2014年7月31日木曜日

モスバーガーの凋落、なぜ? (3)

私の指摘に対して、犬飼准教授は、あっさりと
「ご指摘はその通りです」
と認められた。そして
「その点は本論文の方では触れる予定でした」
と付け加えた。

司会の丹沢安治・中央大学教授が
「発表者の肩をもつわけではないけれど」
と割って入り
「(山田の)対抗仮説ではTobin's qの急落が説明出来ない」
と、指摘した。私もそう思った。しかし、
(それでも私の指摘が無効になるわけではない)
とも思った。すると発表者自身が
「Tobin's qは便宜的に使用したので」
 とおっしゃった。犬飼准教授は真理と真実の前に公平な学者だ、と私は強く好感を持った。

学会で発表者に異論を申し立てるのは居心地が悪く、緊張することである。自分を励まし、手を挙げることにしている。

(この項 終わり)

モスバーガーの凋落、なぜ? (2)

犬飼准教授の発表に対して私が質問した。
「モスバーガーの創業社長、櫻田 慧(さくらだ・さとし)氏が1997年に亡くなりましたね?」
「1996年です」

「営業利益率が急落し始めたターニングポイントが、お示しのチャートだと1996年です。カリスマ創業社長の死去が業績悪化に繋がった要因と考えられませんか。」
私の質問の続き
「加盟店オーナーの自発的組織共栄会が弱体化したというご説明も、教祖逝去による求心力の低下のためと見れるのでは?」
「カリスマ創業社長が押さえ込んできた加盟店と本部の力関係が変わって、ローヤルティの減額要求などが起こったのではないか?」

こんな指摘が流暢に、あるいは発表者と丁々発止と言ったように繰り広げられたわけではない。どうも学会での発言となると緊張してしまい、途中参加者の方の失笑を買いながらようようポイントを絞り出した。

私の指摘に対して、犬飼准教授は、、

(この項 続く)

2014年7月30日水曜日

モスバーガーの凋落、なぜ? (1)

国際戦略経営研究学会の勉強会に出席。
「集合財としての見えざる資源のダイナミクス:優良企業がなぜ競争優位を維持できなくなってしまうのか」
発表者は犬飼知徳氏(中央大学戦略経営研究科准教授)。

ケースとしてモスバーガーの事例を解説してくれた。同社の業績は、1996年に曲がり角を示した、ということをTobin's qと営業利益率の組み合わせチャートで綺麗に示した。
Tobin's qとは「見えざる資源を示すとされる財務指標」だそうだ。学会に出ると、知らなかったことを学ぶことが出来る。

犬飼准教授は、同社の業績の悪化の顕著な傾向の発生と持続を「集合財(見えざる経営資源)の提供が同社FC加盟店に成されなくなった」という仮説で説明してくれた。

1時間の発表が終わり、真っ先に質問挙手をしたのが私だった、、、

(この項 続く)

2014年7月29日火曜日

社長個別指導プログラム 長野県で開始

今春からとある上場企業で社長さんを個人指導している。そのプログラムを、長野県の他の会社で開始した。

最初の会社では、午前に1クラス(1.5時間)、ランチ、午後2クラス(1.5時間ずつ、間に30分の大休憩)というプログラム。1対1で長時間なので、ランチはあえて他の役員の方にお話しを伺うことにし、午後の休み時間には社長にお部屋に戻って貰う。

長野県のこの会社では、他の指導もあり、1日に1クラス(1.5時間)を実施。教材は原則同じ。また、終わって課題図書を残し、「読書感想文」を書いて貰い、次回討議する。今回は好評だった
『プロフェッショナルリーダーの教科書』(山田修他、経営者ブートキャンプ講師陣共著、東洋経済新報社)を置いてきた。この本の「第2講 権威と人望で人を動かす」(新将命)だけに対して感想を書いて貰うこととした。

2014年7月26日土曜日

部長と工場長にリーダーシップを教える

千葉県にある素材加工会社で、工場長二人と営業部長四人を研修。土曜日なのにというか、土曜日なので幹部がまとめて1日を研修に当てられるということだ。

部下をどうやってモチベートするか、そもそも企業組織におけるリーダー(経営者でない部門責任者)の任務は何なのかを考えて貰う。

中小企業の場合、このレベルの管理職になっても、プレイング・マネジャー的な要素から抜けることは難しい。しかし、それを意識して自分でその度合いをコントロールすることは重要だ。

預かった部門(チーム)のアウトプット(業績)を最大化するためにはどんな手段があるか、それを説明し、各自に自分が抱えている具体事例を戦略カードで出して貰い、発表して貰う。

梅雨が明け、暑い夏が関東にやってきた。

2014年7月25日金曜日

経営多角化、 ドメイン・ジャンプを避けろ!

