2017年12月12日火曜日

白鵬が日馬富士暴行事件の主犯だった…「驕った横綱」、貴乃花親方追放を主導という蛮行(3)

アメリカ発祥のスポーツはエンターテインメントの要素が強い



 アメリカ発祥で日本でも人気があるスポーツの代表が野球だろう。野球選手の挙措を観察しても、大相撲の礼儀とはおよそ大きな違いがある。

 野球ではまず「声を出せ」である。結果、草野球からプロ野球までベンチからの野次、相手チームや選手に対する罵詈雑言は聞くに堪えない。そしてそれが賞賛されるので私は嫌悪感を感じる。

 特に高校野球で見られる、一塁コーチの大げさな「セーフ・アピール」である。明らかにアウトの場面でも大きく手を広げてセーフだと主張する。誤った判断を要請するこうした行為に、どういう教育効果があるのか私には理解できない。合理主義、効率主義がはびこるアメリカ人が育てたスポーツは、勝敗至上主義、そしてプロとしての過剰なエンターテインメントが優先されている。

 大相撲は、アメリカ発祥のそんな浅薄な「スポーツ」ではない。何百年の歴史で磨かれた様式美をふくむ「伝統芸能」、あるいは「神事」でさえあるのだ。白鵬の万歳三唱を擁護したマツコ・デラックスは、そこを履き違えている。

(この項 続く)

2017年12月11日月曜日

白鵬が日馬富士暴行事件の主犯だった…「驕った横綱」、貴乃花親方追放を主導という蛮行(2)

また、勝者は退場の際に観客とハイタッチをすることが多い。それはベビー・フェイスと呼ばれる「勝ち組」がすることが多く、ヒールと呼ばれる「悪役側」は逆に観客席に乱入することで顧客とコミュニケーションを図り、評価される。

 白鵬が行った万歳三唱の呼びかけは、こうしたプロレスのコミュニケーションに通じるものである。それを許容してしまうと、大相撲をプロレスのほうに近づけていってしまうことになるのだ。

 優勝した力士が自分に対しての万歳を要請するというのは、「勝ち誇り」にほかならず、その誇示を許すと個々の取り組みの勝負でいえば、勝ったほうの力士がガッツポーズをしたり、喜びの声をあげるなどの行為につながる。そうなれば、負けたほうは「さがり」を叩きつける、土俵周りの桶などの備品を蹴飛ばすなどして、その悔しい感情を発露させてしまうだろう。

 日本の大相撲というのは、それらの見苦しい感情を押し包むところに伝統美を涵養してきた。大相撲は、勝敗においても礼節を重視してきた。勝った力士も負けた力士も感情を表すことなく、土俵の両端で再び対峙して一礼して終わる。白鵬の万歳三唱の要請は、そんな伝統の流れを踏みにじるものであり、相撲協会での討議では「厳重注意」より一段重い「譴責(けんせき)」も検討されたと報じられる所以である

(この項 続く)

2017年12月10日日曜日

白鵬が日馬富士暴行事件の主犯だった…「驕った横綱」、貴乃花親方追放を主導という蛮行(1)

白鵬(写真:日刊スポーツ/アフロ)
11月30日に東京・両国国技館で開かれた日本相撲協会の定例理事会に横綱・白鵬(32)が呼び出され、厳重注意された。11月26日の九州場所千秋楽、土俵横での優勝インタビューで観客に万歳三唱を促すなどした言動についてである。

 この言動は賛否両論を呼び、たとえばマツコ・デラックスは千秋楽の翌27日に放送された情報番組『5時に夢中!』(TOKYO MX)で、「あの場で適切だったかどうかは別にして」と前置きしたうえで、「(騒動を)あの場に持ち込まれるよりは、あっけらかんと万歳三唱してくれたほうが、少なくともあの場にいるお客さんに対してはすごいサービスだった気がする」と擁護した。

 こうした擁護論は、大相撲という伝統競技の性格、本質を無視したもので首肯できない。


大相撲は野球やプロレスとは違う



 スポーツイベントの終了直後に勝者が観客に対して勝ち誇る究極の例がプロレスだろう。

勝った選手はリング4隅のコーナー・ポストに駆け上がり、チャンピオン・ベルトを掲げたり手を挙げたりするポーズをして、観衆に勝利をアピールする。加えてアメリカでは、マイク・アピールの巧拙が選手としての重要なセールス・ポイントとして評価される。アメリカのプロレス団体で日本人選手がなかなかトップとして遇されることが少ないのは、彼らの英語力の不足によるところが大きい。

(この項 続く)

2017年12月9日土曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(10)

対談を終えて(山田の所感)



 りらくるといえば、2,980円(ニッキュッパー)という安値攻勢をかけて急成長をしてきたという印象を一般に持たれているのではないか。出上社長との対談で、その価格を実現できている店舗オペレーションの究極のコスト削減、そして先進的なITシステムによる入退店管理の構築に感心した。シェアリング・エコノミーのなかでも、特にワーク・シェアリングという分野で先行しているモデルケースだろう。

 今の段階では、セラピストの入退店マッチング、つまり内向きのシステムとしてIT管理システムを同社は使用している。次の段階としては、ウーバーのように消費者が使えるアプリを導入して、客の予約、そして自動的にセラピストの指名まで完了するところまで昇華させるとよい。

 そしてそこまでシステムをつくりこめば、本部側の管理業務は大幅に低減され、あるいは関与がまったく不要となる。そうなれば、現時点での目標、国内1,000店を達成した後には海外展開、特にアジアのマーケットが狙えるのではないか。ITのアプリ化を整備すれば、グローバルにそれを駆使することができる。ウーバーのように各国での直営モデルでもよいし、それぞれの国で地場パートナーにライセンシングするのもいいだろう。

 出上社長、38歳、りらくるのビジネスを在任中どこまで拡大していくのか、とても楽しみな経営者だ。

(この項 終わり)

2017年12月8日金曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(9)

――これからさらに業容を拡大していく上で、経営上のネックはなんだとご判断ですか。
出上 「25年に1,000店を達成」という目標を16年に掲げました。これには3つの要素が必要です。
ひとつはお客様、つまり市場です。2つ目は店舗立地の確保。そして最後がセラピストの確保です。
りらくが提供しているリラクゼーション業の市場というのは大きくなる、と確信しています。ですから、市場の存在については問題ない。社員数は現在250名ほどですが、これもIT化を進めているので、そんなに増えることはないと思います。

――フランチャイズを考えていない、直営店路線なわけですね。自ら発掘しなければならない店舗の候補地はどうでしょう?
出上 店舗開発についても十分自信があります。現在でも月に3,000件ほどの居抜き物件情報が全国の業者から寄せられています。現在のオープン数は月5~6店ですから、店舗物件の確保には問題がありません。

――では、課題はなんでしょうか?
出上 セラピストの確保、これが最大のチャレンジだと思っています。現在でも週末などはお客様のご予約を30-40%お断りしているのが現状です。需要をこなしきれていない、セールス機会ロスが発生しているのですね。
 お客様からセラピストになる方も多いなど、私どもが提供している就業機会は魅力的なものだと思っています。就業の自由度は高いし、やり方次第で高収入も可能です。これらの魅力をますます高めて、就業へのハードルをさらに下げていくことによって、多くの方にセラピストとして参画してもらいたいと思っています。

――現在の売上金額などは?
出上 公開企業ではないので細部は公表していませんが、17年12月期は年商280億円ほどを予定しています。15年12月期は250億円ほどでして、対前年比110%の伸びを達成しました。

――本日はありがとうございました。ご発展をお祈りしています。
出上 ありがとうございました。またお店のほうにおいでください。

(この項 もう1回)

2017年12月7日木曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(8)

