2018年4月21日土曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(12)

規模より質を、何より在籍者の満足度を


――新校舎、大箱への移転という大きな節目を通りました。この後はどのように展開していくつもりですか。

斉藤 この校舎と自由が丘、酒田の3拠点で最大4500名の生徒に授業を提供することができると考えています。現在、学童保育を合わせて3600名まで達成しました。しかし生徒数の最大化を目的に経営を行っているわけではありません。規模を追いかけるのでなく、あくまで在籍している生徒、そして保護者の満足度を高めることを目標としたいと思っています。

――地域的な展開は次の段階とすると、教育プログラムの新商品はどうですか。

斉藤 すでに小学生向け英語レッスンと学童保育で500名ほどの在学生がいます。学童保育は共稼ぎ社会を支えるためにとても有意義な事業であり、需要もあります。また英語の初期教育との親和性も高い。ここの在校生も着実に増やしていきたい、と思っています。

――Eラーニング、つまりインターネットによる地方販売はどうですか。

斉藤 きめ細かい最高の授業の品質というと、やはりクラスで優秀な講師から習うことでしょう。iPadを使うアプリもすでに生徒に提供していますが、それらはあくまでも補助教材と考えています。誠実によい英語教育を提供していくことが、当校の、そして私の使命だと思っています。地域的な展開については、慎重かつ真剣に研究しています。

――本日はありがとうございました。

斉藤 こちらこそ、ありがとうございました。

対談を終えて(山田の感想)


「斉藤代表のなかで、教育者と事業家・経営者の割合はどうなのか」と聞いたら、「創業時は教育者の要素が9割、今は4割でしょうか」と言う。「また教育者の割合を半分以上に戻したい」とも。新校舎に移り、しばらく教育者としての分野に集中が戻ることだろう。しかし、年に1000人ずつ在籍者が増えていくと、2年すると新校舎も満杯となる勘定だ。その時点で次の段階を実現する事業家としての手腕を再び発揮しなければならない。というか、今から次の飛躍に備えてもらいたい。

 斉藤代表は声が大きく、底抜けに明るい笑顔が特徴の経営者だ。J PREPのパンフレットには「目指すなら世界の頂点」とぬけぬけと書いてある。代表が生徒たちに向けているこの言葉を、そのまま代表に贈りたい。


(この項 終わり)

2018年4月20日金曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(11)

国も戦う場も好きなように選んできた、真の自由人


――J PREPの代表をなさる前の斉藤さんの経歴がユニークというか、文字通りの唯一無二です。

斉藤 私は酒田生まれの純日本人です。上智大学では外国語学部で英語を学びましたが、イェール大学の博士課程で学んでいたのは政治学です。故郷の酒田のため、日本のために役に立ちたいと思い、政治学を勉強していました。そもそも比較政治経済学を学んでいた理由は、地域経済を成長させるために何が必要か、探究したかったからなのです。ちょうど現職議員が政治資金疑惑で辞職したこともあり、衆議院議員の補欠選挙に立候補して当選したのが33歳のときのことです。

――でも、またイェール大学に戻られた。

斉藤 翌年に総選挙となり、私は落選してしまいました。所属が民主党だったということもあり、その次の選挙を目指すのは断念しました。06年にイェール大学で博士号を取ることができました。それからアメリカの大学で教鞭を執りはじめて、08年から4年間、イェール大学で政治学を教えていました。博士論文は『自民党長期政権の政治経済学――利益誘導政治の自己矛盾』(勁草書房)として上梓させてもらいました。

――この本は、第54回日経・経済図書文化賞を受賞しています。

斉藤 J PREPを創業してからは、英語教育の本に傾注しています。最近著したのは『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』(ダイヤモンド社)という本で、すべての親御さんに読んでいただきたいと思っています。

(この項 続く)

2018年4月19日木曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(10)

