2012年8月31日金曜日

「経営プロフェッショナル」宣言

故 水谷栄二先生
経営者ブートキャンプ1期卒業生のIさんと会食した。この夏に、三つ目の外資日本法人の社長職をスタートさせたという。
「私の生涯職歴数(14)を越えるのは、Iさんかも知れませんね」
と、茶々を入れたら苦笑していた。

昔、恩師である水谷先生に同じコトを言われた。水谷先生の生涯職歴数は11だったかと思う。先生はしかし、
「私たちは特定の会社に勤めているわけではない。特定の業務をこなしているプロフェッショナルなのです」
と、常々おっしゃっていた。

先生の場合は、コンサルティングという分野だった。私や、経営者ブートキャンプに集まって来てくれているヒト達の、プロフェッショナル分野はそれでは何か?それは
「経営プロフェッショナル(経営専門家)」
ということだ。外資であろうと、オーナー社長であろうと、起業経営者であろうと、私たちは通常の経営者とは違う。経営に関する専門知識と専門技能を獲得し、どこの経営現場に行ってもハイ・パフォーマンスを残せる、そのような専門家集団なのだ。


2012年8月29日水曜日

シャープディスプレイプロダクト社 佐治寛社長 スティーブ・ジョブスとの違い(2)

今年6月16日の本ブログで、佐治社長のコメントに対して私は次のようなことを書いた。

「それらの技術要素を持っていたソニーは、シャープは坂を転げ落ちていただけではないか。
『ワクワクする』だけではダメなのだ。『どうにか』しなければ。
どうにか出来なかったのでしょう?これから出来るとも期待できない。もう退出した方が良いのではないか」

私のブログ全文は
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/06/blog-post_16.html

ところが、気が付かなかったのだが、このブログのすぐ後6月27日に佐治社長は退任(解任?)となった。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120627/wec12062718540022-n1.htm

本ブログもいろいろな方面で読んでもらえているようでもある。

シンガポールは世界一の金持ち国に

シンガポールに行ってきた。10年見なかったこの国は、見事な発展を遂げていた。写真のマリーナ・サン・ベイズ・ホテルの規模や独創性など、舌を巻く。海を埋め立ててどんどん開発しているが、商業地の30%以上は緑地を確保するという規制により、街には驚くほど木々や公園があり、ゴミ捨てに対する厳格な罰則と共に、とても清潔で気持ちのよい都市を形成した。

国全体で東京23区くらいの広さの小国だが、、1人当たりGDPでは日本を抜いてアジア最強国家となっている。米『タイム』誌によれば、世界で最も億万長者比率の高い国で、なんと全世帯の18%がミリオネアだという。タクシーの運転手が、「我々は世界一richだ」と言う国である。村上ファンドの村上世彰前社長もここに移住した。 

今世紀に入る前、シンガポールには何度も渡った。フィリップス時代、担当していた照明機器ビジネスのアジア・パシフィック本部が最初ここに置かれていたこともある。それ以来この十数年間、日本はどう繁栄したというのだろう。

2012年8月28日火曜日

『「思考軸」をつくれ』 出口治明 書評149

英治出版、2010年刊。出口さんは、経営者ブートキャンプで特別講師として登壇して頂いている。今第5期も、今週末の第5講に2時間お話し頂き、その後数名の戦略発表でコメンテーターをして下さる。

ライフネット生命保険の社長であり、同社を60才過ぎての起業され大変な勢いで成長させている。まさに今が旬の経営者と言えよう。

出口さんの経営の真骨頂は、「一瞬で決断する、ぶれない迷わない」というところにある。それは「思考軸」が形成されているからだ、というのだ。ご本人に接しても、本書を読んでも、まるで明治の知識人のような該博な大教養と、私も及びが付かないような東西古典を読み込んでいるご博識だ。言ってみれば、「レベルが違う」経営者だ、ということが本書から分かる。