――りらく社に応募したのは、どんなところに惹かれたのですか。
出上 私は以前からもみほぐしが好きだったんですね。当時は月に1回ほど行っていたでしょうか。でも、好きだからこそ、「もっと行きたい」「さらに行きたい」という気持ちが強かった。そんな自分だったので、りらく(当時の屋号)の価格やシステムは魅力的に映りましたし、伸びていくだろうと思いました。そして実際に急速に伸びていました。

――入社してからは事業推進部に属され、前述したIT化を推し進められたわけですね。
出上 おかげさまで、直面していた成長限界は打ち破ることができたと思います。その結果、地域戦略的にも大阪や関西に限定していたのが、関東を含めた全国に出店拡大を始めることができました。3回の昇進を経て、15年7月に2代目社長に就任させてもらいました。
――ヒラで入社して3年間の間に3回昇格して、社長ですか。やはり、その路線が敷かれていたように聞こえます。欧米の会社だとファスト・トラック(特別昇格予定路線とその対象者)といいます。




38歳の若手経営者、1,000店を達成して海外展開へ



――ITを活用したオペレーションのシステム化のほかには、どんな戦略をお打ちになってきたのですか。
出上 たとえば店舗同士は5km以上離す、というのもノウハウでした。しかし、IT導入のおかげでPOS(店頭)情報が充実し、需要があるとわかれば既存店へ近接する出店も行うようになってきました。

――出店戦略の見直しですね。
出上 はい。それから、以前はりらくるの出店戦略としてはロードサイドで家賃が安い、駐車場がある、といったモデルでした。必然的に都市部や繁華街は避けてきました。これも現在では駐車場がない出店、幹線道路以外への出店、つまりより市街地への出店も判断するようになりました。

(この項 続く)

2017年12月6日水曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(7)

――それは、想像を絶するような管理体制ですね。
出上 これではさらなる成長、店舗やセラピストの増大に対応できない、ということで大胆にIT化に踏み切りました。今では店でもセラピストさんもタブレットなどで当社のシステムに入り、直接報告や登録を済ませることができます。
――顧客管理も大したものですね。


入社面接で社長就任を要請された



――社長はオペレーションのシステム化など、IT分野にお強いようですが、どのようなご経歴なのですか。
出上 大学を出てシステム会社でSEとして6年勤めました。転職していくつかの会社で経営企画の部門に10年ほどおりました。

――SEと経営企画ですか。りらく社のオペレーションをIT化するのに、本当に適したバックグラウンドだったのですね。りらく社にスカウトされたのですか。
出上 いいえ、12年に一般応募で普通に入社しました。ただ入社面接で創業者の竹之内教博(たけのうちゆきひろ)にいきなり「将来、社長になってもらうから入社してほしい」と言われたのには驚きました。

――創業者の方というのは?
出上 大阪で美容室を5、6店やっていた実業家でした。ビジネスの仕組みを考えるのに優れた経営者です。竹之内は基本的な当社のビジネスモデルを最初から展開していました。しかし、それをIT化することにより、さらなる業容拡大を志向していたのだと思います。

(この項 続く)

2017年12月5日火曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(6)

すべてが紙とファックスで廻っていた



――御社の店舗には店長がいないのに驚きました。受付や事務担当のスタッフもいない。
出上幸典氏(以下、出上) どのセラピストがどの店に入店するかは流動的です。出勤したセラピストは誰でも予約の電話を取り、予約を受けます。セラピストは社員ではなく個人事業主で、当社は皆さんと業務委託契約を結ばせてもらっています。お店自体がセラピストによる商店街といった構造です。


――お店の掃除や現金管理は、誰がやることになるのですか。当番制などですか。
出上 掃除についても、売上金を銀行やコンビニのATMに入金してもらうのもセラピストにやってもらいます。若干ですが、それらに対する報酬を払います。売上金の入金トラブルが起きたことはありません。

――正直、床屋さんと同じような直接的なサービス業だと思っていたので、そんな先進的な経営モデルを意識的に実践されていることに感心しました。出上社長がこういう先進的なモデルをお考えになったのですか?
出上 私が主導してIT化へ舵をとりました。私は2012年に入社しまして、事業推進部という部署で店舗管理を行っていました。当時の店舗数は100店ほどでしたが、じきに150店となりまして……。

――業容が拡大して、問題が起きたと。
出上 はい。当時からビジネスモデルそのものは現在と同じだったのですが、その管理を紙で行っていたのです。

――店長がいないシステムですから、本社に紙が来ていたと。
出上 店の日報がファックスで来ていました。それ以上に、何千人にもなっていたセラピストの入店希望表がファックスで来ていました。本社ではそれらをITに再入力して、ヒトが判断して入店予定表をつくって、セラピスト各自にファックスで送り返すと。月々の支払いも事前に紙とファックスでセラピスト個々人に確認してもらっていました。


(この項 続く)

2017年12月4日月曜日

帝国ホテルで経営相談会

山田 修氏 

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2017年12月3日日曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(5)

ビジネスの世界では、「力のある製品、あるいは技術は放っておいても世に出て行く。なぜならそれを買わない、採用しないのは顧客にとって損となるのだから」という考えが通用しがちなのですが、大きな間違い。マーケティングと戦略が優れていない限り、それらは世に出ていくことはありません。タレントが売れることも同じ構造です。


新しい途を行け、「新しい地図」

 「新しい地図」の活動は、ジャニーズが展開してきた活動ルールをいろいろな形で破っています。タレントの写真についての厳格な縛りをゆるめたこと、SNSを活用し始めたことなどです。この新しいやり方について、一部のファンからは「安っぽくなった」などの否定的な声も上がっているようですが、「新しい地図」の3人組が対面している状況は、ジャニーズ時代のものと違っています。ジャニーズのやり方を踏襲することは、逆に自らの手を縛ってしまう可能性があるのです。ここは一部の否定的な声は気にせずに、新しい3つセットのケーキの新しい売り方を考え、世間にアピールしていく方が、結果的に多くのファンを獲得できることになるでしょう。業界にジャニーズ事務所という巨人がいるのなら、逆にあえて別のやり方を取る、ということは効果を発揮する可能性があります。
 サイト「新しい地図 本格始動」をクリックすると、映像がスタートします。そこに現れるタイトルです。

「道なき道をいこう」
「こわくなんかない」
「もしも迷ったら 耳を澄まそう 誰かの笑い声がする方へ」
なかなかいいではありませんか。SMAPロス、これからだいぶ晴れるのではないでしょうか。
(この項 終わり)

2017年12月2日土曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(4)

しかし、ビジネスの現場は、それとは別の力で動きます。大手デパートのケーキ売り場のコーナーを押さえているJケーキ屋としては、そのコーナーを競合に渡したくはありません。というより、できるだけ拡張すべく日々精一杯やっているのです。
 そのJケーキ屋さんにいたプロデューサー・飯島さんとしては、そこにあえて割り込んでいく、ゼロからの戦いを仕掛けていくことが、どんなに大変なのか、よくわかっていたのかもしれません。
 そこであえて「既存売り場の奪取」という競争方法を取らないで、別の方法を構築したわけです。それが「新しい地図」サイトの構築であり、映画『クソ野郎と美しき世界』(来春公開予定)で3人を競演させる、というやり方。サイト「新しい地図」を9月22日に立ち上げた後に、堰を切ったように3人の個別での芸能活動を始めさせました。
 飯島さんという方は、ずいぶんなやり手な人だと私は評価します。番組を制作するプロデューサーとしてだけでなく、「新しい地図」ブランドの3人商品を売り込む方策に長けた優秀なマーケターであり、それらを総合した企業経営戦略家として活動しています。
 芸能人、タレントが個々に魅力的であれば、当然売れる、人気が出る、ということはありません能年玲奈がしばらく活動できなかった時期を過ぎて、「のん」として人気が復活している例がありますが、あれは例外。人気タレントが時代の経緯とともに消えていくというのが、いくらでもあるのが通例なのです。
(この項 続く)

