2015年11月30日月曜日

父娘戦争に勝利した大塚久美子社長の正念場(2)

とはいえ、高級路線でないとすれば大塚家具はどこを目指していくのか。手の届く中級家具を揃える、というポジショニングで活路が見いだせるのだろうか。

経営学者マイケル・ポーターの三大戦略でいうと、「コスト・リーダーシップ戦略点」に位置するニトリとイケアは成功している。一方、「差別化戦略点」に位置取りしたのが高級路線のカッシーナだ。これも成功している。ただし、対象が富裕層となるので店舗数は4つと限定的に展開している。

 ポーターの三大戦略の3つ目は、「どちらかに特化せよ」というものなので、中級路線というのはまずいよ、ということになる。島忠がこの路線と考えることができるし、2015年8月期の「家具・ホームファッション」セグメントの年商が464億円と、ほぼ大塚家具と同規模だ。セグメント別の利益額を同社は公表していないが、年商額では7%近く前年から落としている。

(この項 続く)

2015年11月29日日曜日

父娘戦争に勝利した大塚久美子社長の正念場(1)

大塚家具は11月7日から、全16店で展示する約34万点の商品を対象に売りつくしセールを始めた。最大で価格を50パーセント下げているという。

4月の「お詫びセール」でも絶好調の客足を集め話題となったが、今回も多くの客が訪れて盛況だ。

 今回のセールは、「いったん死んでよみがえることに近い」(11月4日の大塚久美子社長発表会見)ということで、展示している高級家具をすべて売り払い、全店舗を新年から順次改装して、高級品路線から決別するという。いわば戦略の大転換となる。

大塚社長は、今回のセールを「古い大塚家具の終わりの始まり」と話し、創業者である父・大塚勝久氏が築き上げたビジネスモデルとの決別を宣言した。

(この項 続く)

2015年11月28日土曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』日経本紙に広告が


日本経済新聞11月27日(金)の朝刊、11面に広告が掲載された。

「アマゾン ベストセラー ランキング 企業経営部門 第1位 (11/20調べ)」
と。

2015年11月27日金曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(6)

上場は果たしていないものの、キュービーネットの業績は悪くない。15年6月期の年商は150億円で前年比8%の伸びで、利益もしっかり出ている。年商でみると、阪南理美容社(365億円)、アルテサロン(168億円)に次ぐ業界3位である。ちなみに、このランクからもキュービーネットはブルー・オーシャンの事例ではないことがわかる。

「3年後までには250店を増やし、国内600店、海外150店としたい」(同社松本修管理本部長)とし、同業上位他社より海外志向が強い。「ビジネス・モデル的には創業時から変わっていない」とも松本氏はしているが、「北野社長体制で引き続き力を入れていくのが、ヒト、特にスタイリストの養成で、サービス業で人手不足の時代となっていることから、ヒトの確保と養成が当社の成長を決める」との認識を示した。

 国内でも成長余地はあるだろうが、日本発祥のサービス形態が海外でもどれだけ大きく育っていけるのか、私はそちらのほうに注目していきたい。

(この項 終わり)

2015年11月26日木曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(5)

これは、チャン・キム氏らが主張する「ブルー・オーシャン」的な成り行きではない。戦略セオリー的には、単純に「イノベーター」とそれに追随する「フォロワー」と説明できる。「フォロワー」が出現すると、先行した「イノベーター」のほうがそのビジネス・モデルではデファクト・スタンダード(事実上の標準)としての認知を高めるので、有利なポジションを強化できるという現象だ。

転変するQBハウスの資本



 キュービーネットは投資資本の間を転々としてきた。06年に小西氏から同社の74%株式をオリックスが30億円で購入し、同氏はこれを機に退任した。オリックスは78%まで取得した後、10年に至りジャフコに約100億円で売却し、ジャフコは残りの株式も取得した。14年末に今度は投資ファンドのインテグラルがジャフコから購入するのだが、その時の価格がまた約100億円だとされる。インテグラルは当時スカイマーク救済に奔走していたのだが、一方でキュービーネットの経営も手がけていたわけだ。

