ラベル 雑感 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 雑感 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年10月31日木曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(7)

避難所内の取材や報道は、肖像権を侵害しているばかりでなく、プライバシーを侵害している。災害被害にあって避難して困った状況に陥っているということ自体、当事者にとっては重要なプライバシーに関する情報である。メディアの取材は、避難者のプライバシーを蹂躙しているし、不幸な状況の人たちを一層困らせているという点で人権を侵している。

 避難所でテレビクルーがライトをつけて取材、インタビューをする行為は、同じ空間で仮眠をとっているお年寄りなどの安寧を脅かしている。避難所の生活は一重に静謐で安心できるものでなければならない。


避難所の運営の大きな改善を


 避難所を設置運営するのは、地方行政の市町村だ。災害は時間の余裕なく襲ってくるので、十全の準備をするのは困難なことだ。だが、設置責任者以外にその運営に責任を持つべきものはいない。

 避難所を設置すると同時に、「利用は被災にあわれた、そのおそれのある人に限ります。立ち入り面会は近親者などに限ります。内部の報道取材は禁止します」などの掲出をすることを強く求めたい。

 日本はこれだけ天災が繰り返される国なので、避難所での生活品質も向上確保してもらいたい。たとえば避難した女性の方たちについては、次のような配慮が要望されている(内閣府「避難所運営ガイドライン」など)。

1.男性の目線が気にならない更衣室や休養スペース

2.授乳室

3.間仕切り

4.男女別トイレ

5.女性用品(生理用品、下着など)を女性担当者が配布

 台風19号の避難にあたっては、東京都台東区でホームレスの2人が、「都内居住者でない」と収容を断られ、人道的な見地から問題となった。避難所の中に非居住者用のコーナーを設けるなどして対処するしかないだろう。

「天災は忘れた頃にやってくる」というが、わが国では「忘れる暇もなく毎年何かが起こる」である。誰もがいつ避難所にお世話になるかわからない。避難所生活におけるストレスが少しでも軽減されることを願いたい。

(この項 終わり)

2019年10月30日水曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(6)

さて、大きな災害で避難が発生しているときに私がいつも疑問に思っていたことがある。それは避難所の中の様子をテレビなどのメディアが報道することだ。典型的なシーンでいえば、体育館のような大きな空間に多数のご家族が床に座り、あるいは横になっている。カメラはそれらの人々を映し出し、リポーターは避難者の誰かに被災の様子や感想を語らせる、と

 避難所の中の様子を報道することは、2つの観点から大きな問題がある。

 まず、肖像権の侵害だ。報道する側としては、インタビューに対応した人にはもちろん了解を得てのことだろうが、背景に映し出される多くの人たちの了解を得ていないだろう。それらの人たちの顔は、テレビの映像や写真にさらされた瞬間に「不特定多数」ではなく、「特定された個人」になってしまう。

 インタビューに応じる人々のなかには、着の身着のままで避難してきたり、メイクができていない状況の人もいるだろう。疲れ切った自らの顔や姿を、何を好んで全国にさらされる必要があるのだろう。「お疲れのところすみません、インタビューよろしいでしょうか」と丁寧に頼まれると、日本人はおもてなしの心に富んでいるので、受け入れてしまうのだろう。しかし、「やめてください、写さないでください、出て行ってください」と断ってもよいのではないか。

(この項 続く)

2019年10月29日火曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(5)

結局、窓ガラスにガムテープを貼るのをやめた。まだ昼だったが、カーテンを左右から引き、中で合わさったところを安全ピンで数カ所留めた。窓が突き破られればカーテンを留めた安全ピンなどもすぐに役に立たなくなるのかもしれないが、瞬間的にガラス破片が飛散するのを防ぐことを期待したわけだ。

