2018年10月20日土曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(7)

外部の活用だけがトヨタの生きる道


 トヨタが置かれている立場は、絵に描いたような「イノベーションのジレンマ」の事例だと言える。そして、そこでの戦略的なポジションとしては大いなる危機にあると言える。

 豊田社長は、この構造とそれがもたらしている危機を十分に理解しているようだ。そして、対応策も理論的に理解してすでに行動をとり始めているように見える。

「イノベーションのジレンマ・セオリー」では、既存の大企業側は内部組織、つまり既存組織と成員をもってしては、その危機に対応できない。というのは従来型の価値体系が刷り込まれているので、みずから「破壊的技術」(CASE+A)側に降りていきにくいからだ。

 トヨタの世界約36万人の従業員のほとんどは、現在の車をもっと売ることに汲々としていると推察される。危機を心配しているのは社長だけ、という構図だ。このような状況でトヨタが取る方策としては、外部資源を使うことになる。子会社として担当部門を本体と切り離すことにより外部化したり、外部会社のM&Aなどだ。また、専門企業と提携することも有効となる。とにかく自社だけでは大きな変革に対応できない。

 動きはある。

(この項 続く

2018年10月19日金曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(6)

トヨタでいうと、18年の1月に発足した「TPS本部」が従来型の組織価値体系を引きずっている例として挙げられる。

「自動運転や電動化など新技術の台頭で自動車業界が転換期にあるなか、トヨタ自動車は継続的な業務改善で競争力を高める『トヨタ生産方式』(TPS)を強化する。創業以来同社の成長の原動力となってきたTPSを統括する部署を新設して生産部門以外の営業や技術開発などを含めて全社的に展開し、競争力の底上げを図る」(2月5日付ブルームバーグ記事『100年に一度の転換期、トヨタはカイゼン強化』より)

 TPS本部は200名弱のメンバーを集めて新発足したという。しかし、カイゼンで得られるものは、財務的には年間せいぜい数パーセントの成果でしかない。しかも従来型の技術やオペレーションの充実、改善に焦点を当ててしまう。内燃自動車の開発、製造、販売にいくらてこ入れしても「CASE+A」の襲来には何も意味をなさない。

 従来の価値体系に縛られる既存の組織の成員は、「まず足元をみよう」とか「自分たちが持っているものをもっとよくしよう」とか「基本に戻ろう」などと言いがちだ。そして、外部で起こっている「破壊的技術」あるいは「まったく新しいビジネスモデル」に敗れ去っていくのが定例だ。

外部の活用だけがトヨタの生きる道


(この項 続く)

2018年10月18日木曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(5)

100年に一度の変化に象は対応できるか


 トヨタの豊田章男社長は、昨年来「自動車産業は100年に1度の変革に遭遇している」、あるいは「勝つか負けるかではない、生きるか死ぬかだ」と危機感をあらわにしている。

 100年に1度の変革とは「CASE+A」といわれる。「CASE」は、独ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長が2016年10月のパリ・モーターショーで言及したもので、

(1)コネクテッド(インターネットで常時車外とつながる)
(2)オートノマス=自動運転
(3)シェアリング
(4)エレクトリック=電動化

を意味している。さらにこれらの4要素にはAI(人工知能)も欠かせない技術要素なので、「CASE+A」が新しい潮流として押し寄せてきている。

「CASE+A」に対する豊田社長の危機感は正しい。というのは、「イノベーションのジレンマ・セオリー」からいうと、画期的な新技術の出現フェーズでは、それを採用できなくて滅んでいくのは既存の大企業だからだ。

 従来型の内燃型エンジンの自動車販売において世界最大規模のトヨタは、このセオリーでは滅ぼされていくほうに分類される。写真フィルムで世界最大のメーカーだったコダックは、デジタルカメラの到来に対応できず、あっという間に倒産してしまった。

 繁栄している会社ほど、その成功に酔い、さらにそのままのスタイルでのビジネスの伸張を追い求める。そして、やられてしまう。従来型の成功を追い求めてしまうことを、「その組織内に固有の『価値体系(バリュー・ネットワーク)』が形成された」と説明される。

(この項 続く)

2018年10月17日水曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(4)


カー・シェアへの布石か、系列販売の見直し


 トヨタにとって、今回の系列販売の見直しが大きな戦略なのかというと、実はそうではない。マンツーマンとゾーンがバスケットボールにおいてひとつの戦術であると同様、販売戦術の見直しという程度の位置づけだ。

 トヨタは全世界で年間1000万台以上の新車を販売する巨大企業だが、国内での販売台数は前述したように150万台強だ。トヨタにとって日本は最重要市場ではない。大きな戦略を展開するための個別(つまり相対的に小さい)対応策が戦術というわけだ。それでは、系列販売という戦術の転換を選んだトヨタにとって、その戦術の奥にある大きな戦略とはなんなのだろうか。

 ひとつは、すでに始まっているカー・シェアへの本格的取り組みの布石と見ることができる。カー・シェア市場はすでに立ち上がっていて、最大手のパーク24で7月の会員数が103万人と1年で22%増えた。

 トヨタは19年春にカー・シェアに参入するという。そのときは当然ながら日本全国4系列で既存の5000店がサービス拠点となり、トヨタの全車種をカー・シェアの対象にすることができる。また、現4系列を展開しているフランチャイジー・ディーラー約280社は、各地域での優良法人が多いので、カー・シェアの展開に当たっては地場でのハブ拠点として機能することが期待できよう。

(この項 続く)

2018年10月16日火曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(3)

ところがマーケットは全体として縮小傾向にある。国内の新車販売台数は1990年に778万台だったが、2017年には523万4000台と3割以上減った。人口減に加え、若年層の車離れが言われて久しい。言ってみれば、先行きは厳しい。

 そんななか、多数の車種を提供することはメーカー側としてのトヨタにとって大きな負担となってきた。今回の決定では、現在の約60モデルから売れ筋に絞った全30モデルほどにする、となった。

今回の変更は、バスケットボールでいうマンツーマン・ディフェンスとゾーン・ディフェンスに照らすと理解しやすい。従来のやり方だと、それぞれの系列が異なる顧客層(セグメント)を追い求めてきた。つまり、特定のターゲット・プレイヤーに密着するマンツーマン・ディフェンスの守り方であり、ここでは売り方だ。

 それに比べて今回の決定では、各系列は全車種を販売することになる。各ディーラーは自分の周辺地域に入って来たプレイヤー(潜在顧客)を収入レベルなどでセグメント分けすることなく、すべて攻めることになる。バスケットのゾーン・ディフェンスの考え方ですっきりと理解できる。

 トヨタの人気車種であるSUV「ハリアー」や高級ミニバン「アルファード」「ヴェルファイア」は、今は1つの系列でしか売っていないが、全系列の全店での販売になればすべての見込み客に対して売り込むことができる。これが新しいゾーン・ディフェンスということだ。


カー・シェアへの布石か、系列販売の見直し


(この項 続く)

2018年10月15日月曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(2)


