2010年4月28日水曜日

「CEOを育てる」ラム・チャラン(ダイヤモンド社) 書評(20)「


腹立たしい本だ。筆者は、ウォートンやノースウェスタンのBスクールで「ベスト・ティーチャー賞」を取っているそうだが、つまりサンダーバードの方がずっとよいということだろう。
学術書として読めば即失格だ。証明が無いし、例示が少ない。経営学の二つのアプローチ、「例を多く取り演繹する」か「深く掘り下げてセオリーに導く」のどちらでもない。
初めの方にP&Gのケースと思われる例が10ページも匿名で続くのだが、結論は「2010年ころには結果が見えているだろう」(訳書の発行は2009年)。「リーダーを早期に見つける方法を知ることだ」と指摘して、その方法は示していない。「徒弟制度によるCEO教育モデル」というおもしろそうな提言をしているのだが、唐突でそのモデルをサポートする資料も無ければ、成功例が示されているわけでない。コンセプトだけである。
「育成計画は個々の特性に応じて」と「いかにも」風なことを言っているが、それって共通特性の抽出に失敗して何も言っていないことだ。
最後の章で「CEOの育成は重要なことだ」と結んでいるが、問題は「それをどうする」ということだ。思わせぶりな書名だが、「それをどうする」という根本的な答えを提出していない。

2010年4月25日日曜日

「続・パワー スキーイング」フランツ・ラウター 書評(19)


副題が「F・ラウターの華麗なターンの世界」。フランツ・ラウターのスキー技術解説書。私は彼の写真集としてみている。スキージャーナル社発刊のこの本の奥付けには昭和53年発行とある。私がデモンストレーターを目指して基礎スキーで頑張っていたころだ。

とある経営学の本を書棚で探していたら、この本が転がり出てきた。

フランツ・ラウターは私のヒーローだった。彼の実際の滑りを見たくて、20代後半雫石での彼のスキーキャンプに2回通った。もう全盛期は過ぎていたが、間違いなく私がリアルにみた数多いトップスキーヤーの中で一番格好の良いひとだった。当時のスキー・ファッションリーダーにもなっていた。

3シーズン目に行ったら、ラウターの来日がキャンセルになっていて、日本で全く無名のベルント・グレーバー(若干20歳)が代打ちでと聞かされて、がっかりした。ところがところが、ベルントは私がリアルで見たスキーヤーの中で最高の滑り手だった。この業界でその後知らぬ人はないようになる。

私は今度はベルントを追いかけ、3シーズン彼のキャンプに参加した。何と2回目からは雪の上での彼の通訳をやらされるようになる。普通の通訳(といっても指導員クラス)が、ベルントが滑り下でクラスを見上げるそのタイミングで滑り降りていけないのだ。

全日本デモンストレーター選考会などをその後総なめにしたベルントは、まだ26歳の若さで母国オーストリアで滑走中雪崩で死亡。
「山田さん、スキーをあきらめるな」と最後のキャンプで言ってもらった私の方が雪の上に残されている。

2010年4月23日金曜日

「あなたの会社は」(31)書評(TOP POINT)

『「一読の価値ある新刊書」を紹介する』とロゴが付いている、月刊ビジネス書評誌 TOP POINTの5月号に取り上げられる。本日のタイトルをクリックで同誌のサイトへ。

以下、一部引用:

「企業再建のカギは部長(経営幹部)にあり!6社の経営再建に成功した著者は、こう指摘する。(中略)そんな体験を基に、会社を改革するために経営者が取るべき行動を指南する。

「リーダーになる人のランチェスター戦略入門」(2) 書評18


3月2日と4月3日のブログで取り上げた同書(東洋経済新報社):(本日のタイトルクリックでリンク)の著者、福田秀人さんからおもいがけずメールをいただいた。

私が同書を評価したのは、ランチェスター戦略そのものにも同意するところが大きいからだが、それに加えて従来の定説とされている経営学説(特に横文字用語系)の多くを福田氏が取り上げ、それらを正面から批判していることにある。このような「野党的」な著作はまことに貴重で、その論旨は知的スリルに富む。

