2011年10月31日月曜日

「成功の法則92ヶ条」三木谷 浩史 書評99



幻冬舎、2009年刊。言わずと知れた楽天三木谷オーナーによる、「成功Tips集」。三木谷さんと随分近い人から、
「三木谷という経営者が分かる」
と勧められ、一読。
「92条」という箇条書き形式なので、軽く読めてしまう。違和感も異議も無いが、心にのこるレッスンの印象が少ない。経営手法についても、大いに納得。ただ、氏は起業家なので情熱とエネルギーの度合いが、私のように雇われ社長の「覚めた判断、犀利な実践」とは大いに大いに異なる。
会議の開き方がおもしろかった。事前にテーマや情報を開示して、参加者に質問をこれも事前に提出、共有するという。会議の席では結論は簡単に出るようになった、という。これで総人間時間数は八分の一に減った、と。
実戦可能な技法だと、感心。

2011年10月30日日曜日

「日本の安心はなぜ消えたのか」山岸俊男 書評98



集英社インターナショナル社、2008年刊。社会心理学の重鎮が、その学問分野からの透察により「常識の嘘」を指摘する、といったテーマ。

どこの國の場合でも、行動形式にはその社会での自分に対する利益を最大化するドライブが効いていて、「日本的」と考えられていたものも、時代によって変遷してきている、つまり不変なものではない、という。

従来の日本社会は、農村に代表されるような集団主義社会で、その中では(知っている同士では)「安心」が保証されていた。しかし、現在は信頼社会に移行しているのでそれに対応する行動規範を習得しなければ、社会的苦痛が増大する。著者は、その新しい行動規範として「商人道」を上げている。

今までの日本人の行動様式を理解するのには助けとなるが、本書の主張に二つの点で賛同できない。
1.日本社会は現在信頼社会に移行しているのか。突出している社会事象とか経済事件などは、実は何時の世にも有り得ることで、特異な現象をベースとした議論を鵜呑みには出来ない。そもそも、社会全体の価値観はそんなに全面的に移行しうるものなのか。太平洋戦争での敗戦などの大エポックがあったのか。
2.信頼社会に移行するための新行動規範、「どうすればよいのか」の概念提出がクリアではない。「武士道」の不要の指摘と関連して「商人道」を称揚しているのだが、大分唐突感がある。

著者の認識のベースとなった「日本の安心」は基本的に損なわれてしまっているのだろうか。犯罪発生率や医食のシステムを考えると、まだ捨てたものでは無いどころか、こんなに良い國は世界でも少ないと私は思う。

経営戦略論 基礎研究と応用研究





経営戦略論の研究分野について考えた。自然科学研究の分野では、「基礎研究」と実経済に寄与しようという「応用研究」に分かつことがある。
戦略論での「基礎研究」というと、戦略セオリー論になるだろう。ポーターや、コア・コンピタンス、ブルー・オーシャンなどだ。「分析と解説」で経営の事象を整理理解しようという立場だ。

「応用研究」というと、数多いフレームワークがそれに当たるだろう。問題は、「実経済・実ビジネスに寄与する研究」の性格が期待される応用研究なのに、フレームワークは自社や環境の分析作業に終始していて、実質的な戦略寄与の実を上げないことだ。

2011年10月29日土曜日

中央大学ビジネススクール 河合忠彦教授 「ブルー・オーシャン戦略論の誤り」



拙著「超実践的経営戦略メソッド」(日本実業出版社)では、何カ所にも渡って河合先生のご持論やグラフまで引用させて貰い、学恩を忝なくさせて貰った。引用に当たっては事前にご許可を頂き、発刊した際に謹呈申し上げた。
先月学会総会で立ち話をさせて貰った時にも暖かいお言葉を頂き、感激した。

河合先生が12月10日(土)に行う公開講座でその題名を標記となさる、という。私が拙著で稚拙に主張したテーマを展開してくださるものと受け止めている。是非参加して講筵に連なりたいのだが、経営者ブートキャンプの講義の日なので残念。
先生の公開講座は、本日のタイトルからリンクが。