カー・シェアへの布石か、系列販売の見直し


トヨタが現在展開している系列販売では、高級車中心のトヨタ店と中級車のトヨペット店、大衆車のカローラ店、若年層を対象にしたネッツ店の4つが同じ地域内で並列して営業展開している。

 日本の他の自動車メーカーでは、このような系列販売をしているところはない。トヨタが4つもの系列を走らせてこられたのは、何よりそのマーケット・シェアにある。

4系列合計で年間150万台以上という新車販売台数は、国内マーケットシェアが31.2%で、10年前に比べて1.6ポイント増えていて、足元では磐石のトップ・シェアを誇っている。

4系列での販売店はトヨタの直営店は少なく、9割以上が地場資本による独立経営によるフランチャイズ型のディーラー展開だ。その数、約280社、店舗の数は5000店以上といわれる。

 これだけ充実した販売網をつくり上げてきたトヨタだが、逆に言えば、これだけの数のフランチャイジーを「食わせて」いかなければならない。4つの販売系列に特徴を持たせることにより、販売力を発揮させるには、それぞれに異なった車種を持たせることが有効だったわけだ。

(この項 続く)

2018年10月14日日曜日

トヨタ社長は優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行(1)

トヨタ自動車・豊田章男社長(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
トヨタ自動車が国内販売体制を抜本的に見直すと報じられた。

4つの販売系列でそれぞれ「カローラ」などの専売車を設けて顧客層をすみ分けていたが、それをやめて全車種をすべての系列の国内合計約5000店で売る方針を固めた。販売車種も約60モデルから売れ筋に絞り、半分に減らす。

 これは大きな動きに見えるが、実はメガ企業であるトヨタにとっては戦術レベルの転換でしかない。国内販売でゾーン・ディフエンス戦術を展開することになった大きな背景には、「CASE+A」への戦略的な対応がある。

 100年に1度という自動車産業の大転換時代に、トヨタは対応していけるのだろうか。

カー・シェアへの布石か、系列販売の見直し


(この項 続く)

2018年9月8日土曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(7)

アスリート・ファーストの流れは止められない


 これからの時代、各競技団体の責任者は所属アスリートの扱いにこれまでにない注意が必要となる。声を上げ始めたスポーツ選手は、これからは問題があると認識したら告発するようなことをあまり厭わなくなるからだ。

 私がすぐに想像できるのが、世界大会や五輪への派遣選手の選考過程である。討議・協議方式の選考は忌避されていくだろう。それは、いくら「過去の実績」、あるいは「国際大会での実績」などを考慮したとしても、結局は「主観の問題だ」という余地が残るからだ。選に漏れた選手がスポーツ仲裁裁判所に提訴したり、その延長線上として民事の損害賠償や名誉毀損を提訴することが予想される。

 そんな時代になると、国際大会の派遣選手を決めるには、アメリカの多くの競技が実施しているように、特定の選考大会を決めて、泣いても笑っても一発勝負ということになっていく。私はそれが悪いことだとは思わない。アスリートに最善の練習機会(指導者の選択も含む)を与えた上で透明性を確保した競技こそが、スポーツの本来の姿であり、スポーツの偉大さを高めていく。時代は今年動き始めた。

(この項 終わり)

2018年9月7日金曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(6)

日本のアマチュア・スポーツ界では長く、長幼の功というか、先輩・後輩関係による上位下達的で封建的な組織や人間関係が醸成されてきた。体育会的な組織のなかで育ってくると、先輩やコーチ、監督にはやみくもに服従してしまうようになる。その延長線上で、協会などの組織が決定、運営していることについては、それを不合理、不適正と感じても従ってしまう。

 13年に女子柔道強化選手が監督の暴力を告発するという事件が起こった。このときは全日本柔道連盟のトップが総辞任する大問題となったが、告発したのは15名の匿名選手だった。当時は声を上げるにしても一人では難しく、さらに複数人で勇気を出して告発しても最後まで匿名だった。

この事件を振り返ってみると、今年はアスリートが顔を出してはっきり不合理を糾弾し始めた、画期的な年として記憶されることになるだろう。

 今年のこの動きの引き金となった事件がある。それは昨年秋に勃発した「貴乃花騒動」である。暴力事件の被害者は弟子の貴ノ岩だったが、それを表沙汰にして大騒動にしたのが貴乃花親方だった。当初マスコミとコミュニケーションを取らなかったこともあって、むしろ批判、非難を浴びた親方だったが、断固として刑事事件に持ち込み、加害者の元横綱日馬富士を廃業にまで追い詰めた。現役トップの横綱、そして所属する組織である日本相撲協会を相手にして毅然として戦ったのである。

 貴乃花親方のこの時の行動が、今年に入って他の競技団体で不当な状態に直面した選手や関係者へ、大きな勇気と示唆を与えたものと私は見ている。

(この項 続く)

2018年9月6日木曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(5)

声を上げ始めた選手たち


 宮川選手が行った反論会見は立派なものだった。弁護士に付き添われてはいても、その助言を途中で受けることもなく前を見て自分の言葉で話した。18歳の一選手という立場の女性がそれを行ったということで、大きな説得力を生み出した。

 今年に入ってスポーツ界では不祥事がいくつも起こっている。しかし、その発端、展開には共通点がある。

・女子レスリングのパワハラ事件
 五輪4連覇の伊調馨選手が、日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワハラを受けていたという告発状が出され、栄氏は辞任(告発状を出したのは本人ではなく関係者)。

・日大アメフト部の反則タックル事件
 当事者である加害選手が会見を開いて経緯を説明

・水球女子日本代表が合宿を中断
 水球男子日本代表の大本洋嗣監督が同チームを批判したことが発端

・日本ボクシング連盟の山根明会長辞任
 連盟の組織員が反発。300人以上が会長批判に連名して会長を辞任に追い込んだ

 今回の体操協会のパワハラ問題を入れれば、今年だけで5つも同じ構造の事件がスポーツ界を揺るがした。「同じ構造」とは何か。それは「造反有理」(謀反にこそ正しい道理がある)ということだ。

(この項 続く)

2018年9月5日水曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(4)

速見コーチの早々の復帰の道筋をつくるべき


 第三者委員会が立ち上がると報じられた翌日、8月31日に今度は当事者である速見コーチが動きを見せた。無期限の登録抹消という厳しい処分を受け取った速見コーチは、指導者としての地位保全を求める仮処分を東京地裁に求めていた。

ところが、その仮処分の申し立てを取り下げ、処分を受け入れると発表したのである。

 宮川選手に対する暴力行為があったのは事実であるとし、「全面的に反省し、一刻も早く正々堂々と指導復帰を果たすことが選手ファーストだという結論に至った」と、書面で発表している。すると、宮川選手に対する指導、ひいては宮川選手の東京五輪への挑戦、出場はどうなるのだろうか。

 私見を言えば、速見コーチへの処分は10月末で終了させるのがよい。つまり、塚原夫妻側からの宮川選手へのパワハラや朝日生命への引き抜き問題についての第三者委員会の判断を待って速やかに、ということだ。具志堅氏も会見で「18歳の少女が嘘をつくとは思わない」と語ったが、私も宮川選手の会見を見て、宮川選手の勇気と気概に打たれた。