ライフネット生命の創設に至った経緯は、前著の『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社、2009年)の方が詳しい。こちらのほうも、本ブログの書評として取り上げてある(下記URL)

http://yamadaosamu.blogspot.jp/2011/09/blog-post_26.html

2012年8月23日木曜日

戦略セオリーを斬る (2)

さて、最後の「欧米アカデミーの戦略セオリー」だが、1970年代以降、様々な学説が展開されてきた。

主要、著名な戦略セオリーについて私が紹介、批判するセミナーを開催することになった(有料)。参加者には拙著『超実践経営戦略メソッド』(日本実業出版社)を進呈する。経営戦略論を概観したい方の参加をお待ちしている。


社長のための「本当に使える戦略・使えない戦略」徹底講義
山田 修
(経営者ブートキャンプ第6期詳細プログラム・質問会付き)

9月13日(木) 16:00-18:00 19:00-21:00 (同内容、どちらか) 詳細と申し込み:
http://www.keieisha.jp/seminar120913.html

この講座は、「経営学」「経営論」を座学の知識・教養として学ぶことで満足されている諸氏には
絶対におすすめいたしません!!

あまたある著名な経営戦略フレーム、セオリーは、どうして実践に移そうとすると使えないのか?
本当に使える、実践戦略フレーム、セオリーは、どれなのか?
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PEST、SWOT、4P、7S、PPMプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(BCGマトリックス)、
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主要な戦略フレーム、セオリーを知り、
更にそれが「使えるのか・使えないのか」まで腑に落ちる超・濃縮講座です!

『MBA社長は仕事をシンプルに考える』(山田修、マガジンハウス) アマゾンで星5つ

マガジンハウス社より、今月刊行。早速、アマゾンで読者レビューが載った。2件とも、幸い5星の評価。1部を抜粋。

「特に分かりやすく実践的な著書だと思います。
ビジネスパーソンとしての仕事の仕方が、細かなセンテンスに分かれていて、とても分かりやすい構成になっています。
その中でも一番印象的だったのが「会社に貸しを作る方法」という項の中のフレーズで“会社と社員は結局『貸し・借り』なんだ”というところです。」

ご一読いただければ嬉しい。また、部下の人などにも廻して上げたり、紹介して読んでもらえたらとも思う。

アマゾンのレビューは下記のURLから。
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4838724667/ref=dp_db_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1
 


戦略セオリーを斬る (1)

黒田 長政
戦略セオリーには流行り廃りがある。それは、世の経営者の間で、ということだけど。 戦後、注目されてきた戦略論を分類してみると、大きく4つの流れがある。

1.軍事史に学ぶ
  
孫子の兵法、シーザー、モルトケ、クラウゼネック、太平洋戦争など
2.戦国武将に学ぶ
  
織田信長、武田謙信、黒田長政など
3.ランチェスター戦略
  
F・W・ランチェスター、田岡信夫
4.欧米アカデミーの戦略論
  マイケル・ポーター、ジェイ・バーニーなど
   
  
前3者を総称して、「俗流戦略論」と呼ぶ学者もいる。

(この項 続く)

2012年8月22日水曜日

役員研修の打ち合わせ

9月に出講する会社で打ち合わせ。
1部上場の大手ゼネコンから依頼を受けた。

社長以下、執行役員、子会社社長など、50名ほどに「経営者セミナー」として。対象が50名ほどいるのは、全体が2千人近い大きな組織だからだ。

大会社にもそれぞれの悩み、課題があるものなので、私の体験と経営戦略の考え方が少しでも参考になれば嬉しい。タイトルは、
「伸びる経営はこう実現する」
とした。

2012年8月20日月曜日

ランチェスター協会、竹端理事長と会食

竹端隆司氏(日本ランチェスター協会理事長)にお招きいただき、会食、歓談。

竹端さんは、ご自身が企業家、それも名経営者でいらっしゃる。入社したときは50名ほどの会社で社長となり、何と3,800名の大世帯、サンマーク出版グループに育て上げ、退任された。

現在はご自分の会社を経営しつつ、ランチェスター戦略の総本山も取り仕切っている。私は、ここでランチェスター戦略研究会の200回記念講演を昨年やらせて頂いて以来のお付き合いをお願いしている。

