前社長は、製造業としてのソニーの本質をついに理解できなかった。昨年タカラトミーがオランダ人のハロルド・メイ氏を副社長に迎えたが、目立った成果を上げていない(『タカラトミー外国人社長、改革小粒&遅く期待外れか』)。

 一方、オリンパスで大騒動を起こしたマイケル・ウッドフォード氏のケースは、大成功だったと評価できる。なにしろ前任経営者の犯罪を暴いたのだから、企業ガバナンスを徹底して改善した。あんな荒事は、とても日本人の後継経営者ではできなかった。
 過去の事例では、外国人経営者を招いた企業の文化が、その経営者を潰してしまうケースが多かった。武田の場合は、ウェバー社長というグローバルリーダーが典型的な国内大企業を企業文化ごと変えてしまうのか。日産自動車カルロス・ゴーン以来の大変革を見てみたい。

(この項 終わり)

2015年3月23日月曜日

武田薬品、壮大な実験?外国人幹部主導の「根こそぎ国際化」(3)

実は14年10月、武田は株式時価総額で初めてアステラス製薬に抜かれるという事態に直面した。もちろん社長就任直後のウェバー氏の責に帰するものではないし、そんな事態に差しかかってきたからこそ、長谷川氏はウェバー氏を招請したのだろう。

 長谷川氏の「タケダ・グローバリゼーション」への覚悟は強い。経営の最高執行機関として「タケダ・エグゼクティブ・チーム」を組成したのだが、ウェバー氏を筆頭に外国人が16人中10人を占めている。これらの外国人幹部らも、ウェバー氏の存在がなければ獲得はならなかったと長谷川会長は振り返っている。武田は、経営の上層部から根こそぎ国際化しようとしており、同社ほどの国内大企業では起こり得なかった事態が起こっているのだ。

●外国人の経営トップ起用、分かれる成否


 近年、国内大企業、それもオーナー系の大企業で、従業員社長ではなく外部からプロ経営者を招くケースが目立ってきている。LIXILの藤森義明社長やベネッセ原田泳幸社長などだ。しかし外国人の経営トップを推戴したケースでは、成否が分かれている。

(この項 続く)

2015年3月22日日曜日

武田薬品、壮大な実験?外国人幹部主導の「根こそぎ国際化」(2)

「クリストフのような人材は、そういうところまできちんと手を打っておかないと来てくれません。それについてどうこう言う人は、世の中の現実が分かっていないのだと思います」(3月2日付日経ビジネスオンライン記事『強面の武田薬品会長が初めて漏らした本音 なぜ長谷川氏は「外国人経営」を決断したのか』)

「そういうところまで」とはCEO就任のことであり、すでにウェバー社長が4月1日付でCEOに就任することが発表されている。ウェバー社長が就任以来手がけてきた経営改革について長谷川氏は、「私がやってもできません。形だけはできるかもしれませんが、彼が今手がけているような実態を伴ったレベルまではできません」(同記事より)とまで評価している。

(この項 続く)

2015年3月21日土曜日

武田薬品、壮大な実験?外国人幹部主導の「根こそぎ国際化」(1)

武田薬品工業が2月5日、2015年3月期決算見通しを上方修正して発表した。売り上げは約1兆7250億円と据え置いたが、営業利益を約1700億円と200億円ほど上積みした(いずれも連結ベース、以下同じ)。

前年となる14年3月期に約1兆6900億円だった売り上げはほぼ横ばいだが、営業利益は約1390億円だったので今期は着実に改善して、業績は上向き始めていると読める。

 15年3月期の業績見通しが特に注目されるのは、昨年6月にフランス人のクリストフ・ウェバー氏が社長に就任したからである。ウェバー氏の薬品業界における経歴は、まばゆいばかりだ。仏リヨン第1大学で薬学博士を取得後、世界的医薬品メーカーである英グラクソ・スミスクライン(GSK)に入社、ヨーロッパ、アメリカアジアにおけるワクチン部門を統括した後、GSKフランス会長兼CEO、GSKアジア太平洋上級副社長兼地域統括などの国・地域責任者も歴任している。武田に入社する前はGSKワクチン社長兼CEOの責を果たしていた。