 暴力事件自体は両名とも認めているし、それは責められるべきだ。しかし、罪に対して罰というものはバランスが取れていなければならない。登録抹消を3カ月で終了するのが適当な展開となってきたと思うのは私だけではあるまい。

(この項 続く)

2018年9月4日火曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(3)

常識人の対応、具志堅幸司副会長


 この事件では、体操ファンにはたまらないメダリストたちが続々登場する。光男氏は五輪3大会で金メダルを獲得しており、「ムーンサルト」の創始者だ。千恵子氏もメキシコ五輪に出場して入賞している。

光男氏が千恵子氏をかばうかのような発言をしてしまったのが8月29日。翌30日に協会は対策会議を開き(塚原夫妻は欠席)、具志堅幸司副会長(ロサンゼルス五輪金メダリスト)が記者会見した。

具志堅氏は、宮川選手に対する協会側からのパワハラという問題について第三者委員会を早々に立ち上げるとして、「できるだけ関係のない人に(調査を)お願いしたい」と話し、その結論も「10月中に」とはっきりしたゴールを示した。さらに「大変お騒がせしたことにお詫びを申し上げたい。パワハラがあったとすれば大変な問題。調査委員会の結果を待って、報告したい」と語った。

 大きな告発を行った若干18歳の宮川選手に配慮をしつつ、事実関係は第三者委員会の調査を待つ、としたのである。協会のこの方針は納得のいくものであり、具志堅氏の会見での記者団との対応も真摯なものだったので、協会に対する信頼感を醸成した。

(この項 続く)

2018年9月3日月曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(2)

宮原会見に対して二転した協会


 宮川選手が行った会見の内容を以下に要約してみる。

・速見コーチから強い叱責指導などはあったが、数年前の出来事で自分はそれをパワハラ指導とは感じなかった。

・今回の処分は、宮川選手を、自ら指導する朝日生命体操クラブに引き抜こうとした千恵子氏の策謀と感じる。

・千恵子氏から「五輪に出られなくなるわよ」と言われたことを、パワハラだと感じた。

 宮川選手のこの会見に対し、千恵子氏の夫で協会副会長の塚原光男氏は同日中にNHKの取材に対し、「やましいことはなく、発言のなかには名誉棄損に関わることもある」と述べ、反論する姿勢を示した。また弾劾された本人である千恵子氏も日刊スポーツの取材に対し「悪いことはしていないし、宮川が勝手に言っていること」と語った。

 この協会の対応は、世間の常識からいえばまったく受け入れられないものだ。光男氏は千恵子氏の配偶者である。妻が弾劾されているのだから、直接の利害共有者という立場だ。協会には副会長が4人いるのだから、妻の行動が問題となった段階で、事件の取り扱いからはきっぱりと手を引くべきだった。副会長である光男氏が発言したことで、「協会のなかで夫妻が結託している」という印象を醸し出してしまった。

(この項 続く)

2018年9月2日日曜日

【宮川紗江パワハラ告発】五輪出場選手を協会が「密室」で選ぶ方法は廃止すべきだ(1)

塚原千恵子氏(写真:日刊スポーツ/アフロ)
体操女子のリオデジャネイロ五輪(2016年)代表の宮川紗江選手(18)に対し暴力やパワーハラスメントを行ったとして、速見佑斗コーチ(34)が日本体操協会から「登録抹消(無期限)」の処分を受けたのが8月8日のこと(本人への通知は8月13日)。事態はそれから急展開してきた。

 宮川選手が8月29日に反論会見を開き、逆に協会側、特に塚原千恵子女子強化本部長(70)によるパワハラを告発したのだ。協会は、第三者委員会を立ち上げ早急に調査するとしているが、速見コーチの指導がなければ競技生活を続けられないと訴えている宮川選手はどうなるのか。

 アスリート側が、所属する協会側に対して勇気を出して声を上げる傾向が強まっている。それはスポーツ界における選手の選抜・選考や強化の方針にまで影響を与えていくと私は見ている。

 スポーツ界に“造反有理”の風が吹き始めた。

(この項 続く)

2018年9月1日土曜日

営業研修で戦略立案を指導

以前から依頼されていた大手企業で1日研修を実施。業績好調で今年の年商が1兆円の大台に乗ったという話を役員の方からうかがう。

対象は私としては初めてと言っていい、一般職。営業職にある人が36名ほど集まっていた。

聞くと、今年の前半に当社の部長を対象にインハウスで「戦略立案」研修を行い、その際拙著と戦略カードで展開した、と。その評価がとても高かったので、次の社内研修機会には「家元にきてもらおう」ということになったとか。

実施してみると、さすが優良企業で若手社員の方も活発で理解も早く、1日で大きな成果をあげた、というのは3年戦略の雛形というのを各自が作れたのである。また私が直接教えた、ということで皆さんのキャリア開発の自覚、意欲についてもよい影響を与えられたのではないかと自負している。

2018年8月30日木曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(6)

18年2月に遠藤市長は、「今年を徳島市の行政改革元年とする」と宣言し、3月に入ると市観光協会を相手にその破産手続きを徳島地裁に申請し、決定された(観光協会は抗告)。

 そして、今回の総踊り中止の決定に至る。

 しかし、遠藤市長が大胆に仕掛けたこの決定は、大方で不評な結果となった。私も本ブログ前記事で「経済的損失は24億円強か」と推定した。

火中の栗を拾おうとして窮地か、どうする遠藤市長


 阿波踊り期間中、そしてその後現在に至るまで、メディアでの取り上げ方をみると遠藤市長は分が悪いが、無理もない。四国だけでなく日本にとっても大きな夏の行事、国民的行事ともいえる阿波踊りに水を差した結果、そのブランドを毀損したとみることができる。私も、遠藤市長は改革の功を急いで墓穴を掘ってしまったという感を持たざるを得ない。

ここ数日テレビ番組に出演する様子や、隠し撮りされたとされるテープで観光協会長を一生懸命に説得しようとする言葉から、遠藤市長は理想家なのだろうという好印象を私は持つに至っている。

 しかし、この苦境、難しい政局を遠藤市長はどのように乗り切ろうとしているのだろうか。あるいは、旧来の大きな波に飲み込まれて小池知事のように光を失っていくのだろうか。

 阿波踊り、そして総踊りは廃れることはないのだろう。地方都市の政治の動きとは離れて、自生していく生き物のようなお化け行事として私たち日本人の中にあるし、日本の夏から外せない風景となっているからだ。

(この項 終わり)

2018年8月29日水曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(5)

うまく舵をとれない2人の首長

当選した16年の勢いは、東京でも徳島でも失速した。

 小池知事の勢いが止まったのは、17年10月の衆院総選挙の時だった。同年9月29日の会見で希望の党代表として会見し、他党からの移籍者を「排除する」と発言してしまった。この発言を契機としてすっかりそのカリスマを失ってしまった小池知事は、足元の東京都政でも「決断できない」「迷走している」などと批判されるようになった。