福田さんのエネルギーと勇猛果敢な様はまことに気持ちが良いばかりか、経営の現場を渡ってきた私には多くの点で同感、納得するところが大きい。えー、念のためだけで気が引けるのだが、私もいやしくも経営学者の末席を汚しているものである(日本華僑華人学会の創設メンバーで初期数年は役員を務めさせていただいた。専門は日華国際経営比較論)。

福田さんからのメールの一部を、おきて破り風に引用させてもらうと、

「多くのコンサルタントや学者が依拠している理論や、それにもとづく指導や講義を、正面から批判する内容であり、それらの業界からは反論というよりも、無視されて当然と思い、また、実際に、そのとおりで」
ということだそうである。
大野晋先生のタミル語関連説みたいな話だ(この話、ビジネス畑の方には分からない、私は一応国文学者でもあった)。

大論客の福田さんはすでに次の著書の上梓が決まっているそうだ。6月に「意思決定」をテーマで同じく東洋経済出版社から出るそうである。注目して待ちたい。

経営者.jpでの社長セミナー終わる

井上和幸さんが始動した経営者.jpでの社長セミナーを昨日実施した。井上さんはちょうど今週「社長のヘッドハンターが教える成功法則」を上梓したばかりだし、会社は無事発足したしで、まさに順風満帆の船出となった。まことに目でたい。

昨夕はそぼ降る雨で冷たい日にもかかわらず、欠席も少なく、井上さんや牧野さん(井上さんの右腕)のネットワークからの社長さんが来てくれた。結局、延べにして35名ほどおいでいただいたわけだ。

ほとんどが社長さん、経営者、そうでなければコンサルタントといった構成だった。それだけのレベルの方たちから、終わってメールをやり取りさせていただくと、私の話しに納得感・説得感が有ったとか、「腹に落ちた」などと言ってもらえた。

何人かは5月からはじまる経営者ブートキャンプにお申込みいただく。ブートキャンプのことは、タイトルをクリックしてもらうとリンクしている。

「私、医者に行ったほうがいいですか?」山田修 書評(17)

アマゾンから「お薦めメール」が来た。
「以前、山田修さんの本をクリックした方にお知らせです。山田修さんの新刊が、、予約できます」
など。

上記の新刊は私の著作ではない。といって、目くじらを立てる話ではない。アマゾンで「著者」としての「山田修」を引くと、本日現在88冊がリストされる。知らない方は、私が建築学の大家でもあり、韓国旅行記をものするエッセーストでもあると思われているかもしれない。

残念ながら、88冊のうち私のものは最大で13冊、訳書が入っていれば後2冊ということになる。世に、本を上梓している山田修さんはどうも少なく見ても5名はいそうだ。私にも、私以外の著作者に何人の山田修さんがいるか分からない。

もしかして(88-13=)75冊の全てを書いている人が、同一人物、ただ一人の山田修と言う人だったら?
「そんな大博学の人がこの世にいるか!」(しかも私と同姓同名?)頭が痛くなる。「私、医者に行った方がいいですか?」  お後がよろしいようで。

2010年4月22日木曜日

「社長のヘッドハンターが教える成功法則」井上和幸 書評(16)



経営者.jpの井上和幸代表の初著書が上梓された(サンマーク出版)。先週いち早くご本人から初刷りをご恵贈いただき、一読した後に会食する機会があり、感想を申し上げた。

帯に「まずは出世競争を降りなさい」と、井上さんの主なアドバイスの一つが掲げられている。振り返ってみて私の場合も、社長になるためにそれを目指して一生懸命仕事をした、研さんを積んだ、ということではなかった。目の前の仕事を「他の誰よりも」自分が上手くできるという自己満足を追求してきた。その結果、達成があったり自信がついたり、能力が蓄積されてきたと思う。

井上さんは5千人のエグゼクティブを見分けてきた日本一のヘッドハンターだ。これからキャリアを積み上げていこうとしたり、リーダーシップを身につけようと考えているビジネスパーソンにはこれ以上の良書は無いだろう。

