2018年12月22日土曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(8)

 森谷氏が無給でパイオニアの経営に当たるというのは、それを自分はボランティアでやると宣言したわけだ。聞こえがいいかもしれないが、経営の責任への認識がプロフェッショナリズムと対極にあることを晒してしまっている。プロの対極とはアマチュアなので、森谷氏は自分が経営者として自信がないから「無給でやらせてください」ということになってしまったのだ。

 しかし、そんな経営者に率いられる従業員こそ、かわいそうだ。そもそも年俸がゼロとなる経営上の大きな瑕疵が森谷氏には見当たらない。6月に新社長として着任したのだから、ここに至るパイオニアの苦境に対して直接の経営責任を問われる立場にないのだ。

 企業経営には大きな責任も伴えば、チャレンジも迫られる。だからこそ、それに対して一般従業員よりも高い報酬が提供されるのだ。最高経営責任者が自らの報酬を作為的に操作決定したという点で、ゴーン氏と森谷氏は同罪だ。金額操作の方向が上に行ったか、下に行ったかの違いはあるが構造的には同じ出来事である。

 ベアリング傘下入りに際して、パイオニア側でそれを差配した森谷氏はどう身を処せばよかったのか。他の役員同様辞めればよかった、今からでも辞めればよい。ベアリング側は戸惑うだろうが、必ず次の世代のなかから頭角を現す幹部が出てくるはずだ。技術の蓄積があるパイオニアには、それをつくってきた優秀な社員の蓄積もあるはずだ。

 リストラなどに対する社員からの突き上げや反感を忖度したのだろう、あろうことか失敗もないのに自らの給与を返上するような根性のない経営者は、その席を降りたほうがいい。

(この項 終わり)

2018年12月21日金曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(7)


無給の社長など禁じ手ではないか


 森谷社長は、実はパイオニアで新任の社長である。今年の6月に常務から昇格したばかりである。新卒でパイオニアに入社して各部署を歴任したプロパー社員であり、創業家出身でもない。サラリーマン社長といってよいだろう。

 6月に新社長に昇格して最初の大仕事が、新卒から勤め上げてきたパイオニアを外国の投資ファンドに売り渡すこととなった。しかも、それを発表した7日の席では、社員3000人を削減することも発表した。そんななかで、プロパー役員のなかで自分だけが社長に居続ける。

 森谷社長はよほど寝覚めが悪い思いをしたのか、発表の席で「私の報酬はなくなる。貯金を取り崩しながら、会社の再成長をやり遂げたい」と吐露し、悲壮な覚悟を見せた。森谷氏の基本報酬は19年1月からゼロとなる。

 この決定はベアリングから押し付けられたものではなく、森谷氏が自分で選択したものと思われるが、それは経営者としてセンチメンタルに過ぎると私は思う。賛同できない。

 いやしくもパイオニアは年商3654億円、従業員数約2万人(いずれも18年3月期)を擁する名の通った大企業である。資本構成が変わるからといって、これだけの企業のトップが無給という例は少ない。

 他の例としては、日本航空を再生させた稲盛和夫前会長のケースがあった。しかし、稲盛氏は京セラの創業者であり稲盛財団の理事長で、その資産力は想像にかたくない。しかも同氏は仏教臨済宗で在家得度までしている宗教家だ。通常の経営者では及びもつかない奉仕と救済の意思を有していた。

 稲盛氏が日本航空会長に就任時も、私は「無報酬なんてとんでもない禁じ手だ」と評していた。企業の経営には大きな責任が伴い、集中的な没入が要求される。それをボランティアでやれてしまうのは、資産家で宗教家だった稲盛氏のみにできることで、その行動指針を他のあまねく経営者の模範としてはならないと思ったのだ。

 また、日産のゴーン前会長が報酬の未記載で逮捕されているが、公表されていた年報酬約10億円とほぼ同額を、先払い扱いとしていたと報じられている。不動産の提供や個人の投資損の会社への付け替えを図ったなどとも報じられているが、それらはさておき、あれだけの事業再生を成し遂げた経営者に年俸20億円がふさわしかったのかどうか、しっかり公表して市場や従業員の批判を受ければよかったのだ。

(この項 続く)

2018年12月20日木曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(6)