――戦略的にいえば「ドミナント展開の出店」というわけですね。山形県の酒田校のほうはどうなったのですか。

斉藤 酒田校は、私の出身地という思い入れから創業時に同時開校して、私も今でも週に1度は教えに帰っています。しばらくは授業から教室の掃除まで、何から何までひとりでやっていました。しかし今では、ビジネス的な見地から重要な拠点に育っています。

――というと?
斉藤 学校全体のオペレーションの大きな部分を酒田で実施しています。渋谷や自由が丘に電話がかかってくると、実はそれを受けているのは酒田なんです。教材開発やその印刷発注、3000名を超える生徒家庭への発送などはすべて酒田で行っているのです。ITのシステム開発も酒田を拠点として行っています。東京で実施するより、コスト的な優位がありますし、なにより出身地での雇用貢献ができていると思っています。現在酒田事業所には講師のほかに、サポート・デスクとして20名ほどのスタッフに活躍してもらっています。

――それは実に賢いですね。これから人材雇用はどの業界でもますます難しくなってきます。地方でのオペレーションなら、そのような問題にも対処できるでしょう。

斉藤 実は海外経験や特殊なスキルを持つ人たちが、家族の介護や地域への想いを理由に地元に戻ることが多くあります。この絆を大切に、事業を組み立てるようにしています。教育面でも、全国展開を想定したモデルづくりを行う上で、酒田校で多くの知見を得ています。

(この項 続く)

2018年4月18日水曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(9)

教育者から経営者へ


――J PREPは学校法人ではなく、株式会社J Instituteが経営しています。斉藤代表はそれまで大学教授、つまり教育者で、起業は初めてだったため、企業の運営や経営にはご苦労があったのではないですか。

斉藤 当初は講師こそ私のほかに何人かいたのですが、経営という観点では本当にひとりで始めました。最初の年は財務諸表の読み方というよりも、複式簿記の初歩から勉強しました。領収書を整理して経理ソフトに自分でデータを入力するようなこともしながら、経営のイロハを学びました。

――特に困ったことは?

斉藤 創業間もない会社なので信用がなく、自由が丘で校舎を拡張移転する際に不動産を借りるのにも苦労しました。

――創業は2012年ですが、経営上で大きなブレーク・スルーとなったのは何年のことですか。

斉藤 おかげさまで最初の5年間は生徒数が年々、倍々で増えました。自由が丘校での生徒数が600名に達したとき、次の拠点として2015年に渋谷に進出したときでしょうね。宮益坂の交差点に面するビルのフロアを借りて、当初は100名ほどの生徒数でした。

――自由が丘の次に渋谷を選んだのは、どのような判断だったのですか。

斉藤 山手線のターミナル駅に進出することで、山手線の東側からの需要にアクセスできること、それから自由が丘とは東急東横線で1本、各駅停車でも10分ほどですので、拠点間の連絡がいい、ということからです。

(この項 続く)

2018年4月17日火曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(8)

――創業の地を東京・自由が丘とした理由は?

斉藤 自由が丘は「習い事のメッカ」であり、教育熱心な家庭の多い地域の中心にあります。この地域の保護者なら、私が目指す英語教育を理解して共鳴していただける方たちがいるのではないかと思いました。

――最初の年は、どのくらいの規模で始められたのですか。
斉藤 生徒数20名ほどでした。ソーシャルメディアと知人を介してが半分、折り込みチラシを見てきてくれた生徒が半分、といった具合でした。私自身が生徒全員を教えていましたし、少数精鋭でしっかり勉強してもらいました。最初に教えた中学生も、今では東大をはじめとする難関大学や医学部、海外大学に進学しています。嬉しいのは卒業生が、「大学に入ってますます、J PREPで勉強していて良かったと感じた」と言ってくれることですね。入試よりはその先を見据えて指導してきましたので。

(この項 続く)

2018年4月16日月曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(7)