2010年4月18日日曜日

経営者の悩みは幹部の能力開発(2)

役員、事業部長、工場長クラスの能力強化を経営者は一番望んでいるわけだ。
そして、階層的な構造を見れば、これらの人たちの能力の度合いが会社全体の業績への影響度が一番大きい。もちろん経営者自身に次いで、ということだが。

ところが、社員の能力強化を担うべき人事部研修担当の悩みはここにある。幹部クラスは、能力開発が社内で一番(相対的に)進んでいる人材がそこにたどり着いているわけだ。研修担当としては自分より上位であるばかりでなく、自分より優秀な階層を指導する自信も持てなければ方策も確として持てない。

外部の研修会社に頼んでも「階層別の研修」を看板に掲げるところはいくらでもあるが、内情はせいぜい中間管理職あたりをカバーするくらい。後は経営者自身を対象とした「トップセミナー」に飛んでしまう。

幹部階層の能力強化は、いわば「研修のブラックホール」となっているのが現状だ。

2010年4月17日土曜日

経営者の悩みは幹部の能力開発(1)

本日出講した、経営者対象の「モノ・カネが無くてもできる勝てる組織作り」(インサイトラーニング社主催)でのことだ。

企業の階層図をしめし、社長さん達がどの階層の能力強化について一番の悩みか、ということを問うた。
 経営者自身 25%
 経営幹部  50%
 管理職   25%
 一般社員   0

という挙手となった。経営幹部の能力開発が一番切実となっている

2010年4月16日金曜日

4.13SMBC幹部セミナー参加者感想

メールをいただいた一つ。

まずは、参加させて頂き有難うございました。研修自体は非常に
理解しやすく、講師の方も話し上手でアイスブレーキングなどもあり、
全員参加型の研修でした。
印象に残っているのは、戦略を立てるときには文章に固定する⇒
実際やってみると、頭ではイメージできていても文章化するとな
ると、少し苦労致しました。それと、抜擢の部分です。弊社の規
模には合わないような気がしておりましたが、全くそのようなこ
とはないということを、認識できました。これから弊社が勝ち残
っていくには、年功序列型の人事も残しつつ、抜擢人事・実力人
事も積極的に取り入れていかないと、生き残れないと痛感しました。

「50日で変わる儲かる経営幹部の作り方」セミナー実施

本日から、「社長のための」と銘打った

「50日で変わる儲かる経営幹部・組織・戦略の作り方」セミナーを実施。
本日は二クラスとも満員。思いがけずに著名な経営者、著名な会社の社長などにご出席いただき、
活発でインタラクティブなセミナーとなった。社長たちが本音で語り合い、体系的に学びあえる場が日本にはほとんどない現状を再認識。


残りも、22日19時のみ若干空きがあるだけ。お申し込みはお早めに。

4月15日(木) 16時―18時/19時ー21時
4月16日(金) 16時―18時
4月22日(木) 16時―18時/19時ー21時
恵比寿 経営者.jp セミナールーム

問い合わせ、申し込みは今日のタイトルをクリック。

2010年4月14日水曜日

「あなたの会社が買われる日」(旧著) 書評15



「あなたの会社が買われる日」(PHP研究所)は、私が上梓した唯一の小説だ。といって、他に書いた小説があるわけではない。

2006年に、同書のタイトルで経営書を書くように依頼され、考えた挙句中編の小説を三つ書きあげ、出版社に提出してしまった。担当編集者は、同書のタイトルで出版企画を通してしまっていて、そのまま活字にしてくれた。三つの作品のタイトルはこうだ。
「新社長就任」
「投資ファンドの正体」
「社長たちの反乱」

だから、本全体のタイトルと三篇の整合性が大いに損なわれている。読者レビューでも、
「M&Aのビジネス書かと思って購入したら」
などと指摘されてしまった。

本書はしかし、私の執筆意欲を大きく満足させてしまった。とても分かりやすく、しかし品悪く説明すると、執筆者としての排泄欲が達せられた。作家としての満足度も大きかった(これを自己満足という)。この後数年私は本格的に筆を取ることはなかった。

