2017年6月30日金曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (2)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

トール社買収でやけどした日本郵政に慎重論

 今回の買収案件は、シナジー効果があまりなかった、と私は見ている。確かに日本郵政もグループとして多数の不動産を有しているが、その大部分は小店舗サイズの郵便局だ。一方、野村不動産HDは大型マンションの開発や管理を主要業務としている会社である。駅前の小さな郵便局の土地にマンションを建てるわけにいかないし、その小さな郵便局の管理を大手である野村不動産HDに委託するメリットもない。
 野村証券は、日本郵政が2015年に上場したときの主幹事という縁があった。大型M&Aを実現したい日本郵政がその縁にすがったという、「投資有りき」で始まったディールなのだ。
 日本郵政が大型M&Aを希求したのには、今同社が置かれている状況、タイミングがある。今年1月に政府が日本郵政株の2次売却を決定したのだが、それには15年に初上場した売り出し価格1.400円を市場価格が上回っていなければならない(6月20日終値1,387円)。
 ところが、日本郵政は17年3月期で初の最終赤字289億円を計上してしまった。一方、野村不動産HDの同期純利益は470億円だったので、同社を取得して日本郵政の財務を大幅に改善しようともくろんだわけだ。

(この項 続く)

2017年6月29日木曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (1)

WEBRONZAは、朝日新聞が展開している「論の饗宴」サイト。


「各分野の第一線で活躍する学者や専門家、ジャーナリスト、アルファブロガー、朝日新聞の論説委員、編集委員らが日々、独自の視点からニュースに迫って解説を加え、論を交わしていきます。 「政治・国際」「経済・雇用」「社会・スポーツ」「科学・環境」「文化・エンタメ」の5分野に、約300人にのぼる筆者が、多彩な論考を提供しています。また、その時々の旬の人物のインタビューや定期筆者でない筆者の論考なども掲載されます。」(同サイトより)

私のタイトル記事が6月27日にアップされた。以下、回を分けて転載する。


日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」

2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

日本郵政は6月19日、野村不動産ホールディングス(HD)の買収案件について「現時点において検討を行っている事実はない」とのコメントを発表した。野村不動産HD側も「中止することになった」と発表した。
 買収計画が2017年5月中旬に表面化して以降、野村不動産HDの株価はほぼ2,000円から2,447円(6月16日)へと約20%も値上がりしてしまった。筆頭株主は野村証券を有する野村ホールディングスで33.7%を保有している。日本郵政は野村グループと交渉を行ってきた。
 野村ホールディングスは野村不動産HD株を約6,480万株所有しているので、2,400円時価だと評価額約1,550億円となる。M&A買収交渉なので、日本郵政はプレミアムを乗せなければならない。交渉額は2,000億円台となり、その価格で合意できなかった、ということだろう。
 一般市場から残りの株をすべてTOB(公開買い付け)するところまで日本郵政が踏み込むつもりだったのなら、さらにその2倍の資金投入が必要となった。つまり、最大で6,000億円規模の案件だった。

(この項 続く)

2017年6月28日水曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』台湾で中国語出版



一昨年に上梓した『間違いだらけのビジネス戦略』(山田修、クロスメディアパブリッシング)が台湾で中国語に翻訳、発刊された。
光・現出版、350元(約1,300円)。

同書は韓国でも翻訳出版が進行している。拙著は何冊かが中国語および韓国で翻訳刊行されている。英訳されたものはまだない。

2017年6月27日火曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (3)

参加者の相互選出による最優秀発表者は、(株)岩田商会の村上和穂氏。同社の建材事業部長だ。

村上氏の発表は、業績向上を阻害している最大課題三つをすっきりと捕らえ、それぞれに対して、説得的な解決策を提示して評価されたものと思う。

ブートキャンプ第2期全体を通じての感想として、村上氏は

「目標と課題はつながらなくてもよい、という点が意外な印象でした。課題を解決することが結果として目標をクリアすればよい、という見方を大事にしたいと思います。」

と、アンケートに書いてくれた。私が戦略カードで指導している「課題解決型の戦略策定法」をよく理解してくれたコメントだ。

今期も、箱田忠昭先生、新将命先生の全面的なバックアップと参画をいただいて充実したプログラムとして修了することができた。

次の第3期は8月の末から12月にかけて、である。

(この項 終わり)

2017年6月26日月曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (2)

発表会では、それぞれの発表に対し、直前に2名のコメンテーターを指名する。発表が終わると、この二人のコメンテーターが、責任コメントを出す。最終発表に対してさらにコメントが付け加えられることにより、より建設的に戦略が仕上がる。

