2017年8月21日月曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(6)

マクドナルド帝国が形成され裕福となったクロックは、糟糠(そうこう)の妻であるジェーン・ドビンズ・グリーンと離婚し、翌1969年に有力FCオーナーの妻であったジョアンと再婚する。いわば略奪婚であり、それもビジネス・パートナーであり重要顧客でもあった相手から奪ってしまった。

 ビジネスの基本モデルを提供したマクドナルド兄弟との契約では、店舗の改装にはすべて兄弟側の許諾が必要とされ、オペレーションの改善などで大いに手を縛られたクロックは不満を募らせていた。一方、契約で許されていないマクドナルド社をクロックが設立してしまうなど、両者の対立が深まっていった。

 結局、クロックは270万ドルを兄弟に支払い、「マクドナルド」の名称やロゴ、オペレーションのノウハウなどすべて買い取る。映画にもあるのだが、それ以外にチェーンの売り上げの0.5%を将来的に支払う、という「紳士協定」を申し入れたわけだが、これは反故にされている。

(この項 続く)

2017年8月20日日曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(5)

この金融マンはクロックに合流し、その後マクドナルド・コーポレーションの初代社長となったハリー・ソネボーンである。個人宅のローンの支払いができない経営者が、多数の店舗用の土地や家屋のための資金の手当てができたのが不思議で、そこは映画では説明されていない。拙訳書では次のように説明している。

「クロックはあちこちの銀行に断られた挙げ句、ソネボーンがかき集めた1,500万ドルが投資された。ニューイングランドの保険会社数社から、法外な利子で融資を受けたのである」(同書、36ページ)

マック帝国の独裁者



 独裁者は孤独を意に介さない。ソネボーンはマクドナルド本社においてCFO(最高財務責任者)から初代社長へと昇格するのだが、CEOとして独善的にふるまうクロックに嫌気がさし、1967年に辞任する。その後、マクドナルドの店舗には二度と立ち寄ることはなかった。

(この項 続く)

2017年8月19日土曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(4)

ビジネスモデルの転換、マックは不動産業だ



 映画では個性派俳優のマイケル・キートンがクロック役をやっていた。クロックの強欲な個性を出そうと熱演していたが、観客としてそこまでのめりこめなかったのは、過剰な演技のために“クサく”なってしまったためだろうか。

 店舗拡大が順調にいき始めると、クロックの会社(この時点ではまだ「マクドナルド」を名乗っていない)は運転資金がショートする。自宅も抵当に入れ、それにより妻との関係が悪化し始めた。

 当時、FC店から支払われるロイヤリティが売上高の1.4%で、クロックはマクドナルド兄弟に0.9%を上納する契約だった。その差額だけでは資金が足りなくなった。家のローンの支払い猶予を依頼するために銀行を訪れたクロックは、そこでとある金融マンと出会い、ビジネスモデルの変更を示唆される。

 その金融マンは「マックの実態は食品ではない、不動産業だ」と言うのだ。この助言により、クロックは土地と店を本部が所有し、FCに貸すというやり方に意識的に転換した。家賃収入や、開業時での不動産契約金などが入るようになったのだ。

(この項 続く)

2017年8月18日金曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(3)

カリフォルニアで大繁盛をしていたマクドナルド店にやってきたレイ・クロックは、くたびれたミルクシェイク用ミキサーのセールスマンだった。

マック・マクドナルドとディック・マクドナルドという2人の兄弟が開発した店舗のオペレーション・システムは、当時としては画期的なスピードを実現していた。普通のレストランでハンバーガーを頼むと30分も待たされていたところを、キッチン作業の「T-フォード化」と、フードメニュ-を3つだけに絞るという施策によって、オーダー後30秒の提供を実現していたのである。

地域内での成功に満足していて、かつ品質の担保にこだわる兄弟を説得して、クロックは全国展開の権利の獲得に成功する。そして、フランチャイズ・システム(FC)によってアメリカ全土にマクドナルド店舗をオープンしていくのだ。このへんの権利の獲得、初期の拡大に典型的なアントレプレナーシップ(起業家精神)を見ることができる。

(この項 続く)

2017年8月17日木曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(2)

強引、強欲な拡大志向、レイ・クロック


同書が出版された同じ年、題材がかぶってしまった『マクドナルド わが豊饒の人材』(ジョン・F. ラブ著/徳岡孝夫訳/ダイヤモンド社)が出版された。前者がレイ・クロックに対して批判的(はっきり言って非難的)、つまり野党的なのに対し、後者はマクドナルド・ビジネスを賞賛的に紹介する、いわば与党的な書物だった。

『マクドナルド』にはマクドナルドでハンバーガーと交換できるクーポンが付けられたため多く売れ、私の『ビッグマック』を置き去りにした。もっとも、『ビッグマック』も3刷までいくほどには売れた。

 映画『ファウンダー』でレイ・クロックのなりふり構わない拡張の道程を見て、書籍『マクドナルド』のユニークな拡販政策を懐かしく思い出した。

(この項 続く)

2017年8月16日水曜日

マック、謎のベールに包まれた誕生と繁栄の秘密…実質的創業者を破綻させた「強欲経営」(1)

映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(監督:ジョン・リー・ハンコック)が封切られたので見に行った。原題は『The Founder(創業者)』で、マクドナルドを創設したレイ・クロック(1902―84年)が展開した創業物語である。

 映画の宣伝文句に「彼はどのようにして巨大企業を築き上げていったのか? この夏、誰もが知っているマクドナルドの、誰も知らない誕生のウラが暴かれる!」とあったのだが、私は知っていた。

 というのは、私は87年に出版された『ビッグマック マクドナルドに学ぶ100億ドルビジネスのノウハウ』(M.ボアーズ、S.チェーン/啓学出版)の翻訳を担当したからだ。原書は76年に出版され、著者は2人のジャーナリストである。

 レイ・クロックという経営者は毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人で、というよりあまりに露骨で強欲な事業拡張ぶりのために、存命中から批判を受けていた。ボアーズとチェーンは批判的な立場でこの巨大ファーストフードチェーンの拡大の軌跡を追い、クロックのいってみれば悪辣振りを詳細に再構成した。その、野党的な視点に私も共鳴したので翻訳を引き受けたという経緯があった。

(この項 続く)

2017年8月15日火曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(8)

対談を終えて 山田の感想



 シェアリング・エコノミーの新ビジネスの代表として、いつもAirbnb(エアビーアンドビー)と並んで論じられるのがUberである。世界中でビジネス展開しているが、従来からの法制などの問題でそのまま導入できないサービスが国によってはある。

 日本市場におけるひとつの可能性は、物流部門への参画ではないか。たとえば、アマゾンの配送。ヤマト運輸から値上げ要請を受けているアマゾンは、ヤマト以外で「ラストワンマイル」のお届けの方策を樹立しようと動いている。丸和運輸機関がこれに呼応し、1万人の配達ドライバーを採用したい、と報じられている。