しかし、シャープやパイオニアのように技術特化が見られる製造会社の場合、外から乗り込んで行ってビジネスを立て直すことは難しい。日産をV字回復させたカルロス・ゴーン前会長にしても、同業他社での豊富な経営経験があったからこそ、「技術の日産」という大企業を切り回すことができた。

エレクトロニクスの特定領域でパイオニアの技術レベル、そしてポテンシャルは高いものと推定される。そしてその活用こそがパイオニアを再生するための肝となるはずだ。しかし多様で、まだシーズ(種)であろう技術要素を発掘し、評価する作業は、外部から乗り込む経営者には難しいことだろう。

 私の場合も、経営者を引退するまでに6つの会社を任されたが、開発志向の製造会社の場合は、進むべき技術分野の選定にはいつも苦慮したものである。だからベアリングは、パイオニアで他のプロパー役員は退任させた一方で森谷社長だけを残して、新体制でも采配を振るうことを許した、あるいはむしろベアリング側がそれを望んだと推察できる。

無給の社長など禁じ手ではないか


(この項 続く)

2018年12月19日水曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(5)

さて、せっかく買収した、それも100%子会社とした会社にベアリング側が新社長を送り込まないのはなぜだろう。

同じ電気メーカーでも、シャープの場合は親会社となった台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)から戴正呉氏が最初から新社長として送り込まれ、同社長の指揮のもと、V字回復を遂げている。

 一般的に投資ファンドがある事業会社に投資した場合、あるいは会社を入手した場合、ゴールとするのは「利益を出した上での売却」であり、再上場も含まれる。これを「投資の出口(エグジット)」という。

 利益率のよいエグジットを行うために、投資ファンドは入手した企業の企業価値を高めようとする。経営指導や支援もするし、適切と見れば経営者の送り込みも行うのが通常だ。

買収した事業会社がサービス産業やレストラン・チェーンなどのフード産業などの場合は、そのオペレーションの改善やコストカットにより業容を再生させることができる。送り込んだ新社長でも、その事業会社の事業構造を見て適切な手を打てることが多い。

 しかし、

(この項 続く)

2018年12月18日火曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(4)

投資ファンドはメーカーを経営できない


栄光と挫折を繰り返してきたパイオニアは、結局現時点ではキャッシュを生みだす基幹事業を喪失してしまった状況だ。

 7日の発表で森谷社長は、「地図やデータの組み合わせによるソリューション・ビジネスでの成功を目指す」とした。というのは、高精度なデジタル地図向けのデータベースを持つインクリメント・ピーという子会社があるからだ。この技術資産は、これから始まろうとしている自動車の自動運転に活用できる、確かにビジネスの可能性があるものと考えられる。

 しかし、インクリメント・ピーのビジネスが現在のパイオニアの財務に大きく貢献しているわけでもない。このような状況で、名門企業パイオニアは悔しくも膝を屈してベアリングの傘下に入る道を選ばざるを得なかったということだ。

 今回のファンドによる子会社化に伴って、パイオニアでは連結で約2万人いる従業員(非正規も含む)のうち、約3000人程度を削減するとした。生産や販売体制の見直しに加え、冒頭に記したように経営陣も刷新する。

 さて、せっかく買収した、

(この項 続く)

2018年12月17日月曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(3)

次にパイオニアが名を馳せたのは、カー・ナビゲーションである。市販品としては世界で最初にGPS対応のカーナビを世に送り出したのが90年のことだった。パイオニアのカーナビは90年代に「カロッツエリア」というブランドでマーケットをリードしたが、その後スマートフォン(スマホ)の普及により、カーナビ専用機全体の市況は不調となってきている。

 家電の王様、テレビの世界でもパイオニアはユニークなビジネスを展開した。すなわち、2000年代にプラズマ・テレビの大手メーカーとして松下電器産業と並んでその普及に挑んだのである。しかし、やがてプラズマ・テレビそのものが液晶テレビとの価格競争に敗れ、パイオニアもこの分野から09年に完全撤退した。

 歴史を振り返ってみると、パイオニアという企業はエレクトロニクスのいくつかの領域で尖がった技術を有していたが、それを最後まで世界でビジネス展開していく経営力は十分でなかった。そのため、他社による完全子会社化に至ってしまったのだ。