私が修了式で述べたことは、

「皆さんは机上の空論として戦略を策定したのではない、戦略セオリーを教えもしたが、単にそのシミュレーションとして戦略を立ててもらったわけでもない。

4ヶ月前には形もなかったそれぞれの実物戦略を成果物として手にした。

願わくば、会社に帰ったら、それをそのまま報告あるいは発表して実践してほしい。私たち講師や、他の参加者の叡智を結集して作ったものなので、現段階でこれ以上のものは出てこないはずだ。」

(この項 続く)

2017年6月25日日曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (1)

リーダーズブートキャンプ第2期の最終講を6月24日(土)に実施。

2月から7講に渡って展開してきた当プログラムは、最終講で参加者が策定した三年戦略の発表会で幕を閉じる。

発表用のファイルを策定するまでに、各参加者は戦略カードを使って、「5つのステップ」を走ってきた。途中、2回にわたって小グループ討議に臨み他の参加者3名との討議を経て、カード選択や表現の強化洗練のプロセスを経てきた。

発表用のファイルは個別に私にメールで提出され、それを添削もしたのだが、今回は特に「補習」として正規の7講の他の日に、1時間ずつの個別指導を行った。

こんな準備を経て、臨んでくれた発表会では、

(この項 続く)

2017年6月16日金曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(7)

やる気度を高める5つの方法



 ギャラップはもちろん「やる気度」を高める施策を提言もしている。一応紹介しておくと、次の5点だそうだ(「The Worldwide Employee Engagement Crisis, A.Mann & J. Harter, GALLUP, January 7,2016」より)。

1.「やる気」対策を会社の人事戦略に組み込む。
2.「やる気」を科学的に評価できる方法で測定する。
3.会社が現在どこにいて、将来どこに向かおうかということを理解する。
4.「やる気」をひとつの構成概念として見る。
5.「やる気」をほかの業務優先と整合させる。

 ちなみに4.は説明文も読んだがわかりにくく、執筆者本人がよくわかっていないことを書き連ねた可能性もあるが、何を列挙しても「施策」らしくはなるのだろう。

(この項 終わり)

2017年6月15日木曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(6)

ギャラップのこの論理によれば、企業業績を上昇させるひとつの目安としては、彼らの調査に現れる「やる気度」を上げればいい、ということにもなるだろう。しかし、経営者としての私の経験からいうと、実は社員全体の「やる気度」を上げるのは建前としてはいいが、必ずしも「効率」の向上につながるとはいえない。

 前出日経新聞記事では、3分類のうち「仕事意欲のない会社員」は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」と解説された。経営者としては、こんな社員たちを改心させ立ち直らせるのは「百年河清を俟つ」が如しのようなもので、できればお引き取り願いたいし、そうでなくてもそんなグループにかかわり合っていてはいけないというのが私の信条だった。

 実践的な経営者やリーダーの心得としては、「通信簿で5の付く社員を探せ」というものだ。正規分布で5点法の通信簿というと、全従業員のなかで「5」が付く社員の割合は7%となる。ちょうどギャラップ調査で「やる気のある社員」の日本における割合に一致する。

 組織の相対的な効率を上げるには、「やる気のある社員」を認知し、権限を委譲して早めに昇進させる、という方法に特化することなのだ。

(この項 続く)

2017年6月14日水曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(5)

やる気のある社員集団が企業にもたらすもの



 ギャラップは3つのカテゴリーに分けた社員たちが、会社に対する貢献で差を生んでいる、ともしている。経営の常識からすれば当然の結論である。同社は、次の9つの項目に対し、「仕事にやる気がある会社員」「仕事への意欲が低い会社員」で、何が違うのかを調査した。

・顧客評価(customer ratings)
・利益性(profitability)
・生産性(productivity)
・離職率(turnover)
・安全に関する事故(safety incidents)
・減損(盗品)(shrinkage<theft>)
・欠勤(absenteeism)
・医療安全に関する事故(patient safety incidents)
・製品・サービスの質(quality)

 そして、調査で得られた「やる気度係数」によって、上位4分の1(やる気の高い会社員)と下位4分の1(やる気の低い会社員)を比較した際の、各9項目における差というものを報告している。

 それによると、9項目で明らかに優劣の差がみられるとされた。たとえばやる気の高い会社員は、やる気の低い会社員と比較したときに、顧客評価を約10%、利益性を22%、生産性を21%引き上げ、離職率、欠勤、安全に関する事故の減少、不良品といった項目に関しても大きく差が出たというのである。

(この項 続く)

2017年6月13日火曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(4)