イェール大で日本人の英語力に絶望


――なぜ英語教育産業で創業しようと思ったのですか。
斉藤 ビジネス的な見地からいえば、「市場のゆがみ」に気づいたということです。「市場のゆがみ」とは、その市場では「安い、早い、うまい、素敵」の逆、すなわち「高い、遅い、まずい、ダサイ」のすべて、あるいはいくつかの不備なことが起こっているということです。日本の英語教育の現場では、まさにその「市場のゆがみ」が起こっていて、参入機会があると思ったのです。

――そして代表には英語の素養があった、と。

斉藤 もともとは外国語学部で応用言語学も学んでいますし、都内の英語塾で自分自身教えた経験もありました。何より、イェール大学で教鞭を執っていたときの体験も大きかったと思います。イェール大で私は日本出身の教員ということもあって、日米学術交流プログラムのコーディネーター的な仕事もしていました。このプログラムに関連して多くの日本人の教授や知識人がイェール大を訪れて来ました。そこで、英語ができないというだけで多大な損失を被る事実を見て愕然としました。私はこの現状は、日本の国益を損なっていることだと本当に思いました。

――そこで、ご自分でなんとかしようと。

斉藤 英語教育産業に「市場のゆがみ」が起きていて、おそろしく非効率になっている、これを正すことは私に課せられた社会的ミッションだとも思いました。

(この項 続く)

2018年4月15日日曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(6)

倍々ゲームで増えてきた生徒数


――先ほどのお話では、昨年1年間で5割も生徒が増えてきたのはPR活動によるものではないということでした。

斉藤 実はJ PREPでの新入生徒の半数近くが、現在通っている生徒とその保護者による紹介、推薦なのです。私が当校を設立したのは2012年のことですが、その時は生徒の数は20名だけでした。最初はすべてのクラスを私が教えていました。その時から5年連続して、生徒数が前年対比2倍以上になった実績があります。

――ネイテイブ講師の充実のほかに、評価されてきた大きな要因はどんなものがあるとお考えですか。

斉藤 私は、新しい生徒をもっと集めるよりも、今通って来てくれている生徒、そしてその保護者の満足度を上げることを第一に考えています。J PREPが提供している英語教育への顧客満足、これを上げ続けることに最大の力を注いでいますし、講師やスタッフの力を結集していくつもりです。企業として若いので、さまざまな分野で経験やリソースも不足しています。それでも毎年、教材や授業内容を改善し、より良い学習経験を生徒に提供するために努力を重ねてきました。


●斉藤淳・J PREP 斉藤塾代表
研究者としての専門分野は日本政治、比較政治経済学。主著『自民党長期政権の政治経済学』により第54回日経経済図書文化賞(2011年)、第2回政策分析ネットワーク賞本賞(2012年)をそれぞれ受賞。J PREP では、全体の統括に加え、教材開発、授業、進路指導を担当。2014年に発売された『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』と『10歳から身につく問い、考え、表現する力』がベストセラーとなったほか、2015年度は、NHKラジオ『基礎英語2』で作文指導の連載も担当。新著に『ほんとうに頭が良くなる世界最高のこども英語』がある。

(この項 続く)

2018年4月14日土曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(5)

――採用する外国人はどんな人たちですか。

斉藤 博士号や修士号を持っている人もいますし、文学などそれぞれの分野での専門家の先生も多くいます。

――厳格な教育者なのですね。

斉藤 その反対のイメージだと思います。教育とは厳しい修行のようなものではない、と私は考えています。興味のあるものを皆で知ろうではないか、というアプローチを取ってもらっています。選抜に当たって重視するのは、陽気で辛抱強く教えてくれる講師かどうか、という点です。日本人の生徒はシャイな子たちが多いので、その学習意欲を外向きに引き出してくれる、指導力のある講師を採用するように努めています。