投資ファンドはメーカーを経営できない


(この項 続く)

2018年12月16日日曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(2)

勝ちきれなかった先駆者、パイオニア

パイオニアの創業は古く、伝統がある電気メーカーだ。1938年に福音商会電機製作所という社名で創業されたときはスピーカーのメーカーだった。戦後、ステレオの製造販売も始め、「スピーカーのパイオニア」としてそのオーディオ技術が評価されていた。オーディオ専業だった時代の61年に社名をパイオニアと変更した。

 パイオニア(先駆者)という社名にふさわしく、いくつかの分野で創出的なメーカーとしてマーケットをリードしてきた。80年代にはカラオケに使われるレーザー・ディスク(LD)で一世を風靡して、カラオケの普及に大いに貢献した。しかし、カラオケがオンラインで楽曲を呼び込むような時代がやってきて、スタンド・アロン機器としてのレーザー・ディスクはその使命を終えた。

 次にパイオニアが名を馳せたのは、

(この項 続く)

2018年12月15日土曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(1)

経営再建中のパイオニアが12月7日に、アジア企業に投資するアジア系投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの傘下に入ると発表した。

ベアリングは総額1020億円で買収してパイオニアを完全子会社とする。これによりパイオニアは東京証券取引所での上場を廃止する。

 今回の買収に伴い、パイオニアは経営陣も一新し、森谷浩一(もりや こういち)社長と社外取締役2人を除く現取締役は辞任し、ベアリングから取締役が送り込まれる。

森谷社長は無給になると発表されたが、オーナー経営者でもないのに無給で留任するとは、むしろ経営倫理的に問題があると私は考える。森谷氏も退任するのが適当だ。

勝ちきれなかった先駆者、パイオニア


(この項 続く)

2018年12月14日金曜日

水谷栄二先生の13回忌がやってくる

昨夕、九段クラブの忘年会に出席した。
九段クラブは国際関係学院の主任講師をなさっていた水谷栄二先生の教え子により創設され、40年に渡って自主的な勉強、研鑽を続けてきた。

昨夕の集まりで、水谷先生の命日、1月30日が13回忌となることから、ぜひ「偲ぶ会」を催そうということになった。

経営における私の師、メンターは水谷先生だ。教えをいただいたのが40年前に遡る。「水谷先生の最初の言語はフランス語で、次に英語を習得し、日本語は成人した後からの習得だ」などの思い出を話すうちに、あのとてつもない知識人を思い浮かべる。

多様な分野で成功してきた九段クラブのメンバーの今日は、先生の薫陶によるところが多い。

私も水谷チルドレンの一人だった。

2018年12月4日火曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(8)

松本氏がカルビーを退任すると報道されたその夜に、瀬戸氏は自ら電話を入れたと伝えられる。当初、松本氏をCOOとして迎えたのは、85社を見てほしい、との希望だったのだろう。しかし、いかにプロ経営者だとしても、それを自ら執行していくのは不可能だ。プロ経営者ができるのは、85社の経営を監督、指導する「仕組みをつくる」ことだ。

 着任して早々に10社以上の子会社の社員たちと交流会を持ったという松本氏は、すぐにそのことに気がついたのだろう。直接統治という職制ではない、「構造改革担当」の代表取締役という肩書きに収まった。

 ついでに言えば、松本氏と経営陣との意見の相違があったと報道された。松本氏は「私と瀬戸さんが対立したことは一切ない」としているが、瀬戸社長を取り巻く既存の幹部、役員とは相克があったはずだ。今までの路線にストップをかけられる、つまり自分たちのやってきたことを否定されるわけだから、対立がないはずはない。しかし、そんな動きは外部から着任するプロ経営者にとっては当たり前の「反対勢力」なわけだ。

 瀬戸社長の松本氏への信任は厚いように見える。松本氏は外部での活動もあり、フルタイムでRIZAPの経営に没入しているわけでもないらしい。そういうことなら、いっそう現場を預かるCOOより現在の肩書きのほうが寄与しやすいのだろう。