大きな被害、残る爪痕


 台風19号が上陸、関東を通過した10月12日の夜は当家でもそれなりに不安な夜を過ごした。しかし、幸いなことに窓ガラスも割れず、停電も断水も起こらなかった。筆者が居住する市の被害は限定的で済んだが、被害は全国的に甚大なものとなった。東京都を含む東日本で大規模な洪水や土砂災害が起こり、19号が過ぎて1週間がたった10月19日時点で、66人の方が犠牲となり、行方不明の方が13名いる(消防庁発表より)。断水は7万9565戸で続いている。

 交通インフラも中央道などの高速道路や北陸新幹線が不通となった。住宅の被害も大きかった。洪水が各地で起きたので、床上・床下浸水は4万5000棟以上となり、家屋の全壊は85棟、半壊324棟、一部損壊は2169棟にのぼった。家屋の一部損壊などは内閣府の統計でも把握し切れていないものも多いと推定される。

 家を離れ避難所に避難した方たちも多数にのぼった。一時は5000人以上と報じられていたが、前述の発表では19日午後の時点でまだ全国12都県で4600人以上が449カ所の避難所に避難していたという。

(この項 続く)

2019年10月28日月曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(4)

窓ガラスにガムテープは貼らない


 意気揚々と帰宅した私は家人を呼んで戦果を見せ、さらに「2階の窓にガムテープを中から貼ろう」と提案した。ところが、「窓ガラスにガムテープを貼るのは危険だ」と家人は言うではないか。

「知り合いの物理の先生が『ガムテープで補強した窓ガラスに強風が吹くと、ガムテープが張っていない弱い部分に風圧が強まり、貼っていないときより割れやすくなる』と話していた」

 それは一般常識とは異なる話だった。しかし、常識を信じる必要もない。ネットで検索すると、以下の記事を見つけた。

<大災害への危機管理対応を行うアメリカ合衆国の『連邦緊急事態管理庁(FEMA)』は、「窓へのテーピングは時間と労力のムダであり、飛び散る破片に対しての保護能力もない」ことを2006年7月に発表しています。

(中略) 窓をテーピングすることは時間と労力のムダです。ガラスにはほとんど強度がなく、飛び散る破片への保護もありません。ハリケーン(台風)の警告が出たら、ドアと窓を保護するためにシャッターを下ろす必要があります。(Fact Sheet Hurricanes、篠原修司訳)

 また、自然災害や人災から家族を守るための方法を指南するアメリカの非営利団体「Federal Alliance for Safe Homes(FLASH)」は、窓ガラスの破片が大きくなることで重症を負う可能性があると2014年に警告しています>(『窓ガラスに養生テープ・ガムテープは破片が大きくなることで大怪我のリスクも』篠原修司 /10月11日付Yahoo!ニュース個人記事)


(この項 続く)

2019年10月27日日曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(3)

近隣地域で訪れた店の数は15店にのぼった。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店などだ。すべての店で上述の3点は見事に売り切れていた。台風がいよいよ接近してきた当日12日の朝も車を走らせてみた。とあるホームセンターを目指したが、この日になるともう多くの店が営業自体を取りやめてしまっていた。ふと通りがかった大型のディスカウントショップが営業しているではないか。何台もの車が吸い込まれていっている。

「ここなら」と思い私も車を入れた。店内に入り、この店のガッツというか、ビジネスマインドに感心した。台風当日も通常通り朝8時から営業していて、店内は活気にあふれていた。ミネラルウオーターもあった。「1家族様1パック」と書かれている。2リットル入り10本の箱をゲットした。ガムテープも普通に置いてある。台風接近を見込んで多めに手配したのだろう。大手の小売りチェーンのなかで近年独り勝ちしているこのチェーンの成功理由の一端を見た気がする。電池も探したが見つからず「もしかして」と思ったら、「電池付の懐中電灯」そのものが売っていた。2つを購入してこれも一安心となった。

窓ガラスにガムテープは貼らない


(この項 続く)

2019年10月26日土曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(2)

飲み水としてはミネラルウオーターの在庫は少しあったが、不安でもある。大手のネット通販を覗くとミネラルウオーターはほとんどが売り切れていた。ようやく在庫があるサイトを見つけ、しかも「翌日配送」とあるので注文し、一安心した。ついでに窓ガラスを補強するガムテープも発注した。