――日本人講師には、どんな人がいるのですか。

斉藤 私自身イェール大学の大学院で博士号を取得していますが、ほかにアイビーリーグではプリンストン大学やブラウン大学を卒業した講師もいます。TOEICやTOEFLで満点を取った講師もいますし、博士号取得者も何名も在籍しています。

――J PREPで教えているのは小中高校生ですが、それぞれの学年の英語教科書を復習、予習するという教え方ですか。

斉藤 いいえ、J PREPでの英語教育は、日本の学年別英語カリキュラムに準拠していません。

――社会人向け英語スクールでは、「TOEICで730点取れるようにしよう」「英語検定2級を取ろう」などと標榜しているところが多いですが、J PREPはどんなコンセプトで英語教育を展開しているのですか。

斉藤 英語力そのものを向上させる、ということです。英語力のなかでも特に「先行逃げ切り型英語力への準備」ということを考えています。英語の4技能は、「読む・書く・聴く・話す」です。J PREPでは加えて「考える」の5技能を修得してもらいます。この5技能を学生時代から先行して培って、あとになって実践的な英語力が必要な時が来たら、ただちに活用できる英語能力の開発を狙っています。そうした準備がない人たちとは決定的な差ができる、つまり「逃げ切り」ができるのです。

 言語を習得する上では、年齢に合った適切なアプローチで学ぶことが大切です。大学受験を学習のゴールとして設定するのではなく、本当に使えるレベルまで鍛えた上で受験を迎えるのが私どもの考え方です。そのために、クラスのなかで文法などを解説する日本人講師と、その実践をデモできるネイティブ講師とのチーム・ティーチングを多く行っていますし、iPadを使って自習できるアプリも開発して生徒に使ってもらっています。

(この項 続く)

2018年4月13日金曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(4)

キモはプログラムと教員の質


――新校舎を開設したということは、生徒の数が増えてきたからですね。

斉藤 昨年3月末での在籍者は学童保育100名、小学校低中学年の英語コースの生徒250名、小学校5年生以上の英語教室で2000名でした。今年3月初めに全体の合計が3600名を超えるまでになっています。

――1年間で5割以上増えたわけですね。よほどPRに力を入れているのでしょうね。

斉藤:J PREPでは広告宣伝については抑制的に展開しています。その費用をむしろ教材開発と、質の良い教師の確保に充てているつもりです。

――ファカルティ(講師)の陣容は?

斉藤 現在日本人講師が約50名、ネイティブ・スピーカの講師が30名ほどの構成です。ひとつのクラスで日本人講師とネイテイブ講師がチーム・ティーチングを行うのが当校の特徴です。

――ネイティブの講師は、すでに日本に居住している外国人を採用しているのですか。
斉藤 多くの外国人講師は世界中から応募して来てくれています。私がイェール大学で教鞭を執っていたネットワークからも来てくれています。出身大学としてはハーバード大学院、オックスフォード大学院、ロンドン大学などで学んだ外国人講師がいます。

――海外での採用は書類選考なのですね。

斉藤 いいえ、有力候補者ということになったら、飛行機代と宿泊費を当校が負担して来日してもらい、審査します。模擬授業までやってもらって、良い人を採用しています。

(この項 続く)

2018年4月12日木曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(3)

――本棚のレイアウトやライティング、リラックスできるオープン・スペースのデザインがとても洒落ています。
斉藤 設計してくれたのは、辻本祐介さんという方です。この新校舎の設計では、最先端のオフィスを開発してきたコクヨとチームを組んでくれたこともあり、機能性もとてもよく仕上がっています。良い仕事をしていただいて、大いに満足しています。

――辻本さんは、グッドデザイン賞を受賞したホテルや予備校のリノベーションなどに、いくつもかかわった方ですね。この校舎も建築作品として取材や見学の対象になるのでは。