 小池知事が改革の目玉プロジェクトとして、その移転を延期していた築地市場問題も、結局18年10月の豊洲移転が決定され、「過去の小池知事の決定はなんだったのか」と嘲笑されるに至っている。

 一方、遠藤市長は新町西地区第一種市街地再開発事業の訴訟に足をとられつつ、「敵は本能寺にあり」ということだろうが、阿波踊りの改革に乗り出した。阿波踊りは毎年100万人以上も集める四国でも屈指の観光行事なので、大きな経済効果がある。金が動くところに利権あり、というのが世間一般の認識だ。

 阿波踊りを主催していたのが徳島新聞と徳島市観光協会だった。市が補助金を出していた市観光協会を監査したところ、累積で4億3000万円の赤字が出ていたという。遠藤市長は市観光協会をどうにかしようと考え、まず協会長の自発的な退任を求めた。ところがその時の面談会話の録音とされる音源がインターネット上にアップされてしまうというスキャンダラスな展開となってしまった。

(この項 続く)


2018年8月28日火曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(4)

大量得票で自信、改革を掲げる

遠藤市長も小池知事もその当選は奇しくも同じ年、2016年である(遠藤市長は4月、小池知事は8月)。

 小池知事はマスコミへの露出が多いので、私たちの記憶に残っているのだが、大勝した小池知事は「都政刷新」を掲げて、その改革の象徴として選んだのが築地市場移転問題だった。16年8月31日の記者会見で、同年11月7日に予定していた築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転延期を表明したのである。

 遠藤市長にとっての「築地市場」は、「新町西地区第一種市街地再開発事業」だった。原前市長が進めていた本事業の総事業費は約225億円で、文化活動などに用いる新ホールの建設が中核だった。

 その計画の撤回を公約に掲げて当選した遠藤市長は16年6月、地権者に対する権利変換計画の不認可を通知した。これを不服とした再開発組合は同年8月26日、徳島地方裁判所に「徳島市による権利変換計画の不認可処分は違法である」として不認可処分取り消しと、計画認可の義務付けを求めて遠藤市長を提訴した。一審で市側が勝訴したが、再開発組合が控訴して、現在も訴訟状態である。

 既存勢力を象徴する、選挙民の誰もが漠然と大きな利権が絡んでいるのではないかと感じているプロジェクトを、勢いのある政治家は“改革の目玉”としていわば槍玉にあげる。ポイントを稼ぐということもあろうが、選挙による信任が大きいうちに手がけられる大きな改革を目指すのは政治家の本能でもあるだろう。

 小池知事のターゲットが築地移転問題だったとすれば、遠藤市長の次のターゲットとなったのがそれが徳島市最大の行事、阿波踊りの改革となったわけだ。

うまく舵をとれない2人の首長

(この項 続く)

2018年8月27日月曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(3)

一方、小池知事の場合はどうだったか。

 前職が長きにわたって職にあるという閉塞状況ではなかったが、前々職の猪瀬直樹氏はわずか1年、前職の舛添要一氏も在任2年でいずれもスキャンダルを契機として騒がしく辞任してしまっていた。

 小池氏は中央政界から都政へのいわば天下り的な登場だったが、自民党と公明党推薦の増田寛也氏、野党各党の推薦を受けた鳥越俊太郎氏を大きく引き離してトップ当選を果たした。小池氏はやがて希望の党を組成し、一時は東京都にとどまらない大きな影響力を手にしようという勢いだった。

 当時の都知事選を振り返ると、小池氏は東京都議会自民党という既存勢力を仮想敵として掲げ、わかりやすい対立軸を選挙民に対して示した。投票する側は「既存勢力-利権の可能性」という証明されていなかった構図を感じ、それを忌避して雪崩をうって「都民ファースト」を標榜した“小池教祖”支持へと走ったのである。

大量得票で自信、改革を掲げる


(この項 続く)

2018年8月26日日曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(2)

既成勢力との対峙を掲げ新人で初当選

2016年3月に行われた徳島市長選に立候補した遠藤氏は、それまでは四国放送のアナウンサーをしていた。特定の政党に属してもいないし、政治的な経験もなかった。一方、現職の原秀樹氏はおおさか維新の会(当時)の推薦を受けて4選目を目指した。

ところが無所属新人の遠藤氏が4万1073票で当選、原氏は2万4214票で落選という審判が下った。しかも“反・原市長”を掲げた立石かずひこ氏が2万8671票を獲得して2位となった。つまり、3期続いた現職市長の既成勢力に嫌気をさした市民が、外部から来た清新な候補に期待した、という構図である。

 遠藤氏が立候補に当たり掲げた最大の公約は、新町西地区再開発事業の白紙撤回というものだった。これは前職の原氏によって推進されていたが、なんらかの理由でこのプロジェクトに賛同できなかった市民は、遠藤氏に投票したものと推定できる。当然ながら新市長は刷新勢力として期待され、その人気は当初高かったに違いない。

(この項 続く)

2018年8月25日土曜日

なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?(1)

「総踊り」を強行する阿波おどり振興協会の踊り手たち(写真:毎日新聞社/アフロ)
8月12日から15日まで徳島市で開催された阿波踊り。イベントの目玉である総踊りが正式には中止となったが、これに反発した「阿波おどり振興協会」が8月13日の夜に、正規の会場外で自主的に総踊りを敢行した。

 紆余曲折の開催となった経緯もあって、今年の来場者数は昨年より1割も減ってしまったという。総踊りの中止を先導した徳島市の遠藤彰良市長は苦しい立場に立たされた。遠藤市長が阿波踊りの開催方法を変更しようとした経緯、それによる迷走と人気の凋落を見ると、私には東京都の小池百合子都知事の姿と重なって見えて仕方がない。

既成勢力との対峙を掲げ新人で初当選


(この項 続く)

2018年8月24日金曜日

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(9)

第2ラウンドは徳島市長へのリコール?


 今年の阿波踊りは終了したばかりである。阿波おどり振興協会は、秋に自主的に総踊りを行うと発表した。阿波踊りという一大観光ブランドを毀損した遠藤市長の立場は弱い。騒動により、7日時点のチケット販売率は昨年同時点を9ポイント下回っており、その経済的損失を私は前回記事で「観光客の直接的出費分だけでも約25億円の減収」と推定した。

「リコールという言葉も出始めました。追い落としまであとすこしでしょうか。見事なものです」

 Aさんは市長擁護派らしい。今回の成り行きに慨嘆している。たしかに、阿波おどり振興協会側から言えば、成り行きは市長側の敵失という事態で推移している。

遠藤市長は62歳、地元出身で青山学院大学を卒業後、四国放送に入社して以来、ずっと同社のアナウンサーだった。16年3月の徳島市長選にあたり四国放送を退社して出馬、初当選を果たしている。政治の世界に入り2年目の今年、お膝元の最大観光行事である阿波踊りで大騒動を引き起こしてしまった。