 しかし、運送業界で喫緊の課題は、なんといっても人手不足である。丸和運輸が必要としているのは配達要員だけなので、UberEATSの配達パートナーがそのまま貢献できると私にはみえる。

 またコンビニ店舗からの個別配送にもマッチできるだろう。UberEATS側からすれば、配達する拠点がレストラン・パートナーに加えてコンビニとなるだけだ。UberEATSの配達パートナーがお届けすることができる。

 物流クライシスといわれる現在、シェアリング・エコノミーは経済合理性に基づいて自ずと拡充していくことだろう。

(この項 終わり)

2017年8月14日月曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(7)

GDPの成長にまで寄与



――高橋社長は、Uberというビジネスの価値をどうとらえていらっしゃるのですか。
高橋 Uberが提供するサービスは、既存のものを置き換えているわけではありません。新しい仕組みを提供して、それが使われることにより関連する経済のパイ全体を拡充しています。移動が簡便化し、利用が増えることにより、たとえば高齢者の皆さんの外出が増える、そして消費が拡大する、ということが起こっています。そして雇用の提供まで生み出しています。社会に対しても貢献できるサービスだと思っています。フランスではuberXのドライバー・パートナーとして新しく1万人以上の雇用が発生しましたし、GDPの成長にまで寄与したという報告がなされています。

――米国ではカラニックCEO(最高経営責任者)の退任が発表されるなど、トップの交代が重なっています。
高橋 日本に直接の影響はありませんし、私たちが日本でやらなければならないことは、わかっています。私たちは粛々とビジネスの拡大に励んでいくつもりです。Uberの使命は、それぞれの国での交通の課題を解決するソリューションを提供することです。高齢者や過疎化、増加する海外観光客の移動、そのような日本が直面する交通課題に対してチャレンジしていきます。

――とても大きな可能性があると思います。本日はありがとうございました。
高橋 ありがとうございました。

(この項 あと1回あり)

2017年8月13日日曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(6)

――UberBLACKはハイヤーの配車サービスですが、すでに既存の競合他社はいくつもあります。
高橋 高級車両が来るだけでなく、配車アプリそのものも徹底的に洗練され、透明性があります。提供するハイヤーの料金も変動できるようにしています。

――規制の面はどのようにクリアされているのですか。
高橋 当社が旅行代理店として登録しており、ハイヤー会社から車両を借り上げることで、サービスを実現しています。料金が変動することにより、お客様の利用状況とドライバー・パートナー稼動との需給マッチングが可能となります。Uberのテクノロジーによって、配車依頼が発生しそうな時間帯や場所が、ドライバー側のアプリに表示されるため、効率的にお客様を乗車させることができます。UberBLACKのハイヤーは営業所で待っているのではなく、需要が予測されるサービス提供エリアで待機しているのです。

――Uber全体としては、他にも多くのサービス・メニューがありますね。
高橋 Uberは世界中で展開していますが、それぞれの国・地域での特性や地域性も考慮しています。日本なら高齢化などの状況を踏まえて対応していきたいと思っています。

(この項 続く)

2017年8月12日土曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(5)

――それで入社を決意されたのですか?
高橋 実際に参画したのは14年のことで、7月にUber Japanの社長として赴任しました。しかし、始まりはあの夜のわくわく感、どきどき感であることは間違いありません。あれからずっと、Uberのユニークなサービスを日本に導入したらどんなことが起きるか、そしてどんなことができるのかに興味を持っていたのです。声をかけていただき、改めてUberのことを知ると、とにかくものすごい技術、そしてものすごいビジョンを持っている会社だと思い、参画を決意しました。

今後のビジネス展開



――日本における今後のビジネス展開について、どのようにお考えですか。
高橋 プロダクトとして本格的に導入しているのは、UberBLACKとUberEATS(ウーバーイーツ)の2つです。この2つが現在でのビジネスの軸になっています。これらを軸にサービス提供エリアを拡大し、事業を大きくしていきたいと考えています。加えてグローバルな、つまり世界で共通のUberサービスを日本で提供するという使命もあります。外国人訪日客が他の国でいつも使っているUberのサービスを、日本ではまだ使用したくても使えないというのが現状です。今年の1月から3月の間に、東京でUberBLACKをお使いになったユーザーの方の国籍は78カ国に上りました。それだけ高いニーズがあるわけです。

(この項 続く)

2017年8月10日木曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(3)

Uberは新興企業にして大企業



――Uberのサービス、そして会社自体もまだ新しいものですよね。

高橋 はい、2009年に米サンフランシスコで創業されました。最初のサービスはUberBLACK(ウーバーブラック)というもので、ハイヤーを配車するサービスです。これはどちらかというとプレミアムなもので、黒塗りの高級なハイヤーを配車します。実は私が初めてUberを利用したのも、このUberBLACKだったのです。

 当時私はサンフランシスコでソニーの投資部門に勤務していました。12年に友人とコンサートに出かけて帰ろうとしたら、バスも終わり、タクシーなどがまったくつかまらない状況になってしまいました。

 途方にくれていると友人が「問題ないよ」と言って、スマートフォン(スマホ)を操作しました。すると魔法のように数分のうちに黒塗りのハイヤーが現れ、私たちを迎えてくれました。友人は行き先を告げることもなく、まるで自分のお抱え運転手であるかのようにしていました。到着して、降りるときも支払いをしません。聞くと、事前登録したクレジットカードで支払いまで済んでいるというではありませんか! 

それまで、シリコンバレーで投資事業を担当していて、Uberについては毎日のように聞かされていました。しかし、あの夜の出来事は本当に衝撃的でした。

(この項 続く)

2017年8月9日水曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(2)

――すると、移動料金も変動的なのですか。
高橋 お客様のほうでピックアップしてほしい場所を入力、たいてい「現在地入力」で済むのですが、それと目的地を入力すると、近くのドライバー・パートナーの待機地点や料金も表示されます。降りるときには事前登録のクレジットカードで決済されますので、支払い行為も不要となります。イベント時や雨で需要が集中するようなときは、提示される料金も変わります。それを最適化するのがUberのテクノロジーです。

――AI(人工知能)やシステム・オペレーターを活用しているのでしょうか。
高橋 現時点で最善と思われるやり方で実践しています。

――普通の人が運転する車で事故が起きた場合は、どうなるのですか。
高橋 uberXを展開している多くの国では、Uberのサービス用に開発された自動車保険が適用されます。Uberのサービス実施時のみを対象とした自動車保険です。

(この項 続く)

2017年8月8日火曜日

感動的に便利なUber…スマホ入力→数分でタクシー到着→支払い行為不要(1)