「これで安心」と思っていたら、翌日の11日になって愕然とすることとなった。「大変ご迷惑をおかけしますが」というメールがネット通販会社から来て、「本日の配送が難しくなりました」というではないか。到着は台風通過後となるという。「それでは役に立たない」ということでキャンセルしてしまった。

 そうこうしているうちに家人が「停電するかもしれない」と言いだした。民間の気象予報会社が発表している「停電リスク予測マップ」に当家の地域が「警戒地域」として示された、というのである。懐中電灯はあるが、点検してみると単1電池がひとつ足りない。水もない、ガムテープもない、電池もない、ということで台風上陸の前日に私は車で走り回る羽目になった。

(この項 続く)

2019年10月25日金曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(1)

台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:AFP/アフロ)
日本列島に大きな爪痕を残した台風19号。各地の避難所に身を寄せた人の数は5000人以上にのぼり、1週間たった時点でも4600人以上の人たちが避難所での不自由な生活を送っていた。

 避難所は災害時に緊急設置される施設だが、プライバシー保護や女性対応など一層のきめ細やかな運営の方策が求められる。避難所での安寧を妨げているのが実はマスコミの報道陣であることを指摘し、行政の断固とした対応を求めたい。


台風前日、電池がない!



当家は都下郊外に位置し、大きな川の近くでもない。地震や水害などの自然災害からは比較的縁が遠い地域に暮らしてきた。だから、大型の台風接近などということになっても、準備行動などすることは少なかったし、ましてや事前避難を検討することなどなかった。「我が家が安心」というありがたい状態だったわけである。

 ところが今回、台風19号が接近して重大な警告が報道で繰り返されるので、さすがに少し不安となった。最大の不安は、「都内でも最大瞬間風速60メートルの可能性がある」という予報だった。おりしも、9月初旬に襲った台風15号の記憶はまだ新しかったし、千葉県で起きた停電と断水による生活の大停滞は一部継続していた。

 台風19号が上陸し関東を通過していったのは、10月12日(土)夕方から夜にかけてのことだった。前々日の10日になり当家でも風呂やバケツなどのあらゆる容器に水を張った。生活用水にあてるつもりであった。

(この項 続く)

2019年9月10日火曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(6)

しかし、一般論で言うと、今回のようなハガキによる騙し通達が来ても、無視してこちらから連絡しない限り問題はないという。犯人はなんらかの方法で手に入れた名簿をもとに大量のハガキを送っているので、返信しない限りそれ以上の行動を起こすことはないという。当家の場合、反応して連絡してしまったため、この後いくつかの架空請求や騙しのハガキなどが届くことになってしまうそうだ。

オレオレ詐欺の手口が複雑巧妙化



 特殊詐欺のなかで最初に有名になったのが「オレオレ詐欺」だった。今回当家を襲ったのは、特殊詐欺8分類のなかで「その他の特殊詐欺」に分類される、比較的新手の詐欺だ。裁判所を名乗る偽ハガキを大量にばらまき、問い合わせなどでかかってきた電話に対して、「訴訟通知センター」職員なるものが対応し、ほかに弁護士役などが登場して、狼狽した被害者から金を振り込ませるのが手口である。いろいろと情報を調べてみると、こうした詐欺には次のような特徴があるようだ。

・犯人にとっても通報されるリスクが大きいため、実際に犯人が家に押しかけてくる可能性は低い。

・基本的な対策は「無視」。しつこく連絡が来る場合は警察に通報する。

・同居している家族がいる場合は、家族にも事情を説明して、怪しい請求には一人で対応しないように注意しておく。

・本物の裁判所からの書状であれば、書留で送られてくる。ハガキによる通知は偽のものである。

「オレオレ詐欺」の通称で知られる「振り込め詐欺」、今回拙宅を襲った「その他の特殊詐欺」などを含む「特殊詐欺」は、全体としては1万6496件(2018年)と前年から微減している。しかし同年の被害額はまだ364億円もあったという(警察庁の統計による)。

