2015年9月30日水曜日

セブン&アイ、「儲からない」ヨーカ堂はもう売却しかない!(4)

ヨーカ堂は売却すべき?

 「大から小へ、そして無へ」という流れの中でセブン&アイHDが模索しているのは、オムニ・チャネルだ。ネットを駆使してリアル店舗のビジネスと融合させるというのだが、現段階では試行段階の域を出ない。顧客に家に専用端末を置いてもらって、注文があれば届けるということを目指しているのか。現在のイトーヨーカ堂でも個別宅配に応じているが、事業として成功している段階ではとてもない。

 セブン&アイHDに関して私が前から提言しているのは、イトーヨーカ堂は売り払って、コンビニ事業に特化するべきということだ。イトーヨーカ堂の年間売上高は1兆3000億円(単体)に上るにもかかわらず利益がほとんど出ていないし、今後業績は悪化していくだろう。しかし、今売却すれば資産価値などから数千億円規模のキャッシュが手に入ると思われる。売却先は米ウォルマートか仏カルフールなどが候補になってくるであろう。

 一方、同社のコンビニ事業は、2兆7277億円の年商で2767億円の経常利益という素晴らしい業績だ。セブンイレブンとしてアメリカや中国には展開しているが、これを加速して世界展開すべきだろう。イトーヨーカ堂という大きな事業を手放せば、「選択と集中」が効き、売却キャッシュにより世界展開の原資が十分にできる。

(この項 続く)

2015年9月29日火曜日

セブン&アイ、「儲からない」ヨーカ堂はもう売却しかない!(3)

GMS不調の理由は、一つには人口減と所得減という傾向が続いたということだ。そして、高齢化が消費行動を変えてきてしまった。郊外の大型GMSには車で買い物に行くわけだが、それが確実に減ってしまっている。億劫になってきたのだ。もう一つの原因は、ユニクロに代表されるように業態ごとの専門大型店のチェーンが各地に展開され、GMSでの購買機会を奪ってきている。この傾向も止まらないだろう。

 小売業態は、大きな流れとして「大から小へ」という道を粛々と進んでいる。百貨店は「旗艦店主義」で一世を風靡したそごうが破綻し、2強時代に入ったGMSもその2強自身が不調にあえいでいる。群雄割拠となっている食品スーパーは、サンエー(沖縄)、イズミ(広島)、ベルク(埼玉)など地方の小型企業のほうが好調を保っているケースもあり、全国的にはオーバーストアの観は否めないし、何よりコンビニエンスストアの脅威に直接晒されてきているのがこの業態だ。

 「大から小へ」ということで、コンビニが隆盛している状況となっているが、「小から無」への流れも加速している。「無」とは無店舗、すなわちネット通販のことだ。

(この項 続く)

2015年9月28日月曜日

セブン&アイ、「儲からない」ヨーカ堂はもう売却しかない!(2)

イトーヨーカ堂は業態としてはGMSであり、この分野で国内最大のイオンリテールと共に、突出した2強となっている(3位はユニー)。スーパーにはそのほかに食品スーパーが多数存在する。GMSと食品スーパーの両業態を併せたスーパー業界全体がそもそも長期的に退潮していて、業界全体の売り上げがピークを付けたのは1997年の17兆円弱だった。15年は13兆円程度となっている。

 この間、特にGMSは不調で、イオンはマックス・バリュ、マルナカ、ダイエーなどを、セブン&アイHDはヨークベニマル、ヨークマートなどを傘下に収めている。有力プレーヤーが皆力を失い、2強に収斂してしまったのだ。

GMS不調の理由


 セブン&アイHDのスーパーマーケット事業を見ると、イトーヨーカ堂含む年商は2兆120億円だったが、営業利益は25億円のみである(15年2月期、以下同じ)。0.2%の営業利益率などは誤差の範囲で、「儲かっていない」。イオンもGMS事業の年商は3兆3550億円あったが、営業損益は16億円の赤字に沈んでいる。

(この項 続く)

2015年9月27日日曜日

セブン&アイ、「儲からない」ヨーカ堂はもう売却しかない! (1)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)が9月18日、傘下の総合スーパー(GMS)、イトーヨーカ堂について「活性化が進まない店舗を中心に、約40店舗の閉鎖方針を固めた」と発表した。全店舗の2割に当たり、具体的な店舗名は明らかにしていないが、2020年2月期までに閉鎖するとしている。不採算店の整理を進めて、収益の改善をめざす。