Uber Japanの高橋正巳社長
世界のUber、日本のUber



――6月にUber米国本社が「世界中で50億回目のUber乗車を達成した」と発表されましたね。
高橋社長(以下、高橋) はい。Uberは現在、世界77カ国・地域でサービスを提供しています。20億回目が達成されたのが2016年だったので、その後1年間で倍増以上しました。

――主として利用されたのはuberX(ウーバーエックス)というサービスですね。
高橋 はい。uberXは、遊休資産として眠っている自家用車を運転したい人の隙間時間を活用し、お客の移動に提供するものです。登録運転者のことをドライバー・パートナーと呼んでいます。世界のUberのなかで、一番使用頻度が高いサービスです。

――その場合、顧客が知らない運転手への信頼などはどう担保されるのですか。
高橋 お客様は、乗車前にドライバー・パートナーの名前や顔、評価がわかる仕組みになっています。また、移動終了後に、お客様にドライバー・パートナーへの評価を入力していただくようにしています。評価が高いドライバー・パートナーには、より多くのサービス機会が提供できるようにシステム設計されています。

(この項 続く)

2017年8月7日月曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(6)

地方行政を巻き込んでの展開



――Uberのメインのサービス・プロダクツであるuberX(ウーバー・エックス)は、日本では始まっていません。
高橋 自家用車を活用した配車サービスは、地方の行政と組んだかたちで始まっています。16年から北海道中頓別(なかとんべつ)町と京都府丹後町で、行政やNPOにUberの技術を活用していただいています。公共交通の少ない地域で、お年寄りなどご自身で運転ができない人たちの足としてご利用いただいています。

――それは社会的にも有意義であり、市場参入の突破口になるかもしれませんね。
高橋 現在、数十の地方自治体から引き合いやご相談を受けています。

――Uberが世界で展開している規模感を考えると、日本ではまだまだ可能性がありますね。
高橋 私が日本に赴任した14年、当社には社長の私を含めて3名だけしかいませんでした。

――それが今では数十名に増えました。
高橋 UberEATSも順次拡大しているなか、組織も拡大しています。

※次回は、Uberのその他のサービス・プロダクツ、そして今後の日本での展開について高橋社長に聞く。

(この項 終わり)

2017年8月6日日曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(5)

――なるほど、お客には利便性、レストランには追加のビジネスがあるというわけですね。
高橋 加えて、数千人登録していただいている配達パートナーさんには、新しくて柔軟な働き方のオプションを提供できていると思います。Uberのサービスはどれも、「それがなかったら存在していなかったビジネス機会を創造する」というものだと思います。
 配達パートナーさんが受け取る配達料金も固定されておらず、たとえばランチ時間などのピークタイムで多くのパートナーさんに配達していただきたいようなときは、1件当たりの受け取り配達料が上がります。配達距離によってもパートナーが受け取る配達単価は変動します。また、配達料は事前に示されているので、配達パートナーさんの稼動を確保できるようになっています。

――それはUberが判断、提示するのですか。
高橋 はい、設定したアルゴリズムに基づいて、しっかり需給がマッチするようにしています。

――UberEATSは現在都内9区で展開なさっているわけですね。今後の方針としては、東京市場を地域的に拡大していくのか、大阪などの他の大都市に展開するのか、どちらをお考えですか。
高橋 16年9月にサービスを開始したばかりですので、当面都内とその近郊に地域拡大を目指しています。他の都市はその次の段階として考えています。UberEATSを使っていただけるレストラン・パートナーの開拓も、いろいろな手段を講じて数を増やしていこうと思っています。評判を聞いたレストランの方からお問い合わせをいただくようなことも増えてきました。

(この項 続く)

2017年8月5日土曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(4)

――UberEATSのレストラン・パートナーでは、どんなところが人気があるのですか。
高橋 有名なお店の料理を自宅やパーティーで試してみたい、というニーズが高いようです。UberEATSでホームパーティーやピクニックを行う方々が増えてきていると聞いています。また、ご注文なさる方は、美容や健康を重視した女性の方も多いですし、仕事の合間に頼む忙しい会社員、栄養が偏りがちなひとり暮らしの方などもいらっしゃいます。リピートのご注文も増え、レストラン側にもとても喜んでいただいています。
 レストランによっては、月の売上が数割向上したというところもあります。健康志向のところが伸びていますし、通常行かないようなレストランのメニューを取り寄せるという需要が顕在化しました。


UberEATSの拡大方向



――フードの配達というサービスには、既存の競合他社が存在します。
高橋 UberEATSはアプリで受注を代行するだけではなく、当社の配達パートナーがお店で料理を受け取ってお客様にお届けします。そのため、今まで出前スタッフがいなくて配達をしていなかったレストランでも、多くの投資をすることなく、デリバリー事業を開始できます。

(この項 続く)

2017年8月4日金曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(3)

――短時間でもいいのですね。
高橋 はい、隙間時間などでも有効に使っていただけます。働き方のオプションを広げるものです。学生さんや自営業、主婦や芸人の方も登録されています。

――私も注文しようとしたら、東京都内ですがまだサービス区域外でした。
高橋 今のところ目黒区、港区、中央区、千代田区、新宿区、世田谷区、中野区、渋谷区、品川区などの9区部で展開していますが、好評なので順次拡大しています。

――マクドナルドは店舗数が3000近くありますが、将来はすべてに対応なさるということですか。
高橋 いいえ、まずUberEATSがカバーする地域の店が対象となります。今回サービス開始したマクドナルドの店舗は33店です。そもそもUberEATSは16年9月から開始していまして、すでに都内500店以上のレストラン・パートナーの料理を配達しています。基本的なコンセプトとしては、「お客様に食のオプションを広げてもらおう」ということです。ですから数百円の肉じゃがから数万円のレストランのメニューまでをカバーしています。選択肢を広げるということで、今回マクドナルドと提携しました。

(この項 続く)

2017年8月3日木曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(2)

UberEATS(ウーバーイーツ)で日本マクドナルドと提携




――マクドナルドの店舗からの配送を、Uberが始められましたね。
高橋社長(以下、高橋) はい、UberEATSというサービスでマクドナルド店舗への対応を6月から開始しました。店舗からお客様への注文品を、UberEATSの配達パートナーがお届けします。

――配達は無料なのですか。
高橋 1回の配達につき380円をいただいています。しかし、1品からでもお届けしますし、お客様はご自宅だけでなく、公園などでも受け取ることができます。

――配達パートナーにはどうやってなるのでしょう。
高橋 ビデオなどを盛り込んだ説明会に参加し、登録していただきます。あとは働きたいときだけ、アプリを起動していただければ良いのです。

――何か特別の資格とか、審査はないのですか。
高橋 ありません。誰でもいつでも働ける仕組みを提供するのが、Uberの基本理念です。UberEATSの配達も車ではなく、配達パートナーの自転車かバイクやスクーター、あるいは行政などが提供しているシェア・サイクル(共用自転車)をご利用いただいています。ユニフォームも使用しません。使っていただくのは、Uberが貸与する配達用のカバンだけです。

