2018年6月2日土曜日

頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(5)

田中英壽理事長の懐刀


 マンモス大学である日大には労働組合も複数あるが、非常勤講師の組合である日大ユニオンは、5月16日付「Net IB News」記事で次のように語っている。

「日本大学の理事会は体育会に牛耳られています。相撲部出身の田中理事長もそうですが、アメフト部関係者も権力を持っている」

 また田中理事長は、内田前監督の「親分」だとする日大関係者もいる。5月6日の試合中に事件が起き、社会的な大問題となっても内田氏がアメフト部監督を辞任したのが19日、そして日大理事職の座に居続けるのは、田中理事長との強い関係、信任があるからだと推察される。

 今回のような組織全体に重大な影響を与える事件・事案が企業に起きた場合、通常はどのような動きが取られるだろうか。7000人もの社員がいる大企業なら、田中理事長は社長、内田前理事長は専務取締役などに置き換えて事態を想定できる。

 専務が直接統括している事業活動で重大な失態を犯してしまった。それを咎められるのは取締役会ではなく、上司である社長、あるいは会長くらいしかいない。日大の場合、創業家が理事会に参画していないようなので、専務を叱責できるのは社長のみ、という構図だ。

 社業のすべてに最終責任を持つ社長なら、専務の責任を追及するだけでなく、事態の経緯や会社の対応、専務の責任の取らせ方などについて世間に発表、発信しなければならない。それが大企業にふさわしいガバナンスというものだ。

 日大の場合はどうだろうか。

(この項 終わり)

2018年6月1日金曜日

頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(4)

日本大学で権勢を振るう内田前監督


 日大広報部が、宮川選手側の指摘にあえて目をつぶるような、納得感が感じられない擁護コメントを出したのには、どんな事情があるのか。

 内田前監督は、実は単なる体育会の一監督ではなく、このマンモス大学の理事、それも常務理事なのだ。日大には34名の理事がいるが、常務理事は5名だけだ。そのなかでも、内田氏は人事担当でもある。人事権を握っているので、田中英壽理事長に次ぐ日大経営部門のNo.2だといわれている。

 大学や学校法人には、理事長と総長(あるいは学長)という職位が並存していて紛らわしいが、総長・学長は教授からの互選などで選ばれ、教育と研究部門のトップであり、学校・学園の経営に当たるのが理事長をトップとする理事会である。一般企業でいえば、理事会は取締役会、常務理事は役職取締役(専務や常務、副社長)、理事長が社長に該当する責任分担だと理解できる。

 日大は日本最大の学校法人で、教職員数は7000人を超えている。この大組織の人事権を握っている常務理事というのは、職員の生殺与奪の力を有しているといっても過言ではない。日本大学の広報部が今回の事件に関連して内田氏擁護的なコメントを連発したのは、流行の「忖度」として十分に理解できることなのだ。広報部がそんな忖度を自覚し、「広報機能が麻痺している」と報じられるほど、やる気がないのかもしれない。

(この項 続く)

2018年5月31日木曜日

頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(3)

宮川選手の記者会見における「陳述書」で時系列的に「誰が何を言ったか」を追っていけば、「故意の暴力の強制」は明々白々といえよう。事前にその指示は井上コーチを通じて行われ、宮川選手がその趣旨を内田監督に確認して「決意」を表明している。試合の前には上級生OBからも念を押され、試合後には監督やコーチから叱責されることもない。指示を実行した組織の「鉄砲玉」に対する態度だ。

問題が大きくなり、宮川選手が父親とともに内田監督、井上コーチに「真実を明らかにさせてほしい」と申し入れたときも、監督は「しばらく待ってほしい」とした。つまり、指示があったという事実を否定していない。
 これらの事実の指摘、列挙を聞いた上で、日大広報部はなぜ上述のようなコメントを出せるのか。広報部も含めて日大という組織には、組織運営について、あるいは社会的なモラルの保持において大きな欠陥があると思わざるを得ない。

 この問題で内田元監督擁護のようなコメントを出し続けている日大広報部も、担当者個人ベースでは「無理筋」の見解を出さざるを得ないことに矛盾を感じているかもしれない。というのは、関学大の被害者選手側が21日、大阪府警に被害届を提出したとき、次のような報道があった。

「千代田区にある日大本部には多くの報道陣が詰めかけ、日大側のコメントを求めたが、なぜか守衛の男性が対応。『取り次げません。「記者会見はありません」と伝えてくれと言われてます。(広報対応は)「物理的に無理」とのことです』と、広報機能が麻痺していることを伺わせた」(21日付デイリースポーツ)

(この項 続く)


2018年5月30日水曜日

頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(2)

宮川選手と日本大学、どちらが信じられるのか


まず、その日大のコメント全文は以下の通り。
「アメリカンフットボール部・宮川選手の会見について

2018年5月22日

本日、本学アメリカンフットボール部の宮川泰介選手が、関西学院大学フットボール部との定期戦でルール違反のタックルをし、相手選手にけがを負わせた件につきまして、心境を吐露する会見を行いました。厳しい状況にありながら、あえて会見を行われた気持ちを察するに、心痛む思いです。本学といたしまして、大変申し訳なく思います。

会見全体において、監督が違反プレーを指示したという発言はありませんでしたが、コーチから『1プレー目で(相手の)QBをつぶせ』という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味です。誤解を招いたとすれば、言葉足らずであったと心苦しく思います。

また、宮川選手が会見で話されたとおり、本人と監督は話す機会がほとんどない状況でありました。宮川選手と監督・コーチとのコミュニケーションが不足していたことにつきまして、反省いたしております。

日本大学広報部」

 これはあまりに内田前監督サイドを擁護しようとする強弁であり、日大の広報部が本当にこんなことを信じて書いたのか、大いに疑問である。

(この項 続く)

2018年5月29日火曜日

頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(1)

関西学院大学の選手に、悪質なタックルを仕掛けて負傷させた問題で、緊急会見を開いた日本大学の内田正人前監督と井上奨コーチ(日刊現代/アフロ)
5月6日の日本大学対関西学院大学のアメリカンフットボール定期戦で、プレーと関係のないところで関学大のQB(クォーターバック)にタックルを行った日大の宮川泰介選手が22日、謝罪会見を行った。宮川選手は悪質なタックルをした理由について、内田正人前監督と井上奨コーチから「1プレー目で相手のQBを潰せ」「潰したら(試合に)使ってやる」などと指示を受けていたことを公表した。

 これを受けて、同日夜に日大広報部がコメントを発表した。しかし、その内容は内田前監督や井上コーチを擁護しようとする組織防衛的なもので、何も新しい情報や見解のない、空しいものとしかいいようがない。

(この項 続く)

2018年5月27日日曜日

若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(4)

また、日大アメフット部や内田監督らへの思いを尋ねる質問については、「僕は今日ここに来たのは謝罪をするため、真実を話すために来たので、今後のチームのことなどは僕の口からいうべきではないと思います」と回答。さらに自身の今後について聞かれると「もちろん、アメフットを続けていくという権利はないと思っていますし、この先、アメフトをやるつもりもありません」と競技復帰を明確に否定した。TOKIOの山口達也メンバーが先の謝罪会見で「席があれば、またTOKIOとしてやっていけたらなあって」と未練がましいことを口走ってしまい、他のメンバーからさえバッシングされたのとは大きな違いだった。

宮川選手の会見を受け、関学大や被害者側はその反省する態度を好意的に受け止めているようだ。
「日大選手(宮川君)の行為そのものは許されることではないが、勇気を出して真実を語ってくれたことには敬意を表したい。立派な態度だった」(関学大アメフト部の鳥内秀晃監督)

「今回の会見を見て刑事告訴も検討せざるをえない状況だ。24日の日大からの回答を待って、家族、本人、関学アメリカンフットボール部とも相談して結論を出したい。日大選手(宮川君)は自分のしてしまったことを償い、再生していただきたい。勇気をもって真実を話してくれたことに感謝する」(被害選手の父、奥野康俊氏)

 刑事事件として立件されれば、宮川選手は加害者として傷害罪に問われ、有罪となる可能性もある。そうなれば20歳の将来ある若者の経歴に、大きな汚点となってしまう。選手としても学生日本代表に選ばれるほどのこの有望選手は、すでに退部の意思を表明している。

 記者会見では好青年という印象を世間に与えた宮川選手を、そこまで追い詰めた内田監督と井上コーチの責任は、どうなるのだろうか。

(この項 終わり)

2018年5月26日土曜日

若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(3)