昨日はとある上場企業の社長を半日面談。現在の事業の拡大策についてじっくり相談に乗った。

まず確認して貰ったのは、「当社の経営資源は何か」。つまり「真の経営資源」のことだ。VRIOフレームワークも説明して、その観点から抽出して貰った。

「それではそれらの経営資源を使って出来ることを考えよう」
とした。社長は多角化を模索し始めたので、私は今度はドメイン(事業展開領域)のことを話し、
「ドメインが連続、隣接している領域がリスクがない、経営資源の転用、援用が効く可能性が高い」
と説明し、二人でそのような領域を具体的に検討した。

2014年7月24日木曜日

「部長の指導力・行動力 強化セミナー」 福岡に飛ぶ


毎週地方出講が続いている。
今週は福岡。西日本バンクグループのNCBリサーチ&コンサル殿で、標記の1日セミナー。

九州では、大分、熊本と続いたが、福岡は今年初めて。多数の参加者に恵まれたし、終了アンケートの評点が良かったので、主催者殿が喜んでくれた。
「ずばり『部長』というタイトルでセミナーをやりたかったんです」
とも。

確かに、新入社員や初任管理職対象のセミナーなどは数多いし、組みやすい。しかし、能力開発が進んだ部長以上の幹部を教えると言うことになると、テーマにも講師にも悩むことが多いのだろう。
「部長を教えられる適当な先生だと、前からお願いしたいと思っていました」

そういえば、秋からとある1部上場企業で部長研修を依頼されている。何と、シリーズで10日以上出講する。大企業には部長さんも多いということだ。

2014年7月23日水曜日

管理人は謎の人 (2)


ふと見ると、駐輪場の精算機のところに電話があるではないか。銀行のATMなどにあるパターンだ。受話器をあげると、果たして自動的に繋がった。
「はい、xx社の駐車場コールセンターです」
駐車場?xx社?市が委託している管理会社なのか?事情を話し、
「管理人にも声をかけているのだけど、、、」
と、抗議もした。すると
「?? そちらは無人駐輪場ですけれど?」
と、とまどったような応対が帰ってきた。電話のやり取りは、黙座している管理人のすぐ近くで成されていたので、耳に入っている筈だ。彼はひたすら、手にした文庫本に目を落としている。

私の自転車は、コールセンターから電気信号が発信されたことによって解錠された。私はオペレーターに礼を述べ、しかし再び
「ここにいる管理人は一体何なの?!」
と抗議して家路についた。 

翌日コールセンターからフォローとなる電話を貰い、幾つかのことが分かった。
まず、その駐輪場は市の施設ではなく、そのコイン・パーキング大手の会社が運営する商業施設だということだ。そして確かに
「管理人は置いていません」。

この事件以降この駐輪場を利用すると、親切だった管理人たちの姿が見えなくなった。彼らが座っていた折りたたみ椅子も無くなっていた。
私はどうも居心地のいい避難場所の一つを、地区のホームレスの人たちから奪ってしまった悪人となってしまったようだ。

(この項 終わり)

 

2014年7月22日火曜日

管理人は謎の人 (1)


電車に乗る時、駅まで自転車で行くことがある。駅前の地下に公共駐輪場があるので、そこに乗り捨てることにしている。乗り捨てる、と言っても前輪をロックしてくれる装置が並んでいるので、それに愛車を固定していくのだ。

使用料は安く、初めの2時間は無料、それから2時間毎にわずか100円である。廉価なのに管理人が常駐していて、利用者がいると「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と挨拶してくれたり、「あちらに空きがあります」などと案内してくれた。顔を覚えるほどの利用頻度ではなかったが、何人かが交代で出ていたようだ。
 
