2015年4月30日木曜日

富士フイルム、そのエクセレントな転地経営(1)

4月新年度に入り、富士フイルムホールディングス(HD)が快調に株価を伸ばしている。9日の終値は4630円と3日連続で続伸、年初来の高値を付けた。

最大の材料は3月末に発表したiPS細胞の開発・製造大手の米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル社(CDI)の買収だ。買収額は3億700万ドル(約368億円)で4月下旬に公開買い付けを完了する予定としていた。CDIの買収によって、iPS細胞を分化させてヒトの臓器や心筋細胞を作製し、開発候補物質の薬効や副作用を調べる創薬支援事業にも参入する。

 この分野で、その技術が世界のデファクト・スタンダード(事実上の標準)となっているCDIを傘下に収めることは、戦略的にとても意味がある。富士フイルムHDは子会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)などで再生医療事業にすでに取り組んでいるが、CDIからiPS細胞の提供を受けることにより、相乗的な業務の拡大が期待されるのだ。

(この項 続く)

2015年4月24日金曜日

寺に油がまかれるとセコムが儲かる、という考えは経営者に必要な戦略的思考である(3)

「工場内に従業員の行動をとらえることができる複数台のカメラを設置したうえで、製造エリアでは手元を大きく映し出すことができる高性能カメラを配置。従業員にはゼッケンを装着させることで個人を容易に識別できるようになり、製造ラインで異物混入などの問題が発生すればすぐに個人を特定できる。

また製造エリアには2人以上揃わないと入れないようにしたほか、単独で居残りするとすぐに警報が鳴る仕組みも取り入れた。このようなきめ細かな仕組みが評価され、前期は30の工場に2000台近いカメラを一括導入する顧客を獲得するなど、大型案件の受注が堅調だ」(4月10日付日本経済新聞電子版記事『セコム、工場・外食・塾…広がる監視需要』より)

 これらの「企業内監視システム」は、さらに通信によりセコムの「警備監視センター」で一括してモニタリングおよび記録することが可能である。需要は無限といっていいだろう。セコムの株価もうなぎ上りで4月10日の高値8621円は、年初から30%も上げている。

「風が吹けば桶屋が儲かる」。このことわざを投資家は「油がまかれればセコムが儲かる」と言い換えられるかもしれない。しかし、企業側の経営者の立場で見ると、「世相が動けば需要がどうなるか」と考えて備えなければならない。さらに、戦略的経営者ならもう一歩先を読み「世相がこう動くかもしれない、それならこんな手を打って待ち伏せしておこう」とまで考えられなければならない。
 戦略的経営者に洞察力と見識が求められるゆえんである。

(この項 終わり)

2015年4月23日木曜日

寺に油がまかれるとセコムが儲かる、という考えは経営者に必要な戦略的思考である(2)

拡大するセキュリティ市場

 他方、時代を先見する企業は、すでに戦略的な展開を始めている。

 例えばキヤノンだ。同社は、昨年デンマークのビデオ管理ソフトウェア会社、マイルストーンシステムズ社(本社:コペンハーゲン市)を買収した。監視カメラ事業の強化が狙いと見られる。そして今月8日には、スウェーデンのアクシス社の株式を公開買い付けで76%取得して、同社を傘下に収めると発表した。アクシス社は監視カメラで世界首位のメーカーだ。ソフトとハードの強者2社を買収して、キヤノンはそれぞれの分野で世界トップに躍り出る。特に監視カメラのビジネス・チャンスはこれから膨大なものとなることが予想される。

 防犯設備の市場が拡大する一方で、施設や企業をアナログで監視警護する、つまりヒトによる警護も需要が高まっている。ヒトによる監視というと、日本ではアルソックやセコムなどの警備会社が有名だ。中でも業界1位のセコムが急激かつ順調に伸びている。警備員を配置する旧来型の派遣サービスだけではなく、ITなどを駆使した「新時代システム警備」というべき分野でも大きく成長している。