将来をつぶされた加害選手も被害者だ


 企業や有名人の不適切行動に関する謝罪会見は多く、最近ではTOKIOの山口達也メンバーのわいせつ行為をめぐる謝罪会見が記憶に新しい。そうした会見のたびに危機管理専門家やコンサルタントが実施方法やメッセージの出し方などについて、批判的な指摘を行っている。今回の宮川選手の謝罪会見は、ここ数年でもっとも成功した例だ。

 成功した1つ目の要因は、会見の趣旨について「謝罪をしたい」そして「真実を明らかにしたい」とはっきりさせ、それを何度も繰り返したことだ。2つ目は、方法論として「陳述書」という書面をあらかじめ用意して、これを読み上げるというかたちをとったことだ。それは、問題が起きた試合の前の段階から、日付入りの時系列で起きた事実と自らの感想が書かれており、登場人物の個人名も記され、十分に説得力があり、人々が経緯をよく理解できた。

 3つ目の理由として、宮川選手が「そもそもの指示があったにしろ、やってしまったのは私です。人のせいにするのではなく、やってしまった事実がある以上、私が反省することだと思います」「自分で判断できなかった、自分の弱さだと思う」などと明言して、他の誰も非難しようとしなかったことだ。記者からの質問で、内田監督や井上奨コーチへの感想を何度も求められた。それは、監督らへの非難コメントを誘導するようなものでもあったが、宮川選手は監督、コーチ、あるいはアメフト部を非難することなく、「監督とコーチ陣からのプレッシャーがあっても、自分で正常な判断をすべきだった」などというコメントに終始した。

(この項 続く)

2018年5月25日金曜日

若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(2)

陳述書によれば、5月11日に宮川選手と両親が内田監督と面会し、監督による反則指示の公表を求めたが拒否されたという。退部も決意していて思い悩んだ宮川選手の父親が弁護士に代理人を依頼したのが、15日だったという(代理人の冒頭説明)。18日には、選手と家族だけで被害者である関学大選手への謝罪訪問を実施していることから、代理人を選任したことで、宮川選手が“日大の呪縛”から逃れ始めたように私は理解した。

 日大は事実関係の確認作業などを進めて24日をメドに改めて関学大に回答するとしていたが、代理人は「監督、コーチから事実を聞きたいというお話は、今までただの一度もありません」と話し、部としての事情聞き取りの予定がないことから、急遽22日の会見をセットしたと説明した。

 記者会見の段取り、準備も周到なものだった。会場を提供した日本記者クラブは、通例では会見に臨むのは当事者本人のみで、弁護士などの同席を認めていないが、「本人が20歳を超えたばかりの未成年に近い青年なので」(代理人)例外として認められたという。記者からの質問に適宜割って入るなど、宮川選手にとっては心強い存在だったであろう。何しろ、20歳の青年が突然100名を超える報道陣と多数のテレビカメラの前に立たされたのだ。大きな試練であり、勇気がなければできることではない。

(この項 続く)

2018年5月24日木曜日

若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(1)

関学との試合で悪質な反則行為を行ったことに関し、記者会見をする日本大学宮川泰介選手(日刊現代/アフロ)










関西学院大学とのアメリカンフットボール定期戦で相手側のクォーターバック選手に対して故意の反則タックルを仕掛けた日本大学の選手が22日、謝罪会見を開いた。本人の反省、謝罪は真摯で誠意あるものとして世間に受け取られたが、他の加害関係者、ひいては組織としての日本大学の対応は稚拙で、いたずらに時間を要している。結果、誠意ある対応がないと関学大側から指摘されている。

 本件で反則行為の指示を出したとされる内田正人前監督の責任はもちろん重いが、その監督責任者で組織上の上司である田中英壽理事長は、まったく表に出てこない。日大の経営ガバナンスはどうなっているのか。

タイミングのよい記者会見

問題の反則行為を行ったのは、日大3年生の宮川泰介選手。その前日に実施が決定したという会見は、冒頭の代理人弁護士からの経過説明を含め、1時間という長時間にわたった。宮川選手は詳細な「陳述書」を用意して、日付ごとに時系列で出来事を報告し、自身の時々の感懐を明かした。
 陳述書によれば、、、

(この項 続く)


2018年4月21日土曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(12)

規模より質を、何より在籍者の満足度を


――新校舎、大箱への移転という大きな節目を通りました。この後はどのように展開していくつもりですか。

斉藤 この校舎と自由が丘、酒田の3拠点で最大4500名の生徒に授業を提供することができると考えています。現在、学童保育を合わせて3600名まで達成しました。しかし生徒数の最大化を目的に経営を行っているわけではありません。規模を追いかけるのでなく、あくまで在籍している生徒、そして保護者の満足度を高めることを目標としたいと思っています。

――地域的な展開は次の段階とすると、教育プログラムの新商品はどうですか。

斉藤 すでに小学生向け英語レッスンと学童保育で500名ほどの在学生がいます。学童保育は共稼ぎ社会を支えるためにとても有意義な事業であり、需要もあります。また英語の初期教育との親和性も高い。ここの在校生も着実に増やしていきたい、と思っています。

――Eラーニング、つまりインターネットによる地方販売はどうですか。

斉藤 きめ細かい最高の授業の品質というと、やはりクラスで優秀な講師から習うことでしょう。iPadを使うアプリもすでに生徒に提供していますが、それらはあくまでも補助教材と考えています。誠実によい英語教育を提供していくことが、当校の、そして私の使命だと思っています。地域的な展開については、慎重かつ真剣に研究しています。

――本日はありがとうございました。

斉藤 こちらこそ、ありがとうございました。

対談を終えて(山田の感想)


「斉藤代表のなかで、教育者と事業家・経営者の割合はどうなのか」と聞いたら、「創業時は教育者の要素が9割、今は4割でしょうか」と言う。「また教育者の割合を半分以上に戻したい」とも。新校舎に移り、しばらく教育者としての分野に集中が戻ることだろう。しかし、年に1000人ずつ在籍者が増えていくと、2年すると新校舎も満杯となる勘定だ。その時点で次の段階を実現する事業家としての手腕を再び発揮しなければならない。というか、今から次の飛躍に備えてもらいたい。

 斉藤代表は声が大きく、底抜けに明るい笑顔が特徴の経営者だ。J PREPのパンフレットには「目指すなら世界の頂点」とぬけぬけと書いてある。代表が生徒たちに向けているこの言葉を、そのまま代表に贈りたい。


(この項 終わり)

2018年4月20日金曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(11)

国も戦う場も好きなように選んできた、真の自由人


――J PREPの代表をなさる前の斉藤さんの経歴がユニークというか、文字通りの唯一無二です。

斉藤 私は酒田生まれの純日本人です。上智大学では外国語学部で英語を学びましたが、イェール大学の博士課程で学んでいたのは政治学です。故郷の酒田のため、日本のために役に立ちたいと思い、政治学を勉強していました。そもそも比較政治経済学を学んでいた理由は、地域経済を成長させるために何が必要か、探究したかったからなのです。ちょうど現職議員が政治資金疑惑で辞職したこともあり、衆議院議員の補欠選挙に立候補して当選したのが33歳のときのことです。

――でも、またイェール大学に戻られた。

斉藤 翌年に総選挙となり、私は落選してしまいました。所属が民主党だったということもあり、その次の選挙を目指すのは断念しました。06年にイェール大学で博士号を取ることができました。それからアメリカの大学で教鞭を執りはじめて、08年から4年間、イェール大学で政治学を教えていました。博士論文は『自民党長期政権の政治経済学――利益誘導政治の自己矛盾』(勁草書房)として上梓させてもらいました。

――この本は、第54回日経・経済図書文化賞を受賞しています。

斉藤 J PREPを創業してからは、英語教育の本に傾注しています。最近著したのは『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』(ダイヤモンド社)という本で、すべての親御さんに読んでいただきたいと思っています。

(この項 続く)

2018年4月19日木曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(10)

――戦略的にいえば「ドミナント展開の出店」というわけですね。山形県の酒田校のほうはどうなったのですか。

斉藤 酒田校は、私の出身地という思い入れから創業時に同時開校して、私も今でも週に1度は教えに帰っています。しばらくは授業から教室の掃除まで、何から何までひとりでやっていました。しかし今では、ビジネス的な見地から重要な拠点に育っています。

――というと?
斉藤 学校全体のオペレーションの大きな部分を酒田で実施しています。渋谷や自由が丘に電話がかかってくると、実はそれを受けているのは酒田なんです。教材開発やその印刷発注、3000名を超える生徒家庭への発送などはすべて酒田で行っているのです。ITのシステム開発も酒田を拠点として行っています。東京で実施するより、コスト的な優位がありますし、なにより出身地での雇用貢献ができていると思っています。現在酒田事業所には講師のほかに、サポート・デスクとして20名ほどのスタッフに活躍してもらっています。

――それは実に賢いですね。これから人材雇用はどの業界でもますます難しくなってきます。地方でのオペレーションなら、そのような問題にも対処できるでしょう。

斉藤 実は海外経験や特殊なスキルを持つ人たちが、家族の介護や地域への想いを理由に地元に戻ることが多くあります。この絆を大切に、事業を組み立てるようにしています。教育面でも、全国展開を想定したモデルづくりを行う上で、酒田校で多くの知見を得ています。

(この項 続く)

2018年4月18日水曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(9)

教育者から経営者へ


――J PREPは学校法人ではなく、株式会社J Instituteが経営しています。斉藤代表はそれまで大学教授、つまり教育者で、起業は初めてだったため、企業の運営や経営にはご苦労があったのではないですか。

斉藤 当初は講師こそ私のほかに何人かいたのですが、経営という観点では本当にひとりで始めました。最初の年は財務諸表の読み方というよりも、複式簿記の初歩から勉強しました。領収書を整理して経理ソフトに自分でデータを入力するようなこともしながら、経営のイロハを学びました。

――特に困ったことは?