グローバルな大企業で、特定の製品ラインの事業責任と地域責任の両方を47歳の若さで経験してきた。武田の長谷川閑史会長は、ウェバー氏招聘について次のように語っている。

(この項 続く)

2015年3月20日金曜日

社外取締役義務化への的外れな批判(3)

筆者が実際に受けている非上場企業での社外取締役(非常勤監査役として役員会に出席)では、率直な感想を述べたり、理解できないことは聞くようにしている。社内役員たちには十年一日のような成り行きでも、筆者のような外部の眼で見ると不合理だったり、ほかに有効な選択肢が見えたりするのだ。

そして、そんな異見や見方を示すのが社外役員の役割だと思っている。ちなみにこの企業は、筆者が社外取締役に就任するまで4年間営業赤字だったが、筆者が着任した年に黒字転換して、その後も好業績となった。

●注目すべき京王電鉄の取り組み

社外取締役と関連して注目されるのが、京王電鉄のケースだ。東証のガバナンスルール発表を受けるタイミングで同社は2月26日、「ガバナンス委員会」を設けた。社外取締役2名と代表取締役を含む社内取締役4名の計6名で構成される。この6名はまた取締役会のメンバーである。

 取締役会が社外取締役を含め18名もいることから、このガバナンス委員会は京王電鉄の経営意思決定に寄与するはずだ。18名も「並び大名」がいるところで、外様の社外非常勤取締役が多くの案件で意見を開陳し、深い議論をすることは実質的でない。京王電鉄のトップ経営陣が外部取締役の意見を積極的に取り込もうとする姿勢は評価されていい。

(この項 終わり)

2015年3月19日木曜日

社外取締役義務化への的外れな批判(2)

経営の実践には「原理原則」があり、それを踏襲すれば他の企業にいっても、あるいは非常勤取締役の立場で関与しても十分に機能できる。ただし、その社外取締役に十分な企業経営経験があるということが前提条件となる。1つの企業の経営だけという経験レベルでは、わからないことなのかしれない。

 企業組織の階層は下にいけば専門知識や専門技能が重要だが、上にいけばいくほどいわゆる「大所高所」の見識、判断力が必要となる。他の企業や業界でそれらの知見・見識を磨いた経験者を招けば、企業ガバナンスに必ず寄与できる。近頃ようやくこのことが理解されてきたのか、いわゆる「プロ経営者」が招聘あるいは派遣されて活躍するようになってきた。せっかく外部から経験者や有職者を招くのだから、社外取締役を有効活用しない手はない。

筆者は昨年、とある上場企業から社外取締役就任の打診を受けた。社長は意欲的でその動きが出たのだが、筆者と面談したのは総務部長(執行役員)だった。「社外取締役の方には、役員会では提出議案に賛同するご意見を言ってもらいたい」という役割だという。つまり、単に外部の視点からもお墨付きをもらいたいというのである。筆者は「きっと社長は別の考えなのだろうにな」と思った。総務部長がさかしらをして、トップの意向とは反し役員会で波風を立てない成り行きを求めていると理解した。

(この項 続く)

2015年3月18日水曜日

社外取締役義務化への的外れな批判(1)

東京証券取引所が企業統治(コーポレートガバナンス)ルールの原案を2月24日に公表した。新ルールの適用は2015年6月1日からで、東証1部、2部に上場している約2400社が対象となる。

 新ルールの目玉は、複数の社外取締役の選任を求めているところだ。この東証新ルールに先立って5月に施行される改正会社法では1人以上の社外取締役の選任を促しているが、東証新ルールでは東証上場企業に対して法律より強いガバナンス体制を求めている。

 新ルールでは、主要な取引先である企業の元役員でも退職してから1年以上たてば着任を認められ、これまで義務づけられていた独立性についての詳細な説明は省略できるなど、選任についての弾力的な運用も促している。一方、2人以上の社外取締役を選任しない場合はその理由の説明を義務づけるなど、「飴と鞭」で複数となる社外取締役の選任を上場企業に促している。