先日、帰ってきて自転車を装置から外そうとしたら、ロックが動かない。数回試したが駄目なので、管理人に申し出た。その時居合わせた管理人は、椅子に座って文庫本を読みふけっていた。声をかけたのだけれど、反応してくれない。耳が遠い人かと思い、私は近くに寄ってみて声をかけた。返答、反応が相変わらず、無い。肩に手をかけることまでは憚れ、困惑してしまった。 

(この項 続く)

2014年7月20日日曜日

社長会で「必勝の戦略と組織の立て方」

長浜ロイヤルホテル
ここのところ、毎週地方に出講している。

本日は琵琶湖畔長浜温泉で経営者向け講演会。

大手の1部上場企業が、取引先の中でも若手社長を招いての懇親及び勉強会だ。前泊して入り、朝2時間強話した。

前の晩の懇親会で皆さん相当飲んだはずだが、熱心に聞いてくれ、質問も活発に出た。行きも帰りも、新幹線が大雨のために遅れて閉口した。生まれて初めての場所だったが、観光もせず帰ってきた。

2014年7月19日土曜日

社長を補佐する難しさ ー 経営相談、社長の悩みは様々(3)

三人目は中京地区から来たIT会社の副社長。社長が天才的なIT技術者で、創業は浅いが急成長をしていて、2年後に上場を目指しているという。

相談者の副社長は、社長と意気投合して昨年入社した。入社して分かったことは、この社長と上手くやっていくNo.2がいなく、今までの副社長的な立場の人はいずれも半年くらいしか持たず退職、あるいは解任されていったという。

「社員も、私が入社する前は毎年40%が入れ替わっていました」
という。40%、、、!

「この社長と対処して行くにはどうしたらいいでしょうか?」
もちろん、ソニーの井深さんと盛田さんを目指したいと本人も言うのだが、、、

どんな助言をしたかは記すことを遠慮する。

以上、三人の経営者に助言した。スポットだが、私は経営相談を受けることは嫌いではない。たぶん他のコンサルよりも役に立てているだろうし、社長の悩みというのをイヤというほど分かっているのが私という自負があるからだ。

(この項 終わり)

2014年7月18日金曜日

社長追い落とし ー 経営相談、社長の悩みは様々(2)

二人目は滋賀県から来たこれも老舗の製造業の社長。世襲の方で、昨年就任したという。

承継の相談ということで、最初は大学4年生になるご子息をどう将来の後継者として育てていくか、という相談だった。

ところが、現在の新任社長としての問題点に話しを振ってみると、実はこちらのほうが悩みが深い。私と分析的な対話を重ねて行ったら、
「番頭的な古参取締役二人が、新社長着任を阻害して実権を持とうとしている、それを相談役となった父上が権威付けに担ぎ出されようとしている」
というとんでもない構図が見えた。相談者の社長自身が驚愕した。

これに対する対抗策を助言したが、ここでは書かない。さて三人目の相談者は、、、

(この項 続く)

2014年7月17日木曜日

社長後継 ― 経営相談、社長の悩みは様々(1)

帝国ホテルで経営相談会を行った。1社1時間半枠で開催したところ、各地から3社の申し込みがあり、ランチを挟み同ホテルにほぼ終日滞在。

一人目は、九州から来てくれたとある製造会社の次期社長。親が現社長で65才、本人は取締役社長室長で35才。
「5年以内、できれば2年後に社長を代わって欲しい」
と望まれている。相談は
「その時、社員から本当に受け容れられるためにどう準備したらいいのか?」

アドバイスとして
「社長就任となった時、社員から本当に支持されるには2つの方法がある」
とした。

「1つはこれからどこでもいい、事業部門を担当してしっかりした実績を示すこと」
しかし、その路線ではなく現社長について修行するという。
「それでは、実績の代わりとなる経営知識や経営技法、そして人格を陶冶獲得することだ」
とした。

そのための方法も訓示したが、ここでは割愛する。二人目は、、、

(この項 続く)

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 』書評204(3) 戦略セオリー vs マーケティング・セオリー