今日なぜブログで旧著を取り上げたというと、なんとこの作品だけ、ネットで「立ち読み」(全文閲覧)になっているということを聞いたからである。CO2さんという読者からのお知らせだった。

今日のブログのタイトルをクリックしてみてほしい。

SMBCコンサルで「経営戦略」セミナー実施

「経営戦略の立て方、使い方」(午前)と「幹部社員の役割と実務」(午後)のタイトルで2講セミナー実施。
経営者や幹部など、40名。

数名が「役に立った」という回答以外、ほぼ全員が「とても役に立った」というアンケート回答。

2010年4月12日月曜日

「社長の勉強法」池本克之 書評14



著者の池本氏には、5月からはじまる「経営者ブートキャンプ」で特別講師をお願いしている。同氏のご新著だ。とても多くの点に同感できた。「本を読むとき、マーカーと附箋で」というところは私も昔から実践している。しかし、池本氏はそう主張しているだけでなく、本書ではすでに重要なところに、マーキングが網がけとして印刷されている。

「キャリアゴールを決めて」というアプローチもそうだ。池本氏はゴールからの逆算により、細かな学習スケジュールの設定法まで示している。私が勧めているのは、「3年計画を立てろ」と言うことだ。3年なら、controllableであるという人生の真実があるからだ。

ビジネス人生の中で上昇志向のある方には是非勧めたい、具体的な方法論の本だ。

「祝宴」ディック・フランシス?書評(13)


今回はビジネスとは関係ない。

私はディック・フランシスのファンである。イギリスの障害場馬術のチャンピオン(リーディング・ジョッキー)だった人物が、推理作家としてこのような才能を発揮できるものかと、驚くばかりだ。

今年の2月に88歳での訃報が伝えられ、もう彼の新しい作品は2度と読めないとがっかりしたものだ。少なくとも後期の作品には、夫人であるメアリの関与が言われている。その役割は小にしてリサーチャー、大なる場合は夫人の代作だったと言われているそうだ。

今日ブログで取り上げたのは、ハヤカワ・ミステリ文庫に今月「祝宴」がラインアップされ、それを読んだからだ。日本で翻訳出版された彼の著作は全て読んでいたつもりだった。ディックフランシスが80代に入り「再起」という作品以降は、二男のフェリックスとの共作という表示がなされている。「祝宴」もそうだ。

ファンサイトでは、
「小説創作の親子承継なんてありなのか」とか、
「日本画では狩野派など、家業だろう」とか
「フェリックス作の祝宴は出来がいいから、それでよい」
などと書き込まれている。

30冊以上のディック著作を読んできた私としては、
「やはりフレーバーが違うだろう」
と思ってしまう。

偉大なる父親が逝去して、これ以降に発表される作品にはフェリックス単独の作家名が冠されることになる。
我々は本当に「Dick Francis Jr.」を読めることになるのだろうか。楽しみでもある。

2010年4月11日日曜日

今週は6回も出講が。風邪も引けない

今週は行ってみれば「魔のロード」だ。2回のセミナーと4回の講演がある。
17日(土)は午前中に「やり方を変えろ!モノ・カネが無くても勝てる組織作り」というタイトルで、社長さん達を対象に話す。
ここまでで、「今週の6回出講」なのだが、それに加えて午後から、参加者の中から希望者に個別経営相談会を行う。もう何人も申し込みがあるそうだ。

風邪も引けない。怖いのは、咽喉をつぶすことだ。夜のスチーム吸入を怠らないようにしよう。
学生時代スキーのプロだった。夜はストレッチとスキー板のワックスがけを欠かさなかった。体と道具の手入れはどの商売になっても大切なことだと心から思う。

回数が多いとて、大味になってはならない。個々のイベントの参加者の皆さんに役に立ってもらえるよう、私も集中して実施する覚悟だ。

山田修とハローナイツをご存知ですか



先週、新音源として「人を見抜く技術」CDのスタジオ音入れを行った。53分の内容で間もなくフォレスト出版から市販される。

CDといえば、「山田修とハローナイツ」というムード歌謡グループをご存じだろうか。中年男性ばかりで構成されていて、最大のヒットはTVアニメ「こちら亀有派出所」の主題歌である。