「それ以上に(筆者注:日本で)問題なのは『不満をまき散らしている無気力な社員』の割合が24%と高いこと。彼らは社員として価値が低いだけでなく周りに悪影響を及ぼす。事故や製品の欠陥、顧客の喪失など会社にとって何か問題が起きる場合、多くはそういう人が関与している」(同)

 実は「やる気」の割合が際立って低いのは日本だけでなく、韓国(11%)、台湾(9%)、中国(6%)と東アジア諸国に共通の傾向だ。中国は13年調査では世界最下位だった。しかし、これらの順位は参加国の経済規模と比し、違和感がある。低すぎはしないか、ということだ。

「労働生産性」の順位からみると、152カ国中日本は32位、韓国は36位、中国(香港を含まず)は83位だった。ちなみに米国は9位、香港は12位である(「労働生産性の国際比較(14年)、日本生産性本部」)。よって、儒教的な価値観による自虐的、卑下的な文化傾向が影響しているのかもしれない。

(この項 続く)

2017年6月12日月曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(3)

やる気のない社員大国、それが日本だ



 来日したクリフトン氏が開示した17年調査結果の一部は、実は13年のそれと大差ない、というか同様な結果を示している。17年で「(1)6%、(2)70%、(3)24%」という日本社員の調査分布は、13年では「(1)7%、(2)69%、(3)24%」だった。

 それにしても、日本の社員の「やる気」は同調査による国際比較で目を覆いたくなるものだ。13年調査から抜粋しても、(1)「やる気のある社員」の割合は世界平均で13%だったのに、日本はその半分以下だった。ちなみに米国のそれは30%で世界3位だったが、1位はパナマ(37%)、2位はコスタリカ(33%)だった。南米の国が前向きかつ幸福に仕事に取り組んでいる傾向は、お国柄として理解できる。また、アメリカ人がいかにも自己肯定的に自らへの評価が高いのもわかるような気がする。

 しかし、クリフトン氏は前出日経新聞記事で、アメリカでも「やる気」改善が起こってきたのは15年ほど前だったといい、「やる気係数」は必ずしも固定的でないという見解を述べている。さらに前世紀では日本の「やる気係数」も高かっただろうという見方も示している。


(この項 続く)

2017年6月11日日曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(2)

「良い子、普通の子、悪い子」




 17年版の正式レポートはまだ発表されていないのだが、同調査は繰り返し行われているので、前回となった13年版から調査手法や分類の定義を知ることができる。

 ギャラップ社は世論調査の分野では世界屈指の会社だ。「世界の職場環境の状況2013」によれば、調査可能な個人サンプルは190カ国地域で2500万人に上るとしている。同調査では毎回140カ国・地域で社員の意識調査を実施しているが、その結果として社員をその「やる気(原語ではEngagement)」度合いにより3種類に分類している。

(1)仕事へのやる気が高い会社員 (Engaged)
やる気にあふれ、会社への貢献度も高い。ビジネスの革新を後押しし、ビジネスをより発展させる。
(2)仕事へのやる気が低い会社員 (Not Engaged)
ただ仕事をやらされている。誰でもできる仕事をただ日々こなす。決して仕事に情熱やエネルギーをそそがない。
(3)そもそも仕事に意欲のない会社員 (Actively Disengaged)
無意識に不幸を招いている。やる気に満ちた同僚が得た成果でさえも無駄にすることがある。

 3つのなかで(2)は「単にやる気がない」だが、(3)は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」とされ、組織的には厄介なグループということだ。

(この項 続く)

2017年6月10日土曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(1)

「Thinkstock」より
世界中で世論調査を展開している米ギャラップ社は、数年おきに各国で社員の「やる気」を調査して発表している。「State of The Global Workplace(世界の職場環境の状況)」というそのレポートが最後に発表されたのは、2013年のことだった。

 17年に入り数年ぶりに調査が行われ、先ごろ来日した同社のジム・クリフトン会長兼CEO(最高経営責任者)が、そのさわりを披露した。同氏によると、日本の企業戦士の「やる気」はすごく低調だ、ということである。

「日本は『熱意あふれる社員』の割合が6%しかないことがわかった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった」(5月26日付日本経済新聞より)

 さらに、「企業内に諸問題を生む『周囲に不満をまき散らしている無気力な社員』の割合は24%、『(単純に)やる気のない社員』は70%に達した」(同)と、ネガティブ社員の割合の多さも指摘している。

(この項 続く)

2017年6月8日木曜日

『残念な経営者 誇れる経営者』  出版記念 戦略特別講演会 6月13日

山田 修氏
『残念な経営者 誇れる経営者』 
出版記念 戦略特別講演会 
「こうすれば勝ち残れる
経営戦略が立てられる」
  (リーダーズブートキャンプ第3期 説明会つき)
第1回 2017 年6月8日(木)15:00~16:45
第2回 2017 年6 月13 日(火)15:00~16:45
 会場:SMBC コンサルティング セミナールーム(東京駅徒歩5分)
 参加料:5,000 円
       (ブートキャンプ第3期に申し込まれた場合、参加費に充当)
 定員:各回30 名
 
★お問い合わせ・お申し込み:
 インサイトラーニング TEL: 03-3449-6301

2017年6月4日日曜日

リーダーズブートキャンプ、第6講は箱田忠昭氏が登壇!