 当家のケースが読者の参考となり、他山の石としていただきたい。

(この項 終わり)

2019年9月9日月曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(5)

すっかりしょげてしまった妻に「何も被害がなくてよかった。よく僕に連絡してくれたね」と言って、なぐさめた。相談して、固定電話を留守番電話専用にすることにした。かかってくると自動的に留守録になり、受話器では話せないような設定にした。発信には携帯電話だけを使うこととした。1階と2階の内線電話の使用もやめ、携帯電話同士で話すことにした。住所と妻の姓名がどこで漏洩したのかはわからない。

身に覚えがなければ、無視か警察に相談



 当家に到着したハガキの文面側は本記事冒頭の写真とほとんど同じものだった。先方の電話番号はその都度変わるらしく、当家に来たものに記載された電話番号は、警察にまだ把握されていない新しいものだったそうだ。

 それにしても、当家の住所や妻の名前などをどうやって把握したのだろう。それによって狼狽した妻が偽ハガキに記載された電話番号に電話してしまったことが失態だったと警察から教えてもらった。

「身に覚えのない訴訟内容に関するはがきを受け取った場合は、はがきに記載されている電話番号には絶対に電話せず、お近くの警察や消費生活センター等にご相談してください」(警察庁 ウェブサイト「特殊詐欺手口」より)

 なんらかの理由で漏洩してしまった当家の個人情報によって、このような異様なハガキが到来した。しかも消印がないことから、犯人の手先が直接当家に投函したことが疑われる。妻は電話してしまったことによるショックから、犯人の影に対してすっかりおびえてしまった。

(この項 続く)

2019年9月8日日曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(4)

犯人は電話番号を転々と変える

 

折り返し所轄署から電話が来た。状況を一通り繰り返すと、詐欺ハガキに書いてあった「訴訟通知センター」の電話番号と、S弁護士の電話番号を尋ねられた。「ちょっと調べさせてください」と言われ、5分くらいでまた電話が来た。

「その番号は、警察で把握していない新しい電話番号なので、ハガキの現物と奥さんの電話メモを証拠として提出してもらえないか」

 すぐ来る、というので待っていると、20分ほどで2人の警察官がやってきた。「教えてもらった『訴訟通知センター』に電話したら、犯人が出ました」と、婦人警官が言う。それでどうなったかまでは聞かなかった。

 警官は「これがハガキですね」とハガキを見ると、当家の正しい住所と妻の姓名がきちんとワープロ印字されている。

「おや、消印がありませんね」

 見ると確かにそうだ。ぞっとした。犯人が当家の郵便受けに直に投函しに来たらしい。こういう詐欺ハガキは郵便局も気がつけば扱わなくなるなどということがあるのだろうか。

「私、どうしよう、家の電話番号なんか喋ってしまったわ」

 事情を把握した妻が、恐ろしそうに言った。婦人警官が「間違ってもお金を振り込んだりしないでください。また連絡など来たらすぐに警察に知らせてください」と、帰っていった。

(この項 続く)

2019年9月7日土曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(3)

「弁護をS先生にお願いするとなると、弁護委託金が10万円で、取り下げ申請書を書いてくれたり、訴訟の情報開示の手続きをしてくれます。それから先方と和解の交渉をしてくれます」

との説明があったという。

私が「それが詐欺なんだよ!」と言うと、「えーっ」と狐につままれたような顔をされた。納得しない妻を差し置いて、私は110番に通報した。

 警察からはまず、「それは詐欺ですから、電話などせずに放っておいてください」とアドバイスがあった。

「いや、妻が電話してしまったのですが……」

「それでは、所轄署からすぐに山田さんに電話させますので詳細を話してください。警察が現金を預かったり、通帳やカード、暗証番号を要求することはありませんので、念のため」