 なぜ、今まで社内の取締役だけでやってきた日本企業に社外取締役の導入を促すのかというと、「外部の眼」が必要であり有効だからだ。社外取締役の導入によって企業のガバナンスが向上し、結果として業績に寄与するからにほかならない。「その企業や業界の事情もわからず、専門知識がなくて取締役として貢献できるのか」という向きもあろうが、それは企業経営を経験したことのない人々の思い込みである。

(この項 続く)

2015年3月17日火曜日

大塚家具 娘社長の失脚を願う幹部や店長(4)

 今回の父娘対決で筆者が一番注目しているのは、店長や従業員幹部のほぼ全員が勝久会長のほうについていることだ。久美子氏はそれを社員が仕方なく演じているかのように主張しているが、果たして本当にそうなのだろうか。突然登場した新経営者に思い切りかき回され、業績は悪化してしまった。その新経営者を連れてきた創業者が見切りをつけたとしたら、もう嫌悪感を隠す必要はない――。「勝久チルドレン」たちはそう思い動いたのだ。

 大塚家の資産管理会社ききょう企画について、久美子氏の差配権の正当性に対して勝久氏側から訴訟が起こされている。その判決が株主総会の前に下されることはない。しかし、たとえ久美子氏が株主総会で勝利したとしても、店長や幹部の明白な離反にどう対処しようとしているのか。

「社長はひとりでは何もできない」というのが、洋の東西を問わない鉄則である。父娘対立に決着がついた後に、大塚家具が経営を立て直してうまくいくのか。実はそれは、同社にとって課題でもあり課題ではない。

「創業者の手によってこの会社が潰れるのなら、それはそれで仕方がない、しかし途中から出て来た娘社長との心中は真っ平だ」

これが店長たちの本心である。そして、「娘社長に勝ち目はない」と筆者が考える理由である。

(この項 終わり)

2015年3月16日月曜日

大塚家具 娘社長の失脚を願う幹部や店長(3)

実際に大塚家具社内では勝久会長によるパワハラ的行為がまかり通っているという批判が、久美子社長側から指摘されている。それは裏返せば、勝久会長のカリスマ性の強さを物語っている。

●社長はひとりでは何もできない

 一方の久美子社長は、大塚家具に受け入れられていない。外部で企業経営していたところ、09年に突然勝久氏に呼び込まれ社長に就任した。創業以来勝久氏に尽くしてきた子飼いの幹部たちは、おもしろくなかったに違いない。しかし、「娘にやらせる」というカリスマ創業者の一言でやむなく従った。

ところが、久美子氏はそれまで700億円ほどあった同社の年商を約550億円ほどに低迷させてしまった。14年7月に久美子氏が社長を解任された時は、古手幹部たちは心の中で快哉を叫んだはずだ。そうした経緯もあり、今年1月に久美子氏が勝久氏を取締役会で解任したことを「クーデターだ」と勝久氏が評したのは、そのとおり社内で受け止められていたのだろう。

(この項 続く)

2015年3月15日日曜日

大塚家具 娘社長の失脚を願う幹部や店長(2)

同族企業のことを経営学では「ファミリー・ビジネス」と呼ぶ。上場している大企業でも、実質的なファミリー・ビジネスである企業はまったく珍しくない。トヨタ自動車、鹿島、ソフトバンク、ファーストリティリングも、上場しているが創業経営者や創業家が圧倒的な影響力・支配力を保持している。

 ファミリー・ビジネスが上場した場合、創業者あるいは創業家全体の持ち株はわずか数パーセントにすぎなくなるのに、会社の経営に対してはいまだ実質オーナーのように振る舞い、それが社内でも市場でも違和感なく受け入れられているケースも多い。


  大塚家具の場合、勝久会長は創業者であり18%超もの株式を所有する筆頭株主である。この持ち分は、上場している同族企業の創業者・現役経営者としてはとても多い部類に入る。このような経営者の影響力は圧倒的なものだと理解する必要がある。