この歌手名を発見して座興でアマゾンで取り寄せたことがあった。会社の方に届けてもらった。秘書のHさんが、外装は開梱して持ってきてくれた。その時ふとジャケットに目が行って、彼女の目が点になってしまった。
私は
「このことは社員の人たちには内緒だ」
と、おもむろにHさんに告げた。

その日の午後から社内では、
「山田社長がCDを出した」
という話しで持ちきりになった。

2010年4月10日土曜日

社長のための「50日で変わる..」セミナー 満員ま近

社長のための特別セミナーと銘打った「50日で変わる!儲かる経営幹部・組織・戦略の作り方」の申し込みが好調。

5セッションを用意したが、幾つかはすでに満席。
4/15(木)16:00~18:00
4/15(木)19:00~21:00
4/16(金)16:00~18:00
4/22(木)16:00~18:00
4/22(木)19:00~21:00

ご興味のある方は、タイトルクリックから駆け込みで。

部長研修はブラックホール?

「経営者はどこで勉強」というタイトルで、1月まで10回このブログで書いた。その結論は
「自分で勉強するしかない」。
それでは
「どこでどう勉強すればいいんだ」
という問いに対して用意したのが
「経営者ブートキャンプ」
だった。
http://www.keieisha.jp/seminar100410.html

会社組織を階層で考えて、もう一つ研修の対象から外れてしまっているのが、実は部長などの上級管理職である。階層研修では新任管理職や中間管理職まではいろいろなプログラムがあるのだが、人事部の研修部門からしたら、役員や上級管理職は自分たちより階層が上で、しごきにくい存在だ。
それにそもそも、部長たちの方が研修担当者より能力開発が進んでしまっているので教える自信が無い。外部の研修会社にしても、「偉い人たち」を教えられるコンサルタントやプログラムが無い、という状況だ。

私が最新刊「あなたの会社は部長がつぶす!」(フォレスト出版)を上梓したところ、文字通り部長を対象とした研修やら講演の依頼、引き合いが来るようになった。穴が開いていたことは確かだ。

2010年4月8日木曜日

「だれでも一流講師になれる71のルール」茅切伸明 書評(12)



同書(税務経理協会)は、茅切伸明氏著、箱田忠昭氏監修である。ご両人とも親しくご指導いただいている方たちだ。箱田さんは「カリスマ講師」として隠れもない、この業界の大立者、著者の茅切さんは日本最大の研修会社であるSMBCコンサルティングの大阪で、セミナー企画に辣腕をふるった人として、「知る人ぞ知る」存在である。

テーマとしては「業界もの」で、一般事業会社のビジネスパーソン向けではない。しかしその中身は濃い。「セミナーの主役は講師ではない」、「優れた講師ほど謙虚だ」、『オンリーワンのテーマを作れ」など。

セミナーや研修受講者の教育機会の質向上と、教育効果の実現を心がけている私には大変益のある本となった。すでに講師、これから講師を目指す人、そして人を教える機会や立場にある人にはとても役に立つ本だ。

大局を見よ、細かく分析するな

メガバンク系の研修会社はどこも月刊ビジネス誌を編集している。今回はそこの一つに頼まれ、巻頭言のようなものを書いた。発行されるのは5月なので、誌名などはまだ公表しない。

そこで幾つかのポイントを記した。一つは、戦略を立てるときには「細かく分析するな」というもの。およそ世に出ている「戦略本」の類をひも解くと、「分析フレームワーク」のオンパレードだ。しかし、あれはコンサルタント向けのもの。経営実践家には向かない。

経営者たるもの、情勢分析は3Cでよい。Company, Competitor, そしてCustomerだ。前2者はそれらの「強み」を、顧客(あるいは市場)については「不」の付くものを見る。不平、不便、不満だ。それらを解消できる当社の強み、競合の強みを考える。

