2015年7月31日金曜日

スタバ、味の目隠し調査で最下位…最大の敵はコメダ、米国本社の管理強まる?(2)

スタバの店員のほとんどはアルバイトだが、彼らは「パートナー」と呼ばれ、本社は「サポート・センター」と称される。

「言葉って、とても大切なんです。スタバの離職率は、パートナーも含めてとても低い。それはスタバの経営が、チェーン店であるにもかかわらず、マニュアルではなくミッションをベースにしているからです。スタバは『感動経験産業』として、仮想競合としてはリッツ・カールトンやディズニーリゾートを想定しています」(同)

 ちなみにこのスタバのミッションは同社のHPに掲載されているので、興味のある方は参照していただきたい。

 岩田氏の講義では、米国スタバ本社創業者でCEOのハワード・シュルツ氏との会見譚などが語られ、とても興味深かった。岩田氏が退任してからもスタバは順調に日本で業績を伸ばし、5月には鳥取県に出店し、全都道府県に展開するに至っている。鳥取店のオープンには1000人以上の客が並び、大きく報道された。店の総数は7月現在で1111店。

(この項 続く)

2015年7月30日木曜日

スタバ、味の目隠し調査で最下位…最大の敵はコメダ、米国本社の管理強まる?(1)

筆者が主宰する「経営者ブートキャンプ」の特別講師として、スターバックス コーヒー ジャパン前社長の岩田松雄氏をお招きした。岩田氏は2011年まで同社の指揮を執り、退任後すでに5冊もの著書を刊行している。

 25名ほどのクラスで1時間半ほど話していただき、質疑応答が30分ほど。いつものように議論活発で濃密な時間となった。

スタバにはマニュアルがない、と言われますが、そんなことはありません。コーヒーの入れ方などについて、つまりオペレーション・マニュアルはしっかりあります。しかし、サービス・マニュアルというものがないのです。その代わりに『Just Say Yes!(できませんとは言いません)』という標語があり、道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは何でもして差し上げるというのが、世界中のスタバの方針なのです」(岩田氏)

(この項 続く)

2015年7月29日水曜日

楽天 出店者数失速で無料ヤフーのわずか7分の1(4)

私は、今回の提携は大きな成功とはならないとみている。消費者の便宜を最大化しない、企業の至便性を求めるプログラムが定着するのは難しいだろう。

 また、楽天出店者からの商品を預かるコンビニ側からみると、手数料収入が発生するので問題はなく、すでに宅配便受発送の拠点としても機能しているところに業務が追加になるだけである。

コンビニは物販に加えて、宅配便、ATMなどの金融サービス、チケット発売、さらには住民票を発行するところも増えている。街のインフラとしてのコンビニをサービス拠点として使えれば、こんなに便利で強力なネットワークはない。

 しかし、店舗で働いているのはほとんどがアルバイト店員であり、これ以上取り扱いサービスが増え続けていけば、その研修負担は大変なものとなり、当然取り扱いミスも発生する。労働環境が過酷になっていけば、いずれコンビニがブラック企業化してしまう危険性も懸念される。

(この項 終わり)

2015年7月28日火曜日

楽天 出店者数失速で無料ヤフーのわずか7分の1(3)

楽天はかつて出店者の要望に応えるため、ひいては新規出店希望者を増やすため、08年に楽天物流サービスを立ち上げた。そして物流拠点も3カ所整備し、将来的に8カ所へ増やす予定としていたが、14年にこれらの拠点を突然閉鎖し、同社を同年7月1日付で吸収合併してしまった。今回のヤマトHDとの提携により、物流業務については専門のヤマト運輸に任せる。

ヤマトHDとしては、自社が開発した受注・物流システムを出店者が採用してくれれば新たなビジネス機会となる。なにより、現在約20%といわれている再配達率が少しでも減らせることになる。

置き去りにされる消費者


 一方、今回の提携で果たしてメリットを享受できるのか疑問なのが消費者だ。確かに消費者にとって選択の幅が広がることは事実だが、現在でも自宅配達時に不在の場合は「不在票」が残され、好きな時間を指定して再配達してもらうことができる。消費者にとっては、基本的にそれが一番便利なシステムなのではないか。
 
(この項 続く)

2015年7月27日月曜日

楽天 出店者数失速で無料ヤフーのわずか7分の1(2)

楽天の出店料は月額1万9500円からとされているが、種々のオプションなどを付けると年間出店料は実質58万2000円に上るという報告もある(5月29日付サイト「楽天出店で失敗しないために<楽天逆転プロジェクト>」記事より)。