 この報道を受けて私は9月21日、あるテレビ番組に出演して解説したが、今回の決定の契機となったのは、ヤマダ電機が5月に46店舗を閉店したことにあると思われる。ヤマダ電機の場合、発表した日にはすでに3店舗を閉店しており、その月内に残る43店を閉めてしまった。混乱もあったが、電光石火というべき意思決定と、その実践だった。

 戦略の方向転換というのは、このようでなければならない。イトーヨーカ堂の場合、具体的な店名とタイミングが発表されていないので、実際にはどうなるのか。09年にも「3年間で30店を閉める」と発表したが、実現したのは19店だけだった。

(この項 続く)

2015年9月26日土曜日

『中小企業のための全員営業のやり方』 書評224

辻伸一著、総合法令出版、新刊。辻さんは経営者ブートキャンプOBの経営コンサルタント。

「経営資源の少ない中小企業は『全員営業』の手法で成長を遂げることが出来る」
として、その技法と実践を指導してきた。

指導先では、2年で年商16億円が37億円に(機械設備サービス業)、あるいは年商38億円が85億円に(建設・不動産業)、3年で42億円から109億円(業務用食品卸業)など、成功事例が続いている。

2年前に経営者ブートキャンプに辻さんが来て、その赫々たる実績の報告を聞いた私が出版を勧めていた。本書では、多数の会社で成功した営業技法を分かりやすくまとめ、他の会社でも導入しやすく説明している。期待通りの好著で、お薦めできる。

アマゾン(アフリエイトではない、念のため)

2015年9月21日月曜日

「戦略カード」 アマゾンで発売

「戦略カード」がアマゾンから発売され、容易に入手できるようになった。

300枚1,500円+送料。

アマゾンサイト

2015年9月20日日曜日

日本ガイシ談合で巨額罰金 前社長らに禁錮刑の可能性も(5)

あ例えば、大手顧客が取引先を対象とするパーティを東京で開催した。そこで競合企業の社長たちと会えば名刺を交換するし、会話をする。しかし、それらは「情報交換」であってはいけないばかりか、ただちに米国本社の法務部に対して「競合のどんな立場の、誰と、どのような状況で会って、何を話したか」を報告しなければならなかった。

私が理解できなかったのが、日本の業界団体というものだった。「●●協会」などというものである。これらは私に言わせれば悪の温床で、実際日本で今までに摘発された談合事案には、業界団体での集まりから発展したものがいくつもあった。

 各社及び業界全体の製造統計などの業務は、外部の業界紙誌がビジネス・ベースでやればいいことである。「和気藹々の競争」などは幻想であるし、結局不実な他の目的に使われてしまっている。

株主代表訴訟


 さて、会社としては当面まずくない対応をしている日本ガイシであるが、この後には株主代表訴訟が起こされることが予想される。前社長らに対して78億円の損害賠償をするように、まず会社が求められるだろう。それを会社が行わなかったら、前社長らが直接株主から訴訟を起こされる可能性が大きい。同社の場合、海外株主も多くいる。

 本稿執筆段階では、前社長はまだ相談役として残っているようだ。私の問い合わせに対して日本ガイシ広報部は、「捜査中でもあるし、前社長のことも含めてコメントできない」とした。
 しかしこんな状況で、「みんな仲良くムラ社会」では通用しないのではないか。談合は本当にペイしないということを、日本の経営者たちは肝に銘じなければならない。

(この項 終わり)

2015年9月19日土曜日

日本ガイシ談合で巨額罰金 前社長らに禁錮刑の可能性も(4)

どうしてこれほどまでに、日本企業が狙い撃ちにされているのか。それには、アメリカにおけるフェアネス(公平)への執着、価値観を理解する必要がある。アメリカは移民社会として発達してきた国なので、参加者の間での競争における公平というのが必須の文化として醸成されてきたのだ。カルテルは、殺人や強盗と同程度の、FBIが乗り込んでくるクリミナル(重罪)なのだ。

 一方、耕作民族として発展してきた日本は、ムラ社会の価値観として「関係者全員の調和と同律な利益享受」が形成されてきた。そのような文化背景では、談合はむしろ推奨されるような商行為だったわけだ。