 妻がこちらの電話番号を告げてしまっているので、さらなる詐欺手口が襲い掛かるかもしれない、というのだ。

犯人は電話番号を転々と変える


(この項 続く)

2019年9月6日金曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(2)

その日付は翌々日のことだった。「わかった、わかった、すぐ帰るよ」と私は言い、不安がる妻なので、そうすることにした。

 帰宅して、迎えに飛び出してきた妻に言った。

「そのハガキはどうせ嘘だから、無視して何もしなければいいんだ」

 すると妻は、

「そんなことはないわ、電話したらちゃんと出たし、弁護士さんも紹介してくれたわ」

「えっ、電話したの?」

「これがハガキよ」

 見せられたハガキの文面は、本文冒頭の「これが詐欺のハガキです!」の写真とほとんど同じものだった。文面だけでなく、レイアウトも同じだった。

「これは、テレビなんかでときどきやっている詐欺ハガキだよ」と私が諭すと、妻は「でも電話したらちゃんと出たわ」と繰り返す。「ええ、さっきした電話のメモがこれよ」とメモを見せられた。妻が電話したら、担当者と称する男から

「あなたが消費した金額について未納・滞納の民事裁判が起こされています。その内容についての情報開示と取り下げについては、弁護士を通してもらわなければなりません」

との説明があったという。知り合いの弁護士がいないというと、「それでは国選弁護士を紹介します。無料相談できます」として、S先生なる実名をあげられ、その先生の電話番号(東京都内の固定電話番号)を知らされたという。

(この項 続く)

2019年9月5日木曜日

ある日「民事訴訟の最終通告書」が我が家に…特殊詐欺寸前で被害を回避できた顛末(1)

私の外出中に届いた一通のハガキに騙されて、家族がそこに電話してしまった。「弁護士を紹介する」などともっともらしい弄言を繰り出す詐欺師は、「とりあえず着手金が10万円で済む」などと家人を誘導しようとした。携帯電話で報告・相談を受けた私は緊急帰宅し、110番した。今回はその顛末と、跋扈している特殊詐欺の現状とそれへの対処を記したい。

「どうしよう、帰ってきてちょうだい」


近隣でのんびり用を済ませていた私の携帯電話が鳴った。妻からだった。混乱して、焦燥していて、気の毒に取り乱している。「私がどこからか訴訟を起こされていて、それを止めるにはすぐに手続きしなければならないって通知が来たの」「どうすればいいか、すぐ帰ってきて」と続いた。

「何が来たの? 電話口内容証明みたいなもの?」

「ハガキで、民事訴訟の最終通告書って書いてある」

 拙宅の住所、妻の個人名が明記されて配達されてきたものだという。私も一瞬考えたが、妻が訴訟を起こされるような状況は一切思い当たらない。

「それは怪しいよ」

「でも『訴訟通知センター』からきているし、訴訟を取り下げられるのは●月●日までって……」

(この項 続く)

2019年6月6日木曜日

M&Aが周りでマイブーム

経営者ブートキャンプのOBの社長さんからの相談を受けた。

展開している事業を急速に伸ばしたい、という。

その業界と地域性を分析すると、撤退を考えている同業をM&Aしていくのが最有効な成長戦略と助言した。「ロールアップ戦略」という。「纏め上げる」という意味だ。

すると、足りないのが資本となる。私は「投資ファンドを探して、出資してもらうのが良い」とも助言した。

すると、「すでにいくつかアプローチされていたが、話を聞くところまでは踏み切れていなかった」と言うではないか。私は彼の背中を押した形となった。

この三ヶ月の間に私が関与している会社で3件目のM&A相談となった。いずれも買収を申し入れられている。業績と成長性が認められているということだ。ファンドや大手の事業会社と組むことは決して悪いことではない。今後ともこんな相談が増えてくるのではないか。

2019年1月17日木曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(7)