斉藤 今でも、外を通りがかる方で中を覗き込む人の割合がとても多いです。学習塾だと気づくまで時間がかかるようです。

――棚にはTOEFLやSATなど留学英語試験の問題集もありますね。

斉藤 当校で一番上の学年というと、大学受験生です。今年度は国内大学受験で50名、海外大学受験で7名を指導しました。近年、卒業学年の約1割が海外大学に進学しています。国内大学受験組では、医学部に進学する生徒が多いです。医師のキャリアに英語力は不可欠ですからね。

――私も留学歴があり、よくわかるのですが、学部への留学は下手をするとMBA留学より難しい。

斉藤:J PREPからの海外進学組は、今まで全員が海外帰国子女というわけではありません。普通の中学生、高校生だったのですが、当校に通っているうちに刺激を受けてそのような志を持ってくれた生徒も数多くいます。

(この項 続く)

2018年4月11日水曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(2)

1年間で生徒が1250名増加


――先日は新校舎お披露目パーティにお呼びいただき、ありがとうございました。
斉藤淳氏(以下、斉藤) おかげさまで3月10日に新校舎に移設させてもらいました。この校舎は地下1階、地上7階で床面積が1,300平方メートル(約400坪)あります。約20名定員のクラスルームが16教室、地下階には自習ホールと教材を録音する複数のスタジオなどがあります。

――教室以外には?

斉藤 英語教育のほかに学童保育事業を運営しています。学校が終わった後の小学生を預かり指導しています。その施設に1フロアを、そのほかに7階はスタッフルーム、いわば事務フロアです。ここ1階はライブラリー兼ファカルティ・ラウンジ、チューター(個別指導)スペースとしました。

――このラウンジは壁もなく、オープン・スペースですね。

斉藤 はい、タイプが異なるテーブル類やソファまで備えて、カジュアルにリラックスできる空間を目指しました。すべてのテーブルの天板の下に電源があり、パソコンなどをどこでも使えるようにしています。

――居心地がよさそうですね。

斉藤 生徒が気軽にチューターに相談しやすいというか、遊びに来やすいような環境を目指しています。無料で飲めるコーヒー・サーバーも置いて、みんなが集まってくれるように、と。

――本棚に置かれているのは教材だけではありませんね。

斉藤 英語の絵本から始まって、英文学の古典や図鑑など、知的好奇心をそそるものを揃えています。欧米の大学で使われているテキストも置きました。

(この項 続く)

2018年4月10日火曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(1)

斉藤淳・J PREP 斉藤塾代表(左)。上智大学外国語学部英語学科卒業、イェール大学大学院政治学専攻博士課程修了、Ph D。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授を経てイェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任後帰国し、J PREP 斉藤塾を起業。イェール大学助教授時代はセイブルック寮の舎監も務め、3年間にわたって学生と寝食を共に過ごす。これまで各大学で「日本政治」「国際政治学入門」「東アジアの国際関係」などの授業を英語で担当したほか、衆議院議員(2002-03年、山形4区)を務めた。


少子化という社会的大変動の影響を受けてきたのが教育産業である。学校だけでなく、大手予備校も規模の縮小を余儀なくされて、学習塾や進学塾も講義形式から個別指導へと商品の軸足を移してきている。

 学校以外での英語教育に目を移すと、需要は高い一方、多岐にわたるプログラムと教育機会が巷に溢れ、供給側の競争が激甚になっている。大手英会話学校だったNOVAやジオスの倒産も記憶に新しい。

 ところが、これら2つの不利が重なっていると見えるセグメントで、小学生から高校生までをターゲットとして英語教育を展開し、急成長している企業がある。この春、東京・渋谷に新校舎を開設したJ PREP斉藤塾の斉藤淳代表に、その志を聞いた。

1年間で生徒が1250名増加


(この項 続く)



2018年4月9日月曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(6)

4年でやめればよかった?