 この2つのビジネス文化の隔絶を、私は痛感してきた。米誌「フォーチュン」が毎年選出する優れた企業500社のうちの1社であるミード日本法人社長となって、米国への出張を繰り返した。毎年のカントリー・マネジャー会議で本社の社内弁護士が必ず1時間ほどセッションを行い、競合会社との会談、邂逅、立ち話について警告を発していた。

(この項 続く)

2015年9月18日金曜日

日本ガイシ談合で巨額罰金 前社長らに禁錮刑の可能性も(3)

反トラスト法で免責されない場合は、米国で起訴となり有罪の場合、禁錮刑などがありうる。それが例外的かというと、矢崎総業の4人が11年に禁錮刑の判決を受けたのをはじめとして、実は結構存在する。外国人の禁錮刑は2年が最長と決められている。

司法省やFBIの捜査が佳境に入ったと見られる14年5月に、同社は社長交代を行っている。偶然なのかどうかは定かではないが、今回の発表時点で「現社長が訴追された」などという恥さらしを避けることはできた。

「公正取引への執念」と「談合の闇」


 日本企業の談合疑惑に対する米側の追及には、厳しいものがある。今回の事案だけでも、司法省の発表によると、「日本ガイシを含む28社と26エグゼクティブが有罪を認め、現時点で24億ドル(約2880億円)の罰金の支払いに合意した」という。10年にデンソーや矢崎総業などが摘発されて以来、毎年のように日本メーカーのカルテル行為がやり玉に挙げられてきた。12年に日本企業に課せられた罰金の合計は、反トラスト法で司法省が課した罰金総額の半分以上に達していた(パットン・ボッグス法律事務所のリポート)。

(この項 続く)

2015年9月17日木曜日

日本ガイシ談合で巨額罰金 前社長らに禁錮刑の可能性も(2)

これを受け、株価は発表前日3日から8日まで8%ほど下げたが、米司法省が8月に発表していたこともあり、司法取引の金額が決定したことで悪材料出尽くしとなる可能性がある。「変更しない」とした16年3月期決算予想では売上高4200億円(対前年11%アップ)、最終利益は480億円(対前年比16%アップ)という好調ぶりだ。これに上記差額15億円が足し上がる可能性があるのだ。

経常利益率も16.4%と素晴らしい予想だが、もし「談合してまでそんなに儲けたかったのか」という批判が上がることになれば、名門企業の名誉も地に墜ちてしまうだろう。

米国で禁錮刑の可能性も


 本件で特異なのは、当該期間に日本ガイシのセラミックス事業本部長を務めた前社長ら3人が、司法取引で免責されなかったもようだということだろう(2015/9/4日本経済新聞)。本件調査に対して同社側が電子ファイルを削除したり、幹部のコンピューターを取り換えたりして捜査を妨害した疑いがあり、悪質だと判断されたという。

 (この項 続く)

2015年9月16日水曜日

日本ガイシ談合で巨額罰金 前社長らに禁錮刑の可能性も(1)

日本ガイシが自動車部品の価格操作による反トラスト法(独占禁止法)違反(カルテル)の疑いを認めた。8月19日付米司法省HP発表資料によると、同社は司法取引に応じ、5210万ドル(約63億円)の罰金を支払うとされている。

 日本ガイシは競合他社と共謀してスパーク・プラグなどの自動車部品で不正な入札を行い、顧客である自動車メーカーへ損害を与えたという。2000年7月から10年2月までの不正が確認されている。ちなみに日本ガイシの9月4日付発表では、罰金額が6350万ドル(約78億円)となっている。司法取引により9月3日に合意したものだという。8月19日以降、さらに問題が見つかった可能性もある。

悪くない対応


 今回の司法取引決定に至るまで、日本ガイシの対応は悪くない。まず4月時点で、15年3月期に「関連特損93億円」を計上したが、今回の罰金支払いに備えたものであった。司法取引では78億円で決着がついたので、前出9月4日発表のリリースでは、「今回の司法取引合意による罰金額の決定を受け、当該引当金との差額約15億円を営業外収益として計上する予定です」としている。

(この項 続く)

2015年9月15日火曜日

経営者ブートキャンプ 戦略発表会で新将命 特別講師

経営者ブートキャンプ第11期は、9月12日(土)に最終講(第7講)を持ち、めでたく閉講した。

最終講では参加者が策定してきた3年戦略を発表。今回は、新将命講師に記念講義と、3つの発表では講評指導もしていただいた。

参加者同士の評点により、二人が最優秀発表に選ばれ、表彰された。

今期は戦略策定を希望した経営者全員が発表まで辿り着いた。2回の小グループ発表、スライド添削指導を経て、全員の戦略のレベルは今期随分高い。新特別講師も、最終発表に初めて出席して
「ブートキャンプって、本当に梁山泊だね」
との感想。