「ブランディング」というのは、著者のセルフ・プロデュース、つまり「自分ブランド」が著書刊行により形成される、ということだ。

 しかし私には、この形態の場合、著者となる社長さんの個人ブランド形成よりも、その人が率いる会社のプロデュースや商品の販促に使えるとみえた。何しろ、本となると200ページ以上で字数にして10万字くらいの情報量が普通だ。パンフレットとは桁違いな情報発信だ。それも書籍として構成展開される「ストーリー」を持っているので、説得力が段違いである。取引先や既存客、見込み客へのPR、はたまた社員募集にも強力なツールとなるだろう。だから、会社の広告経費として出費すればよいのだ。

 このような強みを持つブランディング出版は、当然ながらこじんまりとした自費出版より経費がかかる。私に説明してくれた編集者の話では、「ライターが付いて概算で500万円、6カ月で出版します」としていた。

 通常の商業出版と思われているブランディング出版の数は以外に多く、その出版社だけで1600冊以上の実績があるというではないか。「もしかすると、あの本も」という状況なのだ。新聞広告や雑誌広告と比べるとどうなのだろう。効果・機能的には明らかに異なるアプローチである。なにより、広告であると気が付かれずに強い説得力や影響力を発揮することになる。

 私は、今までいくつもの会社の経営者や独立系コンサルタントに商業出版の紹介の労を取ってきた。正直言って、商業出版の壁はずいぶん高い。しかし、自費出版やブランディング出版なら経費を負担する予算があれば、お勧めだと思った。興味のある向きは連絡してくれれば、紹介することも可能だ。自社と自分個人の広告のバリエーションとして知っておいてよいだろう。

(この項 終わり)

2019年1月16日水曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(6)

ブランディング出版は変形広告と思えばいい


 先日、とある中堅出版社の編集者と次の出版について打ち合わせていた。もちろん私の場合は通常の商業出版での話である。雑談に入り、その人が「ウチは自費出版もブランディング出版もしています」と言う。

 第3の出版形態であるブランディング出版について説明を受けた。その出版社の定型パターンでは、次のような特徴があるという。

1.出版部数は4000部を基本とする。
2.ライターを付ける。「著者」は執筆しなくてよい。ライターから取材(インタビュー)を数回受ければよい。ライターから挙がってきた原稿に赤を入れる。
3.テーマ、題名、構成について著者の意向が強く反映される。
4.ISBNコードが付き、国会図書館にも納本される。
5.何より、通常の書籍流通ルートで販売される。全国の書店やアマゾンに配本される。
6.書評担当など、各メディアに出版社が献本してくれる。書店販促も通常書籍と同じく行う。
7.初版の印税はないが、2刷りから印税が支払われる。

 つまり、文章が苦手な社長さんでも代理執筆や編集、出版まですべて出版社側がやってくれる、というのだ。

(この項 続く)

2019年1月15日火曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(5)

「自分史」のバリエーションとして「50周年記念誌」などの「社史」や、会社が発行するPR本がある。また、商業出版になじまない個人の研究や趣味のまとめなどもある。

 自費出版の場合は、もちろん印税をもらえない。ISBNコードも付かない。逆に編集、出版の費用として200~300万円が出版社に支払われる。これは200ページ前後の、通常書店で手にするような厚さの本の場合で、個人研究を小冊子仕立ての小ぶりの書として出すような場合は100万円の負担金でも可能なこととなる。

いわゆるゴースト・ライターをお願いする場合には、上記のほかに50~100万円弱の費用を見込むことになる。

 出版部数は1000部程度が通常だ。個人出版の場合は、そんなに配るところもないはずだ。出している年賀状の数と同じくらいしか配布できないだろう。会社が出す場合は、取引先の数が目安だ。歯医者さんの場合は、受付において患者に自由に持っていってもらうという配布形態がある。これでも、ただのパンフレットよりはよほど訴求力、説得力が出る。自著の出版とは業績であり権威となるからだ。ISBNコードの有無などに注意する読者はあまりいないので、自費出版と商業出版は見かけではその違いはわかりにくい。

ブランディング出版は変形広告と思えばいい


(この項 続く)