 気になるのは、ジャフコが取得した価格からインテグラルに転売された価格が増大していないことだ。投資ファンドがエグジットする場合、ハイ・リターンを求めるのが通常なので相対での譲渡で企業価値の向上が認められなかった、ということになる。また、オリックスもジャフコもIPO(上場)というエグジットの道を選択せず、他ファンドへの2次譲渡としてしまった。

(この項 続く)

2015年11月25日水曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(4)

私は同セオリーを拙著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版/13年刊)で、「青い鳥幻想を広げた最悪のセオリー」と批判した。そしてその年、私のセミナーで『ブルー・オーシャン戦略』が称揚した企業事例の「その後」を検証してもらったら、唯一「しっかり生き残っています」と報告されたのがQBハウスだった。

 そして今年9月に至り、『新版ブルー・オーシャン戦略』が刊行され、それは私のような立場からの論難への言い訳に満ち満ちている大冊となっている。そこで鬼の首を取ったかのように称揚されているのが、QBハウスの「その後“も”躍進」事例だ。

 原書で著者たちが掲げた「ブルー・オーシャン」は、「競争のない市場空間を切り開き」、その状態は10-15年続くという荒唐無稽な桃源郷だった。

QBハウスに競争、競合がないわけではない。前述したプラージュでは1400円で「ヘア・カット+シャンプー」の価格を押し出している。私の自宅最寄り駅にもQBハウスがあるが、駅周辺の理髪店は1500円~1800円でシャンプーと顔剃りも施される総合調髪を提供している。つまり、QBハウスが出店した当該地域市場の価格を引き下げているのだ。

(この項 続く)

2015年11月24日火曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(3)

真骨頂が、9月に発表された15年度「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」第3回調査(サービス産業生産性協議会)の生活関連サービス部門で1位に輝いたことだろう。

 この調査について実は私は、7月に疑問を投げかけた。

「飲食店部門の顧客満足度で、しゃぶしゃぶの木曽路が7位でモスバーガーが1位というのは、無理がある。来店客数に絶対的な差があるからだ」(7月12日付本連載記事「モスが顧客満足度1位なんて本当か?」

 しかし、今回のQBハウス1位には文句の付けようがない。というのは、2位となったのが昨年1位だったプラージュ(阪南理美容株式会社)という、こちらは全国に650店を展開する日本最大規模の理美容店チェーンだからだ。

世界を目指すブルー・オーシャンモデルか


 カット専業としてユニークな業態を確立したQBハウスは、『ブルー・オーシャン戦略』(W・チャン・キム他/ランダムハウス講談社/05年刊)に取り上げられた。

2015年11月23日月曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(2)

「10分間でヘアカットだけ」「1000円」というビジネス・モデルは創業者の小西國義氏が編み出した。現社長の北野泰男氏は2005年に入社、前職は日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)というバンカーだった。09年に社長に就任している。

「私自身は技術者ではなく、完全にビジネスマネジメントの面からこの事業に携わっている」(「季刊MS&コンサルティング 2013年夏号」)と、プロ経営者として自負する北野社長はスタイリストと顧客、両方の満足に対してさまざまな手を打ってきた。「スタイリスト」とは、理容技術者に対する同社呼称だ。

 社員満足を向上させるには、スタイリストをプロの技術者として尊重し、育成するということだった。前述した私がお世話になった女性のように手荒れなどの問題を抱えていた理容師も活躍できるし、国家資格を取ったのに現場に出ていなかった理容師には、1日8時間のカットスクールを有給で講習している。年に1度の社内イベント「QBカットコンテスト」では、全国2000人以上の頂点を目指してスタイリストたちがカット技術を競う。

 これらの施策の結果、以前は50%だったターンオーバー(離職率)が12%までに下がったという(4月6日付キャリコネニュース記事より)。

(この項 続く)

2015年11月22日日曜日

誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…(1)