斉藤 創業間もない会社なので信用がなく、自由が丘で校舎を拡張移転する際に不動産を借りるのにも苦労しました。

――創業は2012年ですが、経営上で大きなブレーク・スルーとなったのは何年のことですか。

斉藤 おかげさまで最初の5年間は生徒数が年々、倍々で増えました。自由が丘校での生徒数が600名に達したとき、次の拠点として2015年に渋谷に進出したときでしょうね。宮益坂の交差点に面するビルのフロアを借りて、当初は100名ほどの生徒数でした。

――自由が丘の次に渋谷を選んだのは、どのような判断だったのですか。

斉藤 山手線のターミナル駅に進出することで、山手線の東側からの需要にアクセスできること、それから自由が丘とは東急東横線で1本、各駅停車でも10分ほどですので、拠点間の連絡がいい、ということからです。

(この項 続く)

2018年4月17日火曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(8)

――創業の地を東京・自由が丘とした理由は?

斉藤 自由が丘は「習い事のメッカ」であり、教育熱心な家庭の多い地域の中心にあります。この地域の保護者なら、私が目指す英語教育を理解して共鳴していただける方たちがいるのではないかと思いました。

――最初の年は、どのくらいの規模で始められたのですか。
斉藤 生徒数20名ほどでした。ソーシャルメディアと知人を介してが半分、折り込みチラシを見てきてくれた生徒が半分、といった具合でした。私自身が生徒全員を教えていましたし、少数精鋭でしっかり勉強してもらいました。最初に教えた中学生も、今では東大をはじめとする難関大学や医学部、海外大学に進学しています。嬉しいのは卒業生が、「大学に入ってますます、J PREPで勉強していて良かったと感じた」と言ってくれることですね。入試よりはその先を見据えて指導してきましたので。

(この項 続く)

2018年4月16日月曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(7)

イェール大で日本人の英語力に絶望


――なぜ英語教育産業で創業しようと思ったのですか。
斉藤 ビジネス的な見地からいえば、「市場のゆがみ」に気づいたということです。「市場のゆがみ」とは、その市場では「安い、早い、うまい、素敵」の逆、すなわち「高い、遅い、まずい、ダサイ」のすべて、あるいはいくつかの不備なことが起こっているということです。日本の英語教育の現場では、まさにその「市場のゆがみ」が起こっていて、参入機会があると思ったのです。

――そして代表には英語の素養があった、と。

斉藤 もともとは外国語学部で応用言語学も学んでいますし、都内の英語塾で自分自身教えた経験もありました。何より、イェール大学で教鞭を執っていたときの体験も大きかったと思います。イェール大で私は日本出身の教員ということもあって、日米学術交流プログラムのコーディネーター的な仕事もしていました。このプログラムに関連して多くの日本人の教授や知識人がイェール大を訪れて来ました。そこで、英語ができないというだけで多大な損失を被る事実を見て愕然としました。私はこの現状は、日本の国益を損なっていることだと本当に思いました。

――そこで、ご自分でなんとかしようと。

斉藤 英語教育産業に「市場のゆがみ」が起きていて、おそろしく非効率になっている、これを正すことは私に課せられた社会的ミッションだとも思いました。

(この項 続く)

2018年4月15日日曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(6)

倍々ゲームで増えてきた生徒数


――先ほどのお話では、昨年1年間で5割も生徒が増えてきたのはPR活動によるものではないということでした。

斉藤 実はJ PREPでの新入生徒の半数近くが、現在通っている生徒とその保護者による紹介、推薦なのです。私が当校を設立したのは2012年のことですが、その時は生徒の数は20名だけでした。最初はすべてのクラスを私が教えていました。その時から5年連続して、生徒数が前年対比2倍以上になった実績があります。

――ネイテイブ講師の充実のほかに、評価されてきた大きな要因はどんなものがあるとお考えですか。

斉藤 私は、新しい生徒をもっと集めるよりも、今通って来てくれている生徒、そしてその保護者の満足度を上げることを第一に考えています。J PREPが提供している英語教育への顧客満足、これを上げ続けることに最大の力を注いでいますし、講師やスタッフの力を結集していくつもりです。企業として若いので、さまざまな分野で経験やリソースも不足しています。それでも毎年、教材や授業内容を改善し、より良い学習経験を生徒に提供するために努力を重ねてきました。


●斉藤淳・J PREP 斉藤塾代表
研究者としての専門分野は日本政治、比較政治経済学。主著『自民党長期政権の政治経済学』により第54回日経経済図書文化賞(2011年)、第2回政策分析ネットワーク賞本賞(2012年)をそれぞれ受賞。J PREP では、全体の統括に加え、教材開発、授業、進路指導を担当。2014年に発売された『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』と『10歳から身につく問い、考え、表現する力』がベストセラーとなったほか、2015年度は、NHKラジオ『基礎英語2』で作文指導の連載も担当。新著に『ほんとうに頭が良くなる世界最高のこども英語』がある。

(この項 続く)

2018年4月14日土曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(5)

――採用する外国人はどんな人たちですか。

斉藤 博士号や修士号を持っている人もいますし、文学などそれぞれの分野での専門家の先生も多くいます。

――厳格な教育者なのですね。

斉藤 その反対のイメージだと思います。教育とは厳しい修行のようなものではない、と私は考えています。興味のあるものを皆で知ろうではないか、というアプローチを取ってもらっています。選抜に当たって重視するのは、陽気で辛抱強く教えてくれる講師かどうか、という点です。日本人の生徒はシャイな子たちが多いので、その学習意欲を外向きに引き出してくれる、指導力のある講師を採用するように努めています。

――日本人講師には、どんな人がいるのですか。

斉藤 私自身イェール大学の大学院で博士号を取得していますが、ほかにアイビーリーグではプリンストン大学やブラウン大学を卒業した講師もいます。TOEICやTOEFLで満点を取った講師もいますし、博士号取得者も何名も在籍しています。

――J PREPで教えているのは小中高校生ですが、それぞれの学年の英語教科書を復習、予習するという教え方ですか。

斉藤 いいえ、J PREPでの英語教育は、日本の学年別英語カリキュラムに準拠していません。

――社会人向け英語スクールでは、「TOEICで730点取れるようにしよう」「英語検定2級を取ろう」などと標榜しているところが多いですが、J PREPはどんなコンセプトで英語教育を展開しているのですか。

斉藤 英語力そのものを向上させる、ということです。英語力のなかでも特に「先行逃げ切り型英語力への準備」ということを考えています。英語の4技能は、「読む・書く・聴く・話す」です。J PREPでは加えて「考える」の5技能を修得してもらいます。この5技能を学生時代から先行して培って、あとになって実践的な英語力が必要な時が来たら、ただちに活用できる英語能力の開発を狙っています。そうした準備がない人たちとは決定的な差ができる、つまり「逃げ切り」ができるのです。

 言語を習得する上では、年齢に合った適切なアプローチで学ぶことが大切です。大学受験を学習のゴールとして設定するのではなく、本当に使えるレベルまで鍛えた上で受験を迎えるのが私どもの考え方です。そのために、クラスのなかで文法などを解説する日本人講師と、その実践をデモできるネイティブ講師とのチーム・ティーチングを多く行っていますし、iPadを使って自習できるアプリも開発して生徒に使ってもらっています。

(この項 続く)

2018年4月13日金曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(4)

キモはプログラムと教員の質


――新校舎を開設したということは、生徒の数が増えてきたからですね。

斉藤 昨年3月末での在籍者は学童保育100名、小学校低中学年の英語コースの生徒250名、小学校5年生以上の英語教室で2000名でした。今年3月初めに全体の合計が3600名を超えるまでになっています。

――1年間で5割以上増えたわけですね。よほどPRに力を入れているのでしょうね。

斉藤:J PREPでは広告宣伝については抑制的に展開しています。その費用をむしろ教材開発と、質の良い教師の確保に充てているつもりです。

――ファカルティ(講師)の陣容は?