同協会のインストラクター養成講座と、経営者ブートキャンプが規模や期間などで似たようなところがあり、互いのプログラムから学ぶということで情報交換させて貰った。

竹端理事長、ご馳走様でした。

『志高く 孫正義正伝』井上敦夫 書評148(2)



さて、本書のことだが、本ブログ書評でも多数取り上げてきた現代経営者伝では、殆どが起業前の生い立ちとか苦闘の話には、あまり興味が持てなかった。

ところが本書で孫正義のUCバークレー留学時代を読んで、私は驚嘆した。彼の異常な集中ぶりに、である。ここで「異常な」というのは悪い意味ではなく、「常と異なる」という褒めた表現だ。

私もサンダーバード時代勉強した方だと思っていたが、孫氏のその勉強ぶりにはとてもかなわない。孫氏は天才だし、また集中する天才だと強く感じた。

「5分刻みの勉強スケジュール」で優等生になったのは理解できるとして、そんな在学中に教授を雇って起業し、シャープに技術を1億円で売りつけた、など、度肝を抜く話が続く。時代を巻き込んで走っている風雲児経営者の出自話を、刮目して読むべし。

(この項 終わり)

2012年8月19日日曜日

『志高く 孫正義正伝』井上敦夫 書評148(1)


実業之日本社、2004年刊。孫正義の「正伝」を謳っているのは、著者が孫氏からの全面的な承認のもとに取材を行ってきた経緯から。経営者伝記を生前からこのような形で取材、執筆した関係では、『スティーブ・ジョブズ I・II』を著したウォルター・アイザックソンがすぐに想起される。後者の書評も本ブログでつい最近取り上げている(下記URL)ので参照されたい。

http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/06/blog-post_17.html

本書を今回通読したのは、10月から始まる経営者ブートキャンプ第6期で、期を通じての解読対象経営者として、孫氏を考えたから。ちなみに、前期では星野リゾート星野佳路社長、進行している今期ではユニクロ・グループ柳井正社長を取り上げている。

経営者ブートキャンプ第6期では、孫正義本を他にもう一つクラスで課題図書として取り上げ、最後にどなたか孫氏に近しい特別講師をお呼びすることを企画している。

さて、本書のことだが、

(この項 続く)

2012年8月18日土曜日

『良い戦略、悪い戦略』リチャード・P・ルメルト 書評147(5)

本書におけるルメルトの最大の提言は「カーネル」なわけで、それは3つの要素から成る。拙著『超実践的経営戦略メソッド』(下記URL)で私が提唱した「戦略シナリオ・ライティング5つのステップ」とどう対応するのか、対照させてみよう。
http://www.amazon.co.jp/dp/4534048602

ルメルトのカーネル          山田の5ステップ
目標項目はない           1.3年目標設定
1.診断                 2.重要課題の選択
  状況を診断し、取り組むべき    3つだけ選ぶ。
  課題を見極める。
2.基本方針              3.解決策の発見
  課題に取り組む、大きな       それぞれの課題を
  方向性と総合的な方針を。     解決するカードを3枚ずつ。
3.行動                 4.派生問題
   基本方針を実行するための    解決策で引き起こされる
   一貫性のある一連の行動。    問題。
派生問題と対処というアプローチ  5.対処
ではない。                  派生問題が想定されるな                 
                         それへの対応策を。

戦略立案のためという観点から言うと、ルメルトの「カーネル」は要素の分別が進み切れていない、そして具体性という点で十全ではない、というのが私の観察だ。

本書についての批判は、本ブログでは紙数などなじまないので別の文章で展開したい。ネットのどこかに書き込んだときに、本ブログでその掲出を報告する。

(この項 終わり)
  

2012年8月17日金曜日

『良い戦略、悪い戦略』リチャード・P・ルメルト 書評147(4)

ルメルトの興味は、良い戦略と悪い戦略を分別することに主軸が置かれている。そして良い戦略はどんな要素を持つべきかについても論じているが、良い戦略を「立てるためには」というところまで十全な説明、立論が至っていない。