2017年12月1日金曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(3)

■ジャニーズを忖度したのか、テレビ局

 これだけの話題のイベントであり、大変な人気の3人組の新しい動向となった『72時間ホンネテレビ』ですが、地上波テレビ局で紹介されることはありませんでした。元のケーキ屋さんが力を持っています。デパートには、そのケーキ屋さんがとても多くのケーキを卸しているので、各デパートのケーキ売り場責任者は“Jケーキ屋”の意向にとても敏感になっているのです。
 『72時間ホンネテレビ』を放映したAbemaTVは、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資しています。テレビ朝日は、言ってみれば子会社が製作した番組なので、紹介するなどバックアップしてもいいのかなとも思うのですが、一切取り上げることはありませんでした(既報)。
 放送について絶大な影響力を持っているテレビ地上波各局は、つまりジャニーズ事務所に対して遠慮、配慮、あるいは今年の流行語である忖度をしているのでしょう。

新しいブランドと新しい露出チャネル

 SMAPとしての揃っての芸能活動は、昨年12月26日の『SMAP×SMAP』(関西テレビ・フジテレビ共同制作)で終了しました。稲垣、香取、草なぎの3 人が、「株式会社ジャニーズ事務所」を退社したのは今年の9月8日。その際、同社の創設者で代表取締役社長のジャニー喜多川氏は次のようなコメントを出しています。
「(略)この度3名が自分達の決意で異なる道を歩み始めますが、どこにいようとも。又どのような立場になろうとも、彼らを想う気持ちに変わりはありません。長年に渡って頑張ってきてくれた3人ですので、これからも沢山の人々に感動と幸せを届けてくれることと確信しています。(略)」(2017年6月18日 株式会社ジャニーズ事務所)
 とても父親的な、度量と愛情に富んだ送り出しコメントだと思います。私は、これをジャニー喜多川さんの本音だと受け止めました。
(この項 続く)

2017年11月30日木曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(2)

3つのケーキがパッケージから離れてしまうことになり、全体のブランドは終了してしまいました。元のケーキ屋さんに残った2つのケーキは個別商品として、立派に販売されていますし、引き続き愛されています。一方、離れてしまったのが3つのケーキです。離れたときから、あるいはそれ以前から、この3つのケーキは一緒に店頭に並べてもらおう、と決めていました。個別商品3つを1つのセットとして流通する、消費者にセットとして認定してもらうには、やはり新しいブランドが必要となります。そこで「新しい地図」があたかも新商品名のように機能し始めたのです。
 新商品を大々的に売り出そうとした最初のビッグ・セールが『72時間ホンネテレビ』でした。同番組では、大物タレントが入れ替わり立ち代り登場したり、元SMAPメンバーの森且行が21年ぶりに共演して、「森くん」がTwitterのトレンドワードで世界1位になったなど、いくつものプロモーション的コーナーが組まれ、話題を呼びました。また、番組の告知にSNSを積極的に使うなど、今日的なマーケティング手法も積極的に取り入れています。
 飯島さんのこれらの仕掛けは「成功を収めた」と言えるでしょう。さすが、ジャニーズ時代に「敏腕プロデューサー」「SMAP育ての親」と言われただけのことがあります。忘れられてしまう前に、旬なうちに、「SMAPロス」が世を覆っているうちに……というタイミングで、「3つのケーキ」を求め続けていた消費者に見事に応えたのです。3つのケーキは個別に売られたとしても、求められるだけの“味”がありますが、ファンは何しろ「SMAPロス」。3人をアソート(組み合わせ)したことで、復活インパクトは個別の3倍を大きく超えた効果となったわけです。

(この項 続く)

2017年11月29日水曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(1)

 SMAP解散騒動、それに続いてのメンバー5人のうちの稲垣吾郎草なぎ剛、香取慎吾のジャニーズ事務所退所騒動が、昨年から今年にかけて大きな話題となっていました。退所した3人は、「SMAP育ての親」と言われる飯島三智さんが率いるプロダクション「CULEN」と合流して、サイト「新しい地図」を9月22日に立ち上げ、芸能活動再開の号砲を鳴らしたのです。
 新体制で最初の大きなイベントとなったのが、ネットTV『稲垣・草なぎ・香取3人でインターネットはじめます「72時間ホンネテレビ」』(AbemaTV)への3日間の生出演。ネット番組なので、視聴者は断続的に替わっていったはずですが、延べで7400万回ものクリックが記録され、ネットテレビ視聴の新記録となりました。
 地上局テレビの視聴率は、1%だとしたら関東地区では40万8,000人の視聴者数と推定できるそうです(『視聴率ハンドブック』株式会社ビデオリサーチ)。ですから7400万回クリックというのは、7400万人が見たということではないのですが、それなりに大きな数字なのでしょう。世間の「SMAPロス」が大きかったことが窺えます。

■「SMAP」という大ブランド、「新しい地図」という新ブランド

 SMAPは5人グループでしたが、「新しい地図」は3人です。昨年からの動きは、ビジネスでいうブランドの考え方で理解できる側面があるかもしれません。
 「SMAP」というのが、5つのケーキを詰め合わせ商品だと考えてください。5つのケーキはそれぞれに個性があり、いずれもおいしいものでした。それらのケーキは単品でも売られることもありましたが、消費者は全体の商品名「SMAP」というブランドで強く印象付けられていました。
(この項 続く)

2017年11月28日火曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(4)

異なる部屋の力士同士の飲み会は問題だ


そして捜査は司直の手に委ねられたのだから、内部調査は非公式なことになる。警察の調査結果を待つのが正しい。詳細が警察によって明らかにされる前に、つまり立件される前に、加害者の日馬富士は引退させてしまうべきだ。会社なら、わかっている事実だけで懲戒解雇とすべき事案である。引退させることで、横綱の逮捕という不祥事(これこそが相撲道にとってあるまじき不祥事となる)を避けられる。相撲協会の早急な英断が望まれる。

 事件はモンゴル力士会が巡業先で開いた親睦会で起こったという。白鵬が貴ノ岩の生活態度について注意しているときに、貴ノ岩のスマホが鳴り操作したので日馬富士が激昂したというのである。貴ノ岩は平素はこの集まりからは距離を置いていたという。

 相撲という格闘競技で、そもそもこんな集まりがあるのがおかしい。確かに日本という異国に来てがんばっている同士が交流し合いたいのはわかる。しかし、大相撲は部屋別総当たり制で、基本的に他の部屋の力士とは敵同士だ。

 それが和気藹々と呉越同舟してしまったら、それこそ八百長の温床といわれかねない。事件を起こしたときに白鵬と日馬富士が発揮して醸成しようとしたのは、貴ノ岩に対する上位関係である。そんな人間関係が強まれば、勝負の世界で影響しないことはないだろう。特定の人間関係を断ち切った上で純粋に強弱を競い合うことを目指しているのが貴乃花親方であり、その指導を受けてモンゴル人力士会から距離を置いてきた貴ノ岩が正しい。

 繰り返しになるが、貴乃花親方の選択を相撲協会内の派閥争いや次期理事長選と結びつけて貶めようとしている論調は間違っている。単純に告発されるべきは日馬富士と、いたずらに彼の処分を行わないでいる相撲協会のほうである。

(この項 終わり)

2017年11月27日月曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(3)

貴乃花親方が速やかに相撲協会に届け出なかったこと、そして相撲協会からの初の聴取では「よくわからない」と答えたことが議論を呼んでいる。もちろん「よくわからない」はずはなく、診断書を持って警察に被害届を出したのは貴乃花親方だし、その際に事件の概要を説明したはずだ。