斉藤 現在日本人講師が約50名、ネイティブ・スピーカの講師が30名ほどの構成です。ひとつのクラスで日本人講師とネイテイブ講師がチーム・ティーチングを行うのが当校の特徴です。

――ネイティブの講師は、すでに日本に居住している外国人を採用しているのですか。
斉藤 多くの外国人講師は世界中から応募して来てくれています。私がイェール大学で教鞭を執っていたネットワークからも来てくれています。出身大学としてはハーバード大学院、オックスフォード大学院、ロンドン大学などで学んだ外国人講師がいます。

――海外での採用は書類選考なのですね。

斉藤 いいえ、有力候補者ということになったら、飛行機代と宿泊費を当校が負担して来日してもらい、審査します。模擬授業までやってもらって、良い人を採用しています。

(この項 続く)

2018年4月12日木曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(3)

――本棚のレイアウトやライティング、リラックスできるオープン・スペースのデザインがとても洒落ています。
斉藤 設計してくれたのは、辻本祐介さんという方です。この新校舎の設計では、最先端のオフィスを開発してきたコクヨとチームを組んでくれたこともあり、機能性もとてもよく仕上がっています。良い仕事をしていただいて、大いに満足しています。

――辻本さんは、グッドデザイン賞を受賞したホテルや予備校のリノベーションなどに、いくつもかかわった方ですね。この校舎も建築作品として取材や見学の対象になるのでは。

斉藤 今でも、外を通りがかる方で中を覗き込む人の割合がとても多いです。学習塾だと気づくまで時間がかかるようです。

――棚にはTOEFLやSATなど留学英語試験の問題集もありますね。

斉藤 当校で一番上の学年というと、大学受験生です。今年度は国内大学受験で50名、海外大学受験で7名を指導しました。近年、卒業学年の約1割が海外大学に進学しています。国内大学受験組では、医学部に進学する生徒が多いです。医師のキャリアに英語力は不可欠ですからね。

――私も留学歴があり、よくわかるのですが、学部への留学は下手をするとMBA留学より難しい。

斉藤:J PREPからの海外進学組は、今まで全員が海外帰国子女というわけではありません。普通の中学生、高校生だったのですが、当校に通っているうちに刺激を受けてそのような志を持ってくれた生徒も数多くいます。

(この項 続く)

2018年4月11日水曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(2)

1年間で生徒が1250名増加


――先日は新校舎お披露目パーティにお呼びいただき、ありがとうございました。
斉藤淳氏(以下、斉藤) おかげさまで3月10日に新校舎に移設させてもらいました。この校舎は地下1階、地上7階で床面積が1,300平方メートル(約400坪)あります。約20名定員のクラスルームが16教室、地下階には自習ホールと教材を録音する複数のスタジオなどがあります。

――教室以外には?

斉藤 英語教育のほかに学童保育事業を運営しています。学校が終わった後の小学生を預かり指導しています。その施設に1フロアを、そのほかに7階はスタッフルーム、いわば事務フロアです。ここ1階はライブラリー兼ファカルティ・ラウンジ、チューター(個別指導)スペースとしました。

――このラウンジは壁もなく、オープン・スペースですね。

斉藤 はい、タイプが異なるテーブル類やソファまで備えて、カジュアルにリラックスできる空間を目指しました。すべてのテーブルの天板の下に電源があり、パソコンなどをどこでも使えるようにしています。

――居心地がよさそうですね。

斉藤 生徒が気軽にチューターに相談しやすいというか、遊びに来やすいような環境を目指しています。無料で飲めるコーヒー・サーバーも置いて、みんなが集まってくれるように、と。

――本棚に置かれているのは教材だけではありませんね。

斉藤 英語の絵本から始まって、英文学の古典や図鑑など、知的好奇心をそそるものを揃えています。欧米の大学で使われているテキストも置きました。

(この項 続く)

2018年4月10日火曜日

驚異の英語塾「J PREP」、ほぼ宣伝なしで生徒数激増…講師は海外一流大卒(1)

斉藤淳・J PREP 斉藤塾代表(左)。上智大学外国語学部英語学科卒業、イェール大学大学院政治学専攻博士課程修了、Ph D。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授を経てイェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任後帰国し、J PREP 斉藤塾を起業。イェール大学助教授時代はセイブルック寮の舎監も務め、3年間にわたって学生と寝食を共に過ごす。これまで各大学で「日本政治」「国際政治学入門」「東アジアの国際関係」などの授業を英語で担当したほか、衆議院議員(2002-03年、山形4区)を務めた。


少子化という社会的大変動の影響を受けてきたのが教育産業である。学校だけでなく、大手予備校も規模の縮小を余儀なくされて、学習塾や進学塾も講義形式から個別指導へと商品の軸足を移してきている。

 学校以外での英語教育に目を移すと、需要は高い一方、多岐にわたるプログラムと教育機会が巷に溢れ、供給側の競争が激甚になっている。大手英会話学校だったNOVAやジオスの倒産も記憶に新しい。

 ところが、これら2つの不利が重なっていると見えるセグメントで、小学生から高校生までをターゲットとして英語教育を展開し、急成長している企業がある。この春、東京・渋谷に新校舎を開設したJ PREP斉藤塾の斉藤淳代表に、その志を聞いた。

1年間で生徒が1250名増加


(この項 続く)



2018年4月9日月曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(6)

4年でやめればよかった?



 松本会長は就任当初、4年で辞めると周囲に話していたと伝えられている。私の経験から言うと、松本会長のような経営者は「3年やればあきてしまう」。というのは、新しい会社に乗り込むと大いに張り切るし、興奮する。実際にアドレナリンが分泌されるのがわかるのだ。大きな改革をやり始め、その施策に結果が伴い、業績が上ぶれし始める。そしてそのドライブは加速して、3年目、4年目には業績はますます伸張する。不調に沈んでいた企業を再生したことで、そのプロ経営者はカリスマ経営者として一身に尊敬を集める。

 しかし、実はその絶頂時にはもう主な改革や改善のカードは切り終わっていることが多い。ある状況で戦略的に動けた将軍も、別の状況でまた新たな戦略がすぐに浮かぶというものでもない。つまり、ステージが変われば別のタイプの経営者に指揮権を譲るのがよいのだ。ちょうどプロ野球の監督が成功したとしても、数シーズン限りで交代していくようなものだ。

 松本会長の場合、2月にカルビーの創業家出身で松本氏を会長に招聘した松尾雅彦氏が死去したことも影響している。創業家、あるいはオーナーとプロ経営者の関係は微妙で、招聘したのに退任させるなどのケースも多く見られる。そんな関係に陥ることなく、よい関係のままでいた資本家が死去すると、プロ経営者としては後ろ盾を失ったような気がする。あるいは、その招聘者に対しての畏敬の念が強い場合、「俺はこの人のためにがんばるんだ」という気概に私もなったことがある。そうなると、「その人」がいなくなった場合には大きく経営意欲がそがれることがある。

 さまざまな要因が絡み合って松本会長はカルビーを卒業することを選択した。すでにいくつも次のポジションのオファーがあるという。転進して、ぜひ次に引き受ける会社も再生、あるいは十分に伸張させてほしい。松本会長のような経営者事例が出ると、続くプロ経営者が日本にも輩出されていくことだろう。さらば、勇者よ! また活躍する日を見ることを確信して。

(この項 終わり)

2018年4月8日日曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(5)

財務上の手詰まりを再び大きく改善する戦略的な環境も整っていない。カルビーはポテトチップスで国内シェアを71%も取っている(富士経済「2017年食品マーケティング便覧」より)。こんな巨大なシェアを実現したということで松本経営を囃す向きも多いのだが、そんな例外的ともいえる高いシェアは、「あとは落ちるだけ」ということだ。松本会長も内心は忸怩たる思いがあったのではないか。

カルビーの「巨大性ゆえのリスク」は製造面でも顕著だ。16年に北海道のポテト生産が天候不順のために大減産となった。各社ともそれを繰り返さないために、契約農家の確保に躍起となっているが、カルビーの場合、自らが希求するような供給量の増加を担保しきれていない。ここでも成長限界がきている。