経営者ブートキャンプ・クラスでコトラーを発表してくれた社長さんと同感したこと。それは
「マーケティングは普遍だが、戦略セオリーは有為転変する」
ということだ。

ヒトがモノを欲しがり、手に入れようとする購買パターンは過去から変わらない。それを分析して体系化しようとする試みは、だから時間と共に深みを増し精緻化されてきた。

一方、数ある著名戦略セオリーといえば、「後出しジャンケン」といった類のモノが多い。その時々で目に着く成功企業事例を紹介し、もったいぶって解説する。しかし、そのセオリーを使って同じ成功事例が再現できるかというと、そういうことは少ない。そして、時間が過ぎると、それらの成功事例は―例外なく―色あせていく。

コトラーとポーターをクラスで取り上げた私たちは、まずそんな理解を共有したかと思う。

(この項 終わり)

2014年7月16日水曜日

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 』書評204(2) 戦略セオリー vs マーケティング・セオリー

コトラーの大功績というのは、クラス発表によれば次の3つであるという。

1.マーケティングを体系化した。

2.「戦略的マーヶティング・プロセス」の提唱。
R→STP→MM→I→C
(Research, Segmentation/Targeting/Positioning, Marketing Mix, Implementation, Controle)

3.ソーシャル・マーケティングを確立(プロフィット・オーガニゼーションではない様々な組織の活動にもマーケティングを援用拡大)。

コトラーは本書の初版、1968年から継続して上記3点を追加あるいは拡大、さらには精緻化をしてきた。まことに偉大なセオリストである。さて、マーケティングのセオリーを、ポーターに代表されるいわゆる戦略セオリーと比べると、、、

(この項 後一回)

2014年7月15日火曜日

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 』書評204(1) 戦略セオリー vs マーケティング・セオリー

12版(2008年、Pearson Education Japan for JP )。初版は何と1968年。


経営者ブートキャンプでクラス発表をしてくれた人は、外資の社長だったが、彼がアメリカへMBA留学した時(15年ほど前か?)この本がクラスのテキストだった。何を隠そう、私も1980年にこの本(原書)でマーケティングを本格的に勉強し始めた(青山学院大学院)。全世界のビジネススクールはもとより、マーケティングを体系的に学ぼうとする全ての人にとってのバイブルであることは間違いない。
 

クラスでの報告者によると、この本の凄いところは、「進化しているところ」。版を新しくするたびに内容が精緻化し、そして新しいセクションが追加されてきた。それでページが増えてきて、12版日本語版は1,000ページに達している。あちらの原書は、14版まで進んでいると。

その報告によると、半世紀を通してのコトラーの大功績というのは3つあり、それは、、、

(この項 続く)

2014年7月14日月曜日

『経営戦略全史』 書評203(3) 戦略セオリーvs、マーケティング・セオリー

フィリップ・コトラー
マイケル・ポーターを私が評したのは、
「処女作が生涯の最高傑作となった芥川賞作家みたいなものですかな。」
ということがあった(勿論それだけではない)。例えてみれば『太陽の季節』の石原慎太郎みたいな感じか。高齢となって大物感を漂わせ、いまだ盛んに発言だけはするところも似ているか。

高齢となっても現役教授で盛んに活動しているという点では、マーケティングのグル、フィリップ・コトラーも同じだ。コトラーは83才になる今も、ノースウエスタン大学のケロッグ・ビジネススク―ルの看板教授。同校が北米のマーケティングのアカデミックな殿堂的な立場を保っているのは、一重にコトラー教授の存在があるから。1981年に私は同校を志願して、入学が敵うことが無かった。その時憧れたのが既にコトラー教授だった。何と30年前の話である。

コトラーについては別の参加者に報告して貰った。報告によれば、
「コトラーと言えば、何と言っても、、、」

(この項 続く)

2014年7月13日日曜日

『経営戦略全史』 書評203(2) 戦略セオリーvs、マーケティング・セオリー

マイケル・ポーター
それでクラスでマイケル・ポーターの所の記述を報告して貰った。

気になったのが、『経営戦略全史』で
「マイケル・ポーターはハーバード・ビジネス・スクールに進んでクリステンセン教授の教えを受けた」
あるいは
「恩師であるクリステンセン教授が」
などの表現が少なくとも3ヶ所有ることだ。

