2013年10月31日木曜日

『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君達へ』K.クリステンセン他 書評184(1)

翔泳社、2012年刊。HBS看板教授だったクレイトン・クリステンセンと他2者の共著。

クリステンセン『イノベーションのDNA』(拙ブログ書評182)にとても感心したので、同教授の最新書をと、求めた。

さらなる経営学の最新知見を期待して取り寄せたら、これは著者の個人的なエッセーだった。個人的なエッセーに他に二人の共著者というのも不思議な構成だが、他二人は編集協力者的な存在らしい。しかし、それを「共著者」として表に出したところにクリステンセンの誠実が偲ばれる。クリステンセンへの好感、信頼は、本書の内容によってさらに高まる。それは驚くほどだ。

経営書ではないが、経営者に向けて書かれた本として、本書はとても考えさせる。それは、、、

(この項 続く)

マーケティングを技術営業に講義

経営指導をしている会社で、営業職の皆さんにマーケティングの講義を行った。

B-to-Bのサービス会社で、素材加工をしている。営業職も全員理系。技術職や現場との人事交流もある。文系出身だったり、ましてや経営学部出の人はいない。

10名ほどの人たちに、少し時間が掛かったのが、セグメント、ポジショニング、ターゲティングの概念説明だったかな。しかし皆さん頭はいいし、熱心なので理論的な習得は不得手ではない。2回x2時間でほぼマーケティングの基本的な考えを伝授したつもりだ。

2013年10月26日土曜日

りそな総研で部長セミナー

社長の右腕になる!『部長の指導力・行動力』強化セミナー」を10月25日(金)実施。

終了して、りそな総研の役員の方からご挨拶を頂いた。その折、私が昨年指導した都内流通業企業のその後についてお話しを頂いた。

その会社は同族企業で、専務さんが社長に昇格する前に経営者指導(経営指導ではなく)を4ヶ月に渡って担当させて貰った。いわば「社長の家庭教師」といったプログラムを1対1で展開させて貰ったユニークなものだった。

依頼をしてくれたりそな総研のその役員の方が、その事例をよく覚えていてくれて、評価してくれた。報われた気がして大変嬉しかった。

経営者ブートキャンプ第8期 開始

経営者ブートキャンプの第8期が本日キックオフした。

再受講の希望者が多く、新規受講と同数、両方で合計14名。

毎期地方から通ってくれる経営者もいるが、今期は青森市から新幹線で毎回通うという方がいる。

参加者のメンツは今期もバライティに富み、創業経営者、外資の経営幹部、コンサルタント、大手会社の事業部長など。名前が知られている会社の幹部も数名。

自己・自社紹介を昼間やってもらい、多くの方と夜の懇親会に流れた。今期も興味のあるバックグラウンド、多くの業界の有識者が集まってくれた。意欲も当然高い。おもしろい半年間がまた始まる。

2013年10月24日木曜日

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(6) 吼える破産経営者

坂本幸雄前社長が、中小企業などのオーナー社長だったとしたら、倒産後に本書に見るように声高に他の経営者に助言するような余裕は無かっただろう。いや、ダイエー中内功創業者の例にあるように、私財を全て差し出されるようなことはこの世に多い(というか圧倒的多数である)。

「エルピーダメモリの社長に就任して以来、この10年9ヶ月は1日も休まずに必死で働いてきました。」(p1)
ーーーそして4,500億円という巨額の債務を累積させて倒産させた。

ちなみに、今年のオレオレ詐欺の年間被害総額は400億円を超える勢いで、大きな社会問題として取り上げられている。坂本氏は勿論クリミナル(犯罪者)ではないが、社会に迷惑を掛けた金額で考えれば、「一人でその10倍以上」というパフォーマンスの良さだ。

同氏は現在、半導体業界でコンサルタントとして活動なさっているという。更正法適用により減額されたり塩漬けされた金額の大きさからその責任を考えれば、蟄居して襟を正しているくらいの矜持があって良いのではないか。

(この項 終わり)