(この項 続く)

2015年3月14日土曜日

大塚家具 娘社長の失脚を願う幹部や店長(1)

筆者は2月27日放送の『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)に出演して以来、大塚家具の経営権をめぐる紛争について見解を求められることが多いが、報道を見ていると的外れなものもある。

あるテレビ番組で、「3月27日の株主総会で、発行株数の過半数をどちらも集められなければ、父会長側と娘社長側両方の取締役案とも成立せず、『第3の案』へと持ち越されてしまう可能性がある」と解説されているのを見て、驚いた。委任状を含めて株主総会における有効株数の半分以上を制したほうが勝つのが、会社法の決まりであり、どちらか一方が必ず勝つからだ。

 筆者は同番組内で「大塚勝久会長が勝つ」と言い、「大塚家具は上場している公開企業なのに、同族企業の側面が根強いことが基本的な問題だ」と解説した。公開企業のため業績の回復や利益の多寡などの視点からも論じられているが、同社がまだ実質同族企業だからこそ、そして今回の騒動が父娘の対立という家族問題だからこそ、これほどまでに世間の耳目を集めているわけだ。


(この項 続く)

2015年3月13日金曜日

「ワイド!スクランブル」TV 出演映像 約8分


2月27日(金)に「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日)に出演。大塚家具問題にコメント。

出演場面をダイジェスト映像、約8分間。

https://www.youtube.com/watch?v=TGZqSye44dw&feature=youtu.be

2015年3月11日水曜日

欠格のトップ・野依理研理事長、責任取らぬまま辞任 怠慢でSTAP問題の傷広げる(3)

撮影=吉田尚弘
続く14年4月1日の会見で野依氏は一連の問題について、「誠に遺憾。科学社会の信頼性を損なう事態を引き起こしたことに対して改めてお詫びします」などと謝罪した上で「場合によっては私を含む役員の責任も、しかるべき段階で厳正に対処しないといけないと思っている」としたのだが、実際にはかたちばかりの減給だけだった。

野依氏の退任が報じられた3月6日、山梨大学STAP論文の共著者で同大教授の若山照彦氏(47)に対し、厳重注意とするとともに、現在勤めている同大発生工学研究センター長としての職務を3カ月間停止する処分を発表した。同問題は生命工学分野で最優秀といわれた学者の一人を自殺に追いやり、もう一人にキャリア上での重大な瑕疵を残した。しかし、小保方氏を含めこれらの学者たちは皆、野依氏が指揮監督する組織に属していた。

●遅きに失した対応


 理研改革委員長の岸輝雄・東大名誉教授は「野依理事長の責任は重い」と、次のように指摘している。
「こうした事態を招いた理研の責任は重い。一連の提言は野依良治理事長が決断すればすぐに実行できたはずなのですが、あまりにも対応が遅かった。組織を守る気持ちはわかりますが、ある種の怠慢であり、謙虚さに欠けていたと感じざるをえません」(「週刊朝日」<朝日新聞出版/14年8月22日号>より)
 STAP細胞問題により日本のアカデミー全体に対する世界からの信頼も大きく揺らいだ。しかし迅速的確な対応があったなら、その傷は随分小さくもできたはずである。傑出した選手でも優れた監督になれるわけではない。これは野球などスポーツでよく言われることだ。ノーベル賞学者でも優れた経営者になれるわけではない、といえよう。
 

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2015年3月10日火曜日

欠格のトップ・野依理研理事長、責任取らぬまま辞任 怠慢でSTAP問題の傷広げる(2)

撮影=吉田尚弘
14年初めから始まったSTAP細胞論文事件では、組織のトップである野依氏の顔が一貫して見えにくかった。論文に対する外部からの疑惑の指摘、論文の撤回、小保方晴子氏の釈明会見、笹井芳樹・元理化学研究所CDB副センター長の自殺、調査委員会の設置や報告会、小保方氏の退職など、この事件をめぐる約15カ月の間には、国民の耳目を集める節目となる事象がいくつもあった。しかし、その時々に組織の最高責任者である野依氏が自らメディアの前に出て見解を述べたり反論したりするようなことは数少なかった。数度の会見くらいしか記憶に残っていない。