 一方、それまで4万2000弱の出店事業者を誇っていた楽天ではそれがピークとなり、15年3月末では4万589(ネットビジネス・アナリスト横田秀珠氏の推計による)と漸減しつつある。楽天としては、どうしても既出店者や出店希望者を誘引する、目新しいプログラムが必要となったのだろう。

 YES導入による商品受け渡し場所の拡大は、出店料に不満を抱える楽天市場出店者たちに対する付加価値的なものとして位置づけることができる。

物流システム構築に失敗した楽天


 楽天やヤフーへの出店者には、個人や零細規模の事業者が多い。そうした出店者にとっては、フイルフィルメント(受注管理システム)、在庫管理、発送業務を含む物流業務、決済システムなどの問題は頭の痛いところだ。

(この項 続く)

2015年7月26日日曜日

楽天 出店者数失速で無料ヤフーのわずか7分の1(1)

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)と楽天は7月6日、インターネット通販で提携を強化すると発表した。発表会見には楽天から三木谷浩史社長、ヤマトHDからは山内雅喜社長が出席し、意気込みの強さを示した。

「楽天市場」出店事業者に対して、ヤマト運輸が「YES」という受注管理・配送・決済を一括で管理・支援するシステムを提供する。YESを導入した出店者の商品購入客は、コンビニエンスストア2.1万店とヤマト運輸の営業所4000カ所で商品を受け取ることが可能になる。

 私は7月9日に出演したテレビ番組内で、本件について次のように解説した。

「プレイヤー・セオリーで考えると、この提携劇に登場するプレイヤーは、楽天、ヤマト運輸、既出店者と出店希望者、そしてコンビニです。

それから表面に現れていないが、ヤフー・ショッピングがいます。2013年10月にヤフーが出店料を無料としたことで、楽天市場との競合関係に激震が走りました。出店事業者数で見ると、それまで1万数千店台で推移していたヤフーは、1年の間に10倍以上となる19万3000店を達成して、15年6月末時点では28万店を超すに至っています(ヤフー広報公表数値による)」

(この項 続く)

2015年7月25日土曜日

西日本シティ銀行 「幹部力を体得する!」 福岡公開セミナー 連週満員


先週に続いて、福岡にやって来た。主催者も会場も同じ。7月23日実施、1日セミナー。
「幹部力を体得する!! 部長の指導力・行動力 強化セミナー」

2週続けてほぼ同じテーマでの実施だったが、見事に満員。このテーマは、先月の徳島・伊予銀行が公開セミナーとしたところ、定員30名のところを53名まで(大きな部屋に移した)受付、「もう入らない」ということで随分お断りしたばかりだ。

戦略カードによる戦略策定(あるいは課題解決)の指導は、幹部以上に圧倒的な人気だ。

先週は台風11号で帰りの飛行機が飛ぶか、やきもきしながら指導したが、今回は台風12号は関係なく、無事終了。

東大エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 超ハードで世界に類なし(4)

毎期の定員は25名で選考があり、いつも満員になるという。参加者の構成は「大企業の中堅10名、ベンチャー・中小企業のトップ5名、中央・地方官僚5名、プロフェッショナル5名」が典型だという。みなさん、自費で参加されているのだろうか。

 私はこの説明を聞いて本当に驚き、興味を持つと共に「学びの快楽、ここに極まれり」と思った。こんなプログラムは、世界中を見渡してもほかにないだろう。

 だが、問題は「では、修了すると何が得られるのか」ということだろう。東大EMPを修了しても、MBAなどの学位や資格は与えられず、ただ修了証がもらえるだけだ。そして、驚いたことに“評価もつかない”という。つまり、通信簿がないということだ。

「評価は口頭でも文書でも行わない」とのことで、東大EMPが参加者に期待しているのは「Agenda-Shaping Leadership(課題設定・形成能力)の醸成」だそうだ。

 私は、「12期を終えて、卒業生が約300名出たわけですね。『東大EMPムーブメント』としては、何が起きたのですか?」と質問した。例えば、松下政経塾は多数の政治家を輩出しており、日本の政治シーンで大きな存在感を持つに至っている。東大EMPの回答は、「まだはっきり説明できる段階にはなっていない」というものだった。

 今後、東大EMPの卒業生が幅広く活躍する状況を、ぜひ目の当たりにしたい。

(この項 終わり)

2015年7月24日金曜日

東大エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 超ハードで世界に類なし(3)

究極のプログラム「東大EMP」



 日本で社会人が学べるプログラムの中で、突出しているのが「東京大学 エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)」だ。