例えば、同社が注力している警備サービスに「セコムNVRシステム」がある。これは企業内での監視カメラと出入管理を組み合わせた警備サービスである。

(この項 続く)

2015年4月22日水曜日

寺に油がまかれるとセコムが儲かる、という考えは経営者に必要な戦略的思考である(1)

奈良京都の神社仏閣で油のような液体がまかれた事件は、関東や四国でも被害が広がり、11日までに6つの府県で合わせて27寺社・城の被害が確認されている。

被害となった文化財には世界遺産や国宝までもが数多く含まれる。奈良では世界遺産である東大寺の国宝、大仏殿の須弥壇や南大門の金剛力士像、京都では同じく世界遺産の二条城や東寺など、それ以外の地域でも鹿島神宮(茨城)、香取神宮と成田山新勝寺(共に千葉)、三嶋大社(静岡)など、そうそうたる古寺名刹が被害に遭った。

「大切なものをないがしろにする気持ちが(犯行に)あった。憤りを感じる」(鹿島神宮の神職)
 まったくその通りで嘆かわしいことだが、「管理者側も、かけがえのないものを守れなかった」と指摘しておかなければならない。何しろ預かっているものは、国宝や世界遺産なのだ。

 一部施設では監視カメラが設置されていたので、警察はその映像の分析を進めるというが、セキュリティが不十分な施設も多かった。被害に遭った文化財の多くは宗教施設で、多くの訪問者は「参拝に来る」という、いわば「究極の性善説」を前提にしていたところに悪者が入り込んでしまったのだ。したがって、今回の事件を契機にしてセキュリティに対する意識と需要が加速するだろう。

(この項 続く)

2015年4月21日火曜日

『捏造の科学者 STAP細胞事件 』須田桃子 書評222(2)

本書はまた、科学ジャーナリズムが実践される過程を如実に示した。一つの記事を紙面に出すまでどのようにして情報を集め、関係者あるいは学者などにコンタクトを取るのか。

そしてそれらを取捨選択する記者自身の学識あるいは学習とはどんなモノなのか。それらの密度とレベルの差が、他紙と異なるスクープを生み出すというプロセスが良く理解できる。

本事件は、笹井芳樹氏の自死という痛ましい結末をもたらした。それについて筆者も本ブログ「欠格のトップ・野依理研理事長、責任取らぬまま辞任 怠慢でSTAP問題の傷広げる」(2015.3.9)で強く非難した。しかし私の稚拙で声高な指摘よりも、本書のfact-baseで抑揚を押さえた事態の指摘が遙かに有効に説得している。

それにしても、、「捏造の科学者」はこのまま何の罪に問われないままでいられるのだろうか。

(この項 終わり)

2015年4月20日月曜日

『捏造の科学者 STAP細胞事件 』須田桃子 書評222(1)

文藝春秋社、2014年12月刊。脱稿したのが11月ということで、出版が急がれたことが分かる。また、それは本書に限ってはテーマからして時宜を得た措置だった。一読、「これは大宅壮一ノンフィクション賞」だろうと思ったら、4月7日に受賞したばかりだった。

著者は、毎日新聞の科学部門の記者。本問題を追いかけて、スクープを連発したことから執筆依頼を受けたと。脱稿まで急かされた事情をみじんも感じさせない、緻密な記述だ。

物理学専攻修士という出自を持つ理系高学歴ならでの、専門性の高い科学事件となったSTAP細胞事件に対する深い理解がまずある。次に同じく理系的な論理的で、事実や起こった事象を客観的に叙述していく構成姿勢が有る。

その二つの資質に加えて、事態を明晰につむぎ直す分かりやすい文章力がある。これらにより、本書は大宅賞にふさわしい充実を見せた。文系である筆者でも内容を理解しながらページを辿れた。

(この項 続く)

2015年4月19日日曜日

セブン&アイ、鈴木会長の次男が取締役就任、世襲のような違和感(4)