●他人事のような発言


 14年3月14日の記者会見で野依氏は、「今回のように未熟な研究者が膨大なデータを集積し、ずさんに無責任に扱ってきたことはあってはならない。徹底的に教育し直さないといけない。こういうことが出たのは氷山の一角かもしれない」などと、他人事のようなコメントを述べている。「理研には同様の問題が、まだたくさんあるということなのか。であれば、最高責任者である野依氏は何をすべきなのか」というのが筆者の感想だった。

 また、野依氏は笹井氏についても「シニアになればなるほど故意であってもなくても、起こした問題への責任は大きい」と発言しているが、今回の野依氏の辞任理由に照らし合わせると、後に自殺を遂げた元部下に対するこの言葉には疑問を抱かざるを得ない。「素知らぬ顔をして逃げ出すな」と言いたい。

(この項 続く)

2015年3月9日月曜日

欠格のトップ・野依理研理事長、責任取らぬまま辞任 怠慢でSTAP問題の傷広げる(1)

撮影=吉田尚弘
理化学研究所の野依良治理事長(76)が、3月末で辞任することが明らかとなった。2003年10月から理事長を務め、3期12年目。現在の任期は18年3月までで、任期途中での辞任になる。理由として、在任が長くなったことなどを挙げているという。

 文部科学省関係者は「STAP細胞論文問題の引責ではない」としているが、それが理事長の本心だとすれば、同問題に対する十分な責任を取ることがないままの辞任となる。辞任に当たり野依氏は会見など開く予定はなく、理研広報を通じ「人事のことなので、お答えできない」とコメントしている。これは公人として国民に対して不誠意な対応だというしかない。

理化学研究所は独立行政法人だが公的機関であり、国から年間850億円もの補助を受けている(2012年予算ベース)。日本の人口一人当たり666円の税金が拠出されているのだ。そんな公的機関のトップ人事だからこそ、より一層の説明責任が求められるのだ。野依氏は最後まで自分の公的責任を自覚しなかったという点で、「欠格のトップ」だった。

(この項 続く)

2015年3月8日日曜日

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2015年3月7日土曜日

大塚家具、広大なフロアがガラガラ…業績低迷の元凶・大塚父娘では再建できない

 大塚家具(本社・東京、ジャスダック上場)創業者で会長の大塚勝久氏が2月25日、その娘で社長の久美子氏が26日に記者会見を行った。勝久氏の会見には13名もの現役幹部が背後を固めて立ち、久美子氏の社長在任4年間の売り上げ不振を指摘すると、久美子氏は翌日利益面の数字を上げて反論した。

ただし久美子氏が上げた利益は、年商約550億円の売上高に対し約15億円(11、12年)あるいは8億円強(13年)と大した額ではない。

 大塚家具の問題は、実はボトム(利益)よりもトップ(売り上げ)の長期低落にある。勝久氏が社長として同社を年商約700億円にまで急成長させ、一時は国内最大の家具販売会社となった。しかし05年から08年まで年商は約700億円で停滞し、成長が止まってしまった。そこで外部にいた久美子氏を09年に社長に起用したわけである。ところが久美子氏の社長就任以降、10年からは約550億円前後で売り上げは推移。「14年7月の久美子社長解任は業を煮やしての決断だった」と、25日の会見で勝久氏が解説した。


 2日にわたる父娘の会見を受けて、筆者は急遽2月27日のテレビ番組『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)でコメントを求められ、次のようにコメントした。

(以下、http://biz-journal.jp/2015/03/post_9119.html

2015年3月6日金曜日

ソニー 売却最有力はテレビ事業ーーインダストリアル・ライフサイクル(3)