2011年10月28日金曜日

任天堂 岩田聡社長 潮目の会見




27日の会見で岩田社長が今期の最終赤字の見通しを発表した。
「大きな時代の、終わりの始まり」
と、私は感慨深い。

同社の業績が最終赤字になるのは、業績開示の開始1981年来初めてのこと。
私が20代の半ば当時日本最大の玩具メーカーだったトミー(現タカラトミー社)に勤めた頃、任天堂はまだ花札メーカーで老舗ではあったが、トミーより遙かに格下の会社だった。

1992年に私が王氏港建(WKK)の日本法人の社長に就任したら、我が社の最大顧客がセガ(現セガサミー)で、製造受託させて貰ったのがTVゲーム。この分野でセガと任天堂が世界の市場を2分していた。
「潮目が変わった」
と感じたのは、ソニーがプレイステーションで参入した時。
「セガに勝ち目はない」
と判断した我々は、セガには極秘でソニー・コンピュータ・エンターテイメント社のくだらき副社長を訪ね、製造受託を懇請した。生憎なことにソニーはメーカーなので、受注には至らなかった(任天堂とセガはファブレスメーカーであることで有名)。

私がWKKを退職した後、セガはTVゲームから完全撤退してしまう。
今回、任天堂のような専用ゲーム機の時代は終わりはじめた、と思う。時代はスマートフォンでのゲーム提供となっていくだろう。

2011年10月27日木曜日

「一勝九敗」柳井正 書評97



新潮社、2003年刊。フリースの大ブームが何年間か有り、ユニクロの年商が下がった「踊り場時代」、そして玉塚氏を社長に据えた頃の本。柳井市が創業以来の歩みを振り返っている。執筆時の業績で少し弱気になっているのか「60から65才当たりで引退しようと」などと心にもないことを書いていたりする。この数年後には玉塚氏を放逐し、帝国を再び率いることになる。

本書は、柳井氏が意識的に
1.新しいビジネス・モデルの構築を目指したこと(ポーターの2極競争理論の意識的な否定行動)
2.経営資源の発展段階による創発戦略の繰り出し
を行ったことを確認できる。

私が近著「超実践的経営戦略メソッド」(日本実業出版社)で事例としてユニクロを取り上げたときは、本書を資料・文献として取り上げなかった。今回読了して、同社の過去の行動規範が(この資料を使わなかったにもかかわらず)私の分析と全く合致していたことを確認できた。

もちろん、稀代の創業経営者、柳井正の経営本としても汲むべきところは大きい。発信を続ける経営者として、松下幸之助亡き後、注視傾聴していきたい。

2011年10月26日水曜日

「超実践的経営戦略メソッド」 NIコンサルティングの「おすすめBooks」に



(引用)
雇われ社長として6社の再生を手がけたコンサルタントが書いた経営戦略立案のための実践本。ポーターの競争戦略をはじめ、コア・コンピタンス、ブルーオーシャン、ゲーム理論など有名な戦略論は単なる分析手法であり、現実の経営では役に立たないと一刀両断。マッキンゼーやBCGなどの戦略コンサルもこきおろし。なかなか楽しい。おっしゃる通り。どんなに戦略論を勉強しても、実際には大して役に立たない。

続きは
http://www.ni-consul.co.jp/books/
または本日のタイトルからリンク。

2011年10月25日火曜日

楠木建、ジェイ・バーニー、そして、、




所用で都心に出かけ、有楽町駅前の三省堂(交通会館)に立ち寄った。
「経営戦略」の棚をチェック。数十冊の専門書や俗流ビジネス書が割拠している。
目の高さの棚、2列を使って「表紙の面見せ」展示が行われていた。上の棚が目線高さなので、最上等席ということだ。