HBSで「クリステンセン教授」というと、クレイトン・クリステンセン(破壊的技術、イノベーション)しか私は知らない。彼だとしたら、彼はポーターより5才若いし、HBSの教授に就任したのも後となる。もっとも退任したのも早く数年前のことで、一方ポーターはいまだHBSの看板教授の一人として教壇に立っている。

ポーターの競争戦略論は陰りを見せていて、クラスで私は、、、

(この項 続く)


『経営戦略全史』 書評203(1) 戦略セオリーvs、マーケティング・セオリー


経営者ブートキャンプ第9期の第4講を7月12(土)終日。
途中、1.5時間クラスで課題図書の報告と討議。『経営戦略全史』(三谷宏治、ディスカバー・トェンテイワン)』を三回に分けて読む1回目。

本書は30ほどの代表的な戦略セオリーが紹介されている。読みやすくまとめているし、適宜な批判も入っている。概説書、入門書として日本語オリジナルでは大変良い(学者の書いたモノは網羅的すぎ、かつ固すぎてビジネスパーソンや経営者には敷居が高かったり、興味が持てない)。

ブートキャンプの昨日のクラスでは、マイケル・ポーターとフィリップ・コトラーという競争戦略とマーケティングのいわば2代巨頭をまず報告して貰った。それぞれ一人の参加者が報告し、クラス討議する。持ち時間は40分ずつ。すると、、、

(この項 続く)



2014年7月11日金曜日

『10歳から身につく 問い、考え、表現する力』(斉藤淳) 書評202(2)

斉藤淳氏は昨年、J Institute社を起業され、自由が丘に開いた塾のブランド名が「J PREP斉藤塾」である。

もちろん教育者ともなったのだが、政治家・学者から経営者へとも転身なさった氏に、私はマーケティング的な発信をお勧めした。なにより、二人と世にいないユニーク、優秀な出自を世に知らしめることだと思い、ご著書の出版を強く勧めたのである。

斉藤さんは国際政治学者として学術書をお出しになっているが、私が勧めたのは文化人、企業人、教育者としての一般啓蒙書だった。斎藤さんのそのような側面が知られれば、PREP斉藤塾の隆盛は確約される、そう思った。

年が明け、待望の第1書が出た。『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)がそれで、私は早速当ブログ書評194として3月に取り上げさせて貰った。
http://yamadaosamu.blogspot.jp/2014/03/blog-post_13.html

このたびの本書は、斉藤氏の教育者としての側面を強く示し、日本の子供たちの学ぶべき領域が指摘されている。小中学生の子女を持ち、グローバルな思考法を身につけさせたいと望む親は是非読んで、教育方針を再考・熟考する縁(よすが)とするのがよい。

(この項 終わり)

2014年7月10日木曜日

『10歳から身につく 問い、考え、表現する力』(斉藤淳) 書評202(1)

NHK出版、新書。

当ブログでの書評シリーズは、その対象を経営書、ビジネス書としてきた。先日めでたく200冊目をアップし、それは著者からご恵贈頂いたモノだった。201冊目も今回の202冊目もそれぞれのご著者からお贈り頂いた。

本書は、その内容や体裁は一般教養書である。しかし、実はビジネス書としての性格を有している。というのは、この本は著者である斉藤淳氏と、氏が創立なさった学校であり企業である J Institute(J Prep 斉藤塾)の情報発信、つまり周到なマーケティング媒体でもあるからだ。

私に言わせれば、斉藤氏は日本のこれからの20年を代表する文化人となる方だ。40代で元国会議員、イェール大学からの博士号にして元同大助教授、れっきとした国際政治学者で学術著書は著名な賞をもらっている。

そんな煌めく前歴を持って登場した斉藤氏が、、、

(この項 続く)

2014年7月9日水曜日

『本物の勉強法』白川敬裕 書評201(2)