ルメルトが提唱している興味有る戦略枠組みー「カーネル(核)」は3つの要素から成るという。
1.診断
2.基本方針
3.行動

そしてそれらの要素を充実させることが重要で、カーネルには「期限すらない」と続けている(110ページ)。しかしこれは、経営実務家としての私からは容認できない。実施に期限がなければいつまでも放っておいてよい、ということになる。これでは現場を動かせるわけがない。

(この項 後1回だけ)

2012年8月16日木曜日

経営者ブートキャンプ第6期10月開講 さらに充実(2)


加速するミューチュアル・メソッド

「参加経営者・幹部がお互いの事業ケースから学び合う」というのが、経営者ブートキャンプが実践してきた学習方法。仮想や他社の事業事例から学ぶケース・メソッドを越えた、「ミューチュアル・メソッド」を標榜してきた。

全7講と、1講増やした第6期でどこを重点的に増やしたかというと、3年経営戦略立案を行っていく小グループ討議を1回増やして4回に、さらに1回当たりの時間も増やして、その延べ時間を従来の倍(一人当たり180分!)を当てることとした。講師も入って、自社・自部門の新経営戦略を徹底的に洗い出し、討議していく。小グループで交互にコメンテーターとなる場面では、他社の生きた経営事例の悩みや可能性、打ち手などを深く学べる仕組みだ。

詳細と申し込み:
http://www.keieisha.jp/seminar121027.htm

さらに充実した点はと言うと、、
(この項 続く)

『良い戦略、悪い戦略』リチャード・ルメルト 書評147(3)

本書は3部17章から構成されている。第1部「良い戦略、悪い戦略」のまとめとしてルメルトは次のように述べている。
「良い戦略とは最も効果の上がるところに持てる力を集中投下することに尽きる」(p134)

この視点は正しいモノで、私も賛同するのだが、この文章の前に付いているのが
「ごくおおざっぱに言えば」
という表現だ。
この表現の存在から私は、ルメルトが自分の戦略論の限界というか、きっちり完全にセオリーだてできなかったところを感じていたと読んだ。

つまり、大きな荒い祖述のところでは本質を突いているのだが、それをしっかり要素分けしてモデル化する段階では、著者自身がまだ居心地が悪く感じているのだろう。

具体的に示すと、、、

(この項 続く)

2012年8月15日水曜日

経営者ブートキャンプ第6期10月開講 さらに充実(1)


1講増えて7講に

第1回  2012年10月27日(土)
第2回  2012年11月17日(土)

第3回  2012年12月 8日(土)
第4回  2013年 1月12日(土)
第5回  2013年 2月 2日(土)
第6回  2013年 2月23日(土)
第7回  2013年 3月 9日(土)  
各日10:00~17:30

詳細と申し込み:
http://www.keieisha.jp/seminar121027.htm

どこが充実したかというと、、、
(この項 続く)

2012年8月13日月曜日

社長のための「本当に使える戦略・使えない戦略」徹底講義 9月13日(木)

社長のための「本当に使える戦略・使えない戦略」徹底講義
山田 修
(経営者ブートキャンプ第6期詳細プログラム・質問会付き)

9月13日(木) 16:00-18:00 19:00-21:00 (同内容、どちらか) 詳細と申し込み:
http://www.keieisha.jp/seminar120913.html

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『良い戦略、悪い戦略』リチャード・ルメルト 書評147(2)

戦略策定上でルメルトが示した優れた認識は、まず目標と課題についてである。

ルメルトは、悪い戦略では目標を戦略ととりちがえ、単にスローガンを掲げて終わっていることが多い、と指摘している。また全社として目指す「最終目標」と各部門が担当する「戦略目標」を区別せよ、とも主張している。

良い戦略は「重要な課題」を見極める、とも言っている。ルメルトは「目標」と「課題」についての違いについて意識しているのだが、両者の関係(構造)についてまでの踏み込んだ知見は示していない。また「重要な課題にフォーカス」することが大切だ、ともしているがその技法を示しているわけではない。