10月末から始まる第12期はほぼ満員だが、若干名は調整受け入れする予定。詳細、申し込みは下記に。
             https://www.keieisha.jp/seminar151031.html

2015年9月14日月曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(6)

これで、PPMと同じように4象限ができるので、パナソニックの数多くの事業をプロットする。それぞれの事業の年商は、プロット点を中心とした円を描いてボリューム感を表す。ただし事業が多すぎると円が重なってわからなくなるので、その場合は円は割愛してもいい。

 あとは、PPMと同じだ。右下象限の事業は「負け犬」だから撤退する。左下事業は、「キャッシュ・カウ」で利益収穫事業、右上事業は「問題児」でなんとかテコ入れして左上「スター」事業に仕上げたい。この山田式PPMは「プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント」という。「プロダクト(製品)」ではなく、「プロジェクト(事業)」のやりくりを主眼とした考え方だ。

 津賀氏は、「15年度からは反転攻勢」として1兆円投資を表明している。外部企業の合併・買収(M&A)はもちろん、大型工場建設や研究開発などで初年度の16年3月期は総額4800億円を投じる計画だ。ぜひ、山田式PPM的な戦略思想を駆使して、メリハリのある大投資を行ってほしい。

(この項 終わり)

2015年9月13日日曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(5)

パナソニックに対しては、PPMの縦軸と横軸に新基準を持ってくると応用できる。横軸には営業利益率を持ってくる。津賀氏は営業利益率5%をメドに事業の仕分け、テコ入れを考えているので、横軸の中間点には5%より低い数値、例えば3.5%を置く。数値基準は元祖PPMでも主観で定めるのでこれでいい。中間値より左が「高い」、右が「低い」とする。

 縦軸には3年間の年商の伸び(事業ごと)とする。パナソニックの全体年商は3年間で伸びていないので、中間値としては恣意的なものでよい。たとえば10%を境とする。それより上が「高い」、下が「低い」だ。

(この項 続く)

2015年9月12日土曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(4)

6事業をテコ入れするのか、捨てるのか


 第2ステージの入り口で津賀社長は利益率の低い6事業のテコ入れを図っている。6事業とは、エアコン・照明・住設建材・車載機器・2次電池・パナホームで、「営業利益率が5%に達していない」事業だという。それぞれが売上高3000億円以上と規模も大きい。今回発表された照明2工場の閉鎖、製造集約もこの動きの一環だ。

 パナソニックのような大企業には、事業の数が二桁に上ることは珍しくない。このような事業構造の会社で、経営者はどのように事業選別をしていけばいいのだろうか。

 PPMという手法がある。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で、大手コンサルティング会社ボストン コンサルティング グループが開発したのでBCGマトリックスとも呼ばれる。PPMは1980年代からの古典的経営技法なので「今さら」と言う向きもあるだろう。

(この項 続く)

2015年9月11日金曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(3)

その結果、15年3月期の年商は7兆7000億円強と、津賀氏が就任する前の12年3月期7兆8500億円強とあまり変わらないが、営業利益は437億円(12年3月期)から3819億円(15年3月期)と9倍増の実績である。事業ポートフォリオの組み替えが効を奏してきた。

なんといっても、13年3月期まで2期続いた7000億円以上の最終赤字から、15年3月期は1800億円に迫ろうかという黒字実現である。また、有利子負債が1兆円近くあった状態から実質無借金経営に転換。津賀氏は素晴らしい経営者といえよう。このままパナソニックの中興の祖になってほしいと期待する。

 15年3月期の決算発表、あるいは3月の事業方針発表などで津賀社長は、「構造改革は完遂した」と宣言した。さらに「15年度はついに売り上げを伸ばす時期、成長の年であると位置づける」として、4月からの15年度を津賀改革の第2ステージとする意欲を示してきた。

(この項 続く)

2015年9月10日木曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(2)

ところがLED照明の時代に入ると参入障壁がずっと低くなった。結果、新興メーカーが多数活躍するようになり、パナソニックもLED照明器具を生産するインドネシア工場(西ジャワ州)を10月末までに閉鎖することを決めていた。