私の新著「超実践的 経営戦略メソッド」(日本実業出版社)は、その上の棚の左に2冊並べで掲出して貰っていた。2冊顔出しは私と、もう一つだけで、楠木建「ストーリーとしての競争戦略」。下の棚、右側にあった。私の今回の本は、多分に楠木「ストーリーとしての、、」の異例な売れ行きに反応しての、商業目的ベースでの刊行でもあった。三省堂有楽町店での扱いからすると、悪くない。

しかし、それよりも何よりも、拙著の右側に並べられていたのが、ジェイ・バーニー「企業戦略論」であった!こちらは上中下の三巻本なので、上の段は私の2冊横並べと、バーニーの三巻で占められていた。

この分野で書を著し、どれだけ続くかは分からないが、あの大バーニーと並べて貰えたとは!!人目がなければ万歳をして飛び跳ねるようなことだった。今夜は一人静かに杯を挙げて祝うことにしよう。

おっと、私は下戸だったので、禁断の饅頭など三つくらいも喰らってしまおうか。

2011年10月24日月曜日

アクロネット 石田知義社長 渋谷に貸しオフィスを 安い!




アクロネット社は多数のIT企業を「ネット」して多彩なビジネスを展開している。
お世話になった石田社長から連絡を頂き、
「渋谷駅30秒という至便なロケーションで貸しオフィスを開業する」
と。

内容を見ると、安いし使いやすい。スポットでも借りられる。
「週に2回カフェで仕事をこなしているくらいなら元が取れる」
とか。

本日のタイトルからリンクを貼った。リンクからサイトを覗いてみる価値あり。

2011年10月23日日曜日

「本物のリーダーとは何か」 ウォレン・ベニス 書評96



海と月社、2011年刊。「史上最高のビジネス書ベスト50のひとつ―ファイナンシャル・タイムス紙」だそうである。

私にはそうは思えない。著者達は冒頭で、先行類書について、
「リーダーシップの解釈は多岐にわたり、それぞれが鋭い洞察を含んでいるが、説明としては不完全で、とうてい満足できるものではない」
と、喝破して始めているのだが、本書を閉じて思ったことは、
「それって、自分たちのことについて弁解してから始めたんだろ?」
ということだ。

そんな感想を残した理由は二つある。立論の方法論と、主張する内容の両者だ。
「90名にわたる成功した組織リーダーに直接インタビューして結論を出した」
とのことだが、その資料とその取り扱いについて断片的にしか示されていないので、その調査というものがしっかりした構成によって行われたものか、集まったデータの分析法が適切だったものかうかがえない。それどころか、著作のページを埋めるためにつまみ食い的にデータを出していて、その解釈は恣意的なものではないかと伺わせる。

内容についても突っ込みどころが多い。リーダーシップとは個人に関する議論の筈だが、6章では「組織の学習」にすり替わっている。原著が書かれた1985年の頃にはクリス・アージリスによって「Learning Organization」論が提唱され始めていたので、本書もそれに乗っただけとみることができる。
「マネジャーはものごとを正しく行い、リーダーは正しいことをする」
という定義についても、その証明について触れていないし、そもそもこの概念分けそのものもよく理解できない。よく理解できない場合は、内容がおかしいか読者の能力が足りないか、である。
「未来はもう始まっており、バトンはわれわれに渡されているのだ」
この文は何を意味するのか?読者にただ恥ずかしい思いをさせるために書かれたのだろう。

SMBCコンサルで「部長力強化」セミナー



同社でもう何回も開催して貰っている、「部長力強化セミナー」を10月22日に実施。

前半3時間「戦略立案の方法」。後半3時間「コミュニケーション力を磨け」。土曜日だがそれぞれ20名強の参加者。
モニターしていた主催者側責任者から、「やり方が変わりましたね」と。前半の方は8月に作った戦略カードを前面に出しているが、後半の方はもしかしたら落語修行の成果が出ているのか。

部長クラスを対象にした秋の公開コースは、先月みずほ総研でもやらせてもらいこちらも盛況だった。レパートリーの一つとして定番のように出講させて貰っている。

2011年10月21日金曜日

「経営者の器」 連載(7)