 東大EMP事務局によると、「40代というキャリアの折り返し点で、強靱かつ新たな思考能力を身につける」ことを目的としており、「MBAを超えた能力の醸成を目指している」(同)そうだ。

 東大EMPは4月と10月に開講され、半年間の毎週金曜日と土曜日の全日に授業がある。授業料は約600万円で、現在は第13期が開催されている。場所は、東京大学本郷キャンパスの赤門を入ってすぐの伊藤国際学術研究センターという素晴らしい施設だ。

 同センターは、イトーヨーカ堂グループの創始者である伊藤雅俊氏夫妻によって寄贈されたものだ。また、元マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社長だった横山禎徳氏が、同プログラムの企画・推進責任者を務めている。

 東大EMPの授業は1コマ105分で、原則としてすべて異なるテーマが展開される。スピーカーは、現役の東大教授が圧倒的に多い。クラスの構成は「宗教」「国際・外交」「医療・健康科学」「生命科学」「脳科学」「IT」「メディア論」「物質科学」「宇宙・素粒子論」「建築」など、社会科学から自然科学まで幅広い。

「マネジメント知識」に分類されるコマもあるが、数が少ない上、興味深いことにおおむね人気がない。知識人は、自分の知らないことを知りたがるということだろう。

 上記のような分野を、現役の一流学者が講義する。そして、それぞれのクラスでは課題図書が用意される。当然、そのスピーカーが著した専門書だ。参加者は、このような授業を半年間で約150コマこなすそうだ。つまり、150冊の専門書を読むことになる。

(この項 続く)

2015年7月23日木曜日

東大エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 超ハードで世界に類なし(2)

向学心に燃える経営者の方が、2年間も平日夜と土曜日に通学して修士論文まで書いている姿を見ると、頭が下がると同時に少し違和感を覚える。

 また、学会で名刺交換をすると、名刺に「経営学博士」と書き込まれている方とごあいさつすることがある。それが大企業の現役の場合、不思議と閑職のような肩書が多い。学問に執着していると、かえってキャリア形成を阻害してしまうのだろうか。

 若手の経営者、特に2代目経営者を対象に絞り上げてきたのが、りそな総合研究所の研修プログラム「りそなマネジメントスクール」だ。基本的に毎月1回開催され、年間11講で修了する同スクールは、現在28期目が進行しているので、30年近く続いていることになる。私も、同スクールで経営戦略の立案演習を何度か教えた。

 授業料は110万円だが、りそな総研の会員企業は88万円だ。東京、大阪で各50名の募集だが、いつも満員になるため、参加するにはりそな銀行の取引先が有利だ。

 実は、私自身も経営者や幹部を対象に半年間で7講のプログラム「経営者ブートキャンプ」を主宰している。こちらの授業料は38万円ほどだが、詳細はホームページで確認していただきたい。

(この項 続く)

2015年7月22日水曜日

東大エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 超ハードで世界に類なし(1)

7月中旬に発売される『日経キャリアマガジン 社会人の大学院ランキング2016』(日本経済新聞出版社)の中で、私は「有識者が推薦する国内MBA」というコーナーでインタビューを受けた。

「国内MBA経営学修士)を選ぶなら、入試がしっかりしていて修士論文がある大学院をおすすめします」と答え、具体的な例として法政大学大学院や中央大学ビジネススクールなどを推薦した。前者は自分の出身校(博士課程だが)で、ベンチャー論に定評があり、後者は経営戦略論に優れた先生方がいるからだ。

 インタビューでは、ほかに「社会人のための経営大学院は、『経営者になりたい人』が行くところで、『すでに経営者になった人』や幹部が勉強するところがない」という点を指摘した。同誌の企画趣旨からは多少ずれるので、掲載されないことは了承した。

 私はこれまで数校で招かれ特別講義などを行ってきたので、社会人の経営大学院についてはよく理解している。参加者の平均年齢は30歳前後で、役職的には課長になる前あたりが多い。たまに社長などもいるが、世代間のギャップより若手参加者との階層ギャップに戸惑っている。経営者の悩みや興味というのは、若手のそれとは違うということだ。
(この項 続く)

2015年7月21日火曜日

太陽工業、驚異のV字回復で視察殺到の謎(5)

目指すは世界一の金属成形部品メーカー


 そこまでの精度を有する金型からプレス成形される金属部品は、どんな領域まで担うことができるだろうか。「医療機器分野に手を広げようと思っていますし、将来的には航空や宇宙関連事業で貢献できるところまで、精度を追い詰めたい」と、小平社長の野望は果てしない。