リーダーズブートキャンプ第2期は全7講で進行してきたが、6月3日(土)にその第6講クラスを行った。

この日の特別講義は箱田忠昭特別講師による「説得・交渉・人間関係」。興味のあるドリルによってクラスは文字通り説得された。

『ザ・会社改造』(三枝匡)の後半も報告・討議してもらい読了した。今期は前半に『日本電産流V字回復の教科書』(川勝宣昭)を読み、今年の優良書2冊をカバーできた。

戦略策定を進めていた参加者の第2回グループ発表の残りも終え、いよいよ発表用のファイルの完成を待つ。

2017年6月3日土曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(7)

独断的な巨大買収はつまり、西室氏にとって自らの権力の誇示であり、所有権の再確認という要素が強かったのではないかというのが私の解釈だ。自ら決めればポンと数千億円もの買い物ができる―陶酔感も強かったのではないか。

 日本郵政におけるトール、そして東芝におけるウェスティングハウスの買収、この2つの案件による2社での損害計上は1兆円を超えた。西室氏の「損害関与への突出ぶり」は特筆ものである。

 年商1兆円規模の企業価値を毀損した例としては、負債総額1兆8700億円で旧そごうを倒産させた故・水島廣雄氏や、1兆円の売り上げを達成した後にダイエーを凋落させた故・中内功氏などが記憶にある。

 西室氏の場合はさらに2つの異なる大企業で、大損害に至る意思決定に大きく関与した、あるいは主導した経営者だ。こんなスケールの大きな経営者はこれからも滅多に出ないのではないか。その意味で、「平成の大残念経営者」として私たちの記憶にとどまることだろう。

(この項 終わり)

2017年6月2日金曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(6)

合わせて1兆円超の損害の発生



 西室氏は所有欲の強い人なのだろう、と私は思う。同氏の所有欲の強さは会社経営に当たっては、意思決定力を自らのものとして保持しようとして表出した。主要人事の決定や、海外大型M&Aなどの重要な意思決定の場面でそれは突出して発揮されてきた。

 それらの重要な意思決定が十全なものとして発揮されれば、それは名経営者ということになるのだが、西室氏の場合は「自分はこう決めた、後は任せた、あるいは知らない」と解されるような対応である。その最たる例が、買収したトール社を日本郵政の下に直接つけず、子会社である日本郵便のそのまた子会社に配したことだろう(日本郵政が親会社で持ち株会社、日本郵便は子会社で事業会社)。

 日本国内で津々浦々に郵便局を展開することだけを主要業務としてきた日本郵便が、突然預けられた海外法人であるオーストラリアの巨大会社を無事管理運営できるとでも西室氏は思ったのだろうか。M&A後の正念場となるPMI(Post Merger Integration:買収後統合)の見地からはとても理解できない配置である。

(この項 続く)

2017年6月1日木曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(5)

東証には財界人枠として用意された会長職に就任した。いわば「お飾り」的にいてくれればよい、という性格もあった。製造業である東芝出身の西室氏は金融、ましてや企業としては特異な証券市場運営会社などにはまったく土地勘がなかった。ところが、就任半年後の05年12月にみずほ証券がジェイコム株誤発注事件を起こし、東証側で責任を取って社長が辞任すると、自ら社長に就任してしまうのである。

 さらに東証、日本郵政の社長時代を通じて、西室氏は東芝にも強い影響力を行使し続けた。相談役という立場ながら、東芝本社の38階の役員フロアに故・土光敏夫元会長が使っていた部屋に居座り続け、日本郵政という大企業の社長職にある間も東芝に週3日も出社し続けて院政を敷いてきた。

 不正問題で揺れる東芝が次期社長の選定に苦慮したときに、西室氏は日本郵政社長としての定例会見で「本人が辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ」結果、現社長に室町正志氏(当時会長)が就任した、と語っている。つまり、自らが東芝のキング・メーカーだと広言したにほかならない。

(この項 続く)