2013年10月22日火曜日

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(5) 吼える破産経営者

エルピーダ社が更正法適用申請に至った原因として、坂本氏は大きく二つを挙げている。

1.メインバンクを作らなかった。その結果絶対的な債権者ではなかった政府投資銀行から、提携先を見つけるよう期限付きで突きつけられた。

2.対ドル80円にまでなった円高下での日本国内生産。

2番から先に指摘すると、本書によれば実際は台湾の工場で生産を行っている。世界最大のDRAM工場であるレックスチップ・エレクトロニクス社を合弁で2006年に設立、稼働させたと。国際生産を大規模で行っていた以上、国際的な為替の変動に対抗できるような手を打てたはずで、それが国際的経営者というべきかと思う。

1番について言っても、金融機関は彼らなりの行動規範があるので、それを認識して対応するか、しっかりしたCFOを置くなど対処すべきだった。坂本氏がもし中小企業のオーナー経営者だったとしたら、、、

(この項 もう1回)

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(4) 吼える破産経営者

本書は、著者坂本氏からの助言に満ちている。例えば、

「日本企業のいらないものの一つが、この経営企画部門だと思います。」(p76)

「日本の電機メーカーの弱体化がいわれていますが、その大きな原因は、この事業範囲の広げすぎに有ると思います。」(p77)

「選択と集中とは(略)自分たちが将来、必要としない事業を、出来るだけ高い値段で他社に売り、その資金を使ってコア事業をよりいっそう強化することです。」(p80)

「死活的に重要な事はそんなに多くない。ポイントさえ押さえておけば大丈夫。」(p83)

など、枚挙にいとまがない。著者のこれらの助言に従って経営すれば、それらの会社は成功するということなのだろう。本書は、だから著者のサクセス・ストーリーなのだ!?
しかし、もちろん、、、

(この項 続く)

2013年10月21日月曜日

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(3) 吼える破産経営者

坂本氏は倒産したエ社の破産管財人に就任し、同社を米国マイクロン社に買収させた時点でようやく管財人を辞任し、エ社との関係を終了している。

しかし、マイクロン社とは倒産寸前に経営統合でほぼ合意していた相手だ。成り行きを振り返ってみれば、4000億円強もの債務を取引先や金融筋に棒引きさせた上で、元々目指した所に着地した、ということだ。債権を有していた中には政府投資銀行が数百億円有り、これは直接税金ではないが公的資金だろう。

およそこれだけ巨額の債務を作って倒産した会社の経営者なら、その経営責任は公人として厳しく指弾されるべきだ。アメリカでは刑務所に行った経営者もたくさんいた。それが管財人を委任され受任したというから納得がいくところがない。坂本氏のメンタル・タフネスぶりはまことに端倪すべからざる所がある。さらに本書を読むと、、、

(この項 続く)

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(2)) 吼える破産経営者

エルピーダーメモリ社を倒産させた著者坂本幸雄前社長は、「社員をひとりも解雇することなく再生することができました」
と、している。

同社の社員数は連結で約5,500人だそうなので、その雇用が確保されたのは結構なことだ。そして坂本前社長は、雇用もそうだが、相対としての技術集積が保全されたことが重要だと本書で強調している。

しかし、その雇用がいくらで購われたかについては触れていない。同社倒産時の負債総額は4480億円と製造業では過去最大と報道されている。おおざっぱに言うと、ひとりの社員の雇用確保に、外部の金約1億円が負担された。そしてそれについては、外部の会社ーつまり債権者ーは同意したわけでも何でもない。単純に迷惑を被ったのだ。4480億円の債権がどのように放棄されあるいは弁済されたかについても勿論本書では触れられていない。それどころか本書で坂本氏は、、、
(この項 続く)

2013年10月20日日曜日

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(1) 吼える破産経営者

日本経済新聞出版社、新刊。坂本氏は2002年から国産半導体メーカーであったエルピーダメモリ社長を務めた。2012年2月会社更生法適用を申請、自ら管財人に就任し、米国マイクロン社に売却を果たす。この倒産に当たり、社員を解雇せずに乗り切った。

話題の書。会社倒産という経緯から、「敗軍の将、兵を語る」という体裁の本を想起したが、全くそうではない。その意味で異色の書であり、異色の経営者というのが感想だ。一言で言えば、モラル・ハザードかな。

(この項 続く)

2013年10月18日金曜日

新将命氏、箱田忠昭氏と会食(3)