 太陽工業は製造プロセスの分野でも、精密立体部品の自動積層組立ラインで「中小企業優秀新技術・新製品賞」の優良賞や「素形材産業技術賞」の素形材センター会長賞などを受賞している。

精密産業の集積地域である諏訪地区の代表的な部品製造業者として、太陽工業は銀行や自動車会社の幹部が同地区を訪れる際には、外せない訪問先となっている。

「13年には断腸の思いでリストラを行いましたが、この年から収益回復が始まったのです」(同)
 売り上げが11年に底を打ち、12年から回復に転じていたところに、13年、14年度と経常利益も復活した。15年度には連結ベースの売り上げで70億円という勢いだ。

 70億円の年商が40億円を切り、そこからまた70億円に回復する。そのサイクルが10年に満たないとなれば、本当のV字回復といえるだろう。世に言われるV字回復のほとんどは経常利益ベース、つまりボトムラインでの回復である。トップライン(売り上げ)でそれを成すことはまれだ。ましてや、太陽工業のように従来型の製造業かつこの規模感でそれを実現しようとしている事例はほかに聞かない。金属成形部品メーカーとして世界一を目指す、太陽工業の挑戦が続いている。

(この項 終わり)

2015年7月20日月曜日

太陽工業、驚異のV字回復で視察殺到の謎(4)

「次に目指しているのは、超高精度の金型を自社で開発製造して日本一、いや世界一の金属部品加工メーカーになることです。そのために、業績が上向き始めた12年に思い切って新工場を買収しました」と小平社長は語る。

 新工場は「テクノロジーセンター輝」と名付けられた。地上3階、地下1階建ての同工場の特徴は、地下だけで2300平方メートルという広大な床面積を持っていることだ。小平社長は、「地下にあるということで、徹底的に温度管理を実践しています」と語る。

 大型の工作機械まで、通風管理された大型エレベーターで搬入されるという。「1年を通して温度差は最大2度、1週間単位ではプラスマイナス0.3度を実現しました」(同)

 温度管理のほかにも、最高クラスの床強度で工作機械の振動などが極小になる点も特徴だ。最新鋭の自動工作機械に加え、その精度の高さから「神の機械」といわれたスイスSIP社の工作機械まで整備活用している。

 このような環境で製造される金型は、超精密を目指すことができる。小平社長は、「最後は人の手で精度を追い詰めるのです。すでに一部実現していますが、私たちの目標は誤差1ミクロンの精度の金型を安定的に製造することです」と語る。

(この項 続く)

2015年7月19日日曜日

太陽工業、驚異のV字回復で視察殺到の謎(3)

ところが、「自動車」は06年の7773億円から14年の7872億円と増えているのだ。
 小平社長は「太陽工業の自動車産業向けの納入率は、今年70%を超える予定です」と語る。客先業態の状況変化を見極めた、見事なセグメント・シフトだ。

タイ進出、新工場買収にも成功


「従来の弱電や携帯電話向けなど通信機器を対象とした部品製造については、思い切ってタイに進出しました」(同)

 年商が40億円を切った10年に、タイ・アユタヤでの工場建設を決断したが、11年の大洪水で操業開始が半年間遅延した。「大洪水が、操業開始後でなくてよかった」と小平社長は振り返る。経営者には運も必要という例だろう。

「12年に操業開始すると順調に生産が立ち上がり、14年にはもう第2工場を増設しました。タイ工場の年商は14年に12億円を超え、早くも黒字化して業績に貢献してくれるようになりました。タイ語はおろか英語を操れる社員がいたわけでもないのに、なんとかやっています」(同)

 諏訪地区でのグループ社員数300名ほどの地場企業が、アジアに製造進出してうまくやっている。

(この項 続く)

2015年7月18日土曜日

太陽工業、驚異のV字回復で視察殺到の謎(2)

「顧客のメーカーが、円高のためにアジアへの製造移転を本格化してしまったからです」と、小平社長は筆者のインタビューに答える。その結果、年商は10年に40億円を切るなど、業績の悪化は急を告げた。

「いくつかの戦略を実行しました。ひとつ目は、顧客セグメント(顧客の分野)を新しい構成にすることです」(小平社長)

 それまでは、ソニーなど弱電メーカー関連への納入率が9割近くを占めていたが、自動車用部品に的を絞り、新規顧客を開拓したという。これは、戦略的にまったく正しい判断だった。

 というのは、金属プレス加工の販売額統計で「電機・通信」は06年に1027億円とピークを記録しているが、14年には380億円と、3分の1近くまで激減しているのだ(日本金属プレス工業協会統計、以下同)。