あまり細かく見ない、考えない。戦略作りは「ざっくりと見渡す」ことから始める。

沢田研二と運動

昨晩NHKにチャネルを合わせたら、我らがジュリーが熱唱していた。
後ろで、みんなの党の党首、渡辺善美議員がギターをかき鳴らしながらシャウトしていたので魂消たら、共演のワイルドワンズの人だった。「ジュリー ウィズ ワイルドワンズ」という特別歌番組。

みんな年をとった。沢田研二は私より一つ年上で61歳である。作家の桐野夏生氏が「ジュリーが私の青春のすべてだったんだわ」とおっしゃったのを覚えている。桐野さんが20代の前半のころで、その頃数シーズンに渡り私のスキー仲間だった。大変な美少女だった。

番組で我らがジュリーは、座って座談をしている分にはまだよいのだが、立って歌っている姿を見るのが辛かった。「TOKIO」などの当時の名曲を熱唱してくれ、その歌唱やパフォーマンスはまだしも、立ち姿そのものが辛い。不定で弱弱しい下半身、前かがみで姿勢が崩れ出した状態、、。私と同年なのに、「おい、どうした」と思ってしまった。

アラ還(還暦)世代にとって、それまでの運動歴や現在の運動習慣がその姿勢や容姿に決定的な差をつけてしまう。顔貌はメークで糊塗できようが、歩き姿でその人の肉体年齢と健康度が見透かされる。栄養と休養だけではだめだ、みんな、運動しよう。

2010年4月3日土曜日

「ブルーオーシャン」と「ランチェスター」 書評(11)

図書(10)で「ブルーオーシャンとコーポレートブランド」(藤田務)を、図書(9)では「リーダーになる人のランチェスター戦略入門」(福田秀人)を評した。二つの相対するかのような著書を読み比べて、私は福田秀人「ランチェスター」の方への同感が非常に強い。

世の中に存在する企業の99%以上が、企業リソースに富まない中小企業であること、それらの中小企業はのがれることのない苛烈な競争社会(レッド・オーシャン)で生き続けなければならない現状がある。

福田の喝破によれば、「ライバルの顧客を奪い、生き残る」ことが最大の競争戦略となっているのである。一方、ブルーオーシャン戦略を標榜する藤田はたとえば、その成功例としてグーグルを挙げるのであるが、日本の万と存するIT企業に対して「これからグーグルを目指せ」などと啓蒙するのはあまりに馬鹿げていることが分かる。

ドラッカーは、企業の目的を「顧客創造である」と定義したが、私に言わせれば「中小企業にとっては、新しい顧客を創造する前に、既存の顧客を守りもっと売り込め、そして競合の既存客を奪い取る算段を考えろ」ということになる。

超大企業にして初めて選択が許されるような戦略をトピックにするときは、その旨(これは皆さんには役に立たない話です)というのを断わった方が良い。

2010年4月2日金曜日

「ブルーオーシャンとコーポレートブランド」藤田勉 書評(10)


「ブルーオーシャンとコーポレートブランド」は毎日新聞社からの新刊である。著者の藤田務氏は、日経アナリストランキングで4年連続1位の方だそうだ。

やれやれ、困った本だ。
藤田氏の見解によれば、日本でブルーオーシャンを成功させた会社やプロジェクトには次のようなものがある。
  トヨタ(レクサスとハイブリッド)
  NNTドコモ (iモード)
  任天堂 (ゲーム)
  ソニー (トランジスタなど)
  ファナック(CNC装置)
  セブン&アイ (コンビニ)

これらの企業やプロジェクトが現在も抜群に成功しているかにも議論がある。そして、そもそもこれらの企業に追いすがろうという努力を啓蒙しようとしているのが正しい方向付けなのか。総務庁「事業所・企業統計調査」によれば、中小企業の会社数は約150.8万社で、全会社数に占める割合は99.2%という。99.2%のこれらの会社に上記のようなプロジェクトを創出せよとなぜ勧められるのだろう。

経営の現場に出たこともない、証券アナリストの頭でっかちの机上創作としか言いようがない。