昨夕の三人会ではいろいろ楽しいことも話したが、実は近頃いやなことも降り懸かってきたことも話題に出た。

まあ、三人露出が多いので、批判や反論、あるいはネガティブ的なアプローチがあった。実名でのものも、匿名でのものもあった。

言論の自由の立場から、正統に批判されるものは甘んじて受けるか、言論により反論すべきと考えている。しかし不当なもの、あるいは事実に反するものなどについては、しっかり対応していかなければならないと思っている。

こんな点でも先人先輩であるお二人に親しく兄事させて頂いている私は恵まれている。ご指導やご理解、支援を頂きながらしっかり生き抜いていきたいものだと願っている。

(この項 終わり)

2013年10月17日木曜日

新将命氏、箱田忠昭氏と会食(2)

三人の集まりは結構ある。今年だけで3回目だ。

今回は私が幹事で銀座のグランメゾンのフレンチを選んでお二人にご案内した。

新さんがご新著『部下を持つ人の教科書 課長塾』(日経B P)ムック)をお持ちになり、贈呈頂いた。

箱田さんに私が
「今年はご新著は」
と話しを向けたら
「もう7冊出しました」
と軽くかわされてしまった。

20冊強を上梓している私が一番少なく、新さんが50冊近く、箱田さんは優に100冊以上公刊されている。三人でもしかしたら合計で200冊なんて地平まで行けるかもと思うような勢いだが、問題は私にネタが切れて来たということかな。

(この項 続く)

新将命氏、箱田忠昭氏と会食(1)

喜寿を迎えられた
新将命 氏

お二人とは親しくさせて頂いてきた。箱田氏とは30年来の、新氏とは25年来のおつきあいをありがたくしてもらい、私が最若年として兄事させて貰っている。

箱田さんが20代の時、新さんが直接の上司だったのでお二人のおつきあいはもう半世紀を超える。

カリスマ講師
箱田 忠昭 氏
昨夕も箱田さんがおっしゃっていたが、
「新さんが私のロール・モデルで、新さんの後を追ってきた。新さんにはますますお元気で私たちに範を垂れて欲しい」

私も全く同感だ。外資の経営者を経て、現在講演や経営指導にというpost executiveの生き方は三者に共通している。
新さんが昔、後輩経営者を集めて「新塾(あたらしじゅく)」を主宰されていたおり、箱田さんが塾頭、いってみれば師範代のようなお立場だった。一番弟子筆頭の箱田さんもそれにしてもカリスマ講師としてすっかりの大貫禄になられた。

(この項 続く)

2013年10月13日日曜日

ユニクロ 柳井正 どこへ行く(4)

今回のコラムで前々ブログで指摘した「柳井正社長、四つの心配」とは次だった。

1.2014年に引退すると明言している。
2.世襲はしない。
3.社長職に復帰してから、海外展開に前のめりである。
4.最後は職に執して中内功氏の轍を踏みはしないか。

1と3に関しては指摘した。残るのが、2「世襲」と4「経営者としての晩節」で、これらの二つは関連している。
2014年の引退を今回あっさり撤回した柳井社長は、そもそも世襲も含めて、引退する気があるのか。あるいは、加齢と共に、職への執念というか経営意欲を増すしていくのだろうか。

世の中には、数千億円と言われる企業グループを育て、「名経営者」「大経営者」の
尊称をほしいままにしたにも関わらず、晩節を汚してしまった方は結構いる。


そごう 水島廣雄会長は
晩年裁判に忙しかった
柳井正社長は偉大な経営者―それも実質的に創業オーナー社長として私は尊敬している。それだけにpost1兆円のステージに到達してから、この後の舵取り具合、70代に達してからの出処進退に大いなる興味を持っている。

私にとってはソフトバンク社孫正義社長とならぶ、my hero経営者なのだ。どうか今後とも新しいステージごとに素晴らしい経営手腕を発揮して頂きたい。

(この項 終わり)




ユニクロ 柳井正 どこへ行く(3)

ファーストリテイリング社は、2020年に5兆円という野心的な売上げ目標を掲げ、今回の決算発表で1兆円を達成した。

目途とする急成長を続けていくためには、海外でのビジネス展開に前のめりになることとなる。なぜなら今回の発表では国内の売上げの方はダウンしてしまった。

同じマーケットーつまり国内―で何時までも一人勝ちは、それは難しいことだろう。前項で拙著で指摘した「ユニクロ4つの心配」のうち
1) 2014年までに柳井社長は引退する。
3) 海外展開に前のめりである。