(この項 続く)

2017年8月2日水曜日

Uber、革命的な食の宅配サービスが急拡大(1)

Uberは、台頭するIT関連企業のなかで最も注目されている企業のひとつである。
 注目を集める理由はいくつかある。

ひとつはその新興性だ。世界本社である米サンフランシスコでUber Technologies (ウーバー・テクノロジーズ)が創立されたのは2009年のことだ。まだ10年もたっていない。

 2つ目はその規模感だ。Uberはまだ上場していないが、投資会社の間での評価として、企業価値が700億ドル(約7兆8000億円)に達したといわれる。ちなみに日本最大の企業価値を有するとされるトヨタ自動車のそれが1560億ドル強(17年6月末)なので、未上場のUberがトヨタの半分の企業価値をまもなく達成するだろう。ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上のベンチャー企業)としてはUberが世界最大といわれている。

 3つ目は、ビジネスモデルの革新性だ。Uberが創出し、提供しているのはシェアリング・エコノミーの概念に基づいた配車アプリである。

 今回は2回にわたって、Uber Japanの高橋正巳(まさみ)社長に日本における同社のビジネスの現状と展開をうかがった。

(この項 続く)

2017年7月5日水曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (7)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

自社での大型M&Aは諦め、巨大ファンドに参画を

 西室氏は、日本郵政の前にも東芝で社長としてウェスティングハウスの買収を決定し、この2つの案件による損害計上は1兆円を超えた。こんな経営者も稀有である。私は同氏を「平成の大残念経営者」と呼んでいる。
 東芝の不正経理への同氏自身の関与が取りざたされていた16年2月に突如検査入院し、日本郵政社長などの公職を辞し、以来公の場に出てくることは無い。
 株主代表訴訟などの意欲を大きく削ぐような入院のタイミングではある。
 さて、トール社、野村不動産HDという祭りが終わり、日本郵政の次の一手はどんなものがあるのか。
 グループでの総資産が295兆円もあるというとんでもない財務規模の巨大企業が日本郵政だ。大型M&A数千億円という規模でも実は、こんなグループの財務状況に大きな影響を与えられるような案件は希少だし、それをモノにできる機会は当然少なくなる。またモノにしたとしても、とんでもなくM&Aが下手なお役所体質の企業グループだ。
 私のお勧めは、もう自らで大規模な事業会社を外から取り込むのは諦めて、「餅は餅屋」で、専門の投資ファンドに投資することだ。
 たとえば孫正義氏が10兆円規模で組成しはじめた「ビジョンファンド」に、日本郵政単体で10兆円を出資させてもらい、その運用はファンドに一任するなどだ。295兆円という気の遠くなるような額の資産をみずからで、ちまちま運用してもその母数に意味のある成長と利益は、つまり企業価値の増大はなかなか望めないだろう。

 しかし、公社体質の強い日本郵政グループの経営者諸氏が、果たしてそのような経営合理性の視点と思い切ったアクションを実践することはできるのだろうか。注目して見守りたい。
(この項 終わり)

2017年7月4日火曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (6)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

またM&A名人として知られる日本電産の永守重信社長は、「EBITDA10倍以上の会社は買わない」と明言している。EBITDAとは、買収先の経常利益と減価償却額の合計で、10倍とは10年をかけると投資キャッシュは元を取れるということだ。買収してからその企業の経営効率を上げたり、当社とシナジー(統合補完)効果により業績を加速させることにより、その10年を短縮するところに買収側経営者の腕の見せどころがある。
 ちなみに、トール社買収時のEBITDA倍率は9.2だったので、西室氏がPMI(統合後経営管理)をしっかり差配していれば、今回のような巨額損失の計上には至らなかったかもしれない。
 実際、日本郵便がトール社に役員を派遣したのは、17年2月に至ってからのことである。前述した17年3月期ののれん代損失計上が確定してからの、アリバイつくりのような役員派遣に私には見える。
 実力以上のM&Aをしてしまい、その後も何もしなかった、という点で西室前社長はその責任を糾弾されるだろう。

(この項 続く)

2017年7月3日月曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (5)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

買収したトール社を、西室氏は持ち株会社である日本郵政ではなく、子会社であり事業会社である日本郵便の下につけた。
 しかし、考えても見てほしい。日本郵便というのは日本全国津々浦々に郵便局を開設して、日本国内の「郵便」事業を営々として担ってきた。トール社を買収したその時点ではまだ民営化されていない公社であり公的企業だったのだ。国際ビジネスとはもっとも遠かった地平にいた企業が日本郵便だっただろう。
 そもそも日本郵便グループは、公社という体質を強く保持していて、なかなか他の民間会社とさえ合わせられない。10年に日本通運の「ペリカン便」を統合したときも、規模拡大を果たせなかったばかりか、1000億円規模の赤字を出すに至っていた。
 そんな「純ドメ(ドメスティック)」の極にある会社に欧米文化であるオーストラリアの巨大会社を経営できる人材やノウハウが有る、とでも西室氏は判断したのだろうか。
 日本側に海外子会社の経営ノウハウがあり、しっかりガバナンスを効かせればうまくやっているところはいくらでもある。同じ公社上がりでもJT(日本たばこ産業)は、海外M&Aの優等生だ。その下地には長年国際的な原料調達や製造展開のノウハウの蓄積がある。

(この項 続く)

2017年7月2日日曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (4)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日


西室泰三前社長の負の遺産、トール社買収

 オーストラリアの物流会社トール社の買収を決断したのは、日本郵政前社長西室泰三氏である。西室氏は郵政民営化に当たり、13年に初代社長として政府により迎えられた。15年に日本郵政グループ3社を同時上場させる陣頭指揮を執り、実現させたのだが、この巨大グループをさらに成長すべく画策したのが大型M&Aである。
 トール社の買収は西室社長(当時)の独断的な決定だった。6,200億円という買収額も、プレミアムが乗せられすぎている、つまり高値つかみだ、という批判が強かった。

トール社買収失敗は、買収後の経営の見通しの無さに要因

 私はしかし、トール社買収の失敗は、買収時点での資産評価よりも、買収後の経営の見通しの無さにあったと見ている。トール社買収について西室氏は当時「国際物流戦略の展開」としていたが、本当にそんな見込みがあってのことだったのか。

(この項 続く)

2017年7月1日土曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (3)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