 ポテトチップスに次ぐ柱として「フルグラ」が伸びてきているものの、その年間売上額はまだ300億円台と、カルビー全体の10%程度でしかない。私は、前出連載記事でカルビーが状況を打開できるのは海外関連だろう、と提言した。販売とポテト確保の両方の面である。

しかし、海外において不安定材料は、カルビーの2割の株式を有するペプシコの動向だ。09年に結んだ契約の特別条項が19年7月に終了し、ペプシコは出資比率を変えられるようになる。ペプシコは、お膝元の北米でカルビーがシェアを拡大させていく状況にどう関与していくのか。

(この項 続く)

2018年4月7日土曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(4)

私自身、8年前に現役経営者を引退するまで、37歳から22年間、6社で経営を任された、いわばプロ経営者の走りだった。プロ経営者が培った私の感懐、それがダイレクトに松本会長に入り込んでしまったのではないか。成功したプロ経営者の疲れ、というものが松本会長にあったとしたら、2つの領域が考えられる。一つは無限的な業績伸張への期待からの逃避願望だ。もう一つは自分を招聘してくれた資本家、あるいはオーナー、外資なら本社側の上司との関係だ。


好調すぎて手詰まりとなった



 松本会長がカルビーに着任したのが09年。松本時代のカルビーの業績は、素晴らしかった。09年のグループ連結年商額は1373億円だったが、直近の17年3月期のそれは2524億円だった。8年間もの間、毎年平均して約9.0%の成長を持続してきたことになる。多くの経営者ができることではない。

 営業利益の回復はさらに顕著だ。09年の対売上高営業利益率はほぼゼロだったのが、翌10年には早くも6%を超え、17年には11.4%と高い数値を実現した。

 ところが足元を見ると、カルビーでは18年3月期の予想を売り上げ2560億円(対前年比1.4%増)、営業利益275億円(同4.7%減)としているが、第3四半期は対前年で売り上げがマイナスとなっていて、年度末の通期増収を危ぶむ向きもある。そうなると、8年間続いてきた連続増収もストップしてしまうことになる。輝かしい改善実績を誇ってきたカリスマ経営者なら憮然としてしまう状況が近いのだ。

(この項 続く)

2018年4月6日金曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(3)

「3月中旬の週末、栃木県内で開かれた、カルビーの社内イベント終了後のこと。松本晃・会長兼CEOは一緒に食事をしていた伊藤秀二社長に、唐突に切り出した。『僕はもう今期で降りるわ、いい潮時だよ。僕が辞めた後も伊藤さん、カルビーをよろしくお願いします』」(3月29日付東洋経済オンライン記事『カルビー、「カリスマ経営者」突如退任の理由』より)

 この日を境にカルビー社内は大騒動となったと見られるし、3月27日に発表記者会見が行われるや、今度はカルビー外部のメディアも一斉にその理由などを憶測する状況が出現した。

2月に退任勧告をしていた

 私は2月16日記事『カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機』で、このカリスマ経営者に対しての次のような言葉を贈った。

「私も経験したことだが、外から乗り込んだプロ経営者も数年すると、改革のカードを切り終わってしまって、手詰まりになることがある。松本会長が活躍するステージを変えることも有用なこととなるのではないか。新天地でさらなるトラック・レコードを積み上げるのはどうだろう。」

(この項 続く)

2018年4月5日木曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(2)

「どこか不可解な感覚も漂う退任会見だった。27日、帝国ホテルに姿を見せた松本氏は『前職のジョンソン・エンド・ジョンソン(の日本法人)でも社長を9年務めた。カルビーでも一区切りと判断した』。辞める理由らしい理由はこれだけだ。相談役や顧問にもならず、次の体制も『決まっていない』という」(3月28日付日本経済新聞Web版より)

 後任会長は伊藤秀二社長兼COOと見られている。社内的にはそれが順当なところだろうし、松本会長の退任が緊急だったので外部から新たに別のプロ経営者を招請してくるような時間的余裕もないだろう。

 しかし、伊藤氏を抜擢するために松本会長が勇退する、ということでもないようだ。松本会長が伊藤社長に退任の意思を告げたのは3月中旬のことだとされる。

(この項 続く)

2018年4月4日水曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(1)

IR通信2014年8月22日号より
カルビーは3月27日、松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)が6月下旬の株主総会後に退任する人事を発表した。松本会長は2009年にジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人のトップからカルビーの代表取締役に就任してから9年、大幅に業績を伸ばしてきて、同社のカリスマ経営者といわれてきた。

 突然の辞任発表を訝る声も多いのだが、私は2月の本連載記事で松本会長の離任を促していた。カリスマ経営者とされる松本会長にそのような提言をしたのは、私が見た限り、その時点ではほかに見当たらなかった。

 松本会長はなぜ突然辞任したのか。プロ経営者がぶつかる壁について解説したい。

歯切れの悪い退任会見


今回の退任発表は突然のことで、大きな驚きをもって迎えられた。というのは、松本会長があえて退任しなければならないような事案・案件、業績の絶対的な不調などがカルビーには見当たらないと理解されているからだ。

(この項 続く)

2018年3月18日日曜日

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(6)

告発ムーブメントがスポーツ界でも


 昨年ハリウッドから起こりアメリカ全土はおろか世界的に広まったのが、女性に対する性的ハラスメントの告発運動だ。今までは孤立していて声を上げることのなかった女性被害者たちが、このムーブメントに励まされて被害を告発し始めたのだ。

 伊調問題と貴乃花親方の告発でも、旧態依然たる競技団体というムラ社会のなかにいて声を上げにくかった被害者側が、影響しあって問題を指摘し始めたのだ。上下関係の厳しい相撲界では「無理へんに拳骨と書いて兄弟子と読む」などという言葉までが使われてきた。しかし、競技団体というのは、つまるところそこに属する選手のために存在するはずだ。弱い立場の選手が貶められたり、パワハラに泣くようなことがあってはならない。

 思えば、スポーツ界における告発ムーブメントの走りは、2013年に発覚した女子柔道選手に対するパワハラ・セクハラ事件だったと思う。私たちは、虐げられたほうの存在である被害者側の告発を強く支持するべきで、一部記事に見られる「世渡り下手の貴乃花親方、深まる孤立」などと、その行動を腐したり貶めるべきではない。

(この項 終わり)

2018年3月17日土曜日

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(5)

ただ、できれば伊調問題と同様に弁護士をスポークスマンとして前に出せば、さらによかったのではないか。弁護士という公正な立場が、孤軍奮闘して孤立したようにもみえる貴乃花親方の立場を強く補完できたのではないか。

 伊調問題と今回の貴乃花親方の告発は、その進展において互いに影響しあってきたと私は見ている。昨年10月以降の貴乃花親方による被害届提出とその後の展開がなければ、伊調選手のために告発しようという勇気は告発者に出なかったのではないか。告発状は今年1月18日に提出された。貴乃花親方の毅然とした対応に、伊調選手を擁護する告発者は背中を押されたと見ることができる。そして、3月1日にその事実が報道されると、今度は貴乃花が同様な告発を9日に断行した。「告発ラリー」ともいうべき2事案がシンクロして進行したと推察される。お互いの行動、そして信念が、互いに勇気を与え背中を押して進んでいる。

 興味深いのは、両事件とも被害者本人は告発に及び腰であることだ。伊調選手は事態が報道されるとただちに所属会社を通じて「告発状については一切かかわっておりません」という声明を出した。貴ノ岩に至っては、事件の翌日わざわざ加害者である日馬富士に謝罪に出向いているばかりか、傷を押して稽古を始め、事件がなかったかのように振る舞った。

 狭いムラ社会であるスポーツ界で生きる選手たちは、「その後」を慮って自らコトを荒立てるのをためらう傾向がまだ強い。その壁を破って協会と対峙するというのは、よほど信念のある人でなければならない。ひたすら相撲道を追求する貴乃花はそのような人物だ。

(この項 続く)

2018年3月16日金曜日

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(4)

貴乃花はさらに告発状のなかで、巡業部長でありながら協会に事件の報告を怠り、調査への協力要請も再三にわたって拒否したことなどから理事を解任されたことについて、「解任事由に相当するような理事の職務義務違反になると認めることは困難」と主張している。

そして公益認定等委員会に「(協会への)立ち入り検査、質問及び、適切な是正措置を求める勧告」を求めたとした。

相撲道、信念の人


 前述の通り、貴乃花親方は公益財団法人を管轄する公益認定等委員会に告発状を提出するという手段を、伊調問題の報道をみて思いついたのではないか。3月1日に「週刊文春」(文藝春秋)によって第1報が報じられ、貴乃花は3月9日の理事会前に弁護士と相談して、同じ行動を取ったと推察される。