康弘氏は、今回の役員就任決定までに経験も十分に積んで実績を示している。1996年にソフトバンクに入社するや、99年にはイー・ショッピング・ブックス(09年12月にセブンネットショッピングに社名変更)を設立して、代表取締役社長に就任した。同社はトーハンやヤフーからの出資を受けたが、若くしてこのような著名企業が出資した企業の社長に就任するというのは、なかなかのことだと思う。

 ところで、トーハンというと鈴木会長が新卒から7年半、イトーヨーカ堂に転じるまで在籍し、関係が深かった会社だ。鈴木会長は現在でもトーハンの取締役で、一時は副会長の職にあった。鈴木会長の後継者は、セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長でほぼ固まっているといわれているので、康弘氏の役員就任がまさか世襲などということはないのだろう。

 しかし、筆者なら「李下に冠を正さず」あるいは「痛くもない腹を探られたくない」という経営行動を選ぶ。

(この項 終わり)

2015年4月18日土曜日

セブン&アイ、鈴木会長の次男が取締役就任、世襲のような違和感(3)

●従業員経営者という出自を超える振る舞い

 しかし、セブン&アイHDにおいて、鈴木会長は従業員経営者という出自を超えて振る舞っているようにみえる。というのは、今回の決算発表と同時に、鈴木会長の次男・康弘執行役員(50)が取締役に就任すると発表されたのである。今秋に本格的に開始するインターネットと実店舗を融合させたオムニチャネル戦略の責任者として、事業を指揮していくという。

 セブン&アイ・グループのように売り上げ規模10兆円を超える大企業で、世襲のような役員就任があるのは極めて珍しい。オーナー企業や創業家が存在する企業であれば、経営者の係累が役員になるのは珍しくないし、受け入れられることだろう。

 筆者はもちろん康弘氏の能力に疑義を呈するものではない。セブン&アイHDとしてももちろん、同氏の実績と能力による役員就任だと説明することだろう。 同社のような大企業で、会長の子息が偶然にグループ社員5万5000人より優れているというのは素晴らしいことだ。さすが、大経営者である鈴木会長の子息だけあると賞賛したい。

(この項 続く)

2015年4月17日金曜日

セブン&アイ、鈴木会長の次男が取締役就任、世襲のような違和感(2)

今回の決算で、売り上げではコンビニ事業が2兆7270億円、スーパーストア事業が2兆120億円とそんなに大きく離れていないのに、営業利益ベースでは両事業に14倍もの開きが出た。そしてコンビニ事業は大きく伸びているが、スーパーストア事業は前期を大きく下回った。

 この業績の差について、筆者は1月31日付本連載記事『セブン&アイ株価下落の元凶“お荷物”ヨーカ堂を即刻売却すべき 超優良グループに変身』で次のように分析した。http://yamadaosamu.blogspot.jp/2015/02/blog-post_2.html

「イトーヨーカ堂も例外ではない。年を待たずして赤字部門に落ち、セブン&アイ・グループの大きなお荷物になることは必至だ。イトーヨーカ堂を除いたら、売り上げ約3兆円、営業利益約2400億円の大優良グループが出現する」

 そしてそれを決断実行できるのは鈴木敏文会長以外にはなく、「鈴木敏文氏の最後の大仕事は、イトーヨーカ堂の売却ではないか。(略)イトーヨーカ堂は同グループにとっての祖業だからこそ、従業員経営者である鈴木氏でなければできない『最後のご奉公』がそこにある」とした。

(この項 続く)

2015年4月16日木曜日

セブン&アイ、鈴木会長の次男が取締役就任、世襲のような違和感(1)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)が2日に発表した15年2月期連結決算は、コンビニエンスストアのセブン-イレブン加盟店分も含めた全店売上高が前期比6.6%増の10兆2356億円と絶好調だ。国内小売業で10兆円を超えたのは初という。昨年4月の消費増税の逆風にもかかわらず、営業利益も4年連続で最高を更新し、前年比1.1%増の3433億円を計上した。