の二つの心配は的中してしまった。とすると、後の二項目だが、、、
 

(この項 続く)

2013年10月12日土曜日

ユニクロ 柳井正 どこへ行く(2)

太閤秀吉は、朝鮮出兵で
晩年の大失敗を犯した
拙最近著『本当に使える経営戦略、使えない経営戦略』(ぱる出版)で、私はユニクロ及び柳井正CEOのことを取り上げさせてもらった。

偉大な経営者柳井氏の今後についていくつかの心配事というかリスクを指摘した。

1.2014年に引退すると明言している。
2.世襲はしない。
3.社長職に復帰してから、海外展開に前のめりである。
4.最後は職に執して中内功氏の轍を踏みはしないか。

今回の決算発表で、上記1をあっさり撤回してしまった。

(この項 続く)

ユニクロ 柳井正 どこへ行く(1)

「残念ながら社長を継続しないといけない。今はグローバル化を進めている真っ最中で、現実に執行をやめるのは不可能だ」
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は以前から、65歳になる14年2月までに社長を退くと公言していた。が、10日の決算説明会の場でこれを撤回。一転、続投を表明した。(東洋経済オンライン10月12日、写真も)

同社の決算は好調で、連結で初めて1兆円を超えた。前年比2割以上の伸びである。成長という点からは死角が無いように見える。しかし、長期的にはここに来てやはり問題が、、、

(この項 続く)

2013年10月10日木曜日

経営戦略策定法 東奔西走

『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)を今春上梓したところ、早くも6刷りを数えた。

本書で、「戦略カードとシナリオ・ライティング」技法による「課題解決型経営戦略法」を解説してきた。

幸い支持と好評をいただき、この秋も忙しく飛び回っている。メガバンク系の「総研」4社全てと東京商工会議所の本部など大手で全て出講する。

「誰でも立てられる経営戦略」の布教宣教師としてこの技法を広めていきたい。

2013年10月7日月曜日

経営者ブートキャンプ第7期参加者アンケート 全員が「満足」以上

9月に終了した経営者ブートキャンプ第7期。参加者へのアンケートが回収された。

大満足 37%
満足  63%
合計100%

・経験豊富な講師の方々の貴重なお話が身近で聞けた。
・テーマである経営戦略が実際作れた事。
・実績の有る実経営経験者より生の経営手法を学べた事。及び他業種の情報交換が出来たこと。
・他者(顧客側)から有益なフィードバックをもらいながら納得いく経営戦略が立てられた。
・出口氏、新氏などから貴重な体験談を直接本人の口から聴けたこと。
・戦略の組み立て方がわかった。
・学びと気づきで視野が広がりました。
・考えを整理することが出来た。
・特別講師の話を聞けたことです。
・実際に自分で考え戦略を考える事が出来た。
・またそのまま発表できる形になっているので、会社でそのまま使うことができる。
・自分が作った戦略に対して適切な指摘がとてもありがたかった。指摘によってブラッシュアップできた。
・セミナーでの議論が懇親会でも続きとても実りある議論ができた。
・他社の事例にいくつも学ばせて頂きました。


今月末から第8期が始まる。

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(6)

クリステンセン教授
クリステンセン達が同書で公開した研究方法とは
1)実績のあるイノベーター経営者のサンプルを80集める。
2)非イノベーターサンプルを400集める。
3)上記1)の30に予備インタビューを行い、「イノベーター5つの因子仮説」を得る。
4)これらの仮説を、1)と2)の混合サンプルで検証し、1)サンプルが全体の中でどの当たりに来るのか、上位パーセンタイルで数学的、統計的に見る。

これらにより、「5つの因子仮説」の蓋然性を主張する、というものだった。私はすっかり説得され、
「何とエレガントな方法論だろう、クリステンセンとはとても頭の良い人だ」
と、感心したわけだ。

(この項 終わり)

2013年10月6日日曜日

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(5)

クリステンセン教授
しかし、『ビジョナリー・カンパニー』が辿り着いた「決して満足しない」などの定性的テキストが、対象マネジャー達全てのコメントからどのように抽出されたかのプロセスが十分に示されていない。