 松本氏や私のような世代、経営者としての先輩から見ると、瀬戸氏は好感あふれる若手実業家だ。決算発表会で自らの責任を語るとき、真摯な表情を見せたし、その後の社内説明会では涙を流したという。人間としての率直さ、感受性をベースとして人を巻き込んできたのが瀬戸氏の経営技法、能力の一つと見た。

 松本氏の助言により、RIZAPは新しいM&Aを当面凍結するという。「自己投資産業グローバルNo.1へ」という同社のグループ・ビジョンはわかりやすく、すばらしい方向付けだ。願わくば、今回の方針転換により暫時の雌伏の時を経て、近い将来、快進撃を再開してほしいものだ。

(この項 終わり)

2018年12月3日月曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(11)

ゼブラからの回答書には次のような記載もあった。

「現状の価格設定で、今以上にペン先を強度を持たせることが難しいのも正直なところでございます。」

正直なところはいいが、メーカーとしての本音としての
「安いのだからがまんしろ」という論理は通らないだろう。

確かに、本換え芯を私が購入した価格は一本60円弱だった。しかし、値段が幾らのものにせよ、不良率が半分を超えたというのは、市場に出す商品としては失格以外の何者でもない。

私の場合はネット通販で購入しているので、本記事に記載してきたような購入歴、不良歴がさかのぼって検証できた。
しかし普通の購入者は皆泣き寝入りしていることと思う。私一人の不満の後ろにはたぶん何万人という声無き不都合を強要されている消費者がいるはずだ。

また、使用法に問題がある、留意しなければならないというのなら、商品自体にいわゆる「ネガティブ表記」が成されなければならない。ゼブラが不都合を認識していて、それを怠っているわけだから、大手メーカーとして責任ある対応とは言えない。

ゼブラの猛省をうながす。

(この項 とりあえず終わり、もしかして再開)

2018年12月2日日曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(7)

おもちゃ箱M&A路線の修正へ、松本氏が助言


 業績の下方修正は、11月14日に開かれたRIZAPの「2019年3月期 第2四半期決算説明会」で行われたのだが、壇上には瀬戸健社長と並んで、松本晃氏が代表取締役構造改革担当の肩書きで登壇した。

 松本氏はカルビー会長兼CEOを退任するや、瀬戸社長の懇請で今年の6月にRIZAPのCOO(最高執行責任者)に着任し、この10月には構造改革担当という肩書きとなった。瀬戸社長はまだ40歳で若手経営者だとすれば、松本氏は71歳のベテランプロ経営者という対照的なコンビである。決算説明会でも、松本氏は創業社長である瀬戸氏を前に臆することなく、「この会社はおもちゃ箱のようだと思っていたが、壊れているおもちゃも結構ある。それは直さなければならない」と、苦言を呈していた。

 私が瀬戸氏の経営者としての資質を評価できるのは、その人柄の良さと、今回示した「自分の限界を知る」という能力だ。勢いのままに85社も傘下に収めて「グループ経営」を気取ったのはいいが、気がついてみればそんなにたくさんの異業種の会社を経営、あるいは指導していく能力が自社のなかにはない、あるいは大きく足りないということに気がついたのだろう。

(この項 続く)

2018年12月1日土曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(6)

もう一つ私が疑問に思うのが、85社も急激に買ってしまって、個々の会社の財務状態をしっかり検討したのか、という点である。補完性や相乗効果があるに越したことはないが、そうでなくても事業改善の見通しがなくてはならなかった。

 私が親しくしている大手のM&A仲介会社がある。そこの役員が昨年、「RIZAPには当社からも10社以上、仲介実績がある」と打ち明けていた。M&A仲介会社の成功手数料は莫大で、それは社員一人当たりの平均年収が近年常にベスト3にランクされていることからもよくわかる。

 瀬戸氏はRIZAPボディメイクの大きな成功に高揚して、気が大きくなりすぎた嫌いはなかったのだろうか。ここ数年、多くのM&A仲介会社が瀬戸詣でを繰り返してきた。それらのM&A仲介会社の「お勧め」――それはある場合「仲人口」のようなことがある――に安易に乗りすぎた嫌いはなかっただろうか、というのが私の懸念である。ババをつかまされたことが、どれだけあったのだろうか。

おもちゃ箱M&A路線の修正へ、松本氏が助言



(この項 続く)