テレビ事業からの退却については、ソニーだけの話しではない。東芝はすでに海外テレビ事業からの撤退を決めている。北米ではブランド供与とし、欧州やアジアではライセンス供与の協議を続けている(1月29日発表)。パナソニック中国液晶テレビ生産から撤退する(2月2日発表)。また、シャープについては、2月11日付本連載記事http://biz-journal.jp/2015/02/post_8895.htmlで『赤字転落のシャープ、17年までに消滅の危機』」と予想した。

テレビメーカー海外事業を手じまいして、国内で4Kなどの高級路線、あるいは国内市場に傾注して生き残ろうとしているが、それも難しい。筆者は「インダストリアル・ライフサイクル」、つまり「特定の市場における特定の産業にはライフサイクルがある」と提唱している。よく知られているPLC(プロダクト・ライフ・サイクル)では、導入期、成長期、成熟期、衰退期があるとされているが、このサイクルが特定の産業全体に適用できる。
 日本のテレビ産業は、まさに衰退期に突入している。PLCでは、衰退期に突入した商品にしがみついて残った企業に利益がもたらされることがある。いわゆる「残存者利益」だ。しかし、テレビ産業のようなグローバル産業の場合、それも期待できない。韓国サムスンやLGなどの海外勢が侵入してきて、日本のプレイヤーの残存陣地もくまなく浸食してしまうからだ。

 今後日本のテレビ事業は、液晶パネルなどのデバイス事業へと階段を下りていく。あるいはソニーにこれから起こりうるように、テレビ事業そのものを他社に売却して滅消させていくことになるだろう。大きな時代の流れ、インダストリアル・ライフサイクルには抗うことはできない。

(この項 終わり)

2015年3月5日木曜日

ソニー 売却最有力はテレビ事業ーーインダストリアル・ライフサイクル(2)

また事業売却先候補が出てきても、その事業が本社に組み込まれていれば、デューディリジェンス(資産査定)の困難性が増す。本社に組み込まれたままでの事業売却を「カーブアウト(切り出し)」と呼ぶのだが、カーブアウトだとその売却の「荒事性」が高まってしまうのだ。

 一方、すでに子会社化された事業の売却では、こうした問題はすべて低減できる。買収希望会社や間に入る投資銀行などにとっても、適正価格の算定や交渉などをスムーズに進めることができるため早期の売却が可能になる。

●「衰退期」に入ったテレビ産業


 ではソニーが新たな子会社構成によって、売却に動く可能性が高い事業はなんだろうか。筆者はテレビ事業だと見る。

ソニーは昨年7月にテレビ事業をソニービジュアルプロダクツに移管・分社化した際、「売却を一切考えないというわけではない」とその可能性を示唆している。同事業は2014年の第1~2四半期に連続して黒字となったが、2四半期連続の黒字は実に10年半振りのことだった。その間、年間売上高はピーク時の2兆円から8300億円まで落としている。黒字を辛うじて出した今なら有利な事業売却が可能だろうし、ソニー全体の企業価値が上がり株価が持ち直すはずだ。ソニーはそんなシナリオの元に事業分社化を進めてきているはずだ。

(この項 続く)

2015年3月4日水曜日

ソニー 売却最有力はテレビ事業ーーインダストリアル・ライフサイクル(1)

ソニーは2月18日に発表した中期経営計画で、ビデオ&サウンド事業を10月に本体から切り離して分社化すると発表した。さらに分社の対象を、黒字経営を続けているAV機器やデバイス、デジタルカメラに拡げることも明らかにした。1年前の2014年2月にはVAIOブランドのパソコン事業を売却、テレビ事業を分社化することを発表している。

 同日の会見で平井一夫社長は事業分社化の狙いについて、「組織の階層を減らし、意思決定を早め、結果・説明責任を明確にする」と語っているが、本音はどうか。「『本音』は社員へのショック療法? 」(2月23日付「日経BPネット」記事より)という観測もあるが、それもうがった見方だろう。

 ソニーの事業分社化は、「事業売り飛ばしへの準備」だと筆者は見る。本社に事業部門として組み込まれているビジネス・ユニットは、それぞれの採算性が不分明になる組織形態だ。また構成員も本社の社員ということで相対的に手厚い立場が与えられているし、それを本人たちも期待している。つまり企業への膠着性が強く、組織風土的にも文化的にも切り離しにくい。