 市長は手に乗せてしまったこの“火の玉”をどう処理していくのか。総踊りの中止は、次の段階としていやおうなく徳島市の現体制を揺るがせていくかもしれない。メールの最後でAさんは、「誠実な光が、大きな黒い力で吹き消されそうになっているのを見るにしのびなく」と結んでいる。

 以上紹介したAさんのメールの内容は、当然ながらAさんの私見であり、その真偽は定かではないが、もし「政争」だとする見方が徳島市民の間に一定数存在するのだとすれば、今回の阿波踊り騒動が契機となり、より大きな議論を呼ぶかもしれない。

(この項 終わり)

大塚家具、久美子社長の辞任拒否で再建計画進まず…辞任が条件の支援元候補と交渉難航(5)

問題はTKPの場合に限らず、他の支援元候補として報じられた企業が一様に久美子社長の退陣を条件としたのに、久美子社長がそれを頑なに拒んで案件が前に進まない、と報じられていることだ。

 今回の決算での「継続企業の前提に関する注記」を持ち出すまでもなく、2015年の社長再着任以降の同社業績の急激な悪化は明らかで、現経営陣の経営責任はとても免れない。今の状態で久美子社長が退任してもよし、そうでなければ買収などで支援元になった企業やファンドが新社長を送り込む、あるいは外部から招聘する、このようなスキームを久美子社長が受け入れることが、社長をのぞくすべてのステークホルダーの望むところだろう。

 今年度も引き続き大幅な営業赤字が予想されている。優良企業だった大塚家具の現預金は10億円強まで減ってしまって、今期の赤字によりマイナスに転換する。これは、現在は無借金経営の同社が金融機関からの融資に頼る普通の会社に成り下がることにほかならない。大塚家具にとっても、久美子社長にとっても、残された時間はいよいよ少なくなった。

(この項 続く)

2018年8月23日木曜日

大塚家具、久美子社長の辞任拒否で再建計画進まず…辞任が条件の支援元候補と交渉難航(4)

――大塚家具はこれからどうしたらよいのでしょう? ニトリやイケアと競合するということは可能でしょうか?

山田 ニトリ、イケアと戦ってはいけません、勝つ見込みはありません。というのは、ニトリもイケアも自社でつくってそれを販売するという「製造小売」という業態です。一方、大塚家具は流通業で、「仕入れて売る」わけですから、ビジネス構造が違うわけです。

――久美子体制を続けていくとなると?

山田 独自路線で生き残るには、縮小均衡しかないでしょう。店舗数を減らす、あるいは大型店舗の床数を少なくするなどです。というのは、大塚家具で最大の出費項目は店舗の家賃だからです。

経営権に固執する久美子社長、しかし業績を見れば


 大塚家具は現在、複数社と支援を求めて交渉をしていると報じられているが、すでに提携関係があるティーケーピー(TKP)もその一社だ。TKPの主要事業は貸し会議室で、大塚家具の大型店舗の上層階を貸し会議室に転用するなどの協業が行われている。同社は大塚家具の株式の6%ほどをすでに保有していることから、支援元候補として取りざたされている。

 TKPの場合で私が危惧するのは、その規模感だ。同社の年商は200億円台で、大塚家具の今年度予想の半分程度である。小が大を飲むということはないではないが、貸し会議室化によりどれだけ業績が好転するのか、私は大きな確信を持てない。

 父である勝久氏が久美子社長のことを心配していて、「電話一本でもくれれば」としているそうだ。しかし、勝久氏のことを放逐した立場の久美子氏としては、一番お願いしたくないのが勝久氏だろう。それに匠大塚の側でも、企業としての大塚家具を救済するほどの企業ステージにはないはずだ。勝久氏の出番があるとすれば、大塚家具を救済した事業会社なりファンドから指名要請されて「雇われ経営者」として復帰する道筋しかありえないだろう。

(この項 続く)

2018年8月22日水曜日

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(8)

市観光協会は赤字を4億円以上累積させたとして、今年3月に徳島市が破産手続きの開始を徳島地方裁判所に申し立てている。

「その結果が、これです。まず協力を拒み、俺の協力なしにやれるもんならやってみなと挑発し、失敗させ、孤立させて」

 Aさんの指摘は、総踊り中止の決定は、遠藤市長が「既得権益者」の追い落としを図り、その動きに対する反発が総踊りの強硬自主開催のエネルギーとなっていると読むことができる。

「そんなことをすれば死闘になるのはわかっているので、過去の市長や多くの市議会議員たちはうまく手を組んできたのですが」

 実際に連日報道される事態に発展してしまったが、Aさんは「(既得権益者側は)論点を見事にすり替え、市民、マスコミをまんまとのせて、全包囲網で攻勢をかけています」と観察している。

(この項 続く)

大塚家具、久美子社長の辞任拒否で再建計画進まず…辞任が条件の支援元候補と交渉難航(3)

――「業績の悪化で経営の先行きに不透明感が高まっている」として投資家に注意を促したというのはどういう意味ですか?

山田 これはずいぶん重大な指摘でして。わかりやすく言うと、「場合によってはつぶれる恐れがある」ということなので、この会社の株を買おうとしている人は気をつけなさい、ということです。

――そんなに見かけないことですね。

山田 はい。会社側としては好んでこんな注記を付けたいとは思わないわけです。その会社を監査している監査法人が、「その注記を付けないと監査を終了できない」と強行に出た場合のみ付く注記です。

――その会社があとになって倒産した場合、なんの注記もなければ今度は監査法人が責任を問われてしまうからですね。

山田 そのとおりです。いわば、監査法人からその企業の存続についてイエロー・カードが出たわけです。

高級家具という企業イメージを毀損した久美子社長


――久美子社長体制になったのは2015年ですが、その年の業績は良かったわけですが。

山田 その年は、「感謝セール」を大々的にやった効果が出ました。しかし、大塚家具としてはセールなどやってはいけなかった、つまり禁じ手だったのです。

――というと?

山田 高級家具、それを扱う大塚家具自体が高級ブランドだったわけです。高級ブランドが安売りセールをしてはいけない。従来顧客は幻滅してしまいます。2016年からの売上急減は、2015年の反動と見ることができます。

(この項 続く)


2018年8月21日火曜日

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(7)

匿名のメール


 前回記事に対して直接感想をメールなどでもいくつかいただいた。そのなかで、私の切り口と異なる8月16日にいただいたメールが興味深いものだったので、ここで紹介したい。

そのメールの送り主は匿名(以下、「Aさん」とする)で、「徳島市の内実を伝え聞いているものとして、メールをさせていただかずにはおれませんでした」と、始まっていた。

 Aさんは、総踊りの中止について「簡潔に申して、これは『経済』の問題ではなく、汚い『政争』なんです」と主張している。そして、中止を実質的に決定した遠藤彰良市長は2016年3月に初当選しているが、「2年前に就任した今の市長は、長年、徳島市に巣くっていた『既得権益者(とだけ申しておきます)』と、手を組まなかった」(Aさんのメールより)という。

「既得権益者」が誰なのか具体的に明らかにされてはいないが、登場人物から役割を当てはめる「プレイヤーズ・セオリー」からは、阿波踊りを昨年まで主催していた徳島市の観光協会と、今回総踊りを強行自主開催した「阿波おどり振興協会」だと推察される。

 (この項 続く)

大塚家具、久美子社長の辞任拒否で再建計画進まず…辞任が条件の支援元候補と交渉難航(2)

倒産可能性のイエロー・カードが出た


 同番組での解説コメントは以下のとおり。

――3年前の経営権争いの結果、娘の久美子社長が勝利して、父の大塚勝久氏は幹部を引き連れて新会社を設立しました。結果として大塚家具に何をもたらしたでしょうか?