(この項 続く)

2018年3月15日木曜日

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(3)

いわば、相撲協会に真っ向から果たし状を叩きつけている。事件への対応についても、次のように容赦なく告発している。
「本件傷害事件の調査・報告、日本相撲協会の各組織による決議・発言等については、不当・不適切にとどまらず、違法なものも存し、公益法人としての日本相撲協会及びその各組織の適正な運営には次に述べるとおり、重大な疑義が生じています」

 また、相撲協会が委託して同事件を調査した危機管理委員会については「被害者の同意を得ることなく、被害者の具体的な診断内容を入手して報道機関に公表しています」と指摘した。個人情報保護という観点からはその通りだろう。

「さらに同委員会は、被害者の主張を聞く前に中間報告要旨を公表し、その後の最終報告においても重要な点で被害者の主張が全く反映されておりません。このように、本件傷害事件に関する日本相撲協会による調査は、公正中立な内容とは到底評価できないものであり、身内による全く不十分な調査と報告をもって済ませようとしています」

 貴乃花のこの指摘、主張には説得力がある。危機管理委員会が相撲協会の内部機関である以上、被害者側からのこのように指摘されてしまえば反論することは難しいだろう。

 前述の伊調問題においてレスリング協会の倫理委員会がただちに第三者委員会に調査を委嘱したのは、相撲協会の内部機関である危機管理委員会の調査結果が、最後まで「眉唾もの」として受け止められたいきさつを踏まえたものとも推察される。

(この項 続く)

2018年3月14日水曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(11)

対談を終えて 山田の感想



 第三世界に井戸を掘るためにビジネスを始めた、この1点で松岡代表は世界に2人といない経営者であり、篤志家だ。この、青年のようなというか青年にも滅多に見られない理想家の快男児、松岡代表に私はいくつか助言をさしあげた。

 ひとつ目は、世界地図を販売した利益で井戸を掘るというビジネスモデルを逆にして、まず寄付を求めて、そのお礼に世界地図を進呈するというパターンも検討したら、ということである。

 2つ目は、日本以外で壁貼り型の世界地図はあまり普及していないということ。それなら外国語版世界地図の海外販売ということだろう。そのためには、ホームページからのインターネット販売が一番手っ取り早い。英語バージョンのECを早急に立ち上げたらどうか。読者のなかで篤志家やボランティアの方がいれば、ぜひ連絡を取ってみてほしい。

 3つ目は、販売している世界地図の裏側を活用すること。現在は白紙だが、そこに発注の方法やら、井戸の寄付のこと、実績などをデフォルトで刷り込んでしまうことをお勧めした。

 理想に燃える松岡代表に私は打たれた。ぜひ、井戸寄贈プロジェクトが大きく展開されることを祈っている。




カンボジア西部のタイ国境近くの村で開削した井戸を押す松岡代表








(この項 終わり)

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(2)

相撲協会への果たし状


 3月9日、貴乃花親方は相撲協会理事会を欠席した。日馬富士による暴行事件への巡業部長としての対応を問われてすでに1月に理事職を解任され、2月2日の理事候補選挙では立候補するも落選しているので、この日の理事会が貴乃花が出席する最後の理事会となるはずだった。

 協会には「所用のため」と事前連絡があったが、八角理事長(元横綱北勝海)は「良くないことだね。なんの用かわからないが」と苦言を呈し、尾車事業部長(元大関琴風)は「来ない理由がわからない」と首をかしげたとされる。

 この日の貴乃花親方の欠席は確信犯だった。というのは同日、貴乃花部屋のホームページ「貴乃花親方からのメッセージ」コラムが更新され、自身の名前で「内閣府公益認定等委員会に対する告発について」という文章がアップされたのだ。この文章で貴乃花親方は、相撲協会の危機管理委員会による調査が第三者によって行われたものではなく、最終報告でも被害者である貴ノ岩の主張がまったく反映されていない、などとして、以下のように綴っている。

「私は、本日、内閣府公益認定等委員会に対し、代理人弁護士を通して、公益財団法人日本相撲協会による本件傷害事件への対応が、事業の適正な運営の確保に重大な疑義を生じさせるものであることから、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づく立ち入り検査、質問及び適切な是正措置を求める勧告をしていただきたい旨の告発状を提出いたしました」

(この項 続く)

2018年3月13日火曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(10)

――御社のリーフレットには、「世界地図は世界を救う」「もう戦争なんてやめよう!」という見出しがあります。すばらしいですね。

松岡 これらの実現を目指して、私は世界地図ビジネスを一生展開しようと思っています。

――商品としての世界地図ですが、いろいろなバージョンの企画やデザインは、どのように行っているのですか。

松岡 デザインや印刷は外部に委託します。各国の国境の表示は、その時現在での日本の外務省の表示を採用しています。各国の指標資料など、アカデミックな内容のチェックは専門家に委託して間違いのないように努めています。商品の企画も実質的に私だけでやっていますが、現在の悩みは販路開拓です。

――松岡代表は前職の時代からボランティアや社会貢献に尽力なさってきましたが、どのような経緯でそのようなことに関心をもたれたのですか。

松岡 月光仮面です。子供のときにテレビで見たヒーローです。「世のため、人のため」ということに強く憧れてきました。

――74歳でいらっしゃいますが、後継者は?

松岡 それがまた頭痛の種です。次男に期待したのですが、受けてもらえなくて。誰か後継者はいませんか。

――すばらしい事業・運動を展開なさっているので、ぜひ継続・発展を図ってください。本日はどうもありがとうございました。

松岡 ありがとうございました。

(この項 続く)

伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(1)

女子レスリングの伊調馨選手と栄和人強化本部長(AFP/アフロ)
元横綱日馬富士による傷害事件をめぐる日本相撲協会の対応に問題があったとして、1月に相撲協会理事を解任された貴乃花親方が、内閣府の公益認定等委員会に告発状を提出した。

 貴乃花親方のこの思い切った行動は、その約1週間前に女子レスリングの伊調馨選手が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワハラを受けているとする告発状が、同じく同委員会に提出されていた事実が明るみに出たことと無関係ではないだろう。

 前近代的な競技団体組織のなかで起こった2つの造反劇はまた、海の向こうで大きな動きとなっているセクハラ告発ムーブメントである「#MeToo」と軌を一にしている。権利意識に目覚めた被害者的立場の人たちが声を上げ始めている。告発された組織の側は自らの擁護に走っているが、社会人として私たちは声を上げた被害者側を強く支援したい。

(この項 続く)

2018年3月12日月曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(9)

――個人の篤志家なら、そのほうがいい場合もあるでしょう。たとえば私が毎年出す年賀状の数は200枚台ですが、個人が世界地図を5,000枚もらってしまったら始末に困ります。個人の方を巻き込むなら、むしろ枚数を減らしたほうがいいでしょう。

松岡 私は、世界に井戸を、綺麗な水をということで、その手段として世界地図ビジネスを始めたのですが、世界地図ビジネスを展開していくうちに、この商材でさらに大きな夢を追えることに気がつきました。

 坂本龍馬が地球儀を見せられて自らの蒙を啓かれた、という話があります。子供たちに世界地図を見てもらい、自分の国だけではなく世界のことを知ってもらう、俯瞰してもらう。それによって、自分たちの国や地域で起きている紛争や戦争の愚かさに気がつくことになる。

 ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんは「1冊の本で世界を変えられる」と言いました。私は世界地図もそんな力を持っていると思います。イラクやシリア、またアルカイダの子供たちが世界地図を見て、「お父さん、戦争なんかやめよう」ということが起きればいいなと願っています。

(この項 続く)

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(5)

欧米では、パーティーで競合会社に会ったら法務部にレポート


 私は現役社長時代、アメリカの大手企業の日本法人社長を務めたことがあった。毎年、本社に各国の責任者が招聘されるのだが、その世界会議では数年おきに本社の企業内弁護士が演壇に立ち、アメリカの独占禁止法についてレクチャーした。それは、海外子会社の行動に対しても米国本社にペナルティが課せられるからであり、ひとたび独禁法違反が認定されると恐ろしく高額な罰金がその企業に課せられるからである。具体的には、弁護士から次のように注意された。

「パーティーで偶然、競合会社の幹部と会ったら、必ず相手の名前、肩書き、話した内容について本社の法務部にレポートすること。決して話していけないのは、当社や相手の価格やビジネス動向、自分が関与する市場の動向、将来見込みなどである」