見事だった津賀改革の第1ステージ


 パナソニックの年商は7兆7000億円にも上り(15年3月期)、総合電機メーカーとして多岐の事業を手がけている。経営トップとしては、個々の事業の盛衰にこだわるより、全体最適としての「事業ポートフォリオ(組み合わせ)」経営を心がけなければならない。

津賀氏がパナソニック社長に就任した12年6月、私は「再生戦略は『家まるごと』だ」と、ブログでエールを送った。津賀氏は着々と経営改革を進め、事業分野としては住宅に加え自動車関連に的を絞ってきた。BtoCからBtoBへの流れだとも解説できる。「パナソニックは家電の会社ではない」「当社は負け組だ」など刺激的な言質も織り交ぜながら社内の意識改革を進め、7000人もいた本社をわずか150人ほどの陣容に縮小するなど、豪腕を振るってきた。

(この項 続く)

2015年9月9日水曜日

パナソニック、「パナソニック」全否定で別会社化 総入れ替えの構造改革完了(1)

パナソニック産の自動化を進めるという。これにより、照明器具の生産能力を従来より数%高め、営業利益率も高めるという方向。

具体的には、2016年3月期で照明事業の営業利益率を6.1%へ上げが照明器具の2工場を9月末に閉鎖する。生産ラインは別工場に移管し、約10億円を投資して生ることを目指すとしている(15年3月期は4.7%)。

 報道に接したとき私はてっきり、津賀一宏社長が推し進めてきた「選択と集中」の流れのなかで、照明事業から撤退するのかと思った。というのは、照明分野で世界最大の蘭フィリップスの日本法人フィリップスライティングの社長を務めていたことがあり、近年の照明ビジネスの厳しさを知っているからだ。

 以前は電球や蛍光灯を製造するのはエレクトロニクスではなく窯業の分野で、大変な装置産業だった。日本市場もパナソニックの前身である松下電機産業、東芝、三菱電機、日立製作所、日本電気(NEC)の大手5社で寡占状態だった。

(この項 続く)

2015年9月7日月曜日

「間違いだらけのビジネス戦略」が新しい連載タイトル ビジネスジャーナル

ビジネスジャーナルで連載している拙記事のタイトルが9月から新しくなった。もう新記事もアップし始めた。 週に2本くらい書きたいと思っている。
「山田修の 間違いだらけのビジネス戦略」
 
 
古い記事は、下記のアーカイブに収載されている。
http://biz-journal.jp/series/osamu-yamada-tenbo-bizinesusennryaku/

2015年9月6日日曜日

幹部研修、広島で始まる

広島は、安芸の宮島に近い地で、幹部研修が始まった。

月に1回訪れ、4講で最終12月に部門戦略発表会を行う。9月5日が第1講となり、9:30から5時まで幹部6名を指導。同社の社長もオブザーバーとして同席してくれたので、一層の真剣味が増し、いい研修となった。

私からの講義の他に、戦略カードの「目標設定」をやってもらい、各自発表まで実施。「他部門の話しを聞けて良かった」「他部門から意見を言ってもらって良かった」という感想を貰った。

宿題として、『あなたの会社は部長が潰す』(拙著)と、「自部門経営課題出し」(30枚目標)と、「重要課題3枚選びと理由書き」をおいてきた。次回は、私の講義「コミュニケーション」の他に、宿題の各自発表グループワークとなる。

(この項、1月おきに後3回書く)

2015年9月5日土曜日

出口治明さんに学ぶ(5)

あ。「日本の生命保険料を半額に」「子育て世代にやさしい生命保険を」という理想主義に燃えて発足した同社は、2008年5月の営業開始以来、20代や30代の若年層の支持を受け、順調に保険加入者数を伸ばしてきた。

 しかし新規の契約獲得数は、12年度の6万件超えを境に減少し始め、14年度ではピーク時の半分以下になってしまった。同社に続いてのネット生命保険の新規参入が続き、現在では8社が競合するようになったからだ。

 今年に入り、ライフネットは新しい基軸を打ち出している。4月にはKDDIからの資本受け入れを発表し、保険料も大幅に下げた。さいわい、生命保険会社としてソルベンシーマージン比率(支払い余力)はとても高く、財務的には安定している。KDDIの資本関与で知名度と信頼度の補完が得られるだろう。