山田 大塚家具にとっては何もいいことはありませんでした。まず、親子喧嘩によるイメージダウンがとても大きなホディブローとして残りました。次に、匠大塚を創業した勝久氏を慕って、大塚家具から多くの幹部や社員が移籍しました。これにより、大塚家具側の経営力、組織力は間違いなくダウンしました。移籍した社員たちに付いていた固定客も、大塚家具から離れて行ったと思われます。

 それと直接的なことは、匠大塚は創業の翌年である2016年に埼玉県春日部市に匠大塚本店をオープンさせます。春日部は大塚家具の創業地で、大塚家具の大型旗艦店があったところです。この店に勝久氏は真っ向から競合をかけたわけです。

――どうなりましたか?

山田 この前、つまり2018年の5月のことですが、大塚家具は春日部店を閉鎖してしまいました。

(この項 続く)

2018年8月20日月曜日

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(6)

今回の混乱により、「阿波踊り」というブランドは毀損してしまった。入場チケット数が約10ポイント減ったという速報をもとに、昨年までの123万人来場者が12.3万人減少してしまったと試算してみよう。宿泊や飲食を含めて一人2万円の消費が徳島市で発生していたとしたら、その減少額は24億6000万円となる。

 破産申告された市観光協会の累積赤字額は4億円超だったが、この赤字は累積であり、単年度のものではない。また阿波踊りの実施以外の事業による赤字、あるいは不明朗出費も取り沙汰されている。

 遠藤市長は4億円超を節約しようとして約25億円を失った、という言い方もできようか。徳島市としては、運営方法の改善に取り組む一方、阿波踊りの目玉である総踊りの実施・強化に力を入れることこそが、観光による地域活性化の戦略にかなうだろう。

(この項 後半へ)

大塚家具、久美子社長の辞任拒否で再建計画進まず…辞任が条件の支援元候補と交渉難航(1)

大塚家具の大塚久美子社長(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
大塚家具が8月14日に2018年12月期上期決算(1-6月期)を発表した。この決算に注記事項として「当社には継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在しております」と明記された。

 この「継続企業の前提に関する注記」を契機として、マスコミは一斉に大塚家具の経営問題を取り上げた。私も8月15日放送のテレビ番組『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)に出演して解説したが、3年連続の赤字決算を受け、大塚久美子社長の経営責任は免れない。

倒産可能性のイエロー・カードが出た


同番組での解説コメントは以下のとおり。

(この項 続く)

2018年8月19日日曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(エピローグ)

この連載記事が注目され、世界的に権威のあるイギリスのエコノミスト誌に山田がインタビューされた。7月末に同誌東京支局長と。

その支局長が"Suits you"という1ページの記事をまとめた(同誌8月18日号)。

私の名前が引用されているところだけを掲げる。エコノミスト誌に名前が出たことは名誉なことだと思っている。

Bespoke services could attract more customers, especially men, who make up only around 30% of active users, reckons Osamu Yamada, an independent retail analyst.

(前述のサービス〔ゾゾスーツのこと〕はより多くの顧客を魅了でき得る。中でも〔ゾゾタウンの〕アクティブ・メンバー〔会員登録していて過去1年間に購買実績があった客〕の30%しか占めていない男性客を魅了するだろう、と小売アナリストの山田修は見ている。)

(この項 終わり)


阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(5)

経費削減を図るために中止すべきは、メインブランドである南内町ではなく、サブブランドのなかでももっともチケット販売率の市役所前である。

ビジネス戦略では「強きを伸ばし、弱いところには注力しない、あるいは撤収する」というのが鉄則だ。遠藤市長の施策は、スポーツにおける下手なコーチのそれを想起させる。

さらに取るべき施策だったのは、残すべきサブブランドである藍場浜と紺屋町の演舞場の強化、メインブランド化だった。具体的に提言すれば、夜10時からスタートする「総踊り」に出場する有名人気連には、7時あるいは8時からこの2演舞場のどちらかの出場を義務づけるというやり方だ。

南内町のチケット販売率が100%だったということは、それ以上の潜在顧客がいたということだ。藍場浜と紺屋町のサブブランド力を強めれば、総踊り会場のチケットを購入できなかった客の移行率が高まるはずだ。

 さらにいえば、メイン会場である南内町のチケットを少し値上げすることにより、メインブランドとしての一層の格付けと増収を図ることができるだろう。

(この項 続く)

2018年8月18日土曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(12)

海外展開をどうする
・Place (場所)


 最後に「Place」。流通経路のことを指すことが多いのだが、ここではあえて「地域」ととらえたい。前澤社長は7月3日、72カ国・地域でゾゾスーツを1年間で10万着無料配布したいと発表した。すばらしい志なのだが、配布した後のビジネスはどう展開するのだろうか。

 それぞれの国・地域の潜在顧客は興味を持ったはいいが、それをどのように購買行動に移すことができるのだろう。サイトの言語の問題もあるし、サイトだけを外国語表示にできたとしても、日本から発送するようなことでは現実的ではないだろう。そして、ファッション・ビジネスとしての規模を追うとしたら、やはり各国での地場展開が必要となるだろう。スタートトゥディは国際化への準備はできているのだろうか。

 また、ファッションは極めて文化的なもの、すなわち各国の特性の強いものだから、地場のファッション・トレンドをわかっている者が事業展開したほうがいい。このように考えると、ゾゾスーツを配る72カ国・地域での同時発進など、無謀だということになる。国や地域に優先順位をつけるか、パートナーを見つけることができるところを優先するか。ファッション・ビジネスであるZOZOTOWNをITビジネスとして見ると、SNS分野でアジアに強いLINEなどの先行企業の進出先を追っていく、という手もあるだろう。

 前澤氏は素晴らしいアントレプレナーだ。近年、プロ野球の買収意欲を示したことや、女優との交際のことなど、ビジネス以外でも話題の経営者だが、日本にもこのようなきらびやかで実績を示すスター経営者がいてもいい。ぜひ素晴らしい「次の一手」を指して、私たちをさらに“うっとり”とさせてほしい。

(この項 終わる予定だったが、もう1回 エピローグが)

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(4)

さて、事前には「総踊りの中止」と告知されていた今年の阿波踊り、肝心の有料入場者数はどう増減したのか。有料演舞場や「選抜阿波おどり」などの7日時点のチケット販売率は昨年同時点を9ポイント下回っているという。