「精密」も06年の144億円から、14年には60億円と半分以下に落ち込んでいる。これらの分野を重視していた金型業者や部品業者の倒産は、ここ数年絶え間なく続いている。

(この項 続く)

岩田松雄スタバ前社長が経営者ブートキャンプで特別講義


経営者ブートキャンプの特別講師として、岩田松雄氏が登壇。岩田さんはスターバックス・ジャパンで11年まで社長を務めていた。

5冊の著書があり、「中には30万部以上出たものもある」がご自分で最も拘りがあるという『ミッション』(アスコム)を指定図書となさった。クラス参加者には、前講で配布し事前課題図書とした。

OBも含め、25名ほどのクラスで1.5時間の講義と30分ほどの質疑。終了してからの懇談会にも付き合って貰い、参加者達と濃密な対話をしていただいた。

2015年7月17日金曜日

太陽工業、驚異のV字回復で視察殺到の謎(1)

1ドル=120円台の円安が定着して、日本の製造業に活気が戻っている。しかし、国内でB to Bビジネスを行っている部品メーカーの業績はまだら模様だ。

 というのは、円高時代に顧客メーカーが中国やアジアに製造拠点を移してしまっているからだ。円安になったからといって、海外の工場が日本に戻っているわけではない。

 そんな中、小平直史社長率いる太陽工業が、業績をV字回復して注目されている。同社は、プレス成形により製造した金属部品を完成品メーカーなどに納めている受注製造業者だ。
 長野県諏訪市に本社を構える同社は、諏訪地区を代表する部品メーカーとして知られている。部品を成形する金型も自社製造しており、域内には3つの工場と、部品にメッキを施す関連会社のハイライトを擁する。

 太陽工業は1959年に創業され、弱電メーカーへの金属部品の製造供給で順調に業容を伸ばしてきた。2007年には年商70億円を超え、経常利益率も8.5%と代表的な「地場の優良企業」に育った。

しかし、それをピークに売り上げが激減していく。

(この項 続く)

2015年7月16日木曜日

「マック絶不調、モス好調」は正しくない モスが顧客満足度1位なんて本当か?(5)

台湾合弁先に経営を移譲するのが改善の近道


 マック離れをした消費者たちは、それではどこに向かってしまったのか。モスなどの同業態には行かず、他の業態に流れてしまったとみられる。私の見立てではコンビニエンスストアだ。コンビニ弁当を買ってくる、または「イート・イン」コーナーで手早くランチを済ませる。予算としてはワンコイン、つまり1食500円程度だろう。


 そのような状況で、モスはどのように状況を打開していけばよいのか。5月から値上げをしたが、小手先の営業利益改善に終わるだろう。業績の本格的な反転攻勢は現経営陣で可能なのだろうか。

 私が想起するのは、一昔前の米サウスランド・アイスとセブン-イレブン・ジャパンの関係だ。サウスランドはセブンの生みの親で、イトーヨーカ堂(当時)に日本におけるセブンのローカルフランチャイザー権を賦与した。ところがサウスランドはその後不調に陥り、イトーヨーカ堂の子会社となり、現在はセブンとイトーヨーカ堂を傘下に収めるセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社になっている。つまり子供が親をのんで、大発展を続けている。


 モスも早いうちに、活発に展開している安心食品服務に、その経営を委譲したほうがいいのではないか。それでようやくモスの第3時代が始まることになる。

(この項 終わり)

「経営戦略と経営計画の立て方」 福岡でセミナー

 
台風11号の嵐の中、福岡でセミナー。参加者から、帰りがけにカードを貰う。
 
「この様に楽しいセミナーは初めてでした。
今日はありがとうございました。
会社に帰って頑張ります。
お気を付けて東京に帰られてください。」
 
来週もまた来てしまおうか、などと思ってしまった。

2015年7月15日水曜日

「マック絶不調、モス好調」は正しくない モスが顧客満足度1位なんて本当か?(4)

海外展開を担っているのはモスフードではない


 モスの海外展開を実質的に担っているのは、台湾での合弁企業である安心食品服務股ヒン有限公司だ。モスの海外店舗323店(15年6月末)の大部分が、アジアとオーストラリアにある。台湾が240店舗と最大の拠点だ。台湾での店舗はすべて直営で、他のアジアやオーストラリアのオペレーションも安心食品服務が展開している。モスは台湾で大手企業である東元電機と90年に合弁を組んだ。安心食品服務の黄尚仁執行副総経理は、「中華民国台湾投資通信」(April 2012 vol.200)に掲載された記事『日台アライアンス特別インタビュー』でこう述べている。