 事業別に見ると、コンビニ事業の営業利益が前期比7.5%増の2767億円で計画から67億円上ぶれたが、イトーヨーカ堂をはじめとするスーパーストア事業は同34.8%減の193億円で計画より134億円下ぶれた。また、セブン銀行などの金融関連事業は好調で、同5.1%増の471億円だった。

 セブン-イレブンでは、自社で企画したプライベートブランドPB)のほか、レジ脇のいれ立てコーヒーやドーナツの販売などの好調もあり、業績面で競合他社をますます離している。今回の決算でも、グループ全体の売り上げの約7割を占めるコンビニ事業が業績を押し上げ、セブンの全店売上高は前期比6%増の4兆82億円に上った。

(この項 続く)

2015年4月15日水曜日

『人と企業はどこで間違えるのか?』ジョン・ブルックス 書評221(2)

なぜこんな本当にClassicな書が訳出出版されたかというと、それは単純におもしろいからだ。

ジョン・ブルックスは雑誌『ニューヨーカー』で金融経済分野専門の記者として活躍したが、小説も何冊か発表している。つまり作家としての顔もあり、本書に収められた10の企業事例の描出においてその才能を発揮している。つまり、ストーリー・テリングに優れている。

各事例では、実名と当時の肩書きで関連者が登場し、それぞれのケースを臨場感に溢れて展開させている。それも社長クラスの経営者だけでなく、実務を担当したマネジャークラスまで登場させてリアル感(実際リアルなのだが)を出している。

1963年に起こったハウプト証券の破綻と、その扱いによっては未曾有の金融危機が起こった危機(第4章「もう一つの大事件」)など、「エー、そんなことがあったの」と、驚いた。事態が進行する当日にケネディ大統領の暗殺が起こり、アメリカ中が騒然となる中、債権銀行の同意を取り付けにニューヨーク証券取引所の主人公がロンドンに乗り込む所など、息を呑ませる。

それぞれのケースは半世紀も前のことなので、読者が本書から直接的なビジネス・ヒントを得られるかは保証しない。しかし、私たち日本のビジネス・パーソンが知りもしなかったアメリカでのビジネス上の大事件が実によく取材され、そして-本書の手柄だがー再構成されている。肩を張らずに読める「知られざる経済大事件集」だ。

(この項 終わり)

2015年4月14日火曜日

『人と企業はどこで間違えるのか?』ジョン・ブルックス 書評221(1)

ダイヤモンド社、14年12月刊。
新刊と言っていい出版タイミングだが、原著は、、書誌学的に言うと何だか分からない。

原題Business Adventures(ビジネスの冒険家たち)といって副題がTwelve Classic Tales from the World of Wall Street(ウォールストリートの世界から12の古典的なお話し)となっている。この原書が、14年8月の出版である。本翻訳版はそこから10のお話しを訳出した、とある。

だが帯に
「ウォーレン・バフエットからビル・ゲイツに渡され、20年間読み続けられた最高のビジネス書」
とあり、だから14年版をはるかに遡る原著があるはずだが、見当たらない。無いとすると、その帯の惹句はどういうことなのか。

内容は、1959年から69年間に書かれた著者のエッセーを集めたものである。なぜこんな本当にClassicな書が訳出出版されたかというと、、、

(この項 続く)

2015年4月12日日曜日

危機マック、打開策はFCによるマック“逆”買収である(4)

では、上場企業である日本のマクドナルド買収するには、どのくらいの資金が必要だろうか。直近の株価による時価総額は3500億円ほどで、米マクドナルドの持ち分は53%ほどである。3500億円の約半分にプレミアムをつけて、2000億円ほどで入手できるだろう。苦境に立ち、新しいCEOを迎えた米本社にとっては、涎が出るようなキャッシュではないだろうか。

 2000億円の資金は、自前で用意しなくてもレバレッジド・バイアウト、すなわちマクドナルドの資産を担保にして事前融資を受けるかたちで調達できる。FCが本部を買収するのをフランチャイジー・バイアウト(FBO)と呼ぶ。 こうした手法に違和感を感じる向きも多いかもしれないが、マクドナルドはそもそも藤田商店の子会社として発足した。