先日馴染みの床屋さんに出かけたところ、いつもいた女性理容師さんの姿が見えない。ご主人に尋ねたら、少し寂しげに「QBハウスに勤めました」という。「20年選手で腕も確かだったのですが、シャンプーで手がかぶれるのがひどくなって」という。

「10分カット1000円(税込み1080円)」を売りにしているQBハウスなら、カットだけなので手が荒れるようなこともないという。私の白髪染めなどを達者にこなしてくれていた女性の転出が少し意外だった。というのは、なんとなく「1000円カットのQBハウスはスピードこそ速いものの、技術的にはどうなのか」という先入観があったからだ。

新社長が技術尊重に舵を切った

QBハウスを運営するキュービーネット社は1995年に創立されて、現在国内に489店舗、海外に100店舗を展開している。来店客数は年間1500万人を越えるという、理容美容業界では大手にのし上がった。

(この項 続く)

広島 幹部研修 第3講 

広島県は宮島で「法人版経営者ブートキャンプ」(幹部研修)の第3講。

戦略カードで、本日は「解決策」のステップ。6人が30分ずつ発表し、互いに助言し合う。

他に、課題図書のレビューと、「組織戦略」の講義。

ステップはいよいよ発表用ファイルの作成に入る。私からそれぞれの参加者が個別メールで添削を受ける。戦略発表会は12月に会長、社長を招いて行われる。

2015年11月20日金曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(6)

さて、オーパス・ワンの話に戻ろう。バスが着くと、若い日本人の女性が出迎えてくれた。特別試飲室に導かれ、試飲グラスで提供されたのが、2012年ヴィンテージだ。

「今月(10月)に販売開始したばかりです」という。カリフォルニアではブドウを完熟した状態で収穫するので、この短い期間にワインとしての熟成が進むという。ヨーロッパでは収穫が早いのでそうはいかないそうだ。

 サンフランシスコは、12年と13年に干ばつに悩まされた。しかし、雨不足はワイン用のブドウには絶好となる。12年のヴィンテージは果たして、近年最高の出来となったそうだ。

 テイスティングで陶然としている私に、「お求めになられた場合、日本に発送も致します」と勧めてくる。今や世界最高となったナパ・ワイン、そこで最高といわれるワイナリーで近年最上のヴィンテージ。横では1ダースものボトルを大人買いで申し込んでいる社長もいる。値段は……。

「ああ、買おうか買うまいか。この快楽をどうしよう。サンフランシスコを二度と訪れることはないだろうし」と、プライス・リストの前でグラスを手に私は悩み、立ちすくんだ。

(この項 終わり)

2015年11月19日木曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(5)

近代ビジネスになったナパのワイナリー経営

14年の国際ブドウ・ワイン機構の調査によると、アメリカはワインの消費量世界1位である。一方、生産量では世界第4位だった。圧倒的な消費(需要)に対して、世界最高評価となった地ワインの供給が少ないという構造だ。

 ビジネス的に大きなチャンスが目の前に広がっているので、製造適地であるカリフォルニアでのワイナリー活動はますます活発になってきている。しかし「ナパ・ワイン」を名乗るには制約があり、ナパで収穫されたブドウが85%以上使われていなければならない。

 辻本氏は、ワイナリーの経営に100億円以上を投じてきたといわれる。ナパ地区にある400のワイナリーは、投資案件としてみれば適当な金額範囲なのか、オーナーには企業家、弁護士、医師、通常の企業などが多い。ワイナリーが単純に農家、農業であるヨーロッパのそれとは運営の趣が違う。ワイナリーとしてのM&Aや、従事する技術者の引き抜きなども多い。

(この項 続く)

2015年11月18日水曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(4)

ブドウの大敵はフィロクセラというアブラムシで、実はヨーロッパのワインはこの虫のために19世紀末に壊滅的な打撃を受けている。実際、一度は壊滅したといっていいのだが、ブドウ種のほとんどがナパで栽培されていたので、その後はアメリカのブドウの木の上にヨーロッパ各地のブドウの木を接ぎ木するという方法で復活を果たし、さらにアブラムシ対策にもなったという。この対策法を発見したのもUCデービスだった。世界のワインを救った学校といえる。