 つまり、相撲協会に対して「わからない」としたのは、相撲協会に対する貴乃花親方の不信の表明と取るべきなのだ。協会に話してもうやむやにされてしまうとか、被害届の取り下げの圧力がかかるため、協会チャネルではなく警察に任せてしっかり立件されるのを待とう、という判断だったのではないか。

 こうした貴乃花親方の行動を、1月に行われる相撲協会理事長選挙に向けた動きとしてとらえる見方には、私は与することができない。ましてや、巡業部長である貴乃花親方を次の巡業に帯同させないという動きが相撲協会にあるなど、暴行被害者側に対する不当な圧力、人権侵害となると強く警告したい。

 事件を普通の会社での出来事と置き換えてみる。平取締役(貴乃花親方)の子(貴ノ岩)が他の部の部長(日馬富士)に暴行されて入院に至った。入院する前に十数針縫う重症だったので、平取締役はあまりのことだと警察に被害届を出した。事前に社長(八角相撲協会理事長)に報告しなかったと非難されたが、社長は知ったなら、「双方の話を聞こう」「独自調査をしよう」「何より警察沙汰にはしたくない」と動くのではないか。社長の覚えが悪くなるかもしれないが、うやむやにだけはしたくない――。そういうことだったのだ。

(この項 続く)

2017年11月26日日曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(2)

事件後、貴ノ岩が日馬富士に謝罪したとか、2人が和解の挨拶をしたなどといわれているが、それは瑣末なことであり、あるいはうわべのことと理解すべきだろう。被害届提出による刑事告発という、法治国家に暮らす国民として公式な手続きを踏んだことが、被害者側の正式な対応として受け止められるべきだ。

 被害を受けた後に貴ノ岩が巡業に参加していたこと、通常どおり日常生活を送っていたことが指摘されているが、診断書が異なる医師から2通も提出されていることは絶対的だ。診断の日時がずれているので所見が異なるところもあるが、傷害の存在については共通している。

 交通事故の場合でも、直後無理して行動していた被害者が、やがて自覚症状が強まり動けなくなったという経過は珍しくない。傷害によって休場を余儀なくされたばかりか、入院したという状況を素直に受け止めるべきだ。そして、それは重大なことだ。

殴られたら、まず警察へ行く



 事件を受けて、貴乃花親方が警察に被害届を出したことに批判的な論調がある。東京相撲記者クラブ会友の杉山邦博氏は、16日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)で、次のように指摘した。

「貴乃花さんは巡業全体を掌握すべき立場です。その過程で起きた出来事ですね。警察に被害届を出した事実がある以上、重役として協会トップはじめ、親方や理事らに相談や報告するなり、話を通していないとおかしいんです」

 確かに警察への届け出の後に速やかに協会に報告しなかった、というのは謗りを受けざるを得ないかもしれない。しかし、一部に「まず協会に届け出るべきだった」という論調があるのは首肯できない。暴力沙汰は犯罪なのだから、まず司法に駆け込む、というのが市民の取るべき第一行動だ。実の両親を亡くし日本という外国で精進してきた貴ノ岩にとって、貴乃花親方夫妻は両親同然、親方にとっては子同然として貴ノ岩を大事に育ててきた。子供が入院するほど殴打されたら、まず警察に行く、というのがあるべき対応ではないか。

 法的事象は所属組織の規範に優先するのだが、所属する組織や会社に相談すると、外聞などを気にしていろいろな思惑でもみ消されるリスクがある。近年重視される内部告発も、第三者的な受け皿が必要とされるゆえんだ。

(この項 続く)

2017年11月25日土曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(1)

貴乃花親方(写真:日刊スポーツ/アフロ)
横綱・日馬富士が平幕の貴ノ岩に暴行した事件で、相撲界が揺れている。

いち早く警察に被害届を提出して刑事立件の可能性を選んだ貴ノ岩の貴乃花親方の行動を疑問視、あるいは非難するような論調も多く見受けられる。また、ビール瓶による殴打の有無、貴ノ岩の症状の評価についても情報が錯綜している。

 しかし、この問題の根本は単純に考えたほうがいい。つまり、暴力の有無と、角界最高権威である横綱の尊厳だ。日本相撲協会内での理事長選挙との関連など、派閥争い的な見方を絡ませると問題の本質が見えなくなってしまう。基本的に、貴乃花親方の対応は正しかった。

真相は藪の中だが、わかっていることで十分だ


当初、殴打がビール瓶で行われたと報道され、大いに驚かされた。未確認報道のなかには、日馬富士が激昂してアイスピックを手にして、それは制止されたというものまであった。ビール瓶の使用については、白鵬が「それはなかった」と証言しているが、警察が居合わせた全員から聴取を進めているというので、早晩明らかになるだろう。

 日馬富士自身は、とりあえず殴打を認めている。この事件で重要なことはただひとつ、「横綱という角界最高位にある者が暴力事件を起こした」ということなのだ。これだけで、日馬富士は引退に値する。以前に横綱・朝青龍が暴力事件を起こし引退したのと同じ構図だからだ。

(この項 続く)


2017年11月23日木曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(5)

セラピストの稼動はシェアリング・エコノミー・モデル



――時間単価が安いので、セラピストさんの手取り、あるいは月収はどんなものなのでしょうか。
出上 セラピストとは雇用契約ではなく、業務委託契約としています。ですから、皆さん個人事業主で、会社としては交通費も払っていません。しかし、その代わりに詳細は申し上げられませんが、需要予測を行うことにより、セラピストが実働できる稼働率を高めるようにしています。

――1万2,000人以上も稼動しているということは、そんなに割が悪いわけでもない、と。
出上 セラピストさんの取り分はだんだん上がっていく仕組みになっていまして、ベテランになると1時間2,980円単価のうち、ずいぶんの額を受け取れるようにしています。なかには月に80万円稼ぐセラピストさんもいまして、サラリーマンの旦那さんより稼ぐ奥さんのケースでは、その旦那さんのほうが会社を辞めてしまって当社のセラピストに転向したという例もあります。

――指名することもでき、その場合は指名料がありますね。
出上 はい。下限は200円からで上限はなく、その指名料はセラピストさんが自身でそれぞれ決めるんですね。腕がよくて自信があるヒトは高く設定しています。指名の多さのランクを店ごと、そしてサイトでは全国規模で前月のランキングを発表して、お客様に参考にしていただきつつ、セラピストの励みにしています。

――セラピストの動員について、とても深いノウハウがあるのですね。
出上 セラピストの業務時間と、お客様の来店予想とのマッチング・モデルだと思っています。その意味ではウーバー・イーツと同じようなシェアリング・エコノミー的なアプローチだと思います。

――シェアリング・エコノミー・モデルだと「誰でも参加できる」ですか?
出上 1万2,000人以上登録しているセラピストの年齢は18歳から74歳まで広がっていますし、65歳以上が200名近くいます。外国籍の方も200名以上登録しています。

(この項 続く)

2017年11月22日水曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(4)

――育成期間中は無給ですね。
出上 無給ですが、レッスン費用も徴収しません。実務に入ってからも希望があればフォローアップ・セミナーを無料で受けられます。

――技術の上達に力を入れているのですね。
出上 ちょうど10月27日に日本リラクゼーション業協会主催の「リラクゼーションコンテストJAPAN2017」があって、当社は2位に入りました。
 
――私がやってもらったセラピストの方には、前職がSEでまだ40代の方がいましたし、定年後にこれを始めたという方もいました。
出上 主婦の方もいますし、学生の方もいます。年齢も国籍も問いません。副業としていただいてもいいし、出勤時間も自由なんです。就業の自由度を最大として、それへのハードルを下げる形態としています。