良い戦略には「カーネル」という構造がある、との指摘は正しい。しかし、そのコンポーネントが「診断」「基本方針」「行動」の3つだけで括られているのは、要素不全でありまた相互の機能(つまりモデリング)が十全とまでは言えない。

(この項 続く)

2012年8月12日日曜日

『良い戦略、悪い戦略』リチャード・ルメルト 書評147(1)

日本経済新聞出版社、2012年刊。
経営戦略を立てる際に注意すべき、そして意味ある示唆に富んでいる本だ。新世紀になって欧米アカデミーから出て来た戦略セオリー本の中で高い地位を占めた、と評価できる。

本書の、経営書としての価値の高さの1つの要因として、その視野の広さがある。企業事例だけではなく、実際の戦争や国際関係の事例などを幅広く取り上げ、歴史や外部事象から経営戦略の有効性などに演繹してくるような記述がそれだ。

しかし、それらのことは経営戦略の本質に関しては周辺的で補強的な記述でもある。本書の真骨頂は、経営戦略の構造に関しての認識と、それらの重要性についての解説だと言える。幾つか簡単に解説すると、、、、

(この項 続く)

2012年8月11日土曜日

ホンダ2輪車での北米進出ケース (3)

ところがBCG報告書に疑問をいただいた研究者がいた。リチャード・パスカル(『ジャパニーズ・マネジメント』(講談社、1983年刊)の共著者)である。

パスカルは日本を訪れ、実際に北米市場開発をになったホンダのマネジャー達にインタビューするという実証的な調査を行い、その結果をThe Real Story behind Honda's Success (California Management Review, Spring 1984)で発表した。

パスカルが報告したホンダの担当マネジャーによると、
「最初は50ccのスーパーカブを導入することは考えていませんでした。われわれは、自分たち用としてロスのオフィス周りでスーパーカブに乗っていました。それがかなりの注目を集め、シアーズからも販売代理の引き合いがありました。大型バイクが全然ダメだったので、選択の余地が無く、50ccを導入することにしたのです」

つまり、何のことはない、ただの「怪我の功名」だったわけです。さて私たちは、ホンダの北米参入ーそして偉大な成功-からどのような戦略的教訓を得ることが出来るのでしょうか。それは、

「コンサルタントがしたり顔で分析することは疑ってかかれ」

(この項 終わり)

2012年8月10日金曜日

「最高のゴールを目指して!」(ネット書評)で新著『MBA社長は、、』が

8月9日-昨日!ーに発売された拙新著が、早くも大手ネット書評で取り上げられた。一部を抜粋する。

「本書では特に若い人達(新入社員、20代の若手社員、30代の初任管理職)を想定した「シンプル仕事術」、さらには人生に対する考え方にまで言及されています。

読み進めていく中で、若い人達に限らず、部下や後輩を持つリーダー、さらには経営に携わる方々にも、ヒントになることが多くあると感じました。
  • ・かつて若いころ、仕事や人生について悩み乗り越えてきたリーダーにとっては、当時を思い出し自らの経験に、本書を参考にして部下や後輩に適切な助言ができそうです。
  • ・本書の随所に出てくる著者の社長時代の経験からは、社員に対する期待、仕事やマネジメントに対する考え方など、経営のキモを学ぶことができます。
本書は、全体を通して優しい文書で語られていますが、非常に奥深い一冊でした。」

続きは下記URLで。

http://yaokou.cocolog-nifty.com/yaotyan/

ホンダ2輪車での北米進出ケース (2)

BCGの報告書では、経験曲線やシェア争奪、アメリカの中産階級への小型オートバイ販売という新セグメントからの参入という、ホンダが取った戦略について解説されている。 
同報告書の一部を 要約抜粋すると、
「ホンダは一貫した構図を示している。彼らのマーケティング戦略は、大量生産車種の開発に向けられ、成長性とシェアの獲得に多くの関心が寄せられている」
 (以上、ミンツバーグ『戦略サファリ』による)。