 私が訪れたブドウ畑でも、ブドウの木の間に細い水道管が渡っているのを見た。

「以前はスプリンクラーから水を噴霧していたのですが、今ではこのパイプからそれぞれのブドウの木に必要な水をちょろちょろという感じで給水しています。水の使用量が3分の1減り、さらにこのパイプには必要に応じて肥料や病気防止の薬なども供給されています。そして、それらがすべてコンピュータ管理されています」

 このような説明を聞いて一驚した。ヨーロッパのワイナリーがかなわなくなったはずだ。今では、世界でワイン品評会があると上位10社のうち半分以上をカリフォルニア・ワインが占めるようになっている。

(この項 続く)

2015年11月17日火曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(3)

私が参加したツアーでは、特別にリクエストしているオーパス・ワンというワイナリーを訪問した。ここはカリフォルニア・ワインの父といわれたロバート・モンダヴィが開設したワイナリーで、現在もナパでトップ・クラスだ。

 モンダヴィで興味深いのは、彼が農民や醸造技術者ではなく、名門スタンフォード大で経営学を専攻したビジネス企業家だったということだろう。マーケティング的な手法でカリフォルニアのワインを世界中に知らしめた。ボルドーなど、ヨーロッパの産地では伝統的な運営形態が続けられているが、カリフォルニアでは近代的な企業ビジネスとして「経営」されるようになった。

栽培技術については、これもサンフランシスコ郊外にあるカリフォルニア大学デービス校(UCデービス)が深く関与している。UCデービスの農学部はブドウ栽培やワイン醸造について全米屈指、いや世界的な権威ともいえる。そこの教員たちがナパのワイナリーに現在でも足しげく通い、栽培などについて指導しているのである。

(この項 続く)

2015年11月16日月曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(2)

ヨーロッパを追いこしたワインの聖地ナパ

9月にKENZO ESTATEで食事して、「あさつゆ」の豊潤さに感心した私は、10月末にサンフランシスコを訪れた際に「一日ナパ・ワイナリー・ツアー」に参加した。

 

 ナパは、サンフランシスコの北に車で1時間ほどのカウンティ(郡)で、南北8km、東西48kmほどの広さだ。傾斜地にあるのでナパ・バレー(谷)とも呼ばれている。アメリカでのワインの生産の90%はカリフォルニア州に集中していて、なかでもナパには400を超すワイナリーがあるという。

 サンフランシスコも霧で有名だが、ナパも同様な気候で朝夕の寒暖差が激しく、雨量は少ない。これがワイン用のブドウの育成にぴったりだという。同地では19世紀からワインの醸造が始まっていたが、1976年のパリ万博でボルドーやブルゴーニュの名門ワイナリーを押さえて第1位となり名声を確立した。

(この項 続く)

 


2015年11月15日日曜日

カリフォルニア・ワイン、なぜ仏を凌駕し世界一?非常識なコンピュータ栽培&経営(1)

KENZO ESTATEというレストランが大阪にある。フレンチなのだが、板前もいて和食と競作した独自メニューがおもしろい。

しかし、ここは「ワインバー&ワインショップ」と名乗っている。というのは、アメリカでのワインの本場、カリフォルニア州ナパに同名のワイナリーを持っていて、そのフレンチ・レストランは、自社ワインを宣伝するアンテナ・ショップでもある。料理にワインを合わせるのではなく、KENZOワインに合った料理を提供するということらしい。

 ワイナリーは、オーナーである辻本憲三氏の名が付けられた。辻本氏は、ゲームソフトメーカー・カプコンの創業者で現会長兼CEO(最高経営責任者)だ。ナパからカプコンが撤退した跡地を個人で購入してワイナリーを始めたのが1990年代のことだった。KENZO ESTATEの「あさつゆ」が2011年以降数々の賞を獲得し、「幻のワイン」といった人気となっている。大阪などの同社レストランではもちろん提供されている。

(この項 続く)