日本郵政が赤字に沈んだ最大の原因は、郵便事業を担当、展開している子会社、日本郵便が3,848億円の当期損失を計上したからだ。そしてその原因は、15年に日本郵政が買収して日本郵便の子会社とした、オーストラリアの物流会社トール社ののれん代を全額減損処理して4,161億円の損失を計上したことにある。
 のれん代とは企業をM&Aした時、相手側の純資産額と買収価格の差額として計上されるものである。15年に6,000億円強を投資して買収したトール社には、4,000億円強も余分に払った。その時点ではその差額は回収できるとしたのだが、17年3月期になって、それを諦めたので損失計上した、ということだ。
 日本郵政はそのリカバリー・ショットとして野村不動産HDのM&Aを目指した。ところがトール社という大型投資案件の失敗に懲りた内部や大株主である政府の慎重派が、野村不動産HDの株価伸長によって不安の声を大きくしたので、今回のディールは流れてしまった、という成り行きだ。
 つまり、一連の騒動はトール社に始まり、トール社で終わったということだ。

(この項 続く)

2017年6月30日金曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (2)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

トール社買収でやけどした日本郵政に慎重論

 今回の買収案件は、シナジー効果があまりなかった、と私は見ている。確かに日本郵政もグループとして多数の不動産を有しているが、その大部分は小店舗サイズの郵便局だ。一方、野村不動産HDは大型マンションの開発や管理を主要業務としている会社である。駅前の小さな郵便局の土地にマンションを建てるわけにいかないし、その小さな郵便局の管理を大手である野村不動産HDに委託するメリットもない。
 野村証券は、日本郵政が2015年に上場したときの主幹事という縁があった。大型M&Aを実現したい日本郵政がその縁にすがったという、「投資有りき」で始まったディールなのだ。
 日本郵政が大型M&Aを希求したのには、今同社が置かれている状況、タイミングがある。今年1月に政府が日本郵政株の2次売却を決定したのだが、それには15年に初上場した売り出し価格1.400円を市場価格が上回っていなければならない(6月20日終値1,387円)。
 ところが、日本郵政は17年3月期で初の最終赤字289億円を計上してしまった。一方、野村不動産HDの同期純利益は470億円だったので、同社を取得して日本郵政の財務を大幅に改善しようともくろんだわけだ。

(この項 続く)

2017年6月29日木曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (1)

WEBRONZAは、朝日新聞が展開している「論の饗宴」サイト。


「各分野の第一線で活躍する学者や専門家、ジャーナリスト、アルファブロガー、朝日新聞の論説委員、編集委員らが日々、独自の視点からニュースに迫って解説を加え、論を交わしていきます。 「政治・国際」「経済・雇用」「社会・スポーツ」「科学・環境」「文化・エンタメ」の5分野に、約300人にのぼる筆者が、多彩な論考を提供しています。また、その時々の旬の人物のインタビューや定期筆者でない筆者の論考なども掲載されます。」(同サイトより)

私のタイトル記事が6月27日にアップされた。以下、回を分けて転載する。


日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」

2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

日本郵政は6月19日、野村不動産ホールディングス(HD)の買収案件について「現時点において検討を行っている事実はない」とのコメントを発表した。野村不動産HD側も「中止することになった」と発表した。
 買収計画が2017年5月中旬に表面化して以降、野村不動産HDの株価はほぼ2,000円から2,447円(6月16日)へと約20%も値上がりしてしまった。筆頭株主は野村証券を有する野村ホールディングスで33.7%を保有している。日本郵政は野村グループと交渉を行ってきた。
 野村ホールディングスは野村不動産HD株を約6,480万株所有しているので、2,400円時価だと評価額約1,550億円となる。M&A買収交渉なので、日本郵政はプレミアムを乗せなければならない。交渉額は2,000億円台となり、その価格で合意できなかった、ということだろう。
 一般市場から残りの株をすべてTOB(公開買い付け)するところまで日本郵政が踏み込むつもりだったのなら、さらにその2倍の資金投入が必要となった。つまり、最大で6,000億円規模の案件だった。

(この項 続く)

2017年6月28日水曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』台湾で中国語出版



一昨年に上梓した『間違いだらけのビジネス戦略』(山田修、クロスメディアパブリッシング)が台湾で中国語に翻訳、発刊された。
光・現出版、350元(約1,300円)。

同書は韓国でも翻訳出版が進行している。拙著は何冊かが中国語および韓国で翻訳刊行されている。英訳されたものはまだない。

2017年6月27日火曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (3)

参加者の相互選出による最優秀発表者は、(株)岩田商会の村上和穂氏。同社の建材事業部長だ。

村上氏の発表は、業績向上を阻害している最大課題三つをすっきりと捕らえ、それぞれに対して、説得的な解決策を提示して評価されたものと思う。

ブートキャンプ第2期全体を通じての感想として、村上氏は

「目標と課題はつながらなくてもよい、という点が意外な印象でした。課題を解決することが結果として目標をクリアすればよい、という見方を大事にしたいと思います。」

と、アンケートに書いてくれた。私が戦略カードで指導している「課題解決型の戦略策定法」をよく理解してくれたコメントだ。

今期も、箱田忠昭先生、新将命先生の全面的なバックアップと参画をいただいて充実したプログラムとして修了することができた。

次の第3期は8月の末から12月にかけて、である。

(この項 終わり)

2017年6月26日月曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (2)

発表会では、それぞれの発表に対し、直前に2名のコメンテーターを指名する。発表が終わると、この二人のコメンテーターが、責任コメントを出す。最終発表に対してさらにコメントが付け加えられることにより、より建設的に戦略が仕上がる。

私が修了式で述べたことは、

「皆さんは机上の空論として戦略を策定したのではない、戦略セオリーを教えもしたが、単にそのシミュレーションとして戦略を立ててもらったわけでもない。

4ヶ月前には形もなかったそれぞれの実物戦略を成果物として手にした。

願わくば、会社に帰ったら、それをそのまま報告あるいは発表して実践してほしい。私たち講師や、他の参加者の叡智を結集して作ったものなので、現段階でこれ以上のものは出てこないはずだ。」

(この項 続く)

2017年6月25日日曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (1)

リーダーズブートキャンプ第2期の最終講を6月24日(土)に実施。

2月から7講に渡って展開してきた当プログラムは、最終講で参加者が策定した三年戦略の発表会で幕を閉じる。

発表用のファイルを策定するまでに、各参加者は戦略カードを使って、「5つのステップ」を走ってきた。途中、2回にわたって小グループ討議に臨み他の参加者3名との討議を経て、カード選択や表現の強化洗練のプロセスを経てきた。

発表用のファイルは個別に私にメールで提出され、それを添削もしたのだが、今回は特に「補習」として正規の7講の他の日に、1時間ずつの個別指導を行った。

こんな準備を経て、臨んでくれた発表会では、

(この項 続く)

2017年6月16日金曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(7)

やる気度を高める5つの方法



 ギャラップはもちろん「やる気度」を高める施策を提言もしている。一応紹介しておくと、次の5点だそうだ(「The Worldwide Employee Engagement Crisis, A.Mann & J. Harter, GALLUP, January 7,2016」より)。