筆者がコンピュータランド・ジャパンというFC本部の幹部だったとき、有力FCだったカテナ(現システナ)の小宮善継オーナーが秘密裏に米国本部を訪問し、電撃的に日本法人を買い取ってしまった。1987年とずいぶん前の事例だが、当時本社から派遣されていたアメリカ社長にも事後通達という電撃的なデールだった。「潰れれば家屋敷もなくなる」というFCオーナー経営者ならではの果敢な手段だった。
「起こってしまうと、必然だったように見える」というのは、多くの経営現場で筆者が経験してきたことでもある。

(この項 終わり)

2015年4月11日土曜日

危機マック、打開策はFCによるマック“逆”買収である(3)

そして、苦しいのはマクドナルドよりもFC加盟店である。同社の約3000店舗のうち2000店舗以上がFCとされる。オーナー1社で10店平均、年商20億円程度とみられるが、中には北陸中心に128店を展開するクォリティフーズのように100店以上を抱えるオーナーも散見される(『苦しむ外食産業』<週刊東洋経済eビジネス新書No.102より>)。

 年商が20億円、あるいは200億円規模の企業で月間売り上げが4割近く減ってしまったら、一体どうすればよいのか。

●FCがマクドナルドを買収という妙手


「窮鼠猫を噛む」ではないが、大手FCがマクドナルドを買収するのが奇手妙手ではないかと思う。もし筆者が企業再生投資ファンドのマネージャーだったら、大手FCオーナーに「合弁会社をつくってマクドナルドを買収しよう」と提案する。

 交渉先は日本のマクドナルドではない、米マクドナルドだ。なぜなら米マクドナルドも苦しいのだ。米マクドナルドが3月9日発表した2月の世界既存店売上高は、前年同月比で1.7%減少。消費者の健康志向を受けて、他のフード・チェーンに客を奪われているのだ。スティーブ・イースターブルック氏は3月1日付で米マクドナルドCEOに就任して、ただちに「戦略上の優先事項を白紙にする、差し迫った必要性がある」と危機感を示した。

(この項 続く)

2015年4月10日金曜日

危機マック、打開策はFCによるマック“逆”買収である(2)

あ今回の総会での目玉人事とされたのが、退任する原田泳幸会長に代わってロバート・ラーソン氏が本社から送り込まれることと、下平篤雄副社長(営業担当)の就任である。ラーソン氏は16歳から米マクドナルド本社に勤務し、下平氏も店舗からのたたき上げで、本部、有力フランチャイズチェーン(FC)の役員を歴任してきた。両氏ともマクドナルドの現場やオペレーションを知悉している。

 さてカサノバ社長マーケティング畑、ラーソン会長と下平副社長は現場オペレーション畑という布陣だが、「現場に近すぎはしないか」という懸念も残る。3000店舗も有する年商2000億円企業には、原田前会長のようなプロ経営者が必要なのではないだろうか。別の言い方をすれば、「今のやり方で袋小路に入ってしまっているのに、過去のスペシャリストばかり集まってしまった」と評することもできる。

 本部トップがこのような人事を決定したのは、マクドナルドの悩みの裏返しでもある。昨年1年間で同社の店舗は111カ所が閉店、FCの撤退は69店舗に及んだ。

(この項 続く)

2015年4月9日木曜日

危機マック、打開策はFCによるマック“逆”買収である(1)

3月25日に開かれた日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)の定時株主総会でサラ・カサノバ社長は、異物混入問題をはじめとする一連の同社商品をめぐる品質問題について、説明不十分であったと謝罪した。

 株主総会で報告された2014年12月期の決算は厳しいものだった。期限切れ鶏肉使用問題や商品への異物混入問題を受け、年間売上高は対前年比14.6%減の2223億円、営業損益は同182億円減の67億円の損失に沈んだ。既存店売上高も同11.2%減となり、売り上げ減は今年に入って加速しており、1月は全店ベース、既存店ベースとも38.6%減、2月は既存店ベースで28.7%減となり、昨年2月以降13カ月連続でのマイナスとなった。
 今回の総会での目玉人事とされたのが、、、