(この項 続く)

2015年3月3日火曜日

外資企業から「奪い取る」中国 巨額罰金、資産や技術を収奪…韓国へ工場進出は禁物(3)

●往きは良い、帰りは怖い

 中国への日本メーカー進出がブームとなったのは円高が急速に進んだ1990年代後半だった。筆者は香港企業の日本法人社長という立場で、中国事情に目が開いた立場にあった。当時、中国進出を検討していた日本メーカーに筆者は、「香港の華人系企業なら中国内でうまく立ち回れる。彼らと組んで進出しなさい。でなければ、撤退する時に何も持ち帰れませんよ」と助言していた。

現在、日本メーカー製造拠点国内回帰の動きが広まっているが、海外生産から撤退する企業は注意が必要だ。例えば、1989年にファッション品メーカーのスワニー(香川県)が韓国工場を閉鎖した際、現地従業員が同社の香川にある本社まで抗議に押しかけたトラブルが発生したが、そんな悪夢が再現されてしまう恐れもある。

 アジアへの生産拠点進出を検討している企業に対し、筆者は韓国とフィリピンは避けるように助言している。前者には対日感情、後者には治安の問題があるからだ。
「往きは良い、帰りは怖い」ということを、海外進出、特に設備投資額が大きくなる生産拠点進出の際には肝に銘じる必要がある。

(この項 終わり)

2015年3月2日月曜日

外資企業から「奪い取る」中国 巨額罰金、資産や技術を収奪…韓国へ工場進出は禁物(2)


尖閣諸島問題などで反日感情は高まっており、12年9月には中国全土100以上の都市で反日デモが起き、一部では暴徒化したデモ隊が日系スーパーや日本企業の工場を襲った。シチズンの工場閉鎖争議が現地で報道されたということは、この工場も一触即発の状態だったことが想像される。

 中国で種々の問題が起こると、日本企業は糾弾されやすい。シチズンのようなケースの場合、まず地元で裁判を起こされるリスクがある。あるいは行政により罰金を課せられる事態も想定しなければならず、その場合は2カ月の賃金上乗せどころではすまなくなり、懲罰的に高額な金額となるだろう。さらに工場が保有している機器などの資産も差し押さえられたり、没収されることだろう。工場内の資産は日本に返ってこず、技術情報など特許関係の知的財産まで収用されてしまう恐れもある。

 折しも今月、中国は米半導体大手クアルコムが独占禁止法に違反したとして、約1150億円もの巨額罰金を科したことが明らかとなった。中国に進出する企業の間では「独禁法が恣意的に使われている」との批判も強く、中国が政治的あるいはビジネス戦略的に同国へ進出した外資系企業に対して独禁法を適用しているという見方が有力だ。

(この項 続く)

2015年3月1日日曜日

外資企業から「奪い取る」中国 巨額罰金、資産や技術を収奪…韓国へ工場進出は禁物(1)

シチズン中国法人、西鉄城精密(広州)有限公司が撤退に当たって難題を抱えている。シチズンは現地工場閉鎖の決定を発表したのだが、大きな反発を受けた。同工場従業員に閉鎖を発表したのが2月5日で、生産ラインを止める当日だったという。1000人を超える従業員たちは、雇用契約終了を受け入れる確認を2月8日限りで求められた。

 中国では20人以上を解雇する場合、1カ月以上前に従業員へ通告しなければならない。2月10日付朝日新聞によれば、シチズン側は「今回は解雇ではなく、会社の清算なので適用されない」としているが、7日には抗議のデモが起こり、10日朝の時点で60名弱が同意書にサインしていないという。さらに悪いことに、現地で大きく報道されている。その後、退職金に2カ月分の賃金を上積みすることにより、全従業員からの解雇同意を取り付けたという。シチズン側は退職金の総額は明らかにしておらず、実際には相当の授業料を払って事態の収拾を図ったとみられる。

(この項 続く)