下の<図>は、一般的な「事業承継のフロー」を示したものだが、このなかで「承継の方法・後継者の確定」というステップが極めて重要となる。
次回は後継者候補のうち、「子息後継者」について解説する。
<図>事業承継のフロー

(図)が上手くコピペできない。不備なブログで申し訳ない。

「経営者の器」 連載(6)



◆まずは何とか3代目まで
「同族企業」という用語は税制上の呼称で、このごろは「ファミリー・ビジネス」という言葉を使う。
ファミリービジネス・コンサルタントの草分けである武井一喜氏は、著書『同族経営はなぜ3代でつぶれるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のなかで同族企業について、「永続と繁栄の仕組み作りをしなければ自然に3代で終わる」と指摘している。そして、「ファミリー・ビジネスが3代目まで続くものは12%」だけという欧米での調査結果も紹介している。
経営者としては「永続の仕組み作り」を是非実現したいものだが、当面はせいぜい「次の次」までの存続を確実にしたい。それにはまず「次の一手」、つまり自分の次の経営者を誰にするか、どうするかという問題にしっかり向き合う覚悟が必要だ。

東レ 前田勝之助名誉会長 「今の問題、中期の課題、長期の展望」



日経「私の履歴書」連載中の今朝の記事。前田名誉会長が追憶で
「東レが直面している今の問題、中期の課題、長期の展望を示して意識改革を徹底させる必要があった」
と、記載している。時期を三つに分けて把握しているの犀利な経営者だと思った。

私が提唱している「課題解決型の経営戦略立案」では三年という時間枠を設定している。1年なら短すぎる、来年のことで予算措置など終わってしまっている、逆に5年・10年は「ビジョンやミッションの世界」としているわけだ。

今朝の記事の中でもう一つ印象に残ったのが、
「ふと気づくと独りで居酒屋にいることが多くなった。社長になるまでそんなことは一度もなかっったのに。」
社長というポジションが如何に特殊なものを語る経営者がここにもいる。でもその実相はなってみなければ理解は出来ない。

2011年10月20日木曜日

「経営者の器」 連載(5)



◆オーナー企業の7割が後継者未定
実際、帝国データバンクが3月に発表した調査では、「会社の代表者名と筆頭株主名が同一の『オーナー企業』は全国に約41万社あるが、そのうちの約7割で後継者が決まっていない」という。
400万社以上あると目される同族企業のうち、「オーナー企業」が41万社だとすれば、残りの360万社ほどの同族企業は「筆頭株主が代表取締役ではない」ということになる。 
つまり、同族による経営承継は崩れ始めているのだ。私が以前から、「非親族による経営承継は過半に達した」との推定を示してきた所以(ゆえん)である。

シェイク社 吉田実社長 「ぶら下がる30代の活性術」





日経産業新聞10月5日号に大きく、吉田実社長の記事が掲載された。吉田氏は、今年のご著書「新ぶら下がり症候群」(東洋経済新報社)(本日のブログタイトルからリンク)で30代社員に蔓延している疲弊感などを見事に指摘した。
この記事では、対策として三つのポイントを掲げている。
同氏は、経営者ブートキャンプで第2期・第3期と連続参加してくれた。OBが大いに活躍してくれて嬉しい。

2011年10月18日火曜日

「経営者の器」 連載(4)



創業オーナーが経営承継に悩んでいる
(有)MBA経営 代表 山田 修

◆日本ではほとんどが同族企業
 会社法における「大企業」の定義は、「資本金が5億円以上の会社」である。そうすると、我が国に存在する421万企業のうち、実に99.7%は「大企業」ではなく「中小企業」ということになる(総務省「事業所・企業統計調査」2006年)。
さらに、資本金1億円未満の会社で同族企業の割合は97%(国税庁「平成19年度税務統計から見た法人企業の実態」)なので、その割合を中小企業全体に当てはめれば、400万社以上が同族企業だということになる。
わかりやすく言えば、「日本の会社のほとんどが同族企業であり、ほとんどの会社が事業承継の問題を抱えている」、つまり「経営承継は、ほぼ全ての会社の問題」ということなのだ。