(この項 続く)

2015年4月8日水曜日

「半日で2015年度の自社戦略を創り上げる! 」セミナー実施

4月8日(水)午後一杯、表記のセミナーを実施。

戦略カードを使って「5つのステップ」を駆け足でやってもらう。

広島からおいでになった経営者は6月に社長に就任なさるという。
「この機会でこの技法を学べて本当に良かった」と。私も、「就任に向かってしっかり準備し、きちんとした理念や戦略を社員の人に示しなさい」と助言。

他に、大会社の新規事業担当の方が事業発足に当たって戦略策定をきっちりしたい、ということでおいでになった方など。

2015年4月7日火曜日

ユーシン 田邊社長 高額報酬 辞める、辞めると言いながら(3)

13年度、ゴーン氏は9億円以上の報酬を得ているが、会社に対して5271億円もの経常利益をもたらしている。ゴーン社長のCOEは529.8となる。ユーシンの経常利益額は10億6000万円ほどだったので、田邊氏のCOEは1.3にすぎない。また両社の規模は年商ベースで68倍もの開きがある。68倍規模の日産を経営しているゴーン氏より、田邊氏は407倍過分な報酬を得たといえる。

同様にユニバーサルの岡田氏のCOEは29.2だったので、田邊氏は岡田氏より23倍ものCOE報酬率で受領したということになる。つまり、上位3社長の中で田邊氏の報酬はCOE的には極めて突出している。

14年11月30日付本連載記事『話題のユーシン社長公募、なぜ失敗?』でも取り上げたとおり、田邊氏は高額報酬を得る一方、ここ数年間後継経営者探しで迷走を続けている。上場企業としては珍しく2度にわたって後継社長を新聞広告などで募集した。そして実はその前にも1人外部から迎え入れている。つまり3度も外部から後継社長を迎え入れようとした。


 しかし、現在でも田邊氏が会長兼社長の座にあることを、筆者は同記事で「つまるところ、オーナー経営者である田邊氏が禅譲したくないのだ」などと指摘した。経営者にいくら報酬を払うかは、もちろんその企業が決めることである。そして株主総会で追認されれば、規定に則ったということだ。しかし、外部から見れば「辞める辞めると言っている社長が、日本でも指折りの高額な報酬を手にしている。そしてそれは他社に比べて極めて破格だ」ということになる。田邊氏に限っていえば、「日本で経営者をやるのも悪くない」ということだろう。

(この項 終わり)

2015年4月6日月曜日

ユーシン 田邊社長 高額報酬 辞める、辞めると言いながら(2)

公表されているユーシン社員の平均年収額は552万円なので、田邊氏の年収は社員の151倍に当たり、日本の経営者としては突出している。国内企業で14年3月期の役員報酬(個人)が高かった上位100社では、役員と社員の平均年収の格差が平均44倍だった(14年7月24日付東京新聞より)。

ちなみに、今月3日、田邊氏の14年11月期の役員報酬が14億500万円と、上場企業を対象とする開示制度が始まった10年3月期決算以降の報酬額としては過去最高だったことも明らかになっている(以下、ユーシンと田邊氏に関する記載については、13年11月決算期ベース)。

●日産ゴーン社長より407倍も過分な報酬?