2019年1月14日月曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(4)


自費出版とは自腹で本を出すこと


 著書を出版するのは、ビジネス的に大きな好影響がある。自社の商品やビジネスについて知ってもらう、また、それを創業したり責任者として展開している経営者自身を知ってもらい、親身な感覚が読者に醸成される。特にコンサルタントや士業(税理士、会計士、弁理士など)の専門家にとっては、著書があるのとないのとでは、その権威付けに大きな違いが出る。

 また、私が指導してきた経営者のなかには、いくつかの会社を任されてきたプロ経営者が何人かいたが、その人たちには必ず自著を出すことを勧めてきた。私自身が経営者としてのキャリアをたどってきた過程で、自著があったおかげで次の挑戦機会を与えてもらったという実感があったからだ。自著を刊行することによる効能について感度がよい経営者は、実は多くない。筆の立つ社長さんというのはさらに少ない。

 また、商業出版の場合はISBNコード(日本図書コード)という13桁の番号が付けられ、1冊は国立国会図書館に納本することが国立国会図書館法で定められている。「自分の本が国会図書館に納められている」ということが、個人著者の大きな誇り、励みになっているところもある。

 しかし、出版社側としては部数が読めない、知名度の低い会社や経営者の本を早々に刊行してくれるわけではない。そこで次善策として知られてきたのが「自費出版」だ。書籍の体裁の本を印刷してもらい、印刷してもらった分は自分が引き取る。それを知り合いや友人、お世話になった人や組織に進呈して読んでもらう。引退してから人生を振り返る「自分史」が典型だ。

(この項 続く)

2019年1月13日日曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(3)

これらの出版社から本を上梓する場合は、もちろん印税が支払われる。会社の規模などによるが、私の場合、本の定価の8%から10%が多かった。業界的には10%が上限で、それは大手出版社だった。印税が支払われるのは、まず初版の印刷部数に対してであり、定価1500円の本を5000部出せば、初版印税が75万円となる。

この金額からわかるように、「著書による優雅な印税生活」などは通常ありえないことだ。ごくごく一部の売れっ子商業作家くらいだろう。人気作家の林真理子でさえ、アマゾンの中古本販売やブックオフの存在についてしばしばエッセイのなかで愚痴っているほどだ。

 出版社によっては、初版発行後3カ月後の支払いとか、初版発行時と数カ月後に半金ずつなど、バリエーションがある。初版の印税が6%で二刷から10%などという段階的な設定も珍しくない。初刷の部数は、近年どんどん少なくなっている。初版1万部などということは、ほとんどない。3000部あるいは1500部くらいが通常となってきている。

 このように、出版に際して著者が印税をもらえる通常の出版形態を「商業出版」という。

自費出版とは自腹で本を出すこと


(この項 続く)

2019年1月12日土曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(2)

同書は、いわゆる「持ち込み原稿」だった。アポも取らず新潮社の受付を訪ね、「原稿を持ってきたので、編集の人に読んでもらいたい」と頼んだ。大手の出版社ではこのような飛び込み訪問は珍しいことではないらしく、門前払いをされることもなく出版部の副編集長という女性が出てきてくれた。

もちろん私は知らなかったのだが、Y氏は新潮社の名物編集者で、なんとあの松本清張の担当編集者だった。のちに親しくなって伺ったのだが、「先生方の文章を私が仕上げているのよ」と、つまり添削していると豪語していた。

 処女作が新潮社という名門出版社から出たこともあり、それから30年にわたり、いくつもの出版社にお世話になってきた。出版社からテーマを与えられて執筆する場合と、私のほうで出したい内容があって、それを相談したり、場合によっては出版企画書を用意していくつか出版社をまわったこともある。

 私が本を出させてもらったところは、講談社、プレジデント社、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、日本実業出版社など大手から中堅どころまでさまざまだ。

 これらの出版社から本を上梓する場合は、もちろん印税が支払われる。会社の規模などによるが、

(この項 続く)