1.「やる気」対策を会社の人事戦略に組み込む。
2.「やる気」を科学的に評価できる方法で測定する。
3.会社が現在どこにいて、将来どこに向かおうかということを理解する。
4.「やる気」をひとつの構成概念として見る。
5.「やる気」をほかの業務優先と整合させる。

 ちなみに4.は説明文も読んだがわかりにくく、執筆者本人がよくわかっていないことを書き連ねた可能性もあるが、何を列挙しても「施策」らしくはなるのだろう。

(この項 終わり)

2017年6月15日木曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(6)

ギャラップのこの論理によれば、企業業績を上昇させるひとつの目安としては、彼らの調査に現れる「やる気度」を上げればいい、ということにもなるだろう。しかし、経営者としての私の経験からいうと、実は社員全体の「やる気度」を上げるのは建前としてはいいが、必ずしも「効率」の向上につながるとはいえない。

 前出日経新聞記事では、3分類のうち「仕事意欲のない会社員」は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」と解説された。経営者としては、こんな社員たちを改心させ立ち直らせるのは「百年河清を俟つ」が如しのようなもので、できればお引き取り願いたいし、そうでなくてもそんなグループにかかわり合っていてはいけないというのが私の信条だった。

 実践的な経営者やリーダーの心得としては、「通信簿で5の付く社員を探せ」というものだ。正規分布で5点法の通信簿というと、全従業員のなかで「5」が付く社員の割合は7%となる。ちょうどギャラップ調査で「やる気のある社員」の日本における割合に一致する。

 組織の相対的な効率を上げるには、「やる気のある社員」を認知し、権限を委譲して早めに昇進させる、という方法に特化することなのだ。

(この項 続く)

2017年6月14日水曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(5)

やる気のある社員集団が企業にもたらすもの



 ギャラップは3つのカテゴリーに分けた社員たちが、会社に対する貢献で差を生んでいる、ともしている。経営の常識からすれば当然の結論である。同社は、次の9つの項目に対し、「仕事にやる気がある会社員」「仕事への意欲が低い会社員」で、何が違うのかを調査した。

・顧客評価(customer ratings)
・利益性(profitability)
・生産性(productivity)
・離職率(turnover)
・安全に関する事故(safety incidents)
・減損(盗品)(shrinkage<theft>)
・欠勤(absenteeism)
・医療安全に関する事故(patient safety incidents)
・製品・サービスの質(quality)

 そして、調査で得られた「やる気度係数」によって、上位4分の1(やる気の高い会社員)と下位4分の1(やる気の低い会社員)を比較した際の、各9項目における差というものを報告している。

 それによると、9項目で明らかに優劣の差がみられるとされた。たとえばやる気の高い会社員は、やる気の低い会社員と比較したときに、顧客評価を約10%、利益性を22%、生産性を21%引き上げ、離職率、欠勤、安全に関する事故の減少、不良品といった項目に関しても大きく差が出たというのである。

(この項 続く)

2017年6月13日火曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(4)

「それ以上に(筆者注:日本で)問題なのは『不満をまき散らしている無気力な社員』の割合が24%と高いこと。彼らは社員として価値が低いだけでなく周りに悪影響を及ぼす。事故や製品の欠陥、顧客の喪失など会社にとって何か問題が起きる場合、多くはそういう人が関与している」(同)

 実は「やる気」の割合が際立って低いのは日本だけでなく、韓国(11%)、台湾(9%)、中国(6%)と東アジア諸国に共通の傾向だ。中国は13年調査では世界最下位だった。しかし、これらの順位は参加国の経済規模と比し、違和感がある。低すぎはしないか、ということだ。

「労働生産性」の順位からみると、152カ国中日本は32位、韓国は36位、中国(香港を含まず)は83位だった。ちなみに米国は9位、香港は12位である(「労働生産性の国際比較(14年)、日本生産性本部」)。よって、儒教的な価値観による自虐的、卑下的な文化傾向が影響しているのかもしれない。

(この項 続く)

2017年6月12日月曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(3)

やる気のない社員大国、それが日本だ



 来日したクリフトン氏が開示した17年調査結果の一部は、実は13年のそれと大差ない、というか同様な結果を示している。17年で「(1)6%、(2)70%、(3)24%」という日本社員の調査分布は、13年では「(1)7%、(2)69%、(3)24%」だった。

 それにしても、日本の社員の「やる気」は同調査による国際比較で目を覆いたくなるものだ。13年調査から抜粋しても、(1)「やる気のある社員」の割合は世界平均で13%だったのに、日本はその半分以下だった。ちなみに米国のそれは30%で世界3位だったが、1位はパナマ(37%)、2位はコスタリカ(33%)だった。南米の国が前向きかつ幸福に仕事に取り組んでいる傾向は、お国柄として理解できる。また、アメリカ人がいかにも自己肯定的に自らへの評価が高いのもわかるような気がする。

 しかし、クリフトン氏は前出日経新聞記事で、アメリカでも「やる気」改善が起こってきたのは15年ほど前だったといい、「やる気係数」は必ずしも固定的でないという見解を述べている。さらに前世紀では日本の「やる気係数」も高かっただろうという見方も示している。


(この項 続く)

2017年6月11日日曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(2)

「良い子、普通の子、悪い子」




 17年版の正式レポートはまだ発表されていないのだが、同調査は繰り返し行われているので、前回となった13年版から調査手法や分類の定義を知ることができる。

 ギャラップ社は世論調査の分野では世界屈指の会社だ。「世界の職場環境の状況2013」によれば、調査可能な個人サンプルは190カ国地域で2500万人に上るとしている。同調査では毎回140カ国・地域で社員の意識調査を実施しているが、その結果として社員をその「やる気(原語ではEngagement)」度合いにより3種類に分類している。

(1)仕事へのやる気が高い会社員 (Engaged)
やる気にあふれ、会社への貢献度も高い。ビジネスの革新を後押しし、ビジネスをより発展させる。
(2)仕事へのやる気が低い会社員 (Not Engaged)
ただ仕事をやらされている。誰でもできる仕事をただ日々こなす。決して仕事に情熱やエネルギーをそそがない。
(3)そもそも仕事に意欲のない会社員 (Actively Disengaged)
無意識に不幸を招いている。やる気に満ちた同僚が得た成果でさえも無駄にすることがある。

 3つのなかで(2)は「単にやる気がない」だが、(3)は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」とされ、組織的には厄介なグループということだ。

(この項 続く)

2017年6月10日土曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(1)

「Thinkstock」より
世界中で世論調査を展開している米ギャラップ社は、数年おきに各国で社員の「やる気」を調査して発表している。「State of The Global Workplace(世界の職場環境の状況)」というそのレポートが最後に発表されたのは、2013年のことだった。

 17年に入り数年ぶりに調査が行われ、先ごろ来日した同社のジム・クリフトン会長兼CEO(最高経営責任者)が、そのさわりを披露した。同氏によると、日本の企業戦士の「やる気」はすごく低調だ、ということである。