つまり、遠藤市長が目指した、「総踊りの中止により、有名人気連の出場演舞場分散化を図り、総踊り会場以外の会場の売上を増加させる。その結果、売上の増収を図る」という目論見は外れたことになる。


強さを伸ばし、弱いところは撤退、縮小を


 今年の「総踊り中止」の決定が遠藤市長の意向だとすれば、市長のビジネス戦略的判断には疑問を持たざるを得ない。

 まず、昨年までの4演舞場のチケット売上分布に基づく総数増への目論見である。一番人気だった南内町を中止して他の3演舞場に来場者を流す、というのは文字通り机上の空論の愚策だったと指摘できる。

「阿波踊り」という「商品」にとって、メインブランドは「総踊り」ということになる。「総踊り」がメインブランドで、「顧客(=観光客)」はそのブランドを認識して購買行動を起こす。他の3演舞場はメインブランドから派生するサブブランドなので、メインブランドが消失するとサブブランドだけでは購買行動を起こすまでに機能しない、というのが阿波踊りのビジネス構造だ。

(この項 続く)

2018年8月17日金曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(11)

しかしゾゾスーツには画期的なテクノロジーが採用されている。これをさらにマーケティング的に活用しない手はない。オーダー・スーツの発注だけでなく、ZOZOTOWNで扱っているすべての商品に対する、顧客それぞれの綿密な体型計測ツールとして活用する道を探せるのではないか。

 つまり、一度自分の体型をゾゾスーツで計測しておけば、その後はZOZOTOWN内のどんな商品を選んでみても、自分の体型との乖離、たとえば「この商品は右腕部分が3cm余分に長い」といった表示をさせるなどの機能、あるいは複数のブランドや商品のなかから自分の体型に一番近いものを自動的に選別してくれるというような活用方法だ。

 もし700万人もの計測データが登録されることになったら、AI(人工知能)を駆使してZOZOTOWN独自のサイズ規格を提唱することもできよう。そして、それが新しい業界標準となり、恐ろしいまでの顧客囲い込みツールにまで発展する可能性を秘めている。

(この項 続く)

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(3)

4演舞場とも有料チケット制で、17年の阿波踊り最終日(8月15日)の第2部(午後8時30分~10時30分)の演舞場ごとのチケット販売率は、概ね次のようなものだった(市観光課のまとめによる)。

・南内町(総踊り会場):100%
・藍場浜:50%
・紺屋町:50%
・市役所前:30%

 南内町以外の3つの会場でも阿波踊りが披露されるのだが、第2部の午後10時には南内町に阿波おどり振興協会所属の連の約2000人が一堂に会するため、4会場の間で人気に大きな差が出ていたのである。

踊り手は反発、強行実施へ


 総踊りの中止というこの決定に、有名連が加盟する「阿波おどり振興協会」は「踊り手をないがしろにする」と反発し、演舞場外で独自に総踊りをする意向を示した。遠藤市長は「危険だ」などとして4度文書で中止を要請していた。8月13日の記者会見では、実施した場合に「ペナルティーも検討する」と述べるなど、異例の事態となっていた。

 そして有名連の踊り手約1500人が8月13日夜、実行委の決定に反して名物の「総踊り」を披露した。「阻止する」としていた実行委側も静観し、心配された混乱はなかった。

(この項 続く)

2018年8月16日木曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(10)

・Production (製造)


 マーケティングの4Pには入っていない5つ目のPの経営要素を見ておく。

まず、ゾゾスーツによるオーダー・スーツの受注方式は、ファッション業界では画期的だ。ビジネスモデルとしてデル・コンピュータの初期参入と同じである。つまり、ネットでオーダーを取ってから組み立てる(製造する)。個別生産であり、在庫を持つ必要がない。そのため、利益率は大きく伸張する、というモデルだ。そしてこの方式で大量受注を目指しているところに、従来のファッション・ビジネスにはないビジネスモデル・イノベーションがある。

 一方ファーストリティリングの柳井正会長兼社長は、何回かゾゾスーツのことを「あれはおもちゃだ」(2017年12月付日本経済新聞、18年7月付同紙より)としている。そして、「ZOZOTOWNは製造の経験がない」とも指摘していた。

 確かに、スタートトゥディは流通会社であり、自社の製造施設を持っていない。現状、オーダー・スーツの製造はすべて外部委託となっているはずだ。そうすると、受注量が増えていくにつれ、製造委託先を増強していかなければならない。柳井氏が長年かけて育て上げてきたSPA(製造小売)の世界に入っていかなければならない。しかも、すべて個別単品製造となる。これは前澤社長にとっての大きな挑戦となるだろう。

(この項 続く)

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(2)

このような状況で今年、総踊りの実施が取りやめとされたのには理由があった。阿波踊りを昨年まで主催していたのは、徳島市の観光協会だったが、その協会に対して破産手続きを開始するよう、徳島市が今年3月2日に徳島地方裁判所に申し立てたのだ。

観光協会は徳島市の観光振興をめざす公益社団法人で、市の補助金を大きな収入源としてきた、実質的に徳島市の外郭団体である。その市観光協会が、主な事業だった阿波踊りの実施などで累積4億円以上の赤字を出していたので、徳島市が同協会の破産を申し立てたのだ。

 阿波踊り実施のために、今年は市と徳島新聞社などでつくる実行委員会が組成され、主催者となった。この実行委員会は、総踊りが他の3演舞場のチケット販売を低迷させているとして、6月に中止を発表。有名連(踊りの出場グループ)を4演舞場に均等に配置すると決めたのである。この決定には、遠藤市長の意向が大きく働いていた。

(この項 続く)

テレビ朝日『ワイド!スクランブル』に出演

『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)に8月15日(水)、久しぶりに出演。

午前11:15分から15分ほどのコーナーで橋本大二郎司会の隣に座り解説。

前日に大塚家具が今期の前半期(1-6月)の決算発表を行ったのだが、それに「企業存続への注記」が付いたことから、マスコミが一斉に取り上げたもの。

放送終了後、知り合いの方多くからメールをいただく。お盆休みで家でテレビを見ていた方が多かった模様。

コメント内容については追ってのブログで。

2018年8月15日水曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(9)

ゾゾスーツ、大きな可能性


 ゾゾスーツとは、それを着ると自動的に全身採寸できるというスタートトゥディ独自のもので、昨年発表され同社ではプライベート・ブランド、すなわちオーダースーツへの導入ギミックとして無料で配布している。現在までに110万着以上を配布したとしている。同社によれば

「今後1年間の間に600万から1000万着の配布を実現したい」(同社広報部)
とのことだ。

直近の年間購買者数が739万人だったことを考えれば、これはとても意欲的な数字だ。同社としてはこれを実現するために、

「無料なのだが発注を待つだけでなく、ほかの購入商品にどんどん同梱したり、外部とのコラボにより配りまくりたい」(同)

ともしている。

 7月31日発表資料では、ゾゾスーツ大量配布などに11.6億円を使用したとある。だとすれば、この画期的なゾゾスーツの1着当たりのコストはわずか1000円くらいとなる勘定だ。739万人の全ユーザーに送付したとして総制作コストは74億円くらい。18年3月期の年間営業利益が327億円の同社にとっては不可能ではない。アントレプレナーである前澤社長にはその覚悟があるのだろう。