――セラピストの方にお伺いしたら、どこの店舗で働くこともできるし、出勤時間も自分で自由に選べるとか。
出上 入店希望の時間と業務希望店などを、1カ月前と1週間前に当社サイト上で希望登録してもらいます。各店ではセラピストの需要予測、いわば稼動枠がありまして、そこに先着順に入ってもらいます。関東のセラピストがお盆で九州に帰省している間は福岡で業務するということもあります。

――店ごとの稼動枠というのは、AI(人工知能)で決めているのですか。
出上 現在は本社でヒトにより決めています。いずれシステム運用の度合いを高めていきます。

(この項 続く)


2017年11月21日火曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(3)

――マッサージや整体とは業態が違うわけですが、それらの先行業態での価格相場は1時間なら6,000円とかせいぜい5,000円でした。りらくるは価格破壊を行ったわけで、大きな驚きでした。いってみれば、理髪業界のQBハウス(10分1,080円、調髪のみ)がリラクゼーション業界に登場した、というような状況でした。
出上 そうかもしれません。


セラピストのバックグラウンドは多彩



――いろいろなセラピストの方がいて興味を持ちました。
出上 現在実働してもらっているセラピストの方は1万2,000名ほどいるのですが、実は専業の方ばかりだけでなく、パートの方も多いし、主婦の方も珍しくありません。

――国家資格ではないのですよね。
出上 日本リラクゼーション業協会のセラピスト認定資格を取る方もいますが、基本的には自社で育成レッスンしています。私どものセラピスト育成センターは全国で35カ所あり、そのほかに臨時も含めると約50カ所で展開しています。各拠点にはトレーナーが1人はいます。

――ずいぶん数が多いのですね。どのくらいレッスンするのですか。
出上 セラピストになりたい、という方に広く働く機会を与えたい、また当社としてはセラピストをできるだけ確保したい、という意向がありまして、できるだけ希望者の近間で育成レッスンをできるようにしています。レッスン時間としては70時間から80時間を標準として、卒業試験に合格してもらうのが要件です。

(この項 続く)

2017年11月20日月曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(2)

リラクゼーション業界のQBハウス



――社名は「りらく」ですが、店名のブランドとしては「りらくる」で展開なさっていますね。
出上幸典氏(以下、出上) はい。2009年に創業者の竹之内教博(たけのうちゆきひろ)が1号店を大阪に開いたときは「りらく」屋号でしたが、16年に500店を達成したのを機会に新しいステージということで、あえて新ブランドとしました。

――リラクゼーション業界では店舗数が一番多いそうですね。
出上 11月1日現在で580店舗となり、毎月ほぼ5~6店開店しています。すべて直営店で、25年に1,000店を達成するのが現在の目標です。

――実は私は近くのりらくるで2年来、ときどきお世話になっています。お店が大きい、という印象を持ちました。ベッドの数が15ほどもある。スーパーの2階で外階段を上がっていかなければならない。りらくるが入る前は焼肉屋でしたが、車で来なければならない立地という関係もあり、撤退してしまいました。
出上 当初から出店立地としてはロードサイドで駐車場があるところ、ということでやってきました。出店コストも安くなりますし。

――確かに料金は安いですね。
出上 1号店の時から60分のコースで2,980円としています。竹之内が10年に大阪の堺駅近くの雑居ビルでリラクゼーションに入ったら、60分で3,000円だったわけです。当時としては衝撃的な価格で、竹之内は「これだったらロードサイドで展開したらうまくいく」と思い第1号店を出した、というのが経緯です。


(この項 続く)

2017年11月19日日曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(1)


出上幸典氏:株式会社りらく代表取締役社長兼CEO。
1979年生まれ。広島県出身。
2001年産業能率大学経営情報学部卒業。
SEとして社会人のスタートを切り、数社で経営企画業務に従事。
2012年にりらくに入社。執行役員を経て15年5月より現職。
リラクゼーション業とは従来のマッサージと異なる業態だ。従来産業であるマッサージや鍼灸あんま指圧、あるいは柔道整復などは厚生労働省の所管監督下にある。一方、リラクゼーション業は2013年に総務省の「日本産業分類」に初認定された、新しい業態である。

 リラクゼーション業は定義として「手技と高いコミュニケーションスキルでの接客による施術サービスで、男女・年齢を問わない幅広い利用者の心と身体の癒しをサポートする産業」とされる。「手技」とは、肘から先だけを使う施術だということだそうだ。医療行為は一切行わない。

 この新進業態であるリラクゼーション業界のなかでも急成長を遂げて、現在店舗数で1位となっているのが株式会社りらくである。同社の出上幸典(いでうえゆきのり)社長に急成長の秘密を聞いた。

(この項 続く)

2017年11月16日木曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(8)

ヤマダ電機とヨドバシカメラの業態拡大に注目



 実店舗での家電量販が頭打ちになった現状で、同業の大手各社も業態拡大に頭を悩ましている。
 ネットビジネスに注力して大きくリードしてきたのがヨドバシカメラだ。冒頭の大手各社ランキングでも売上高は5位だが、対売上高経常利益率では群を抜いて1位だ。

 取扱商品そのものの拡大という点では、ヤマダ電機の戦略に注目している。11年に中堅ハウスメーカーのエス・バイ・エルを買収し、住宅事業に参入した。住宅事業と家電販売をマッチングさせようという試みだ。同社はまた家具雑貨店も展開し、家電販売との複合的な効果も狙っている。10月31日には、なんと電気自動車事業への参入を発表した。

 いずれもまだ成果を出す段階ではないが、戦略的な動きである。ヤマダ電機については稿を改めて分析、評価してみたい。

(この項 終わり)

2017年11月15日水曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(7)

しかし、そんなことが可能なのだろうか。流通のリアル店舗の場合、私たち消費者は店名によってブランド認知を行う。つまり店名により、その店で取り扱われている商品種類を認識、あるいは期待するのだ。何を主として売っているのかわからない「ビックカメラセレクト」では、その店名ブランドによって消費者は引き付けられない。

 ビックカメラセレクトに商品カテゴリーが混在すると、文字通り小型スーパーという認識になってしまう可能性がある。ということは、今度は同社の旗艦店舗であるビックカメラ本体のブランド・イメージに混乱を与えることになる。つまり、家電量販店として長年確立してきた「ビックカメラ」ブランドを毀損してしまうことにほかならない。

 店舗形態をビックカメラと離して物販していくのなら、ビックカメラのブランドを使わないほうがいい。また、業態が認識しやすいように、主となる商品カテゴリーを店により確立させることだ。医薬品ならドラッグストアとしてのブランドをつくり、展開する。既存のドラッグストア・チェーンを買収してそのブランドにより他店舗展開を図る、などだ。

(この項 続く)

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(6)

しかし、私は自身が昔タカラトミーに奉職していた経緯から、玩具業界には興味を持って観察してきた。正直言ってビックトイズのような狙いの専門店はいくつも出現し、いくつも消えていってしまった。

既存ビックカメラの大型店舗内に玩具コーナーがあり、子供連れの消費者の「ついで買い」を狙うなら商機があると思うのだが、専門店展開に勝算はあるのだろうか。少子化時代にそぐわない戦略選択かと危惧する。

 もうひとつの目玉が「ビックカメラセレクト」の出店だ。11月に東京・原宿に1号店を開くという。売り場面積は340平方メートルと小型スーパー並み。ビックカメラ既存店が大型であるのと対照的だ。取扱商品群も医薬品や日用品などだという。ところが、何を中心に扱うかは店によって変えて、それによって販売効率を高めるとしている。

(この項 続く)

2017年11月14日火曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(5)