 つまり、パーティーで同業他社の名刺をもらったら、一目散に逃げろ、クビになるリスクと遭遇したと思え、ということだった。欧米の独禁法の怖さは、外国の企業、つまり日本企業にも適用されるということだ。実際に過去に北米やヨーロッパで数百億円単位の罰金を払わされた日本企業はいくつもある。そのため、国際的に展開していたり、輸出が多い日本企業のなかには、独禁法や不公正取引に対する知識や感覚を有しているところが多くなった。

 しかし建設業界は国内向け事業の比重が高く、いわゆる「純ドメ(スティック)」体質が強いことから、不公正競争に対する理解が進んでいない。05年に4社が出した「談合決別宣言」はなんだったのか。まったく懲りない業界だ。

 特捜部がまなじりを決して立件しようとする意気やよし、である。

(この項 終わり)

2018年3月11日日曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(8)


国際交流にも発展



――現地での日本人コーディネーター、協力者の存在が大きい、ということですね。

松岡 スムーズに井戸掘削を進める上では必須だと思います。

――現在は松岡代表の個人的知り合いだけで展開していますが、この事業は有意義なことから、できればJICA(国際協力機構)などと連携できるといいですね。JICAから第三世界の多くの国に日本人専門家が派遣され、常駐しているわけですから。

――代表の井戸掘りプロジェクトは、各国でとても感謝されているでしょうね。

松岡 カンボジアで開削した地域にカムリエン高校というのがあります。ここの校内に掘られた井戸は、青森県の八戸高校が当社の世界地図5,000枚をご購入いただいたことで寄付されました。この寄付が経緯となり、カムリエン高校と八戸学院光星高校が姉妹校となりました。カムリエン高校からチェンターさんという女生徒が八戸学院光星高校に留学してきて、さらに松山東雲女子大学を卒業し、その後、愛媛県内の企業に就職して在日しています。

――国際交流にも発展したわけですね。そういう現地の衛生確保に貢献したい、という企業や個人は結構いると思います。世界地図を貴社から5,000枚購入することでそれが実現できるわけですね。もっと知られてよいことだと思います。

松岡 前述の通り海外井戸掘りへの直接寄付というかたちもお受けしていまして、その場合は工事難度によって20万円から30万円の寄付をお受けして、そのお礼として世界地図を500枚さしあげる、というスキームもあります。

(この項 続く)

【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(6)

今回のパワハラ疑惑の告発者は、日馬富士による暴行事件が公けになる経緯と結果を見て勇気付けられ背中を押されたということも、告発状が提出されたタイミング(1月18日)から推察される。

 日馬富士による暴行事件の際は、メディアに東京相撲記者クラブ会友や相撲ジャーナリストが登場した。彼らの大部分は相撲協会と共存共栄しているような立場であり、得てして相撲協会寄り、八角理事長擁護、貴乃花親方批判というスタンスに立っていた。そのような体制側からの指弾を浴びながら毅然として刑事事件としての立件を実現した貴乃花親方の見識は高く評価されるべきだ。

 今回の伊調選手パワハラ疑惑についても、日馬富士による暴行事件がたどったような、社会的常識に則ったかたちでの解決に向かってほしい。組織の上位者からのハラスメントに対して、毅然として声を上げる風潮が後押しされるべきだ。

(この項 終わり)

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(4)

「あの工区、技術的に難しいな」と、A社とB社の両方の幹部が述べたとする。A社のほうは本音で言ったとしたら、その工区の受注意欲の低さを吐露している。B社はただ相槌を打ち、「A社の応札の可能性は低いので、ウチは少し高く札を入れてもいいだろう」と、有能なビジネスパーソンならそう思わなければいけない。これはそのまま、不公正競争の端緒となっている。

 4社でリニア工事を担当し、今回の談合疑惑に関与したとされるのは、いずれも「理系技術者」で技術的興味が強いとされる幹部たちだ。リニア関連工事に関する技術情報を共有しようとする意欲が強かったと推測される。逮捕された大成建設の大川容疑者と、談合を認めた大林組の元副社長は早稲田大学理工学部の同級生で、同窓会やゴルフコンペなどで定期的に会っていたとされる(3月3日付読売新聞記事より)。

「会社は談合防止のルールをつくっている。不正が事実だとすれば、個人の問題だと思う」(同記事より/鹿島社員のコメント)

 このコメントはこの業界の不公正取引への意識の低さを物語っている。元同級生の2人が特定の工事について情報を交換、共有することは、個人間の親睦ではなく企業としての不正行為なのだ。大手ゼネコン4社は、たび重なっていた談合事件を反省して2005年12月に「談合決別宣言」を出した。ところが4社はリニア工事が始まる前後から、将来受注を目指す工区ごとに工法や地質の研究を行う「勉強会」を開いてきたという。

「談合しなくても、どのゼネコンがどの工区の受注を目指しているのか周知の事実だった」(同記事より/ゼネコン関係者)

 つまり、「勉強会」という名の談合だったことになる。

(この項 続く)

2018年3月10日土曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(7)

――そもそも第三世界の国で井戸を掘るというのは、どのような意味があるのですか。

松岡 現在の活動の契機になったのは、カンボジアで住民たちが泥水を沸かして使っているのを目撃したことでした。本当に茶色の水で、とても不衛生でした。私たちがお手伝いする井戸は昔ながらの手動ポンプ式の井戸ですが、ひとつ開削するとその集落全体で使えます。およそ500m四方の住民の人たちに共有してもらえます。

 井戸1基掘ったことで、まず5歳以下の乳幼児の死亡率が劇的に減りました。発展途上国での乳幼児死亡の原因のひとつは不潔な水による下痢という現状があるのです。また、成人を含む死因の80%は不衛生な水によるとも聞いています。水が綺麗になったら、80%の病気が防げる可能性があります。

――掘削する国はカンボジアが多いのですか。
松岡 もちろん、いろいろな国で展開したいのですが。カンボジアは、まず私が最初にこの事業を思い立ったところですし、R.Tさんという、第1回PKO(国連平和維持活動)隊員としてカンボジアに地雷撤去のために赴任されて、定住なさった方がいます。この方がタイとの国境沿いにお住まいで、実際の井戸掘りのコーディネートなどなさってくれています。今現在も2カ所で掘ってもらっています。タイとの国境沿いのほかに、アンコールワットの奥地でも1カ所掘削中です。

――カンボジア以外では、どう展開なさってきたのですか。

松岡 バングラデシュでも手がけましたが、そこでは水質の問題が起こりました。現地で協力していただけるY.TさんとR.T.さんの存在が大きく、私の井戸掘り事業がカンボジアに集中してきました。彼らがいるので、私は新しい井戸が開削されるたびに現地を訪問するわけではありません。

(この項 続く)

【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(5)

貴乃花親方の見識と矜持


 さて、一見無関係のような2つの事案だが、今回のパワハラ疑惑が公けになったタイミングから、私は相関があると見ている。伊調選手が練習場などについて不利な立場に置かれていたことや、栄氏が田南部力コーチにモスクワでの世界選手権の折にホテルのロビーで「伊調のコーチをしないように」と発言したと告発されているが、「レスリング関係者の間では知られた話」というコメントが多数報じられている。これはつまり、「レスリング界の人々はみんな知っているのに、知らないふりをしている」「悪いことが糾されていない」ということだ。

 多くの関係者が知っている事実が告発によって公けとなったという構図は、日馬富士による暴行事件と同じではないか。暴行事件は昨年11月から12月にかけて大きく報じられ続けた。被害者側である貴乃花親方への非難もあったが、加害者の日馬富士は引退というペナルティを負い、傷害罪で略式起訴され、鳥取簡裁から略式命令を受けて罰金50万円を納付している。

(この項 続く)

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(3)

この抗議文が提出されたところ、特捜部はそれに答えるどころか(その義務はもちろんない)、2日夜も第3回目の同社への立ち入り捜査を行ったのである。これは異例のこととされ、大成建設に対する特捜部の疑惑は以前から強いものがあったと推測される行動だ。

 疑惑を裏付けるような大成建設側の行動もあった。昨年12月に特捜部の捜査が始まってから、談合案件に関連する資料や書類を社員寮に移動し、2月に行われた社員寮への捜索で資料が押収された。

同社は検察の調べに対し「罰金付きの守秘義務を課せられていた上、今後の工事で参考になるので移動させただけ」などと隠匿の意図を否定しているというが、常識的に通用する説明ではなく、隠匿と批判されても仕方ないだろう。


「勉強会」がいけない


 前述のとおり、大成建設と鹿島は、「4社間の接触はあったが、単なる情報交換だった」として談合を否定している。もし不公正取引に厳しい欧米であれば、とても通らない理屈だ。

(この項 続く)

2018年3月9日金曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(6)