その白川先生が、またご本をお出しになった。ダイヤモンド社もそのテーマにふさわしい著者を迎えたと言うべきだろう。

本の帯にあるように、白川先生は教育ママの理想となる進学を果たされた。さらに東大在学中に司法試験に合格し、史上最年少(当時)24才で裁判官に任官なされている。

白川先生の勉強法とは突き詰めると「戦略を立てて実行」(p95)という、私が経営者に教えていることと同じ手法である。その意味で私と同志と言える。

先生の勉強法は、今に至るビジネスに対する姿勢にも現れている。私の印象は、「誠実と効率」そして「リスポンスの良さ」ということに集約されるか。経営者から「誰かいい弁護士の先生を知らないか」と問われて、紹介したいのが白川氏である。

(この項 終わり)

2014年7月8日火曜日

『本物の勉強法』白川敬裕 書評201(1)

ダイヤモンド社、新刊。著者から贈呈して貰った。

白川先生は私の弁護士。私は若いときから公私で結構な数の弁護士の先生にお世話になっている(刑事で被告などのことは一切無い、念のため)。その中には、日本最大規模の法律事務所や、外国人弁護士などもあった。大きい法律事務所では、何百人も弁護士を抱え、案件ごとに専門家でチームを組ませる。いわゆる弁護士団となる。

近年は白川先生一本槍となった。それは、先生がとても優秀で仕事が手早い、つまりクライアントにとってとても頼りになる弁護士だからだ。

その白川先生が、、

(この項 続く)

2014年7月7日月曜日

孫正義と柳井正 (20) 情熱の天才・孫正義、冷徹な知性派・柳井正

氏ほどの派手な学歴はありませんが、柳井氏は経営者としては恐ろしいくらいの勉強家で、その帰結として論理的な経営判断を下す性向が強く見られます。


『プロフェッショナルマネジャー』(ハロルド・ジェニーン著/プレジデント社)という本の解説を柳井氏が書いています。著者のジェニーン氏はITT社という米国の大手通信社を経営して連続20年以上増益させたという名経営者で、柳井氏が心酔した人です。

本書が出たのは04年、つまり10年前ですが、その時にはすでに柳井氏は自分の経営スタイルをしっかりと自覚し把握しています。例えば、柳井氏は「数字把握力」ということの重要性を書いています。数値経営に立脚すると、その経営者はロジカルな経営アプローチを目指すことになります。

 そんな柳井氏のことを孫氏は次のように評しています。
「柳井さんは客観的に冷静にものを分析して、しかも弱点や欠点を着実に埋めていくという、理系の目をもっています。それを冷静に一つ一つ積み上げていく。分析能力と決断力と何が何でも利益を積み上げていくという執念がすごい」(「企業家倶楽部」<07年4月号>より)

(この項 続く)

2014年7月6日日曜日

孫正義と柳井正 (19) 情熱の天才・孫正義、冷徹な知性派・柳井正


孫氏は、事業を拡大していき次の歩を進めるたびに、まるでそれまでは視野に入っていなかったような大きなビジネス・チャンスにかけて、つまりリスクを取って大躍進を続けてきました。

●冷徹犀利な柳井正

柳井氏の業容の発展ぶりは、孫氏と対照的です。ビジネスに参入した経緯も、実父が開いていた、それこそ町の洋品店を継いだからにほかなりません。そしてグループ年商が1兆円を超えた現在でも、ビジネス構造的には当初の業態を保持しています。

「衣料、ファッション、関連する流通」というカテゴリーの中でひたすらビジネス・モデルを発案し精緻化することによって、業界内の帝王の地位にたどり着いたのです。
 

(この項 続く)

2014年7月5日土曜日

孫正義と柳井正 (18) 情熱の天才・孫正義、冷徹な知性派・柳井正


●孫正義の誇大妄想

 上記表で掲げた「基本的な事業性向」と「ビジネス拡大の手法」については、これまでの本連載で分析してきました。この2つの視点で2人の経営手法を観察すると、「異名を付けるなら」の項目に収斂されると思います。

まず孫氏ですが、柳井氏自身が「孫氏は経営の天才だ」と評したことを本連載で紹介しました。名経営者の柳井氏が一目置くほどの孫氏の天才ぶりは、学生時代から表れていました。せっかく入学した九州の名門高校を1カ月で中退し米国の大学に留学、さらにUCバークレー大学院に進み、在学中に起業してしまう。こんな経歴はスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン(グーグルの創業者)などと重なり、当時の日本ではほかに見当たらない経営者としての出現ぶりでしょう。孫氏自身が、若い時のことを振り返って次のように述べています。