経営者ブートキャンプから大手会社の社長が

経営者ブートキャンプ第12期は、11月14日(土)に第2講を持った。

三年前に参加したMさんは、大手外資の事業部長だったが、この秋社長に就任した。

1,500億円の年商、1,500人の社員、堂々たる大社長だ。12期も久しぶりに、というか社長になったので改めて全社戦略を策定したい、と参加してくれた。

今期も多士済々でおもしろい。

2015年11月14日土曜日

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(6)

競合の必要性


 私はしかし、同社のマーケットが拡大するために必要なのは、実は競合の出現なのではないかと考える。

フリューダイムは当該分野で24年もの長きにわたって独創的な地位を保ってきた。「直接の競合は今やいない」(ウォーシントンCEO)というのは、実はマーケットを切り開いてきた「イノベーター」(革新者)にとっては不幸なことなのだ。

「フォロワー」が出現して当該製品の価格を下げ、見込み顧客層に複数の企業が働きかけることにより、そのマーケットは真の成長期に入る。マーケットが成長期に入れば、最大の便益を得るのは先行していたイノベーターとなる、というのがマーケティングのセオリーだ。


 フリューダイムの機器やシステムは数々の特許に守られているという。しかし、マーケット拡大の可能性が大きいとなれば、どこからか競合は必ず現れ先行者の特許をくぐり抜ける。同社は15年度、第2四半期まで成長が鈍化するとみられている。そして一方で大型製品がリリースされた。今年、来年と同社が第2の成長期に入れるか、興味が持たれるステージとなってきた。

(この項 終わり)

2015年11月13日金曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』 販売開始!

 

『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディア・パブリッシング)が本日待望の発刊。

写真は新宿 紀伊國屋で平積みされている模様。マイケル・ポーターやクレイトン・クリステンセンに囲まれている。

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(5)

単一細胞レベルでのDNA解析のトップランナーであるフリューダイムのスター製品がC1システムであり、一度に800もの細胞を同時に解析でき、解析時間も大幅に短縮されたという。

その上位機種ポラリスがこの夏リリースされ、幅広い研究分野での大きな貢献が期待されている。しかし、ポラリスは高機能モデルだけあって、高価格となった。日本でのカタログ価格は7000万円となっている。

「これまでは、医学や生命科学の基礎的な研究にフリューダイムの機器が使われてきました。これからは、臨床医学などの分野などにまでシングル・セル解析が使われるように狙っています」(同)

 確かに、マーケットを大きく拡大する必要があるだろう。マーケット拡大の可能性がある分野としては、初めに掲げた予防医学、化粧品などもあるはずだ。

(この項 続く)

2015年11月12日木曜日

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(4)

ハイテク・ベンチャーを輩出するスタンフォード大学


「24年前に当社を設立したとき、私と共同創業者のステファン・クエイクはスタンフォード大学の学生でした。共に生命工学及び材料工学を専攻していました」(同)

 グーグルの創業ととても似た話ではないか。スタンフォードからは多くのベンチャーが生まれている。フリューダイム本社はスタンフォード大のすぐ近くに位置していて、クエイク氏は同大で生命工学の教授として研究を続けており、フリューダイムでは最高技術顧問を務めている。

「二人の組み合わせから、マイクロフルイディクス(微小流体技術)・テクノロジーが生まれ、当初はタンパク質結晶化の分析装置から始まったのです」(同)

 その技術が現在のIFC(集積流体回路)技術に発展したという。IFCの外観は、集積回路基板に見えるが、微小な流路の中で細胞を単一に分離し遺伝子解析に必要な反応までを自動的に行う。これがフリューダイムの独創技術だ。

 (この項 続く)

2015年11月11日水曜日

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(3)

従来は医療の基礎研究分野で多く使われており、日本では山中伸弥教授が率いる京都大学 iPS細胞研究所にも納入されているという。

「14年の売り上げは1億2000万ドル(約140億円)、ナスダックに上場した10年が3400万ドルだったので、毎年30%以上伸びてきました」(同)