2011年10月15日土曜日

「超実践的経営戦略メソッド」 アマゾンレビュー星5つ「こういう手法が欲しかった!」



アマゾン、3つめの読者レビューが出たので、下に掲げる。おりしも出版社から、「大手書店で堅調に売れている」という嬉しい知らせも。

戦略立案はやりだしたらきりがない仕事だ。専任者がいれば別だが、MBAプログラムで教わる戦略論をもとに立案していると、いつまでたっても終わらない。特に忙しい中小企業の経営者にとって、やりたいと思っていてもなかなか手を付けにくにものだ。本書はタイトル通り、非常に実践的な戦略立案手法だ。社長として経営の実務に携わりながら経営学の博士課程で学んだ著者でなくてはできない体系化だと思う。
現場の実践から生まれた知恵が生かされている。私の社長時代にもこの手法を知っていれば良かったと思う。
戦略立案コンサルタントにとっては脅威になるかも。

経営者ブートキャンプ 第4期 いよいよ開講




第4期がいよいよ10月15日(土)から始まった。定員いっぱいの10名で船出。

初日は「成長戦略」と「戦略カードとシナリオ・ライティングを使っての経営戦略立案指導」。後者は拙著「超実践的 経営戦略メソッド」(日本実業出版社)をテキストとして、これから全員に実際に戦略を立てて貰う方法を指導。
早速、宿題として「目標設定」と「課題の発見」のカード出し、カード選び、理由の裏書きを持って帰って貰う。

次回の読書課題を引き渡し、報告者2名を指名。

申し込んでくれた面子を見ると、社長有り幹部有り、オーナー会社有り外資有り。大企業からの参加が少ないのはプログラムの性格上から。来週以降での戦略立案ステップの第1段階として、各自の自社および自己紹介をしてもらった。志とレベルの高さに、クラスは互いに感銘を受けた。

来年3月の発表大会、そして参加者の成長。変貌が楽しみだ。

2011年10月9日日曜日

「経営戦略メソッド」書評 「本当に経営戦略が立てられた」



アマゾンに読者レビューが。星5つ。
本書に紹介されていた「戦略カード」を取り寄せ、著者が提唱した「戦略カードとシナリオ・ライティング」技法で当社の3年経営戦略を立ててみた。
休日を1日がかりだったが魔法のように、発表できる戦略パッケージが手元に残った。自分の頭の中に詰まっていたものを整理して引きずり出してくれたというのが感想。
さらに読者サービスの「発表用テンプレート」をダウンロードして、それに残ったカードを戦略ツリーとして書き込んだ。このスライドを見せながら、手元のカードの裏を読んで行けば、立ててみた戦略が発表できる。全体として上手く出来た方法だと感心した。簡単に各ステップを追っていけばできてしまうという点でとても実用的で、使える。

使えない、セオリーだけのものなら意味がないがこれなら各部門長にもやってもらい、発表させると有効だとも思った。

2011年10月8日土曜日

「経営者の器」 連載(3)



資本承継より経営承継が先だ!
(有)MBA経営 代表 山田 修

◆10年かけて行う経営承継
私の経営実体験からは、「会社を将来も存続繁栄するように仕上げたいのなら、経営承継の方が大切だ」というのが実感である。
実は「資本承継」の方が、備えるのは簡単だ。オーナー企業であれば、資本家経営者がその気になれば短期・長期の資本政策などを整備できる。それにあたっては、税務や経理系の先生方にお世話になればよい。希望するガバナンス形態に適した施策や組み合わせが、選択肢として用意されている。
ところが「経営承継」は、このように簡単にはいかない。もっと長期の時間枠で準備していかなければ、うまい「後継者Mix」にたどり着けない。
「Mix」と言うのは、「後継社長が1人で経営できるわけではない」からだ。
「経営承継には10年かけろ」――この言葉の意味、そして、どんな後継者を育てればいいのか。これから6回にわたり解説する。
<図>事業承継には2つの承継がある