つまり、ホンダが北米の2輪車市場を席巻したのは、小型オートバイ・スーパーカブによる下部市場からの参入という、極めて整合の取れた戦略によるモノだ、として同BCG報告書はホンダの参入戦略による大成功を綺麗に描き出した。

この報告書は、ハーバードBスクールがホンダの成功に関するケース・スタディを作成する際の基礎資料と成った。そしてそのケースは、規範と成る戦略的行動を教えるために多くのMBAスクールで使われたわけである。

ところが、、、 (この項 続く)

2012年8月9日木曜日

『MBA社長は仕事をシンプルに考える』(山田修、マガジンハウス) 書評146

マガジンハウス社より、本日刊行。拙著なので書評ではなく紹介。

私の近年の著作は、経営戦略とか経営術などに関するモノが続いてきた。本書での読者対象は、「働く若いひとたち」だ。社員と言うことなら、新入社員から20代の若手社員、30代で初めてリーダーを任された人や初任管理職。男性も女性も読んでもらえる内容とした。

働いている若手は、別に正社員だけではない。アルバイトやパートのヒト達にも読んで貰いたい。というのは、仕事のことで皆悩んでいるわけだが、経験値が少ない時期はどうすればよいか分からない、自分で試行錯誤してしまっている。仕事のやり方、組み立て方、職場での人間関係などをシンプルにしてしまうことで、それらの悩みは解決できる。そして「何を優先順位に置けばいいか」ということを知って貰えれば、自分の成長にも繋がっていく、そんなヒントやら助言を満載したつもりだ。

ご一読いただければ嬉しい。また、部下の人などにも廻して上げたり、紹介して読んでもらえたらとも思う。内容の1部をインターネット上で閲読できる。下記のURLから。


2012年8月8日水曜日

ホンダ2輪車での北米進出ケース (1)

『戦略サファリ』(ヘンリー・ミンツバーグ、東洋経済新報社、1999年刊)は、欧米アカデミーが20世紀に著した経営戦略セオリーを整理・分類・網羅した大著だ。主要セオリーを分類して「スクール」と呼び、ミンツバーグが解説し評価している。

私も本ブログで5回にわたり書評を掲載している(下記URL)。本書でおもしろいケースがあり、紹介したい。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2011/06/blog-post_16.html

ホンダが北米に進出、成功したのはまず2輪車からだった。というより、まだ4輪自動車の製造を始めていなかった段階の話だ。北米で殆ど実績の無かったホンダは、50ccの小型バイク、スーパーカブで劇的な成功を収め、1966年にはアメリカでの2輪車市場で63%のシェアを得るに至った。

短期間でのこれ以上ないようなホンダの成功について、ボストン・コンサルティング・グループは1975年に報告書を著し、
「(ホンダは)古典的な合理的ポジショニングを示した」
(ミンツバーグが『戦略サファリ』で紹介した表現)
とした。ところが、、、

(この項 続く)

2012年8月6日月曜日

『MBA社長は仕事をシンプルに考える』(山田修、マガジンハウス) 立ち読みサイトが

拙著新作は8月9日に刊行される。それに先だって、内容の1部をインターネット上で閲読できるサイトが設定された。下記のURLから。



経営者JP 井上和幸社長 「履歴書が綺麗なエグゼクティブは仕事が出来る」 (2)

経営者ブートキャンプ第5期第4講ー8月4日(土)ーで井上和幸社長の3時間に及んだ特別講義の中から、「出来る経営者の人物特性を科学する」というコーナーを紹介する。4つの大きな特性が観察できる、というのだ。

2)対人関係力
「アサーティブ」、「チーム志向」が共通的なキーワード
3)思考力
「考える力、癖」、「理由を見つける」、「WHY型」
4)情緒的適応力
「成熟」、「安定」、「レジリエンス」

これらの要素を強化して、皆さんさあ、井上さんに誘って貰えるような経営幹部を目指してください。

井上社長の特別講義で他に特に参加者達が興味を持ったのは、
「チーム編成上での相互適正をどう分類、メジャーしてマッチングできるのか」
というもの。
(この項 終わり)