店舗ブランドの組み込みと使い分けが肝要



 本業だった家電商品の売上の減少傾向を補うべく、宮嶋社長は決算説明会で「家電製品でない商品を伸ばしていく」と意欲を示したのだが、実はそちらへの舵取りもやさしいことではなさそうなのだ。

同社の連結決算で17年8月期の「その他の商品」は計1560億円の売上を計上したが、実は前年は1500億円だったので、4%の伸張を示したにすぎない。「その他の商品」カテゴリーが同社にとってまだ始動時のプロジェクトならともかく、すでに全事業の20%を占める主要カテゴリーとなっている段階でのこの成長度数では、大いにその先が思いやられる。

 説明会で宮嶋社長は、「その他の商品」カテゴリーを伸ばしていくいくつかの戦略を述べた。

 そのひとつが、11月からの専門店「ビックトイズ」の出店開始だ。玩具についてはすでに既存ビックカメラ16店舗で扱っているのだが、11月に専門店を愛知県日進市の商業施設にオープンするという。知育玩具など小学生以下の子供向けの商品を主に販売して、祖父母層の購買を狙うという。

(この項 続く)

2017年11月13日月曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(4)

決算説明会で発表された資料を精査すると、同グループの「品目別売上高」というテーブルが目に留まった。

前述した17年8月期の連結売上高7906億円のうち、「物品販売事業」でない「その他の事業」には135億円しか計上されていない。この数字から見ると、ビックカメラという企業は商品の量販流通業に邁進している、ブレのないグループだということがわかる。

 さて「物品販売事業」の合計は7771億円に上るが、それらは4つのカテゴリーで報告されている。

音響映像商品  1269億円 (構成比16.3%)
家庭電化商品 2489億円 (32.0%)
情報通信機器 2452億円 (31.6%)
その他の商品 1560億円 (20.0%)
※上記は物品販売事業内の構成比

 ビックカメラが販売している物品のなかで、すでに20%が家電ではないのである。「その他の商品」として報告されたのは次のような商品群だ。

ゲーム(※)
時計(※)
中古パソコン等(※)
スポーツ用品
玩具(※)
メガネ・コンタクト
酒類・飲食物
医薬品・日用雑貨(※)
その他(※)
<(※)の品目は売上100億円以上>

 これらの商品群で最大の売上は「その他」で、467億円に達している。

(この項 続く)

2017年11月12日日曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(3)

動き出していたビックカメラの製品多角化



 家電量販店大手各社の本業の業績は、近年いずれも不調である。それは、もちろんネット通販によって実店舗での販売が大きく蚕食されてきたからである。そのなかでヨドバシカメラだけが以前からネット通販に注力しており、対売上高経常利益率でも他社を大きく凌いでいる。

 ビックカメラは12年に同業のコジマを買収し、その分13年度の売上を伸ばしたが、14年8月期の連結売上8300億円をピークに、前回の決算までそれを落とし続けてきた。

 宮嶋社長としては、ここでなんとしてもその退潮傾向に歯止めをかけて、反転攻勢をかけたいところだろう。

 そこで、店頭での販売が頭打ちになった家電商品以外の物販に活路を見いだそうという戦略なのだ。しかし、今回宮嶋社長が示した方針というのは、実は同グループのなかではすでに進みだしている動きの追認で、目新しいものではない。

(この項 続く)

2017年11月11日土曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(2)

ところが、対売上高経常利益率で見ると、同社は5位に沈んだままだ。

1位 ヨドバシカメラ 8.45%
2位 ケーズHD   4.87%
3位 ヤマダ電機   4.22%
4位 ノジマ     3.56%
5位 ビックカメラ  2.95%
6位 エディオン   2.37%
7位 上新電機    2.13%

 つまり、経営下手という通信簿をもらったようなかたちとなった。主要商品である家電やIT関連商品の売上が苦闘している状況に対して、宮嶋社長は「家電でない商品を伸ばしていく」との戦略を示した。しかし、同社の製品多角化という戦略は機能するのだろうか。

(この項 続く)

2017年11月10日金曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(1)

ビックカメラが10月20日に2017年8月期決算説明会を開いた。

説明会で同社の宮嶋宏幸社長は、同期の連結売上高は7906億円(対前年比1.5%増)、営業利益218億円(同0.7%減)、経常利益243億円(同5.6%増)と報告した。経常利益だけが若干の伸張を示した。

 売上高で見ると、ビックカメラは家電量販店大手7社のなかで2位の位置を保持している。

1位 ヤマダ電機   1兆5630億円
2位 ビックカメラ  7906億円
3位 エディオン   6744億円
4位 ケーズHD   6581億円
5位 ヨドバシカメラ 6580億円
6位 ノジマ     4320億円
7位 上新電機    3743億円
(ビックカメラ以外は17年3月期決算)

(この項 続く)

2017年11月9日木曜日

九州にセミナーなど

福岡では、部長を対象にした公開セミナー。

といっても、社長も出席していた。30名以上が戦略カードを使って、一日熱心に研修してくれた。

テーマは、
1.3年戦略の作り方(戦略カードを使って)
2.リーダーシップとコミュニケーション
3.組織(チーム)の作り方、モチベーション

終わりのアンケートの評点がよく、来年の出講も依頼された。来年?鬼が笑う?生きていれば?

もう1日、小倉で個社のコンサルをして帰った。

2017年11月2日木曜日

みずほ総研で部長研修(公開セミナー)

秋、ということで幾つか公開の1日セミナーの講師を委嘱されている。

「課題解決型の戦略策定法」を1日で速習させてほしい、と言ったような依頼だ。戦略カードを参加者のそれぞれの企業事例で演習実習してもらい、その使い方を伝授するのが通例だ。

10月末のみずほ総研でのコースでは、「社長の右腕になる!『部長の指導力・行動力』強化セミナー」と銘打たれ、50名近くの参加者が来てくれた。

この後も、年末に向けて同様なコースを別主催者で何回か。

2017年11月1日水曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(8)

「目標設定」の次に「課題の認識」が戦略策定のステップとしてくる。このとき、「重要課題」は先に設定された「目標」と連動する必要がない。というより、連動させてしまうと、それぞれの課題が持つ重要性とは関係なく「重要課題」が認識される弊害がある。「目標」とのつながりが意識されないほうがいい。

 イオンの場合、「グループ事業構造の改革」「事業基盤の刷新」などが目標設定に先立って重要課題として列挙されたのであるが、それはそれでいい。「重要課題」の定義は「それを解決、克服できれば業績の大幅な改善や伸張につながると期待できるもの」だからである。

 設定した「重要課題」の個々に対して、今度は「解決策-アクション・プラン」を考える、というのが「課題解決型の戦略策定法」の定番だ。イオンの場合は図らずもこのステップを進んでいるように見えなくもない。問題は、同グループのビジネスの基本構造-ビジネス・モデル-がすでに大規模流通業ではない、ということを経営陣が共通して認識しているかだ。

 現状の利益構造に対して、流通業大手として邁進してきた役員の皆さんが意図しなかったビジネス・モデルの変容に対して何かコンプレックスを感じたりして、原状回帰あるいは祖業のテコ入れなどを企むと、それは失敗してしまうだろう。

(この項 終わり)

2017年10月31日火曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(7)

迷走する戦略策定



 イオンの問題は、経営者自身がこの構造を理解していないことにあるのかもしれない。今年5月の株主総会で、同社は20年2月期に営業利益2900億円とする目標を発表した。いわゆる3年計画で、今回上方修正した18年2月期の2000億円から半分近くも営業利益を積み上げる、とした。ただし、この段階では目標だけをぶち上げたものの、そのための達成手段やいわゆるアクション・プランは示さなかった。