「日本は『熱意あふれる社員』の割合が6%しかないことがわかった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった」(5月26日付日本経済新聞より)

 さらに、「企業内に諸問題を生む『周囲に不満をまき散らしている無気力な社員』の割合は24%、『(単純に)やる気のない社員』は70%に達した」(同)と、ネガティブ社員の割合の多さも指摘している。

(この項 続く)

2017年6月8日木曜日

『残念な経営者 誇れる経営者』  出版記念 戦略特別講演会 6月13日

山田 修氏
『残念な経営者 誇れる経営者』 
出版記念 戦略特別講演会 
「こうすれば勝ち残れる
経営戦略が立てられる」
  (リーダーズブートキャンプ第3期 説明会つき)
第1回 2017 年6月8日(木)15:00~16:45
第2回 2017 年6 月13 日(火)15:00~16:45
 会場:SMBC コンサルティング セミナールーム(東京駅徒歩5分)
 参加料:5,000 円
       (ブートキャンプ第3期に申し込まれた場合、参加費に充当)
 定員:各回30 名
 
★お問い合わせ・お申し込み:
 インサイトラーニング TEL: 03-3449-6301

2017年6月4日日曜日

リーダーズブートキャンプ、第6講は箱田忠昭氏が登壇!

リーダーズブートキャンプ第2期は全7講で進行してきたが、6月3日(土)にその第6講クラスを行った。

この日の特別講義は箱田忠昭特別講師による「説得・交渉・人間関係」。興味のあるドリルによってクラスは文字通り説得された。

『ザ・会社改造』(三枝匡)の後半も報告・討議してもらい読了した。今期は前半に『日本電産流V字回復の教科書』(川勝宣昭)を読み、今年の優良書2冊をカバーできた。

戦略策定を進めていた参加者の第2回グループ発表の残りも終え、いよいよ発表用のファイルの完成を待つ。

2017年6月3日土曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(7)

独断的な巨大買収はつまり、西室氏にとって自らの権力の誇示であり、所有権の再確認という要素が強かったのではないかというのが私の解釈だ。自ら決めればポンと数千億円もの買い物ができる―陶酔感も強かったのではないか。

 日本郵政におけるトール、そして東芝におけるウェスティングハウスの買収、この2つの案件による2社での損害計上は1兆円を超えた。西室氏の「損害関与への突出ぶり」は特筆ものである。

 年商1兆円規模の企業価値を毀損した例としては、負債総額1兆8700億円で旧そごうを倒産させた故・水島廣雄氏や、1兆円の売り上げを達成した後にダイエーを凋落させた故・中内功氏などが記憶にある。

 西室氏の場合はさらに2つの異なる大企業で、大損害に至る意思決定に大きく関与した、あるいは主導した経営者だ。こんなスケールの大きな経営者はこれからも滅多に出ないのではないか。その意味で、「平成の大残念経営者」として私たちの記憶にとどまることだろう。

(この項 終わり)

2017年6月2日金曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(6)

合わせて1兆円超の損害の発生



 西室氏は所有欲の強い人なのだろう、と私は思う。同氏の所有欲の強さは会社経営に当たっては、意思決定力を自らのものとして保持しようとして表出した。主要人事の決定や、海外大型M&Aなどの重要な意思決定の場面でそれは突出して発揮されてきた。

 それらの重要な意思決定が十全なものとして発揮されれば、それは名経営者ということになるのだが、西室氏の場合は「自分はこう決めた、後は任せた、あるいは知らない」と解されるような対応である。その最たる例が、買収したトール社を日本郵政の下に直接つけず、子会社である日本郵便のそのまた子会社に配したことだろう(日本郵政が親会社で持ち株会社、日本郵便は子会社で事業会社)。

 日本国内で津々浦々に郵便局を展開することだけを主要業務としてきた日本郵便が、突然預けられた海外法人であるオーストラリアの巨大会社を無事管理運営できるとでも西室氏は思ったのだろうか。M&A後の正念場となるPMI(Post Merger Integration:買収後統合)の見地からはとても理解できない配置である。

(この項 続く)

2017年6月1日木曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(5)

東証には財界人枠として用意された会長職に就任した。いわば「お飾り」的にいてくれればよい、という性格もあった。製造業である東芝出身の西室氏は金融、ましてや企業としては特異な証券市場運営会社などにはまったく土地勘がなかった。ところが、就任半年後の05年12月にみずほ証券がジェイコム株誤発注事件を起こし、東証側で責任を取って社長が辞任すると、自ら社長に就任してしまうのである。

 さらに東証、日本郵政の社長時代を通じて、西室氏は東芝にも強い影響力を行使し続けた。相談役という立場ながら、東芝本社の38階の役員フロアに故・土光敏夫元会長が使っていた部屋に居座り続け、日本郵政という大企業の社長職にある間も東芝に週3日も出社し続けて院政を敷いてきた。

 不正問題で揺れる東芝が次期社長の選定に苦慮したときに、西室氏は日本郵政社長としての定例会見で「本人が辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ」結果、現社長に室町正志氏(当時会長)が就任した、と語っている。つまり、自らが東芝のキング・メーカーだと広言したにほかならない。

(この項 続く)

2017年5月31日水曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(4)

権力への強い執着



 同記事で稲村氏は、2月に東芝が米原発子会社ウェスティングハウス関連で約7000億円もの巨額損失を計上した案件についても、西室氏の責任を追及している。

「いま西室氏の出身母体である東芝は巨額損失で危機的状況だが、その原因となった米原発会社ウェスチングハウス社の巨額買収に当事者としてかかわっていたのが、東芝相談役だった西室氏でした」

 日本郵政と東芝のこれら2大損失について西室氏一人がすべて責任を持っているかはともかく、それぞれの買収決定について深く関与していたことは間違いないだろう。

 西室氏は経営者として3つの大企業に関与してきた。東芝、東証、そして日本郵政である。その傍ら、公職としては経団連副会長、日米経済協議会会長、安倍政権が戦後70年談話をまとめた有職者懇談会の座長などを歴任してきた。そんな西室氏の経歴は、「肩書コレクター」、あるいは「名誉欲は人一倍強い」などとも評されてきた。

西室氏が経営してきた3社とのかかわりと、強い公職への意欲から私が感じるのは、同氏の「新しい権力の獲得への強い意欲」と「一度手にした権力への粘着質的なまでの強い執着」の2点である。

(この項 続く)

2017年5月30日火曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(3)

赤字の主原因は、15年に6200億円で買収した豪物流子会社トール・ホールディングスにあった。ブランド価値を示す「のれん」を一括償却したことにより、約4000億円もの損失を計上したのである。それに対して稲村氏は同記事で、