2012年8月5日日曜日

「山田修の戦略ブログ」 執筆900回達成

今日の、この記事が本ブログ開始以来901回目だ。

スタート以来、殆ど毎日アップし続けてきた。頻度としては日記みたいなモノだが、身辺雑事を書き散らすことなく、一貫して経営と経営者、そして経営戦略に関する記事に特化してきた。経営書、ビジネス書にほぼ限って執筆してきた「書評コーナー」も取り上げたのが150冊に近づこうとしている。今では多くの「書評ポータル」にもリストされ、「ビジネス書評ブログ」としての扱いもして貰っている。


この頃は固定の読者の方も増え、1日当たりのページ・ビュー数も確実に上がってきている。有り難いことだ。これからも本ブログではどのコーナーでも、借り物ではない、「経営体験とセオリーの融合」を標榜している私らしい、独自の視点・評論を提供していくつもりだ。ご愛読とご支援の程をお願いします。

経営者JP 井上和幸社長 「履歴書が綺麗なエグゼクティブは仕事が出来る」 (1)

経営者ブートキャンプ第5期第4講ー8月4日(土)ーで井上和幸社長が「人材マネジメントを科学する」と題して特別講義。井上社長は、現役の「日本一の社長ヘッドハンター」として知られている。

リクルート時代から積み上げてきたヒューマン・リソースに関する学識と現場からのデータの組み合わせによる講義はとても説得力に富み、参加者の経営者達から例を見ないほど質問が続いた。

3時間に及んだ特別講義の中から、「出来る経営者の人物特性を科学する」というコーナーを紹介する。4つの大きな特性が観察できる、というのだ。

1)物事への取り組み姿勢
「誠実」、「腰の軽さ」、「粘り」が共通的なキーワード

(後3つは次項で、エグゼクティブをめざす人必読)

2012年8月3日金曜日

ルネサス 赤尾泰社長 工場売却・閉鎖計画はてぬるい (2)


半導体大手のルネサス社の赤尾泰社長が、国内18工場うち最大10工場の売却あるいは閉鎖を発表した。この計画が曖昧なモノで、これでは実現性が大いに疑われる、と7月25日のブログ(下記URL)に書いた。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/07/blog-post_6489.html


私のブログ記事が目に止まったのか、8月2日に行われた記者会見で、赤尾社長は一転、「4工場は一年以内に売却」、そしてその他の幾つかの工場についても処分期限を示した。さらに、9月に実施するとしていた希望退職で人数が満たない場合は「整理解雇も否定しない」と踏み込んだ。

週を跨いでの変貌に感慨を覚えるが、まあ「過ちを改めるにはばかること無かれ」でよろしいのでは。私の経営指南では「ジグザク意思決定で行け」と言っている。赤尾社長にはいつか経営者ブートキャンプに参加して貰いたい。

2012年8月2日木曜日

2012年8月1日水曜日

幻惑の瞬間(とき)は続く

6月15日のブログで「田原総一朗氏 幻惑の瞬間(とき)」という記事を書いた。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/06/blog-post_15.html
「CATV局に出て知名度を上げろ、費用は5.8万円だ」という電話が掛かってきた。出かけてみると、電話を掛けてきたのとは別の人物が、「実は96万円だ」という。「田原総一朗氏も出た」という話だった。

今度は別の会社からメールが来て、「xxの選択」というTV番組に出ないか、と。
3.5分の枠をくれて5回オンエアするという。これも地上波局ではない。こちらのほうは、「コストが1千万円ほどかかる」と正直だ。

6月の話と構造が似ているので、何か繋がりがあるのではないかと感じた。2つの会社のサイトをよーく読み込んだら、経営者が同じ人だったんですね。それ以外は全く相互関係を謳っていない。

この番組は放送400回を迎えているという。1千万円を払って出演した少壮経営者やコンサルタントが何人いたのだろうか。この会社の経営者は優秀な人だと思う。money-makingという意味では。