「僕は小学生1、2年のときからいずれ何万人の部下を持つ会社をつくると思っていました。(略)16歳でアメリカ留学する時、親にも友達にも学校の先生にも止められました。しかし英語の勉強やアメリカを体験するのは、大人になって頭が固まってからでは遅い。若いうちに世界を見たいと一人決意してアメリカに飛び出しました。その時からいずれ日本で事業を起こす。日本で成功させたら世界で勝負したいと当時から言っていました。誇大妄想狂といわれていましたが(笑)」(「企業家倶楽部」<07年4月号>)

 
 
(この項 続く)

2014年7月4日金曜日

孫正義と柳井正 (17) 情熱の天才・孫正義、冷徹な知性派・柳井正


実質的な創業社長として日本を代表する2人、ユニクロなどを展開するファーストリテイリング社長の柳井正氏と、ソフトバンク社長の孫正義氏について、本連載で比較・分析してきました。

ここで改めて、2人の特徴の相違を上記表で整理しておきます。

筆者作成

 
(この項 続く)

2014年7月3日木曜日

『社長になる人の条件』 井上和幸 書評200(3)

井上さんが提唱する次の「5つの経営者力」が興味深い。
1.構想力
2.決断力
3.遂行力
4.リーダーシップ力
5.学習力・習慣化力

「経営者力」という概念もいいし、5つの力の相関も説明している。

コトに当たっての「最初の90日」の重要性はその通りで、そこでは私も引用して貰っていた。経営者ブートキャンプで一緒に勉強させて貰っているので共鳴するところも多い。しかし、人材を4タイプに分け、その組み合わせでチーム・ビルディングに効率の差が出る、などの指摘はやはり人材・人事のご専門家だと感心する。

実際に「社長になる人」はもちろん、多数いるであろう「社長になりたい人」には学ぶところが多い書である。

(この項 終わり)

2014年7月2日水曜日

『社長になる人の条件』 井上和幸 書評200(2)

井上和幸さんは、リクルート出身で、私が当ブログで書評シリーズを書き始めた2010年の冬に経営者jp社を創業なさった。と同時に、私と経営者ブートキャンプを立ち上げてくれた。

異名は、「日本一のヘッドハンター」あるいは「社長ハンター」である。これは自称ではなく、同社を立ち上げてから毎年人材業界で年次顕彰(それも日本最優秀として)を受けてきた。

「8000人の経営者を見てきた」と帯にある本書は、そんな井上さんでなければ書けないものだ。良く整理され読みやすく書き出された諸点は、「社長を6回やった」私にも得心のいくところだ。

「社長」という内側に私がいたとすれば、それを選び出し送り込んでいる外側の立場から書かれたのが本書である。その外側からの指摘は、内側にいたものとしておおいに首肯できるのである。

具体的には、、、

(この項、あと一回)

2014年7月1日火曜日

『社長になる人の条件』 井上和幸 書評200(1)

日本実業出版社、新刊。

本ブログでの「書評」シリーズは200冊目を迎えた。経営書、ビジネス書を対象として200冊は結構なものかも知れない。ちなみに本書評シリーズが取り上げた第1冊目は新将命さんの『経営の教科書』(ダイヤモンド社)だった。2010年1月2日、年が改まって初めてのブログ記事として書いた。

あれから4年と半年、先ほど家族から「あまり読んで来なかった」と責められてしまった。しかし、あちらが濫読しているのは漫画だけど。冊数で比べられたら、それは敵うことがない。

1冊目の新さんのご本もご本人からご恵贈頂いたモノだったが、200冊目を記念すべき本書も、井上和幸さんからお贈り頂いた。それ以上に、経営者ブートキャンプの次講、7月にクラス事前課題図書として指定して貰った。全員読んで来て、井上さんの講義に備え、質問参戦するのである。私は基本聞いているだけとなるが。

井上さんの今回のご著書は、、、

(この項 続く)