 実は株主総会に先立つ今年4月には17~19年度を対象とする新しい中期経営計画を公表していたのだが、「グループ事業構造の改革」「事業基盤の刷新」といった課題の列挙にとどまり、具体的な施策は明らかにしなかった、あるいはできなかったという経緯がある。今回10月4日の決算発表では、イオンリテールの岡崎社長が「11月には中長期の経営計画を発表する」とし、宿題への答案を提出する構えを見せた。

 さて、同社はまず「目標」を設定してしまった。その目標への道程は示さないままに、と非難もされている。しかし戦略策定のステップからみると、実はそれで良いのである。「目標」はその時限内での到達したい「経営者の志」なので、何をぶち上げても構わない。

(この項 続く)

2017年10月30日月曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(6)

売上を見ると、イオングループは従来型流通業の巨大企業のように見えるが、利益で見ると様相は一変する。(1)~(3)の流通業セグメントが上げた前半期の営業利益額は142億円にすぎない。この金額は3つのセグメントの売上総額約3兆5000億円に対して、ないに等しい。

 一方、(4)~(7)の非流通セグメントの営業利益の合計は704億円に上り、実に前半期グループ合計の営業利益額850億円のほとんどを叩き出している。特に(4)総合金融事業の329億円、(5)ディベロッパー事業の235億円という営業利益額は、イオングループが実はこれら2つの事業に大きく支えられていることを示している。

 イオンの2つの柱の事業というと、実は金融と不動産開発であることを指摘しておきたい。実態は、大規模な流通業の展開を表の顔として、その顧客である消費者に金融サービスを提供して儲け、自らのGMS店舗などを核としたショッピング・モールを立ち上げて外部の店舗を招聘してテナント家賃を稼いでいる、という業態なのだ。

利益分析的には、イオンの流通店舗群は、真の利益構築への導線、あるいは隠れ蓑として理解できる。

(この項 続く)

2017年10月29日日曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(5)

しかし実態は、「流通を表の顔として、本業は不動産開発と金融サービス」というのが正しい。イオンは展開している事業を7つの「セグメント」として分類している。今回発表した前半期決算について紹介しよう。

 総売上は4兆1586億円、そのうちの大きなセグメントは以下のとおり。

(1)GMS(総合スーパー)事業:1兆5251億円
(2)SM(マックスバリューなど、イオン以外のスーパーマーケット)事業:1兆6228億円
(3)ドラッグ・ファーマシー(ウエルシア薬局など)事業:3411億円

 これらの流通事業御三家の売上合計は3兆4890億円に上り、総売上の83%を占めた。

非流通事業は以下のとおり。
(4)総合金融(金融、保険、銀行など)事業:1979億円
(5)ディベロッパー(イオンモールなど)事業:1649億円
(6)サービス・専門店(ツヴァイ、メガスポーツなど)事業:3977億円
(7)国際事業(海外店舗展開)事業:2039億円
 これらの合計が総売上の17%となった。

(この項 続く)

2017年10月27日金曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(3)

儲けの源泉は非流通業



 10月5日付日本経済新聞は、今回の上方修正を次のように報じた

「イオンは4日、2018年2月期に本業のもうけを示す連結営業利益が前期比8%増の2000億円になりそうだと発表した。従来予想から50億円上方修正し、12年2月期(1986億円)以来6期ぶりに最高となる」

 イオンとその株主にとっては、めでたい上方修正だ。しかし、同記事内の「本業のもうけを示す連結営業利益」という表現が、実は曲者である。

私が注目するのは、イオングループの「本業」、そして「本業のもうけ」とは何か、ということだ。同記事では「本業のスーパーを中心に停滞感はなお強い」とあるので、イオンの本業はスーパーであると日経新聞はとらえているらしい。

(この項 続く)

2017年10月26日木曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(2)

従来型流通の最大グループのひとつであるイオンの利益率から見ても、同業態の苦悩が読み取れる。というのは、日本企業では規模の大小や業界、業態を問わず対売上営業利益率は4%前後とされているからである(15年度の推定:「企業利益率を維持した日本経済-平成27年度法人企業統計年次別調査より-」財務総合政策研究所副所長・高田潔氏による)。

 今期の好決算を受け同日、イオンは18年2月期最終業績の上方修正も発表した。それによると、通年での連結営業利益額は2000億円となるという。上半期で850億円を出したので、下半期は1150億円の営業利益となる見通しだ。儲けが加速する、という強気の読みである。

(この項 続く)

2017年10月25日水曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(1)

イオンは10月4日、2017年度第2四半期(3月―8月)連結決算を発表した。イオンリテールの岡崎双一社長が、持ち株会社イオン傘下のイオングループ全体と事業セグメント別の業績を発表した。

 この決算数字を見る限り、足元の業績は好調に推移している。しかし、イオンは「次の一手」というべき本格的なグループ全体としての戦略の構築に難渋している。

半期の営業利益、11年ぶりの高記録


今回の発表の目玉として、営業利益が850億円となったことが挙げられた。この数字は前年同期比18%増であり、半期の営業利益額の記録としては11年ぶりに過去最高となった。営業収益(売上高に相当)は4兆1686億円で、前年同期比1.4%増という若干の伸びだったので、営業利益の改善は確かに目に付くものだ。しかし、対売上営業利益率としてみると、2.0%にとどまる。

(この項 続く)

2017年10月24日火曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(7)

クリステンセン博士の『イノベーションのジレンマ』では、巨大百貨店に対抗するイノベーションであるZOZOTOWNの存在を「破壊的技術」と呼ぶ。

ここでいう「イノベーション」とは単にテクノロジーだけの革新に終わらない。それはサービスであったり、ZOZOTOWNの場合はそのまだ唯一無二というべきビジネス・モデルだろう。

 同書によれば、「破壊的技術」は先行大企業のビジネスを破壊してしまう。だからこそ「破壊的技術」なのだ。

 衣料品流通の場合、破壊されるのは百貨店の衣料品ビジネスである。10年後に百貨店のファッション売り場は果たして残っているのか、そして主力売り場を失った百貨店というビジネス・モデルはどのように変容しているのだろうか。

(この項 終わり)

2017年10月23日月曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(6)

ZOZOTOWNが流通ジャイアントたちの視界に入って来ていなかった今世紀の初頭、百貨店がネット通販を行っていなかったのかといえば、そんなことはなかった。私は当時もお中元やお歳暮は高島屋などのネット通販を使っていた記憶がある。

 つまり、自前の技術もあれば、IT技術やプラットフォームに投資する資本もある、人材も社内にいなければいくらでも外部リソースを使うことができただろう。それが当時の百貨店の状況だ。

 つまり、欠けていたものは「意思」だけだったのである。

 出店社ブランドの売上が100億円に満たないZOZOTOWNのビジネス・モデルに降りていけなかった百貨店。その結果、百貨店の衣料品売上はこの10年間で3割以上減少してしまった。この10年間で日本の百貨店は総売上が約1.6兆円減少したが、そのうち衣料品の減少幅は約5000億円にも達している(日本百貨店協会の資料による)。さらに、17年7月まで百貨店総計では、衣料品が21カ月連続で前年同期売上を割り込んでいて、回復の傾向は一切見られない。

(この項 続く)

2017年10月22日日曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(5)

ZOZOTOWNが成長を加速したのは、05年に国内最大手のセレクトショップであるユナイテッドアローズが本格出店したことだといわれる。つまり、ZOZOTOWNはサイトを開設した04年から07年まで、業容的には本当に小さな存在だった。サイトの総売上が100億円にやっと届いた(07年)、百貨店の大型店舗ひとつにも及ばない存在だったのである。

さらに特筆しておきたいのは、ZOZOTOWNでの販売手数料は30%ほどといわれるので、企業としてのスタートトゥデイの年商はその時代30億円に届かない状況と推定されることだ。この規模感は、まったくの中小企業だろう。