「特に巨額損失の全責任を負うべき西室氏に対しては怒りを感じます」

と、糾弾している。トール社の買収は西室氏の主導で進められ、15年2月に発表された際には「電撃買収」と報じられた。

稲村氏は同記事で「西室氏の経営手腕には、ほかにも疑問に感じる部分がありました」として、生保アフラックのがん保険を全国の郵便局で独占的に販売できるようにしたことなどを挙げている。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という趣もあり、そもそも稲村氏の経営幹部としての在任期間は、トール買収発表以前ではあったものの、西室氏とかぶっていた。

稲村氏は「私は最初から反対だった」としているが、副会長という枢要な役員であり経営責任がある立場にあったのだから、「殿を諌めなかった家老連」という指摘も免れないかもしれない。

(この項 続く)

2017年5月29日月曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(2)

稲村氏は、総務省時代から政策統括官として国営だった郵政事業を管轄し、日本郵政公社の常務理事に転出した人だ。一貫して郵政民営化に反対し、一時は大学に教授として転出し郵政事業から離れた。その後、民営化により株式会社日本郵便が発足した12年10月に同社副会長に就任した。14年3月には同社顧問を退任しているので、西室氏の社長時代(13年6月就任)と在任時期がかぶっている。

 郵政民営化の推進役として民間から政府により招聘された西室氏と、一貫して公営化の利点を主張している稲村氏とでは、基本的な立場が正反対なので、在任中も協調的に経営に当たっていたとは思われない。

 この記事が出たきっかけは、日本郵政が5月15日に17年3月期の連結最終損益が289億円の赤字(前期は4259億円の黒字)になったと発表したことだ。赤字は07年の郵政民営化以来初めてのことで、それが「郵政愛」の強い稲村氏の義憤につながったのだろう。

(この項 続く)

2017年5月28日日曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(1)

日本郵政・西室泰三社長(ロイター/アフロ)
西室泰三氏は1935年生まれの82歳。東芝の社長、会長を歴任した後、2005年に東京証券取引所の取締役会長に、13年には日本郵政の社長に就任している。経団連の副会長も務めるなど、財界活動も活発に行った。16年2月には検査入院し、3月に日本郵政の社長職、東芝相談役を退任している。以来公の場に姿を見せることはなく、入院加療を続けていると見られる。

 経営者、財界人として華麗な経歴を重ねてきた西室氏だが、退職後に批判が噴出し毀誉褒貶半ばというより、多くの非難を集めるという状況となってきている。


日本郵便元副会長が実名告発



元日本郵便副会長の稲村公望氏が西室氏を批判した記事が話題となっている。「週刊現代」(講談社/5月27日号)記事『日本郵政の巨額損失は東芝から来た西室泰三元社長が悪い』で、「日本郵便元副会長稲村公望氏が実名で告発」という副題がついている。

(この項 続く)

2017年5月27日土曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(8)

実際にはプレイステーションが属する「ゲーム&ネットワークサービス」セグメントは、17年度予想では売上2兆円近くとされ、この巨大企業の立派な柱となっているのだ。そんな製品が現存しているのに、多くのソニーOBやファンはないものねだり、あるいは過去への郷愁を表出しがちなのである。

 前出ダイヤモンドの記事は「コングロマリットを目指すのではなく」と主張しているが、たとえば「金融」セグメントに目を留めてほしい。17年度予想では収入1兆円以上と大きな柱である。それに、営業利益が1700億円と予想されていて、これは対売り上げで15%にもなる。「半導体」以外の製造セグメント各部門では、対売上営業利益率はせいぜい10%だ。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)が15年に金融事業から撤退すると発表し、株式市場はそれを好感し、ソニーもそれを見習うべきとの指摘もある。しかし、20世紀最大の経営者ジャック・ウェルチがレガシーとして残し、GEの金城湯池だった同事業から撤退したのは、ジェフリー・イメルト会長の大きな失政だと私は思っている。ソニーは粛々とタコ足経営(8事業体制)を進めていけばいい。

 平井社長の「第2次中期経営計画」は17年度に達成される見通しだ。いずれ「第3次」が発表されることだろう。この「凋落ストッパー」経営者が、果たして「中興の祖」とまで呼ばれるようになるか、多いに興味がある。

 蛇足だが平井社長の15年3月期の報酬は5億1300万円と公表されている。通常報酬(退職報酬などではない)としては日本人経営者で最高額だ。第2次、第3次中計を実践、達成していき、「報酬10億円日本人社長」の称号を手にしてもらいたい。

(この項 終わり)

2017年5月26日金曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(7)

複合企業のままで走れ



 前出ダイヤモンドの記事の執筆者はソニーのOBではないが、ソニー愛は深く、同記事で次のように見解も述べている。

「“ウォークマン”のように人々の心に驚きと興奮を与えるモノを、ソニーが創り出すことは可能だろう。今後のソニーの経営には、収益性を重視しつつ攻める姿勢が必要だ。それはコングロマリットを目指すのではなく、新しい技術を使って、人々をワクワクさせる、より良いモノを創るということだ」

 ソニー本などで多くのソニーOBが希求してきたことは、確かにそのようなことなのだろう。同記事ではまた、「新しい技術力を用いた製品のコンセプトをまとめ、それを先進的なデザインと組み合わせることが、ソニーの強さであり、最も強い部分=コアコンピタンスだった」ともしている。異論はなく、ただ私の立場は「そうだった」と強い過去形なだけだ。

「輝けるソニー」が大賀社長時代までだったとしたら、それは20年前の話であり、年商は現在の半分の時代だった。現在、仮にユニークで消費者を真に魅了するようなエレキ製品をソニーが世に送り出せたとしても、この8兆円企業にとってはシングルヒットにしかなり得ない。

(この項 続く)

2017年5月25日木曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(6)

しかし、前述したソニーの17年度セグメント別業績予想に関する私の分析によれば家電製品はすでにソニーの本流ではない。そこをめざしても、売上8兆円ものこの巨大企業を導いていけるようなボリューム感のある製品を送り出すことは難しい。

 歴代社長を振り返ってみたとき、トランジスタラジオやウォークマンのような斬新かつ魅力的で、一世を風靡するような「家電」製品がソニーから出てくる時代は、大賀典雄社長時代(1982~95年在任)で終わった。そのあと、出井伸之社長(1995~2000年在任)以降は、ソニーの組織内からの社長昇格者となり、彼らのアントレプレナー(起業家)的素養は大きく減じてしまっている。平井現社長はアントレプレナーとしての強みではなく、マネジメント能力で勝負していると私は見ている。

 アントレプレナー型ではなく、能吏型の経営者に見える平井社長は、12年から14年までの「第1次中期経営計画」で大不調会社だったソニーの止血作業を行った後、ただちに15年に「第2次中期経営計画」を発表し、実践してきた。
 その最終年となる17年度に目標とした5000億円の営業利益を達成しようとしている。CEO在任5年間の通信簿としては、着実に成果を上げてきたと評価できるだろう。

(この項 続く)