すでに392基の井戸を開削


――松岡代表が世界地図ビジネスを創業・展開なさっているのは、世界に井戸を掘ろう、提供しようという理想がおありになったわけですね。
松岡 世界地図のビジネス展開は、実はその活動の原資を稼ぐことが目的です。私どもがお手伝いした海外での井戸掘削は現在、392基が完成しています。

――世界地図ビジネスの展開において、井戸掘りと関連づけたりされているのでしょうか。

松岡 地図ビジネスの展開では、あまり井戸掘りのことは訴求していませんが、オリジナル地図5,000部をご発注いただけると、その売上約60万円で海外に井戸を1基開削できます。その井戸には記念プレートを設置し、ご発注者のお名前を「寄贈者」として刻ませていただきます。

――直接寄付する、ということもできるのですか。

松岡 はい。個人で寄付していただいて、井戸の開削式にお出かけになった篤志家の方もいらっしゃいました。

(この項 続く)

【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(4)

今回被害者とされる伊調選手、暴行事件の被害者である貴ノ岩は、個人競技を闘うアスリートという点で共通している。加害者とされたのは、今回は栄氏、前回は日馬富士で、いずれも組織のなかで大きな権力あるいは影響力を持っている人物である。敬意を持って遇され一目置かれているので、被害者よりも防衛的に扱われ、あるいは忖度が働いているような存在と見ることができる。

 組織として対応しているのは、前者ではレスリング協会、後者では日本相撲協会で、格闘競技の協会だ。

 レスリング協会は前述のとおり「事実はございません」との見解を示し、相撲協会の八角理事長は貴乃花親方に被害届を取り下げるよう圧力を掛けたと貴乃花親方自身が証言している。いずれも組織防衛的に被告発者の権益を守るような言動をして、結果として告発者や被害者の立場を軽視するかたちで対応していた。

 被害者とされる当事者の対応も興味深い。伊調選手は前出「週刊文春」の取材に対してパワハラの事実を認めているものの、報道直後に所属会社を通じて「告発状については一切関わっておりません」との声明を出した。貴ノ岩は、事件の翌日わざわざ日馬富士に謝罪し、傷を押して稽古を行ったと報じられている。

 狭いムラ社会であるスポーツ界で生きる選手たちは、「その後」のことを考えて、事態を荒立てるのをためらう傾向が強いようだ。

(この項 続く)

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(2)

大林組と清水建設は談合を認めた


リニア工事で今回検察側が特に絞って捜査を進めているのが、品川新駅と名古屋新駅の工事だという。いずれも技術的難易度が高く、大手4社しか施工能力がないとされる。昨年12月に特捜部が為計業務妨害容疑で大林組を捜査したのが、立件への契機となった。4社のうち、大林組と清水建設は談合を認め、1月までに独禁法の課徴金減免制度(リーニエンシー)により、公正取引委員会に違反を自主申告している。
 ところが、この談合に加わったとされ、今回幹部が逮捕に至った大成建設と鹿島では、両新駅工事の受注に至っていない。それだけに、両社は2駅に関する談合をしていないとして、談合参画疑惑を一貫して否定してきた。

 特に大成建設は特捜部の捜査に対して強く反発していると見受けられ、特捜部との対立、対決とまで呼べる状況が醸成されてきた。大成建設に対する特捜部の立ち入り捜査が1度で済まず、2月1日に2回目が実施された。その翌2日、同社の弁護人が「捜査は大成関係者に圧力を加えるものである」などとして特捜部に抗議文を提出し、次のように捜査の問題点を指摘している。

・検察官が、大成の委託を受けた弁護士や社内弁護士のPCを押収したり、社員に聴取した弁護用の記録文書を押収した。
・検察官が役職員を社長室に呼び出し、「社長の前でも嘘をつくのか!」「ふざけるな!」などと威圧的な態度を取り、検察に有利な証言を強要しようとした。

(この項 続く)

2018年3月8日木曜日

【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(3)

「まず、当協会が伊調選手の練習環境を不当に妨げ、制限した事実はございません。同様に、当協会が田南部力男子フリースタイル日本代表コーチに対し、伊調選手への指導をしないよう、不当な圧力をかけた事実もございません」

 こういう文章は「木で鼻をくくったような」と評することができる。

問題の告発文は、同協会幹部のパワハラ疑惑を糾弾したものだ。このレスリング協会の声明直後の3月2日、林芳正文部科学相は同協会が伊調選手と栄氏に調査を行うと発表したが、同協会は「事実はございません」とする見解を出す前に、指弾されている栄氏の行動がどうだったのか、それに対する事実確認や見解の表明が必要だったといえよう。報道が明らかとなった後、短時間で出された「見解」なら、「これから十全に調査する」という表現が最低限の誠意ある見解といえる。

ちなみに日本レスリング協会副会長である馳浩元文部科学大臣は、「私たちと強化本部長、伊調選手が一緒にテーブルを囲んで話をすれば済む話だと基本的に思っている」との見解を示している。


相撲協会もレスリング協会もムラ社会


 今回の事件と、前述の日馬富士による暴行事件が構造的にどのように似ているのか。プレイヤーズ・セオリー(登場人物と役割)によって見てみよう。

(この項 続く)

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(1)

山梨リニア実験線で試験中のL0系(「Wikipedia」より/Hisagi)
捜査が進んでいたゼネコン大手4社によるリニア中央新幹線工事談合事件では、3月2日に大成建設の元常務・大川孝と鹿島の担当部長大沢一郎の両容疑者が独占禁止法違反の容疑で逮捕される事態に至った。

 両容疑者は「受注希望の工事について意見交換はしたが、談合はしていない」と容疑を否認している。鹿島は「誠に遺憾であり、関係者に多大な心配をかけていることを深くおわび申し上げる」とコメント。大成建設は「25回、約3カ月にわたり任意で取り調べに応じているにもかかわらず逮捕された」「到底承服しかねる」とコメントし、逮捕への反発を露わにした。

 大成建設幹部が東京地検特捜部による任意の事情聴取に対し、談合があったことを認める供述をしているという一部報道もあるが、現時点で両社の会社としての主張は、「談合をしたとされる4社間で接触はあったが、それは単なる情報交換で、談合して受注となった実績はない」というものだ。しかし、実は競合会社が接触して情報交換すること自体が、不公正競争だとみなされる可能性もある。不公正取引に厳しい欧米のビジネス規範に学ばなければならない。

(この項 続く)

2018年3月7日水曜日

61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(5)

――広告媒体ということなので、販売対象は企業ですね。

松岡 塾、学校、それから銀行や企業、JICA(国際協力機構)などの国際団体が毎年購入、配布してくれています。ロータリークラブやライオンズクラブでも購入していただいています。それぞれの顧客や関係先に配っていただいて、世界地図を見る習慣を付けてもらいたいと思っています。
学校なら家庭に配るので子供が世界を知るきっかけになります。トイレに貼られることも多いですね。

――広告媒体であり、啓蒙・教育媒体というわけですね。さすがに元教育者だと思います。

松岡 「読み書きそろばん」と言いますが、私は「読み書きそろばん、世界地図」と言っているんですね。世界地図を見ていることにより、知識が深まるだけでなく、世界への興味が湧き、大きな夢が育つのです。世界の人々に世界地図を見る習慣を持ってもらいたい、と願っています。

 坂本龍馬が勝海舟の暗殺を企てていたことがありました。ところが地球儀を見せられたことにより、日本の置かれた現状に気がついて、その愚挙を取りやめた、という話が伝わっています。世界の広さを知った龍馬自身が攘夷論者から開国論者に変わったことで、明治維新が成功し植民地にならずにすみました。

――世界地図に関するビジネスは御社独占なのですか。

松岡 独占ではありませんが、弊社はフルカスタマイズと名入れができる世界地図の制作販売について、最初に実用新案登録を行った会社であり、その世界地図の制作販売だけを行っています。そんな会社はほかに聞いたことがありません。

また、いろんな国にも行きましたが、細かく調べるような世界地図や地図帳はあっても、シンプルで楽しい世界地図はないので、弊社はシンプルで楽しく見たくなるような世界地図を考えて制作しています。

――それでは、英語バージョンなども展開なさったらいかがですか。

松岡 実は商品としては開発しており、海外での販路開拓を始めたばかりで、越境ECサイトも昨年末に公開したところです。

――どんな価格体系なのですか。

松岡 国内では500枚からお受けしていて、地図の下の段を自由につくれます。全体をオリジナル版でご発注いただくには5,000部以上からですが、その料金は60万円ほどです。この60万円のなかから、カンボジアでネーム入りの井戸を1つ寄付することができます。


(この項 続く)