「経営者の器」 連載(2)



資本承継より経営承継が先だ!
(有)MBA経営 代表 山田 修

◆もう一つの要素、経営承継
2005年当時、私は現役の経営者であった。その頃、社長を務めていた会社には、買収ファンドからの派遣経営者として赴任していたのだが、それも含めて今までに6つの会社の経営を委託されてきた。いずれも「雇われ社長」だったので、私の場合、ずっと「資本承継」とは無縁の立場だったわけだ。
そのような立場の者としては、事業承継とは「経営承継」に他ならなかった。すなわち、「自分の次には誰に社長になってもらえばよいのか」ということである。
そして、「後継経営者候補として選んだ人を、どうやって育て上げていくか」が自分の責任だと思っていた。
「経営者にとって最後で最大の仕事は、よい後継者を見つけ、育てることである」とよく言われるではないか。
そんな思いから、「事業承継には2つの大きな側面がある。資本承継と、それから経営承継だ」という指摘を掲げている。

「経営者の器」 連載(1)



三菱東京UFJリサーチ&コンサルティングから依頼を受け、同社の提携金融機関の取引先企業に毎日配信されている情報サービスがある。昨年、6回にわたり月次で「経営幹部が会社を潰す!」という連載を行った(それは、今年の4月以降、本ブログで分割掲載している)。
幸い好評だったので、4月から第2シリーズを寄稿した。本連載では、新連載した「後継者の器」を分割掲載していく。本日はその第1回目。

【後継者の器(1)】
資本承継より経営承継が先だ!
(有)MBA経営 代表 山田 修

◆カネとガバナンス
 2005年に上梓した『あなたの会社、誰に継がせますか?売りますか?』(ダイヤモンド社)という著作がある。
それまで「事業承継」に関する書籍と言うと、税理士や公認会計士の先生方によるものがほとんどだった。それらは、「事業承継」が有する重要な側面である「資本承継」に焦点を合わせて、解説や対応策を提示したものが中心であった。
数の上で全企業中最多の同族会社においては、ファミリー間での株の移転や相続の問題に自然、興味が向くものだ。また、それらにともなう相続税や企業のガバナンスなどの問題をどうするかなどが注目される。つまりこれまでは、「事業承継と言えばカネと統治権」として捕らえられていたと言えるだろう。

2011年10月7日金曜日

「資本主義はなぜ自壊したのか」中谷巌 書評95




(株)集英社インターナショナル、2008年刊。大著の印象が残るが、380ページほど。その印象は、重厚な文明比較論を展開しているところによる。
著者の立場はエコノミストなのだろうが、近年の世界的経済不調をアメリカ型の「グルーバル資本主義」の不調・限界と見て、その根源を西洋の1神教による文化的な背景と価値観に見いだしている。それへの対立軸として日本の多神教(八百万の神々:山田注)をあげ、日本文化の優位性を指摘している。

西東という比較は単純過ぎ、日本が先進国の中でも唯一の例外的な文化規範を持っているという著者の認識は正しい。文明論の引用として、日本神話で吉田敦彦を挙げているのも学的センスがよい。日本神話というと故大林多良博士を持ち出して新しがる向きが居るが、「吉田敦彦は大林を超えた」と、これは私の直接の恩師だった故吉岡日廣(ひろし)先生の言。吉岡先生は学習院大学の国文科主任教授で、私の恩師。私の在学時代は大林先生に学んで「何とすごい先生か」と驚嘆したものだが、吉岡先生によると、「吉田先生は、、」ということだった。吉田先生も吉岡先生の招聘で学習院大学でも教鞭を執ってくださったそうだ。

グルーバル資本主義の限界についての著者の分析と指摘は首肯できるものがあるのだが、それではPOST「それ」には何が来て、あるいは「それ」をどう修正すればよいのか。当たり前だが、未来への予測と回答までは著者を持ってしても示し切れていない。