 業界で初めて手数料など保険料の内訳を開示したり、「正直な経営」を掲げるなど、出口さんの経営にはそのお人柄と同様、尊敬する点が多い。今展開している新しい施策は、クリステンセン氏がいうところの「(5)実験力」に当たる。イノベーティブな創業経営者、出口さんにはぜひいろいろ経営実験をして、ライフネットを第2の成長ステージへ導いてほしい。

(この項 終わり)

2015年9月4日金曜日

出口治明さんに学ぶ(4)

ここで「(4)ネットワーク力」とはまさに出口さんの「人・本・旅」と同じ、つまり「異体験から感じろ、学べ」ということなのだ。それらの異体験をしっかり「(3)観察」すること。

そして私が経営者やその卵の方たちに指導しているのが「(2)質問」をして掘り下げろ、ということだ。質問をすることは時に勇気が要るが、それを乗り越えて習慣とすると自分なりの知見が獲得できるようになる。

 (3)と(2)の過程を通して取り込み咀嚼した異体験を、自らにある既知識と「(1)関連づける」。そうすると新しい考えや見方、イノベーションが醸成される。ユニークな経営技法やアイデア、戦略は、そんなプロセスから生まれる。

出口さんとクリステンセン氏、私が東西で尊敬する両知識人は同じプロセスを指摘し、推奨している。是非2人の著書から学んでほしい。

第2ステージへの挑戦


 創業9年目に入ったライフネットの業績は今、踊り場にきている。

(この項 続く)

2015年9月3日木曜日

出口治明さんに学ぶ(3)

古典に価値を見ている出口さんは、現代のベストセラー本は読まず、またビジネス書は後出しジャンケンなのでビジネスの気づきを得るためにそれらを読むことはまずないという。

そんな出口さんのある著書の中で拙著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)が紹介されているのは、私が大いに自慢しているところだ。

異体験と既知識を関連づける


 今回出口さんのお話で印象強かったのは、「人・本・旅から学べ」ということだった。これは、米経営学者クレイトン・クリステンセン氏が『イノベーションのDNA』(翔泳社)で述べていたことと同じだ。クリステンセン氏は同書でイノベーティブな経営者は次の5つの資質を持つ、としている。

(1)関連づける力
(2)質問力
(3)観察力
(4)ネットワーク力
(5)実験力


(この項 続く)

2015年9月2日水曜日

出口治明さんに学ぶ(2)

実業家という前に、大教養人としての出口さんに圧倒される。私が今まで実際にお会いした経営者の中で、出口さんの読書量は間違いなく3本の指に入る。もしかすると一番かもしれない。

そして出口さんの読書とは、ビジネス書や経営書のレベルをはるかに超えている。西洋、東洋、中近東に関する歴史書をとてつもなく読み込んでいて、造詣が深い。小説や宗教、心理学などの社会学系など「あらゆるジャンルを乱読」してきたそうである。

「とりあえず、ということでお薦めするなら岩波文庫です」と以前、出口さんは経営者ブートキャンプで話してくれた。
「古典といわれるものを読めばいいのです。長い時間に洗われて残って古典といわれるようになった書物は、おのずとそれだけの価値があるのです」

 「現在起きることは、必ず過去に起こったことの焼き直しです」


 そしてお話のテーマは、ビジネス上の意思決定に及んだ。
「知識により見識を高めておけば、直感的に意思決定ができるようになります。迷うことがなくなるのです」
 
(この項 続く)

2015年9月1日火曜日

出口治明さんに学ぶ(1)

インターネット専業の生命保険会社、ライフネット生命保険創業者で現会長の出口治明さんと、久しぶりにお話しさせていただいた。

出口さんとは、3年前に私が主宰する経営者ブートキャンプに特別講師としてお招きして以来、親しくさせていただいている。今まで多くの高名な経営者の方々とお会いしてきたが、出口さんは出色、異色の経営者だ。

 日本生命保険に長年勤めた後、58才で同社を退職して60才でライフネットを創業。独立系としては戦後初となる生保会社を立ち上げたのである。

発足に当たっては、6社から計80億円もの出資金を集めた。もう日本生命のような大企業をバックにしていなかった状況で、それだけの巨額を集めたベンチャーというのは聞いたことがない。企業家としてだけでなく、人間としての出口さんの魅力に負うところが大きかったに違いない。

(この項 続く)