『マイクロ流体の世界市場の将来展望(2020年)』(Global Information)によれば、「医療向けマイクロフルイディクス・デバイスの市場規模は、2014年には25億米ドルに達したと推計されている」ため、同市場全体で同社が「ライオンズ・シェア」(圧倒的なシェア)を握っているということではなく、あくまで単一細胞解析というトップ・ニッチ市場で独壇場だということだ。この市場全体では20年代まで2桁台の成長を続けると見られている。

「社員数は世界に500名ほどで、本社のほかはヨーロッパ、シンガポール、カナダ、日本が大きな拠点です」(同)

 その500名の内、100名以上が博士号を持っているという、まさにハイテク・ベンチャーの典型企業だ。同社は実は上場以来、経常利益ベースでは黒字を出していない。ちょうどアマゾンの初期の状況と似ている。企業としての可能性が評価されるのがアメリカということだろう。

(この項 続く)

2015年11月10日火曜日

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(2)

あ人の遺伝子情報に関する新しいビジネスがすでに始まっている。肌老化遺伝子検査ではドクターシーラボ、DHC、フラコラ、H&BPなどだ。病気にかかるリスクや体質、性格などを知ることができるとする遺伝子検査ではジーンクエスト、ディー・エヌ・エー、グーグル、ヤフー、ファンケルなどが参入している。検査料は1~5万円台と各社で異なる。

 これらの遺伝子関連ビジネスは、これまで行われてきた基礎研究での知見を基に広がりつつある新たな分野である。この基礎研究分野の発展は、さまざまな先端技術を持つ企業の貢献なくしては語れないが、現在注目を集めているのがフリューダイムという会社だ。遺伝子を分析する機器のメーカーである。


 私は10月に米サンフランシスコ郊外にある同社を訪問して、ガイウス・ウォーシントンCEO(最高経営責任者)と話す機会を得た。DNAを高精度かつ効果的に分析するには、組織標本を単細胞化した上で解析するというステップがある。同社がこの分野でデファクト・スタンダードだという。

「現在、シングル・セル(単一細胞)レベルでの遺伝子解析を行う機器やシステムを提供する企業としては、当社に競合はありません。単一細胞ごとでの分析は、例えばがんの発症メカニズムの解析や悪性診断などではとても有効な方法となります」(ウォーシントンCEO)

(この項 続く)

2015年11月9日月曜日

遺伝子解析、本格普及始まる 個々人の病気予測やダイエット・美容にも効果的(1)

IFC(集積流体回路)
女優アンジェリーナ・ジョリーが健康なのに両乳房の切除手術を受けたのは、自らの遺伝子解析により乳がんのリスクが高いと知ったからだ。

 ヒトの太り方には遺伝子により3つの類型があることがわかっている。洋梨型肥満、リンゴ型肥満、バナナ型肥満だ。これらの肥満類型は、実は糖代謝、脂質代謝、タンパク質吸収に関連する3つの遺伝子の組み合わせによって決定される。

これらの遺伝子について自分の情報を知れば、効果的なダイエット法を選択できる。また、美容の分野でも、肌の状態は実は個々人の遺伝子によって大きく異なる。例えばコラーゲンを分解するmmpI遺伝子が変異してしまうとシワができやすくなる。

遺伝子解析サービスというユニーク・ビジネス

(この項 続く)



2015年11月8日日曜日

東洋ゴムは反社会的勢力である(5)

東洋ゴムではデータ偽装の発覚が2回目となって、今年7月に山本卓司社長らが引責辞任したのは当然といえる。それに続いての3回目なので、もはや経営陣の退陣では責任を取ったということにはならないだろう。

 私の見解では、同社は社会に危険や害を成す製品を流布させた、しかもそれを知っていて隠蔽した。そんな市民に敵対する企業は速やかに解散して、遺留財産はお詫びのために社会福祉団体にすべて寄付するのがいいだろう。