 松本会長は就任当初、4年で辞めると周囲に話していたと伝えられている。私の経験から言うと、松本会長のような経営者は「3年やればあきてしまう」。というのは、新しい会社に乗り込むと大いに張り切るし、興奮する。実際にアドレナリンが分泌されるのがわかるのだ。大きな改革をやり始め、その施策に結果が伴い、業績が上ぶれし始める。そしてそのドライブは加速して、3年目、4年目には業績はますます伸張する。不調に沈んでいた企業を再生したことで、そのプロ経営者はカリスマ経営者として一身に尊敬を集める。

 しかし、実はその絶頂時にはもう主な改革や改善のカードは切り終わっていることが多い。ある状況で戦略的に動けた将軍も、別の状況でまた新たな戦略がすぐに浮かぶというものでもない。つまり、ステージが変われば別のタイプの経営者に指揮権を譲るのがよいのだ。ちょうどプロ野球の監督が成功したとしても、数シーズン限りで交代していくようなものだ。

 松本会長の場合、2月にカルビーの創業家出身で松本氏を会長に招聘した松尾雅彦氏が死去したことも影響している。創業家、あるいはオーナーとプロ経営者の関係は微妙で、招聘したのに退任させるなどのケースも多く見られる。そんな関係に陥ることなく、よい関係のままでいた資本家が死去すると、プロ経営者としては後ろ盾を失ったような気がする。あるいは、その招聘者に対しての畏敬の念が強い場合、「俺はこの人のためにがんばるんだ」という気概に私もなったことがある。そうなると、「その人」がいなくなった場合には大きく経営意欲がそがれることがある。

 さまざまな要因が絡み合って松本会長はカルビーを卒業することを選択した。すでにいくつも次のポジションのオファーがあるという。転進して、ぜひ次に引き受ける会社も再生、あるいは十分に伸張させてほしい。松本会長のような経営者事例が出ると、続くプロ経営者が日本にも輩出されていくことだろう。さらば、勇者よ! また活躍する日を見ることを確信して。

(この項 終わり)

2018年4月8日日曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(5)

財務上の手詰まりを再び大きく改善する戦略的な環境も整っていない。カルビーはポテトチップスで国内シェアを71%も取っている(富士経済「2017年食品マーケティング便覧」より)。こんな巨大なシェアを実現したということで松本経営を囃す向きも多いのだが、そんな例外的ともいえる高いシェアは、「あとは落ちるだけ」ということだ。松本会長も内心は忸怩たる思いがあったのではないか。

カルビーの「巨大性ゆえのリスク」は製造面でも顕著だ。16年に北海道のポテト生産が天候不順のために大減産となった。各社ともそれを繰り返さないために、契約農家の確保に躍起となっているが、カルビーの場合、自らが希求するような供給量の増加を担保しきれていない。ここでも成長限界がきている。

 ポテトチップスに次ぐ柱として「フルグラ」が伸びてきているものの、その年間売上額はまだ300億円台と、カルビー全体の10%程度でしかない。私は、前出連載記事でカルビーが状況を打開できるのは海外関連だろう、と提言した。販売とポテト確保の両方の面である。

しかし、海外において不安定材料は、カルビーの2割の株式を有するペプシコの動向だ。09年に結んだ契約の特別条項が19年7月に終了し、ペプシコは出資比率を変えられるようになる。ペプシコは、お膝元の北米でカルビーがシェアを拡大させていく状況にどう関与していくのか。

(この項 続く)

2018年4月7日土曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(4)

私自身、8年前に現役経営者を引退するまで、37歳から22年間、6社で経営を任された、いわばプロ経営者の走りだった。プロ経営者が培った私の感懐、それがダイレクトに松本会長に入り込んでしまったのではないか。成功したプロ経営者の疲れ、というものが松本会長にあったとしたら、2つの領域が考えられる。一つは無限的な業績伸張への期待からの逃避願望だ。もう一つは自分を招聘してくれた資本家、あるいはオーナー、外資なら本社側の上司との関係だ。