「最初の10年にオープンしたのが40店ほどだったのに対し、次の10年には180店を開設しました」

苦闘した「最初の10年」とは、皮肉なことに櫻田厚現社長が台湾に駐在して業務開発に直接当たっていた時代だ。現在、モスは安心食品服務に3割ほどしか出資しておらず、現地に派遣している社員も2名のみ。実質的には安心食品服務は現地パートナーによって経営されているといってよい。

(この項 続く)

2015年7月14日火曜日

「マック絶不調、モス好調」は正しくない モスが顧客満足度1位なんて本当か?(3)

慧氏が急死した時、甥の厚氏はまだ45歳。台湾での業務開発が長かった。社長が交代すると、それまで本部であるモスフードの営業利益率は10%前後と高いレベルで推移していたのが急減して、現在に至っている。15年3月期は2.3%だ。社長交代によって、本部と加盟店のパワーバランスに大きな変化があったと見るべきだ。

「顧客満足度日本一」への疑問


 サービス産業生産性協議会は、6月10日に発表された「15年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査」でモスを「飲食総合」部門1位とした。しかし本調査で、例えばしゃぶしゃぶ専門店「木曽路」は7位だが、仲居さんがテーブルで料理をつくってくれる本格お座敷レストランのサービスより、モスのそれが手厚いというのは無理がある。

 つまり、「印象が良い」というだけの調査結果だ。「木曽路より一桁低い客単価の割には、そのサービスの印象がいい」ということだ。そして、木曽路よりモスの総来店客が多いため、得票数は伸びるだろう。

 モスやマックの客単価は公表されていないが、前出の『ハンバーガーチェーンの比較経済分析』によれば、「マック=578.5円、モス=910.4円とモスのほうが50%以上高い」という。それだけ価格帯が離れた2つのチェーンの顧客満足度を比べることも、また無意味だろう。

(この項 続く)

2015年7月13日月曜日

「マック絶不調、モス好調」は正しくない モスが顧客満足度1位なんて本当か?(2)

モスの成長は足踏みを続けている。店舗数は15年6月末で1765店だが、12年3月末は1756店だった。そもそも1500店を達成したのが1998年のことで、海外店舗増を差し引けば、ほぼ20年の間「不動の」2位を守ってきている。ちなみに94年までは店舗数でマックを上回っていた。

 14年3月末時点の数字で、マックの店舗数は3093、国内3位のロッテリアは446店、4位のフレッシュネスバーガーは165店舗である。ハンバーガー業界の店舗数は「1マック、2モス、3その他」と覚えることができる。

「モスは成熟期」は本当か?


 企業としてのモスの発展段階を黎明期、発展期、成熟期に分けると、98年以来の櫻田厚現社長の時代が第3期「成熟期」とされている(『ハンバーガーチェーンの比較経済分析』<大東文化大学古屋ゼミ/2012年>より)。

 しかし私の見地からは、創業社長だった櫻田慧氏が急死した97年までが「成長時代」で、それ以降は現在に至るまでずっと「長期低迷時代」が続いている。

 創業者の慧氏はカリスマ経営者として知られ、加盟店からの信頼と尊敬が厚く、絶対的な存在だった。モス・チェーンは大部分がフランチャイズ加盟店なのだが、「櫻田哲学」に賛同して参画した店が多かった。

(この項 続く)

2015年7月12日日曜日

「マック絶不調、モス好調」は正しくない モスが顧客満足度1位なんて本当か?(1)

モスバーガーを展開するモスフードサービスの2015年3月期営業利益は、前年比27.9%減の15億5400万円だった。原材料費の高騰や円安による調達費用の上昇などが影響したという。

売上高は663億1000万円(前期比1.5%増)、経常利益は15億2300万円(同35.9%減)となった。

 国内ハンバーガーチェーン首位の日本マクドナルドホールディングス(HD)は、連結売上高を2947億円(12年)から2223億円(14年)へ、この2年間で724億円落とした。業界2位であるモスが、この半分の362億円でも取り込めていれば、同社の売上高は50%以上も伸張できた。

 ところがモスの15年3月期の売上高の伸びはわずか1.5%で、「少しも動いていない」に等しいし、16年3月期の予想でも同675億円と低い伸び幅しか示せていない。

(この項 続く)