研究を実施したコリンズ達の「ハートに刺さった」コメント群が残されたのではないかという議論を打ち消すことが出来ないのだ。それは、つまり解釈的、恣意的ではなかったかという、学問的アプローチとしては決定的な疑問を残してしまっているのである。

そこへいくと、クリステンセン『イノベーションのDNA』のアプローチは優れていて、納得感に溢れている。まず同書の中で、研究が行われた方法が示されている。これは学術書としてフェアであり、しかもその研究された現資料がインターネット経由で公開されている。これは「プロセスの再現性と検証可能性」という観点から、社会科学ではとても重要なアリバイ作りだと言える。

クリステンセン達が同書で公開した研究方法とは、、、

(この項 続く)

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(4)

クリステンセン教授
私がもう一つ感心したのは本書に示された方法論である。つまり、研究の方法論のことだ。

前項で指摘した5つの機序は、定性的で概念的なものだ。例えば一人の研究対象者だけを徹底的に分析すると、帰納的にそんな項目を求めることが出来る。しかし、それは一つからの例示的な結論と成り、経営的なイノベーションが起こる包括的な説明としては、汎用的に広く私たちを納得させることはできないだろう。

また複数多数のイノベーター的とされる経営者達をサンプルとしてアドホック的にインタビュー調査としても、導き出された結論はすぐには首肯できるものとはならない。良い例が『ビジョナリー・カンパニー』(ジェームス・C・コリンズ他、日経BP出版センター)だ。同書では大成功している「ビジョナリー・カンパニー」十数社を研究対象として、その中のマネジャー達を多数インタビューして、「成功の共通因子」を明らかにした、としている。
(同書については拙ブログで「書評155」として昨年下記のように取り上げている。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2012/10/blog-post_18.html

しかし、、、

(この項 続く

2013年10月5日土曜日

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(3)

クリステンセン教授
傑出したイノベーター経営者が起こすイノベーションとは、本書によれば、次の5つの機序により発見されるという。
―関連づける力
― 質問力
ー 観察力
― ネットワーク力
― 実験力

私見では上記のうち特に核となる機序は「関連づける力」だろう。それを有する経営者個人が「ネットワーク」に恵まれるとその力を発揮できる。「関連づける力」を担保する重要な資質として「質問力」と「観察力」があると、それ以前には存在していなかったイノベーションが構成現出するというメカニズムだ。

個人がイノベーションを生むメカニズムを説得的に解明したという点で本書は素晴らしいが、私がもう一つ感心したのは、、、

(この項 続く)



(この項 続く)

2013年10月3日木曜日

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(2)

クリステンセン教授
「イノベーション」に直接対義はしないが、対比的に置いて考えて良いのが「暗黙知・明示知」の「ナレッジ・マネージメント」だろう。

後者はキャノンなどを企業事例として研究されたように、組織内で共有されていたグループ知を明示化してより合わせたことにより、新しいと見えるような企業行動が起こるメカニズムを明らかにした。

一方本書が指摘したような「経営者によるイノベーション」とは、ユニークな経営者による極めて個人的な成果物である。そのような、傑出したイノベーター経営者が起こすイノベーションとは、本書によれば、

(この項 続く)

2013年10月2日水曜日

『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン他 書評182(1)

9月はライブレボリューション事件に筆を取られて後半が過ぎてしまった。月が変わり、当ブログも以前のペースに戻りたいもの。

本書は、ハーバード・ビジネススクールの看板教授、クリステンセンが他2名と共著で翔泳社、2012年刊。原書は2011年に刊行されている。

遅ればせながら手にとって、とても感心した。今年に入って読んだ経営・ビジネス書の中でベスト1で、10月から始まる経営者ブートキャンプ第8期の課題図書の1つとして参加経営者・幹部の皆さんに呼んで貰うことにした。

本書の何が素晴らしいかというとまず、傑出した経営者が他の経営者と決定的に異なる経営行動―つまりイノベーション―を起こすプロセスをうまく説明したということだ。そしてその説明についての納得感がとても大きく、実際に経営者として行動してきた私にも首肯できるものだったことである。本書で提示された「イノベーションが起こるプロセスの説明」は新見に富み、しっかり構築されている。その意味でそれは「発見」と呼んでもよい指摘となっている。

(この項 続く)