好調すぎて手詰まりとなった



 松本会長がカルビーに着任したのが09年。松本時代のカルビーの業績は、素晴らしかった。09年のグループ連結年商額は1373億円だったが、直近の17年3月期のそれは2524億円だった。8年間もの間、毎年平均して約9.0%の成長を持続してきたことになる。多くの経営者ができることではない。

 営業利益の回復はさらに顕著だ。09年の対売上高営業利益率はほぼゼロだったのが、翌10年には早くも6%を超え、17年には11.4%と高い数値を実現した。

 ところが足元を見ると、カルビーでは18年3月期の予想を売り上げ2560億円(対前年比1.4%増)、営業利益275億円(同4.7%減)としているが、第3四半期は対前年で売り上げがマイナスとなっていて、年度末の通期増収を危ぶむ向きもある。そうなると、8年間続いてきた連続増収もストップしてしまうことになる。輝かしい改善実績を誇ってきたカリスマ経営者なら憮然としてしまう状況が近いのだ。

(この項 続く)

2018年4月6日金曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(3)

「3月中旬の週末、栃木県内で開かれた、カルビーの社内イベント終了後のこと。松本晃・会長兼CEOは一緒に食事をしていた伊藤秀二社長に、唐突に切り出した。『僕はもう今期で降りるわ、いい潮時だよ。僕が辞めた後も伊藤さん、カルビーをよろしくお願いします』」(3月29日付東洋経済オンライン記事『カルビー、「カリスマ経営者」突如退任の理由』より)

 この日を境にカルビー社内は大騒動となったと見られるし、3月27日に発表記者会見が行われるや、今度はカルビー外部のメディアも一斉にその理由などを憶測する状況が出現した。

2月に退任勧告をしていた

 私は2月16日記事『カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機』で、このカリスマ経営者に対しての次のような言葉を贈った。

「私も経験したことだが、外から乗り込んだプロ経営者も数年すると、改革のカードを切り終わってしまって、手詰まりになることがある。松本会長が活躍するステージを変えることも有用なこととなるのではないか。新天地でさらなるトラック・レコードを積み上げるのはどうだろう。」

(この項 続く)

2018年4月5日木曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(2)

「どこか不可解な感覚も漂う退任会見だった。27日、帝国ホテルに姿を見せた松本氏は『前職のジョンソン・エンド・ジョンソン(の日本法人)でも社長を9年務めた。カルビーでも一区切りと判断した』。辞める理由らしい理由はこれだけだ。相談役や顧問にもならず、次の体制も『決まっていない』という」(3月28日付日本経済新聞Web版より)

 後任会長は伊藤秀二社長兼COOと見られている。社内的にはそれが順当なところだろうし、松本会長の退任が緊急だったので外部から新たに別のプロ経営者を招請してくるような時間的余裕もないだろう。

 しかし、伊藤氏を抜擢するために松本会長が勇退する、ということでもないようだ。松本会長が伊藤社長に退任の意思を告げたのは3月中旬のことだとされる。

(この項 続く)

2018年4月4日水曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(1)

IR通信2014年8月22日号より
カルビーは3月27日、松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)が6月下旬の株主総会後に退任する人事を発表した。松本会長は2009年にジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人のトップからカルビーの代表取締役に就任してから9年、大幅に業績を伸ばしてきて、同社のカリスマ経営者といわれてきた。

 突然の辞任発表を訝る声も多いのだが、私は2月の本連載記事で松本会長の離任を促していた。カリスマ経営者とされる松本会長にそのような提言をしたのは、私が見た限り、その時点ではほかに見当たらなかった。

 松本会長はなぜ突然辞任したのか。プロ経営者がぶつかる壁について解説したい。

歯切れの悪い退任会見


今回の退任発表は突然のことで、大きな驚きをもって迎えられた。というのは、松本会長があえて退任しなければならないような事案・案件、業績の絶対的な不調などがカルビーには見当たらないと理解されているからだ。

(この項 続く)