2015年7月11日土曜日

フジテレビに出演、楽天についてコメント

フジテレビの「ホウドウキョク あしたのコンパス」に出演。7月10日(金)、15分間にわたって、コメント。

トピックは、楽天がヤマト運輸と組んで、ファミリーマートなどのコンビニで荷物を受け取れるプログラムを発表したことについて。

「ファミマは手数料をもらえるし、ヤマトは再配達率(現在20%)を下げられる。しかし、消費者には何のメリットがあるのか。」

「楽天は対ヤフーショッピング対策。ヤマトの受注・配送システムも合わせて勧めることで、出展希望者や既出店者へのドライブを狙う。」

「小売りに大きな流れが二つ。大から小へ、そしてネットへ。もう一つは郊外ロードサイトから都心へ。典型はヤマダ電機とヨドバシカメラ。」

などとコメントした。

2015年7月10日金曜日

経営者JP(株) 5周年記念パーティ

ウエスティン・ホテル(恵比寿)で賑やかに経営者JPが5周年記念パーティを挙行した。

大広間に数百人が参集し、これを祝った。経営者ブートキャンプのOBも数十名来てくれて、懐かしく挨拶。皆さんそれぞれご活躍、ご発展の話しを聞いてまことにご同慶の至り。

私も〆の挨拶に駆り出され、「更なる5年、10年のご発展を」と。井上和幸創業社長は実にやり手の経営者だ。

2015年7月9日木曜日

七夕は札幌で 戦略策定指導のセミナーを教える

みらい経営アカデミーは、昨年から北海道で展開され始めた「定額制セミナー」。

企業が会員となると、年会費の範囲内で社員を何回でも何本でも種々のビジネス・セミナーに参加させることが出来る、というもの。会費は各企業の社員数で決められる。社員研修の新しいビジネス・モデルだ。

北海道の幹部の皆さんを対象に、ご自分の部門戦略を創って貰う演習を展開。とても駆け足だが、修了アンケートでは、一人の「役に立った」(4点)を除き、全員が「非常に役に立った」(5点)としてくれた。

一人が
「今まで受けたセミナーの中で一番役に立った」
というコメントを。

札幌味噌ラーメンを2度、食してきた。

2015年7月8日水曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(6)

ショールーミングをあえて取り込む


 小売業界で忌避されている「ショールーミング」とは、顧客が店頭で商品を検討して、購入自体は楽天やアマゾンなどの通販サイトで行うことだが、ヨドバシの場合は、顧客の購入をヨドバシ.comに誘導する仕組みを構築した。

 かつて、レンタルビデオ最大手のTSUTAYAが「クリック・モルタル」というマーケティング手法で一世を風靡した。消費者はネットで検索して実店舗に足を運び、購買につなげるという方法。ヨドバシの場合、「逆クリック・モルタル」といえるかもしれない。つまり、店頭で見て(あるいはネットで広範に情報を集めて)ヨドバシ.comで購買させるというやり方だ。セブン&アイHDが推進するオムニチャネルとも考え方が違う。

 ヨドバシのネット通販での売り上げは、14年3月期に650億円に達したとされる。15年3月期には1000億円に到達するのではないかという観測もあった。国内年商2000億円といわれるアマゾンの売り上げを追い抜くと期待されているのがヨドバシだ。ヨドバシ.comでカバーしている商品数は300万点を超え、家電という枠をとっくに外れている。

 ヨドバシは、どこまで独自の経営戦略を研ぎ澄ませていくのだろうか。家電量販店というドメインやネット通販というドメインをどう融合させ、あるいは新しい業態を構築していくのだろうか。経営戦略的な観点から、とても興味が持てる企業だ。

(この項 終わり)

2015年7月7日火曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(5)

小売業者がネット通販に参入すると、通販サイト用データと実際の在庫や店頭価格とが連動されないままのケースが多い。ヨドバシは完全に連動しているようにみえる。興味のある商品をヨドバシ.comで検索すると、売り止め商品も示されるが、その場合「後継商品を表示しますか」と示され、アマゾンとは違う「リコメンド機能」も工夫されている。

 ポイント制による還元も手厚い。現金で買えば店頭価格の10%が還元されるが、クレジット機能が付いた「GOLD POINT CARD+」をつくると11%になる。現金買いより優位となるので、顧客の囲い込みには極めて有力な制度を構築した。

 加えて配送の速さだ。当日6時間以内配送を、日本の人口ベースで60%を超える地域までカバーしたとしている。これはアマゾンより速い。

これらのユニークな方策により、ヨドバシの店頭で何が起きているか。店頭で商品を見て、レジに行かずに、その場でヨドバシ.comをクリックして買ってしまうのだ。あるいは、自宅に帰ってから購入する。住所などの個人データはすでに設定してあるので、レジに並ぶよりクリックして買い物するほうがよほど簡単でストレスがない。手ぶらで帰宅すれば、その日のうちに商品が届く。ポイントも11%付く。