東西文明や宗教の分析は迫力があり、教養に資する。

2011年10月6日木曜日

(株)ピアット 横田真太郎社長 新方針を表明



(株)ピアットの年次事業報告および次年度計画発表会に招かれた。同社は学校給食の分野で最古参で著名な食材商社。

横田真太郎氏の新社長就任のお披露目のような節目の発表会で、多数の金融関係や取引先が招かれていた。

横田新社長が「経営4方針」を発表。
1) 強い販売力の構築。
2) ピアット・ブランドの育成強化。
3) 期待される人材の育成強化。
4) 社員満足の企業文化。

社長によると、特に4)を新しく打ち出したという。
「自分のキャラクター(明るくて率直な方である)に合わせた雰囲気の会社にしたい。顧客や取引先も大事だが、まず社員を幸せにしたい」、と。

新社長と同社の大きな発展を祈る。私との関係?それはまたいつか書こう。

2011年10月5日水曜日

ホンダ 伊東孝紳社長 混乱した戦略を開陳




10月5日(水)朝日朝刊に、伊東社長のインタビューが載った。矛盾と混乱に満ちた発言を辿ってみよう。

「もはや日本は製造・輸出拠点としては世界の中心ではない。(略)輸出は続けるが、国内生産の一-二割までだ」
はい、それは貴社のご方針ですから。

「国内で100万台生産する今の体制は維持する」
? 実はその前に「今は国内生産の三-四割を輸出している」とおっしゃっている。輸出を激減させるのなら、国内生産はそれに伴って大幅減、となるのではないでしょうか。算数が合わない。

「軽自動車の販売を今の倍以上に増やす」
とおっしゃっているのですが
「国内の販売も限界があるから食い合いになる。大変な競争になる」
と、今から目標未達の言い訳を言っているような。

「日本での生産は残さなければならない。(略)ホンダの二輪車の国内生産は世界生産の1%程度だが、必死に国内を残している」
伊東社長の、四輪車の国内生産に関する見通しは限りなく低くなる、というのが本音なのではないか。1%という数字を挙げているということは、そこまでの低落を意識しているということだろう。
だとすれば、このインタビューはまず
1.率直でない、真意を述べていない、不誠意な発言という印象が残る。

次に、「あれを止めるのだが、これも残したい」というのは、
2.経営戦略の「トレード・オフ」(あちら立てればこちらが立たず)という「選択の思想」に反している。
いわゆる「虻蜂取らず選択」であり、全く妙手ではない。

1.と2.を結びつけると、伊東社長は経営戦略を上手く組み立てられないヒトであるか、あるいは考えていることを率直に述べないヒトであるかということになるのだろうが、どうだろうか。伊東社長に近しいヒトのコメントを待ちたい。

2011年10月4日火曜日

みずほ総研 「部長の指導力・行動力」強化セミナー 盛況



「最強経営者に教わる 社長の右腕になる!」と副題された1日セミナーに出講。本日のタイトルからリンク。
50名近くの出席者で大盛況。大いに面目を施す。みずほ総研での前回出講は、あの3月11日以来。早いものだ。大阪での出講の打診を貰う。

2011年10月1日土曜日

デスティニーインターナショナル社 関﨑大社長、経営者ブートキャンプで最優秀発表

本日経営者ブートキャンプの最終講、「戦略発表大会」が行われた。 終日掛けて全員に発表して貰い、参加者全員が互いに採点した。

その結果、最若手(29才!)の創業社長である関﨑氏が最優秀賞を獲得。同じくディバーシー社事業本部長梅田剛氏とダブル受賞。

関﨑氏は、経営者ブートキャンプ3期を通じての参加者で今までの最年少にして、唯一の20代。この若さで本格的な経営書の読み込みが参加前までに既に端倪すべきものがあったし、経営へのコミットメントもひとかたなら無いものがある。 発表した経営戦略も、向こう5年間を見据えての堂々たる目標、方針、そして計画で、クラスに強い印象を与えた。 願わくば長生きして彼の15年後を見てみたい。