 業績さえ上げていれば、それに応じて経営者は多額の報酬を得ても良い。では、ユーシンの田邊氏の報酬を、日産のゴーン氏、ユニバーサルの岡田氏と比べてみよう。比較に当たってCOE(Compensation on EBIT)という指標を使う。COEというのは筆者が策定した経営者報酬の適性度だ。経営者が、自身の得ている報酬の何倍の経常利益(EBIT)を自社にもたらしているのかを表す。経営者が報酬1円につき会社にいくらの経常利益をもたらしたかという、わかりやすい指標だ。年商1000億円以上の大企業であれば、COE100以上が望ましい。


 13年度、ゴーン氏は9億円以上の報酬を得ているが、、、

(この項 続く)

2015年4月5日日曜日

ユーシン 田邊社長 高額報酬 辞める、辞めると言いながら(1)


2013年5月~14年4月、国内で年収1億円以上の報酬を得た上場企業役員が443人出たという。

「報酬のベースである基本報酬、業績による報酬、賞与の3項目合計だけを取り出すと、報酬ベース総額のトップは、日産自動車カルロス・ゴーンCEOの9億9500万円となる。2位はユーシンの田邊耕二会長兼社長(8億3400万円)、3位はユニバーサルエンターテインメントの岡田和生会長(8億1000万円)などが続く」(3月18日付東洋経済オンライン記事『“年収1億円超”の上場企業役員443人リスト』より)

 筆者はかねがね、「日本の上場企業の役員報酬は欧米に比べて低い。退任後10年間も株主訴訟の対象となるリスクを考えればもっと高くてもよい」と主張してきた。『2013年役員報酬・賞与の最新実態』(労務行政研究所)によれば、日本では社員数1000人以上の大企業でも社長の年間報酬は平均5643万円で、これは社員の平均年収の8~10倍程度である。一方、アメリカではCEOの年収は13年、社員の331倍に上っていたという調査結果がある。

公表されているユーシン社員の平均年収額は、、、

(この項 続く)

介護保険報酬 9年ぶりの引き下げ デイケア事業者の淘汰も とびっきりホールディングス社は戦略で対応(4)

「人財採用のレシピ」では(1)第一印象(2)適性(3)やる気が、いくつかの項目と共に掲げられている。おもしろいのは、高齢者施設だからこそ、若い美男美女サポーター(職員)が喜ばれるという点だ。

面接でカネ(待遇)のことを聞く人は採用しません。弊社は働きがいを提供しますし、自らの貢献や成長に喜びを感じる人をサポーターに迎えています。ですから当初6カ月の採用としています。弊社の企業文化との適応を、しっかり観察するためです」

 いかなるビジネスも営利事業の側面がある。しかし、松田氏はデイケア事業の社会的責任も強く自覚している。

「私たちは、緊急や異例の受け入れを断らない、というポリシーでやっています。私たちがお預かりをお断りしたら、そのお年寄りはどこへ行けばいいのでしょう。特殊ケースで介護しなければならないご家族の負担は、限界を超えてしまいます。今後は、デイケアを補完したりする関連事業への展開も考えています」

 ベンチャーというとITなどのイメージが強いが、サービス産業で、かつ健康福祉の分野で戦略経営に打って出た、とびっきりHDの経営は注目に値する。

(この項 終わり)

2015年4月4日土曜日

介護保険報酬 9年ぶりの引き下げ デイケア事業者の淘汰も とびっきりホールディングス社は戦略で対応(3)

「09年秋に卒業して、翌5月には『デイサービスとびっきり1号店』を開業していました。しっかり戦略発表をやらせてもらったおかげです。自分が居住していたのは東京でしたが、介護業界で働く弟の地盤である大阪市淀川区が、新幹線開通や万博開催から50年近くたったことで当時住み始めた世代の高齢化が進み、介護を必要としているお年寄りが多いとわかり、その地区に集中出店することにしました。ランチェスター戦略に従い、ドミナント出店したのです」(松田氏)

●経営哲学や戦略を言語化

 とびっきりHDは、この4年間に立て続けに8店を開業して、大阪府のイケア事業者としてはトップクラスの売り上げ規模となった。同社の特長は、松田氏がプロ経営者としてしっかり「経営の原理原則」を押さえ、戦略的な経営を実践していることだ。
 15項目からなる「とびっきり行動指針」を定め、スタッフと共有している。だから、ぶれない。そして、「人財採用のレシピ」や「感動レシピ」などを設定して運用している。つまり経営者の経営哲学や戦略を、しっかり言語化して示しているのだ。
「人財採用のレシピ」では、、、