(この項 後1回)

2015年7月6日月曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(4)

いたずらに店舗数を増やさないということは、社員の数を急激に増やさないということになる。ヨドバシの店員の在社平均年齢は確実に上がってきている。それは、それぞれの店員が商品知識や接客技術を蓄積していけるということだ。ヨドバシは、JCSI(日本版顧客満足度指数)で5年連続家電量販店の分野で1位となっている。

店舗数拡大に走ったヤマダが「日経ビジネス」(日経BP社)の顧客満足度調査で毎年ワースト1となってしまっているのは、店舗拡大のため店員教育が追いついていないためだと推察される。99年にポイント還元制を始めたのも、ヨドバシが初めてだとされている。

「ヨドバシ.com」


 そして今、ヨドバシが注目を集めているのが、以前より粛々と進めてきたIT化だ。同社では店頭のすべての商品にバーコードが付いており、スマートフォンスマホ)などで読み取ると画面に当該商品の競合価格や在庫状況などが示される。もちろん同社のインターネット通販サイト「ヨドバシ.com」に入っていけば、店ごとの在庫状況から取り寄せに必要な時間まで掲出される。

(この項 続く)

2015年7月5日日曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(3)

「我が道を行く」経営戦略


実はヨドバシは10年3月期以来、7~8%台の経常利益率を継続している。これは安値競争を繰り広げてきた家電量販大手の中で異彩を放つどころか、実に優れた経営実績を残してきた。ビジネスモデルの際だった強さを示してきたのがヨドバシカメラだ。

 継続した経営実績には、必ず裏打ちされた優れた経営戦略がある。ヨドバシの「我が道を行く」経営戦略の真骨頂はどこにあるのか。

 まず大きな要因として、非上場の同族企業である点が挙げられる。藤沢昭和・現社長が1960年に創業し、当初は「街のカメラ屋さん」だった。他の大手家電量販店とは異なり、業態が大きくなってもいたずらに多店舗展開に走らず、大都市の駅近立地にこだわり、店舗数は今でも21にとどまっている。ここ3年間は新規出店をしていなかったが、7月17日、さいたま市のJRさいたま新都心駅前の商業施設「コクーン3」に、埼玉初出店となる「ヨドバシカメラさいたま新都心駅前店」を出店する。ヤマダが店舗数1000を超え、縮小に動き始めたのと対照的だ。

(この項 続く)

2015年7月4日土曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(2)

ヤマダ、エディオン、ケーズHDは年商を1割前後下げたが、その結果として経常利益額は2~3割近く下げている。ビックカメラに至っては、売上高2.1%減に対して経常利益は14.6%下がる。ヨドバシ以外の4社の利益実現を「脆弱経営」だと非難するのは当たらないだろう。トップ(売上高)が減ればボトム(最終利益)が大きく減るというのはむしろ通常の出来事といえるからだ。

 ここで注目されるのはヨドバシで、売上高を5.7%減らしたのに、経常利益は3.8%しか減らしていない。つまり売り上げ減のダメージを吸収している。しかも、他4社と比べて対売上高経常利益率の7.8%は際立って高く、前期の7.7%よりも改善している。

(この項 続く)

2015年7月3日金曜日

ヨドバシ.comがスゴすぎる?アマゾンより速い!卓越した非常識経営(1)

家電量販大手5社の業績が出そろった。年間売上高比較でのベスト5とそれぞれの対前年比増減は次の通りだ(特記がないものは2015年3月期決算数値)。

 1位:ヤマダ電機、1兆6643億円(12.1%減)
 2位:ビック
カメラ、8120億円(15年8月期予想、2.1%減)
 3位:エディオン、6912億円(9.8%減)
 4位:ヨドバシカメラ、6515億円(5.7%減)
    ※非上場のため、6月24日付日経MJの推定値より
 5位:ケーズホールディングス(HD)、6371億円(9.1%減)


 14年4月に消費税が増税され、その直前に駆け込み需要が起こったため、その反動減で各社は軒並み売り上げを落として苦戦したことが見て取れる。

 ところが、上位5社を経常利益額で並べ直すと、順位が大きく動く。
 ※以下、社名、経常利益(対前年比増減)、売上高経常利益率
 1位:ヨドバシカメラ、511億円(3.8%減)、7.8%
 2位:ヤマダ電機、355億円(29.2%減)、2.1%
 3位:ケーズHD、258億円(17.9%減)、4.0%
 4位:
ビックカメラ、205億円(14.6%減)、2.5%
 5位:エディオン、111億円(25.3%減)、1.6%


(この項 続く)