「ばれなければいい、誰かに迷惑がかかっても仕方がない」という行為が3回も繰り返されたというのは、それが染みこんだ企業文化だからだ。「問題となっているのは一部の行為で、全部をそう見ないでほしい」というのは誤りで、そんな企業を許すべきでない。2回目、3回目のデータ改竄が行われたとされる明石工場を閉鎖することなどで、全社的に改善されるはずがない。

 ぜひ消費者運動によって、同社製品の不買運動をしたり、行政が購買停止、あるいは長期の入札停止などして社会的懲罰を与えるべきだと私は考える。タイヤなら、ほかのメーカーのものを買えば済むことだ。

(この項 終わり)

2015年11月7日土曜日

東洋ゴムは反社会的勢力である(4)

アメリカなら刑務所行き



 01年にアメリカで倒産したエンロンの事件では、少なくとも8人の役職者が収監された。決算を粉飾して投資家を欺き損害を与え、最終的には倒産させてしまった事件だ。これは経済事案で、今年問題となった東芝の粉飾類似事件はエンロン事件と構造も似ているし、悪質性も似ている。

 エンロンや東芝などの事件に比べれば、東洋ゴムの場合は直接市民の健康や安全に危害を加える恐れがあり、害悪度が高く、罪が重いのだ。

 日本はもちろん法治国家なので、対応する法規が事前に存在しなければ責任者を刑事罰に問うことはできない。東洋ゴムの品質責任者や経営者を、未必の故意で立件することも難しいのだろう。現に三菱自動車は2000年、04年とリコール隠しを繰り返し、当該する問題を抱えていた同社製自動車による死亡事故さえ起きていたのに、企業としてはいまだに存続してしまっている。

(この項 続く)

2015年11月6日金曜日

東洋ゴムは反社会的勢力である(3)

国外に目を転じると、排ガス規制で悪質なデータ隠蔽行為が発覚した独VWには、米当局から2兆円以上の制裁金を課せられる可能性があると報道されている。

VWのディーゼル車は世界で1100万台以上も販売され、今回の事態でEUだけでも800万台がリコールされるとされる。さらに、購入したオーナーからの提訴、あるいは規制逃れにより環境汚染を引き起こしたことなどに関する提訴が多数予想される。

 09年にアメリカで発生した「意図せぬ急加速問題」でトヨタ自動車は、14年に米司法省へ12億ドル(当時約1200億円)の和解金を支払った。これは、トヨタの問題が悪意や意図的でなかったからそれで済んだのである。VWの場合は、その意図性からの反社会性が強く糾弾され、この世界最大の自動車メーカーの倒産の事態まで懸念されている。

(この項 続く)

『間違いだらけのビジネス戦略』 いよいよ見本刷り入手!

11月13日の刊行日が来週となり、本日クロスメディアパブリッシング社殿より見本刷りが送付されてきた。

第一印象は、「外観が綺麗で手触りがよい」。保持、所有するのが嬉しく誇らしい。

内容は、、、おもしろい。各記事が適当に短く読みやすいし。戦略セオリーが随所に散りばられ、少し高級なビジネス評論集となった。かといって、そんなに固くない。

何と言っても、読者が必ず知っている著名企業も多数俎上に乗せたので、読後に痛快感が残るのではないか。

いよいよ来週だ。

2015年11月5日木曜日

東洋ゴムは反社会的勢力である(2)

同社にはしかし、恥を知るだけではなく市場から退出してほしいと筆者は願う、いや要求する。というのは、同社が繰り返してきたのは単にビジネス上の誤りではなく、社会や市民に対して危険や被害を与える社会毀損行為だからだ。

同社の欺瞞行為(不祥事とは言わない)は顧客や市場を含む社会に危険をもたらし、最終的には私たちの安全を脅かしたということだ。そしてそれを繰り返した。このような社会に対して敵対的な、つまり反社会勢力の存在を許すべきではない。

社会への敵対行為の代償

一方、三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区の大型マンションの1棟が傾いた問題に対する旭化成の対応は対照的だ。同社は16日、子会社の旭化成建材が問題のマンションと同様に基礎工事に関わった物件を過去10年にさかのぼって調査する、と発表した。