 ひるがえって、現在百貨店首位である三越伊勢丹ホールディングスの05年段階の年商は、伊勢丹だけで7600億円(06年3月期)、三越は8041億円(同年2月期)と、合わせて1兆円を優に超える流通ジャイアントだった。ちなみに百貨店全体での服飾総売上は05年に3兆150億円もあった(日本百貨店協会による)。

 百貨店の企業価値は何かというと、良質な顧客にアピールすることだろう。その極地として「お帳場」などと呼ばれる、特定の富裕顧客に対する担当店員の張り付け、そして外商制度などだ。ファッションの分野でいえば、中流の上のカテゴリーに入る女性客に店頭でいかに比較的高額な衣料を売り込むかが、伝統的なビジネス・モデルだった。

(この項 続く)

2017年10月21日土曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(4)

クリステンセン博士は、1990年代におけるコンピューターの記憶装置(ディスク)ビジネスの変遷を調査して上記を説明した。メインフレームに接続する大型ディスク・メーカーが、5インチなどの小型フロッピーディスクの出現に手をこまねいて、衰退していった。

 私は旧著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)で、写真フィルムとデジタル・カメラの例で説明した。デジタル・カメラを発明したのは、皮肉なことに倒産した写真フィルムの老舗、コダックだったのだ。

象はなぜ子犬にまけてしまうのか



 スタートトゥデイがZOZOTOWNを開設したのは、04年のことだ。当初は収載していた商品は、ブランド数で17しかなかった。同社がマザーズに上場したのが07年のことなので、それ以降は業績が開示され、財務数値を追うことができる。07年3月期、つまりZOZOTOWNを開始して3年たって、ブランド数は680に、ブランド(出店者)の商品取扱高は112億円、ZOZOTOWN側の取り扱い手数料が主となるスタートトゥデイの売上高は60億円にすぎなかった。

(この項 続く)

2017年10月20日金曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(3)

そんなスタートトゥデイは、自らをファッションのカテゴリー・キラーとして認識していて、競合は強いて言えば百貨店だとしている(柳澤孝旨副社長、「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/17年9月23日号>より)。

 カテゴリー・キラーとしてのZOZOTOWNと、競合認識された総合百貨店の関係が、「イノベーションのジレンマ・セオリー」に当てはまるので解説したい。


大きな会社ほど新しいビジネス・モデルに対応できない



『イノベーションのジレンマ』(翔泳社/01年)は、米ハーバード・ビジネス・スクール教授クレイトン・クリステンセン博士が著した経営戦略の名著だ。

 成功している大企業は、現在奉仕している大顧客の顧客満足度をいっそう高めようとする。その結果、現在商品や技術の機能改善、向上に全力を注ぎ、多くの場合、価格も改訂(値上げ)することができる。

そんな企業は、市場の片隅に出現した新奇な技術や商品(=イノベーション)について力を注ぐことはできにくい。イノベーションの技術要素については大企業のほうが凌駕していても、である。

そうこうしているうちに、イノベーションである新商品・サービスは急速にビジネス規模を拡大し、やがて既存大企業をも凌いでしまう、というのがこのセオリーの骨子だ。

(この項 続く)

2017年10月19日木曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(2)

競合は百貨店


ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ(前澤友作社長)の業績は絶好調だ。同サイトは楽天のように外部の会社が商品を出品して販売するモール型ECサイトで、ファッションに特化している。男性ものも扱っているが、女性ものがメインである。現下の出店ブランド数は6000を超え、それらのブランドがZOZOTOWNで売り上げた年間商品取扱高は2120億円(2017年3月期、以下同)、そこから発生している同社の年間売上(主として販売手数料)は763億円、営業利益は264億円を記録した。

 ECサイト企業として高収入・高収益なだけでなく、急激な成長を続けていることでも知られてきた。今期に入ってZOZOTOWNの売上(取扱高)は前年比40%増ともいわれ、この8月には株価時価総額で1兆円を達成した。

ZOZOTOWNがスタートしたのが04年だったので、実質的に13年で「企業価値1兆円」を実現した。

 同じくECサイトの雄、米アマゾンが1兆円を達成したのが、ちょうど設立13年目で、これより早く達成した大企業は米グーグル(9年)、中国シャオミ(5年)くらいしか見当たらない。もちろん日本企業としては最速だ。


(この項 続く)

2017年10月18日水曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(1)

ファッションEC最大手ZOZOTOWNが、10月1日から配送料金を変更した。同日、同サイト上には次の記載が現れた。

「本日10月1日よりZOZOTOWNの送料は、お客様に自由に決めていただけるようになりました。お客様のご都合やお気持ちに合わせご自由に設定ください」

 新しい配送料金体系として、デフォルト(初期表示)では1件当たり400円という料金が表示されており、消費者は自由に料金を設定できる。これまでは、購入代金4998円(税込)以下の場合は送料399円(同)、それ以上の場合は無料だった。

 10月1日といえば、ヤマト運輸が一般の宅配料金の値上げを開始した日でもある。その逆の道を選んだのがZOZOTOWNで、あくまでもユニークな企業スタンスを崩さない、興味の尽きない会社だ。

(この項 続く)

2017年10月17日火曜日

リーダーズブートキャンプ第4講 佳境に(2)

ランチの時間を遅くして、私が「戦略セオリー」から「使える戦略」としてPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)とランチェスター戦略を簡単に解説。

1:30から新将命特別講師が「勝ち残る組織の原理・原則とリーダーシップ」の第2回目。3:15まで密接なクラス討議を入れながら、ぐいぐい話された。

新先生はその後、3:30から4:30まで、小グループ討議の一つにコメンテーターとして入ってくれた。4:40から5:45まではまた私がの講義で「組織戦略」セッションの後半を完了。

次講から皆さんいよいよ戦略策定の「解決策の提示」のステップに入る。今日のところまででそれぞれが「重要課題」を絞れてきたので、よろしいかと。絞込みにグループ討議、他の参加者の視点、意見がとても有用だ。

(この講 終わり)

2017年10月16日月曜日

リーダーズブートキャンプ第4講 佳境に(1)

リーダーズブートキャンプ第3期は、10月14日(土)に第4講を迎え、ちょうど折り返し点に来た。クラスの出席率もよく、皆よく準備してきてくれている。

朝1番は、課題図書の方向と討議。2冊目の本としてまた『日本電産流V字回復経営の教科書」(川勝宣昭、東洋経済新報社)を取り上げている。

「また」というのは、本書は前期でも取り上げたから。2期連続で同じ本を読むのは異例というか、初めてだが、本書への評価の高さ(前期のクラスでの)からのことだ。

この日は、第1章と第3章をそれぞれ別の参加者が報告、クラス討議した。まあ、大学のゼミのやり方である。

(この講 続く)

2017年10月15日日曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(9)

ヤマトといえば、すぐに思い出すのが名著『小倉昌男 経営学』(小倉昌男/日経BP社/1999年)だ。宅急便の創始者、小倉氏は前例のない事業を推し進めるため、国と訴訟を構えることもいとわなかった。腰の据わった、すばらしい経営者だった。

 振り返ってヤマトの現状を見れば、昨年来の残業代未払い事件を発端に、そのサービス改革への社会的な理解はかつてないほど高まっている。むしろ、社会的要請といってもよい。

 そのような状況にあって現経営陣は、なんだかわからない、そして実現性が薄い「新スライド価格決定方式」なるものを導入して問題を営業現場に押し付けようとしている。これは、個数のボリューム増という問題をすべてセールス・ドライバーという現場に押し付けてきた経営姿勢と一貫しているものだ。

 大口の法人顧客には、むしろ個人客より高額な価格を要求するなど、発想の転換をしたほうがよい。ヤマトで変わるべきは価格方式よりも、状況に対応できないままできた経営陣なのではないか。

(この項 終わり)