(この項 続く)

2015年4月3日金曜日

介護保険報酬 9年ぶりの引き下げ デイケア事業者の淘汰も とびっきりホールディングス社は戦略で対応(2)

今回の引き下げで特に影響を受けるのが、通所介護事業所(通称:デイケア)といわれるショートステイだ。デイケアの数は、2002年4月時の9726事業所から12年4月時には3万1570事業所と、10年間に3倍強となった(厚生労働白書<13年版>)。

その基本報酬が約5~6%下がるという発表で、休業を決めた事業所もすでに出てきた。定員が10人以下のデイケア施設「小規模デイ」では、年間240万円ほどの減益という試算もある(3月2日付介護職向けウェブマガジン「けあZine」記事『介護報酬改定を受けて小規模デイ経営者が思うこと』より)。

●介護事業にプロ経営者


 しかし、そんな介護事業者にとっては逆風の中で「当所は価格改定などせず、戦略対応で乗り切っていく」という経営者がいる。とびっきりホールディングス(HD)代表取締役の松田淳氏だ。小規模事業者が多いデイケア施設で同社もその例外ではないが、とびっきりHDの特徴は、自社をベンチャー企業として明確に捉え、プロの経営者がその事業を発足させた点だ。

 松田氏は以前、大手銀行の行員だった。企業再生ファンド転職して、さらにターンアラウンドマネジャーとして独立。とあるメーカーの再生に成功して、自分もエグジットしていた。「次は起業を」と考え、09年に筆者が主宰する「経営者ブートキャンプ」で半年間学ぶ間にデイケア事業の起業戦略計画を練り上げた。

(この項 続く)

2015年4月2日木曜日

介護保険報酬 9年ぶりの引き下げ デイケア事業者の淘汰も とびっきりホールディングス社は戦略で対応(1)

日本は史上例のない超高齢化社会に突入した。現役ビジネスパーソンに対するネガティブな影響については2月6日『介護のための退職者、年間10万人の衝撃』で触れたが、筆者の98歳の老義母も介護を受けつつ生活している。

家族にとってありがたいのは、介護保険による種々のサービスだ。介護必要度が本人の状況などにより認定され、介護ポイントが支給される。そのポイントを使って、ケア・マネジャーに相談しながら対象となる介護メニューからカフェテリア方式でサービスを選択できるという仕組みである。健康保険と並んで、日本とは本当にいい国だと思える制度の一つだ。

 4月から、介護保険サービスを提供する事業者に支払われる介護報酬が改訂される。介護職員の処遇改善加算として一人月額1万2000円を上乗せできるようになるが、介護報酬全体としては2.27%の引き下げだ。介護報酬は3年ごとに改訂されるのだが、引き下げられるのは9年ぶりのことである。

(この項 続く)

2015年4月1日水曜日

『孫正義の参謀: ソフトバンク社長室長3000日』嶋聡 書評220(2)

嶋 聡氏
本書は興味深い。しかしながら、読者としての筆者の興味からは少しずれる。

本書を購入したのは、経営ヒーローである孫正義がそれぞれのビッグ・プロジェクトでどのように立ち回ったか、判断したか、悩んだかという点に興味があったからだ。

著者は、元政治家だけあってご自分の信念や自己主張が強く、また松下整形塾でもリーダー的な存在でもあったにふさわしく見識や知識に富む方だ。その結果、、本書は厚すぎる(442ページ)。

開示された孫正義エピソードの中で、私が最も興味を感じたのは第7章の東北大震災時に福島原発メルトダウンの情報をいち早く著者が伝えた後の孫正義社長の行動だ。孫さんの人間くさい反応や、「ポケットマネーで30万人を疎開させる」という義憤の発露に感動させられた。

とてもおもしろい本だが、もっと凝縮すればさらにとても良い本に仕上がったと思う。

(この項 終わり)