 旭化成は、住宅や建材事業で「へーベル」をブランドとして展開している。このような社会敵対事件が巻き起こすペナルティの大きさを認識しているのだろう。東洋ゴムより速やかな対応だ。

(この項 続く)

2015年11月4日水曜日

東洋ゴムは反社会的勢力である(1)

洋の東西で大企業が顧客や社会を欺いた事件が連発している。

 東洋ゴム工業は10月14日に、検査データを改竄するなどして8万7000個あまりの製品を出荷していたと発表した。船のエンジンや鉄道車両、それに産業機械の振動を小さくするために使われる防振ゴムという製品である。

 東洋ゴムでは2007年に防火用断熱パネルの性能偽装が発覚。今年に入ってからは建築用免震ゴムのデータ改竄が明らかとなった。前者は住宅や建物の火災時の安全性を、後者はマンションやビルの耐震性能を損なうもので、災害時に人身に直接危害を発生させる危険がある。

 同社で非難されるべきは、製品のデータ改竄の重大事件がこれで3回目だということだ。当該製品を販売担当している東洋ゴム化工品販売のサイトには「人の暮らしに尽くします。モットーは誠心誠意。」とあったのだが、恥ずかしくなったのか本稿執筆時にはその表現が見当たらない。

(この項 続く)

2015年11月3日火曜日

経営者ブートキャンプ12期 堂々の発進

経営者ブートキャンプの12期が始まった。10月31日(土)に第1講が開講。

今期も満員で若干増席しての船出。いつもながらのことだが、今期も多士済々の面々がそろった。前期からなどの再受講生も何人もいる。

これから3月の戦略発表会に向けて皆さんに精進して貰う。どんな戦略が仕上がってくるか、とても楽しみだ。

2015年11月2日月曜日

甘ったれるな新日本プロレス!サーカス化&世界進出を目指せ!選手を海外貸出すべし(6)

ところが、このごろの大会を見ていると、「選手が多すぎる」のだ。3人タッグは当たり前で、4人タッグも珍しくない。全7~9試合の内に3人タッグ以上が4~5試合も組まれている。選手たちは試合で自分の出番を確保するのに汲々としている有様だ。さらに一部の選手は「鈴木軍」というチームを組まされて、別団体NOAHに出向させられている。


 日本という狭いマーケットにおいて、新日本プロレスでは71人もの選手が登録している(選手名鑑より)。私の意見では、常時半分以上を海外の団体に貸し出してブッキング料を計上する。一方、日本というホームマーケットでは飢餓感を演出できる。現在は過剰感しかない。

 あるいはWWEのように、興業のブランドを複数立ち上げる。プロ野球でいえば、セ・リーグとパ・リーグを創るようなものだ。サーカスのシルク・ドゥ・ソレイユでは常時世界中で複数の公演を行っている。プロレスのビジネス形態もサーカスに似ている。

(この項 終わり)

2015年11月1日日曜日

甘ったれるな新日本プロレス!サーカス化&世界進出を目指せ!選手を海外貸出すべし(5)

有料サイトで勝負


 冒頭の試合を私は、インターネットの有料サイト「新日本プロレスワールド」で視聴した。「過去45年間の映像見放題」と謳っているこのサイトは月額999円だ。現在の会員数は約3万人に達したとされる。

ところがWWEの有料サイト「WWEネットワーク」の会員数は120万人とされ、木谷氏は「一番の脅威だ」と認識して、「3万人では少なすぎる、20万人だったら、そこだけで大会チケットは全部売れるかもしれない」と、ネット視聴に懸けていく戦略を語っている(前掲記事より)。

 木谷氏が目指しているところは、「マーケティング4P」的にはPlace(流通チャネル)重視の戦略だが、今回はマーチャンダイジング(商品構成)の観点から提言したい。
 私は半世紀以上に亘るプロレスファンだ。世紀を越えて振り返ってみても、現在の新日プロレスの選手たちのレベルは大したものだ。毎試合飽きもせずに楽しんでいる。

 (この項 続く)