 しかし、問題は700万着を送付したとして、どれだけの顧客がオーダー・スーツを作るのだろうか、ということだ。ビジネス・スーツの受注件数は7月30日現在、のべ2万2459セットだという(7月31日発表資料)。

これらがすべてゾゾスーツの計測から開拓された顧客だとして、配られたゾゾスーツは110万着に上っている。実オーダーに結びついた数字との乖離はとても大きい。

(この項 続く)

阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か(1)

2018年阿波おどり 独自に総踊りを
披露する「阿波おどり振興協会」
(写真:読売新聞/アフロ)


お盆休みの白眉を飾る国民的なイベントといえば、四国・徳島市の阿波踊りであろう。今年の阿波踊りはしかし、そのメインイベントである「総踊り」の実施が取りやめの決定の後、強行実施されるなど混乱した。

 総踊り取りやめの決定は遠藤彰良市長によってなされたものだが、実質的な運営を担ってきた阿波おどり振興協会はこの決定に反発し、8月13日の夜に自主的な実施として総踊りを強行した。

 観光資源の活用という観点からは、その目玉である総踊りを取りやめようとした市長の判断には大きな疑問が残る。昨年、今年の有料観覧チケットの売上を比較すると、それは明らかとなる。


4会場で行われる阿波踊り、目玉は総踊り会場


今年の阿波踊りは8月12日から15日まで開催されている。この真夏の一大イベントを見に来る人の数は2016年、17年ともに123万人と、四国では年間最大の観光イベントとなっている。

(この項 続く)

2018年8月14日火曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(8)

・Product(商品)


 女性ものファッションの品揃え強化では傾注するような施策はないだろう。なぜなら、多くのブランドがZOZOTOWNへ出店を希望してくると予想されるからである。

 昨年から同社が取り組み始めたプライベート・ブランド、男性用ビジネススーツなどの施策は、この分野の対応策として正しい。あるいは、ZOZOTOWNではない、別サイトとしてまったく別のカテゴリーのサービス群であるモール型サイトを立ち上げるのも、経営資源の即使用ということで戦略的には選択肢としてある。

 また、まだ方向を打ち出しただけだが、「広告」は大きな収入源となる可能性がある。すなわち、730万人ユーザーと、ファッションに関心のある消費者が覗きに来るサイトとして、広告媒体価値はとても高い。利益としては大きな柱になりうる。

・Price(値付け)


 出店者の商品の価格にはプラットフォーム・サイトとしては立ち入れない。ZOZOTOWNとして手を付けられるのは出店手数料のほうだ。しかし、これを下げても、あるいは上げても出店希望者の増減には影響は少ないと見る。成長ではなく、利益対策的な分野となる。

・Promotion(販売促進策)


 ZOZOTOWNはサイトとして先行しているだけでなく、画面の見せ方や、コーディネーションによる提案、付け払いの導入など、創意に富む術策に長けている。この分野で引き続き消費者を引きつけるプログラムを展開していくのではないか。ゾゾスーツはそれらの術策のなかでも、特筆されるべきもので大いに注目している。

(この項 続く)

2018年8月13日月曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(7)

さらに最重要顧客層である、「既存アクティブ会員(会員登録から1年以上経過して、過去1年に購買があったユーザー)」の年間購入は右肩上がりできていたが、購入点数、購入金額とも18年3月期第2四半期でピークを迎え、今回の19年3月期第1四半期はピークに比べ購入金額で7.3%減っている。

 購入顧客の伸びと購入金額は共に減り始めている、少なくとも短期的には。しかし、その前の段階があまりに急成長だったので、これが短期的な成長調整なのか、あるいはPLCの成熟期、すなわち横ばい期に入ったのか。

さらなる成長への次なる一手はなんだ


 四半期ベースで2期(6カ月)の減速状態を同社では「巡航運転速度」と表現していた。この状況を脱してさらなる成長の高みに上っていくためには、同社にはどのような戦略があり得るのだろうか。

 マーケティングの4Pで考えてみると方向性が見えてくるかもしれない。

(この項 続く)

2018年8月12日日曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(6)

さらにそう思わせるいくつかの指標がある。

 ひとつは「年間購入者数」の推移だ。18年6月末現在でのそれは739万人にも達しているが、この後どこまで伸び続けるのか。19年3月期第1四半期末のその人数は、1年前に比べると10%の伸びだ。今の時代に二桁成長は大したものとみることもできるが、同数値の過去の成長は年率3割、4割、5割という印象が強い。「700万人も顧客がいる」とも表現できるが、「顧客が700万にもなってしまった」とみることもできる。

 739万人のうち女性の購入者は500万人強いる。ZOZOTOWNのロイヤル・カスタマー(主要顧客)である20~30代の女性顧客数を400万人ほどと推定しよう。同世代の女性の人口総数は1345.6万人である(2017年12月時点、総務省統計)。ZOZOTOWNはこのセグメントの30%ほどを顧客化したと見ることができるだろう。

(この項 続く)

2018年8月10日金曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(5)

 ゾゾタウンを運営するスタートトゥディ社のさらなる成長余地はどこにあるのか、「マーケティングの4P」セオリーから分析してみたい。


成熟期に入ったのか、短期的調整なのか



さて、ファッションECサイトとしてガリバーとなったZOZOTOWNをプロダクト・ライフサイクル(PLC)曲線で考えてみたい。
 前澤友作社長がスタートトゥデイを法人化したのが1998年。2007年に東証マザースに上場するまでを「導入期」だとすると、それ以降が「成長期」に入ったと見ることができる。問題は、成長が停滞してくる、あるいは減速が顕著となる「成熟期」にZOZOTOWNがいつ入るのか、あるいはすでに入ったのかということだろう。ここではPLCの対象として個々の商品ではなく、大きなサービス単位としてのZOZOTOWNを眺めてみたい。

 主要KPIである「商品取扱高」をみると、ZOZOTOWNの成長が加速していたのは16年3月期から18年3月のことだったように見える。この3期の年間成長率はそれぞれ24%、33%、28%と顕著なものだった。それが18年3月期第4四半期で対前年同期比で15%、19年3月期第1四半期では18%となった。ZOZOTOWNという従来型分野での成長は鈍化し始めたのかもしれない。



(この項 続く)

2018年8月7日火曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(4)

ZOZOTOWNに次ぐモール型ファッション専門ECサイトを見渡しても、規模的には他に大きく差をつけている。「ショップリスト」のブランド数は約500、「ファッションウォーカー」は約300、「RUNWAYchanmel」は約20弱にとどまる。また金額的には「マルイウェブチャネル」がZOZOTOWNに次ぐ2位だが、その取扱高は230億円(18年3月期)とZOZOTOWNの10分の1にも及ばない。

強みは絶対の品揃えと自社在庫


 ある20代の女性ユーザーはいう。

「ZOZOTOWNを見に行く大きな理由は、とにかく何でも有ることかな」
「ほかのサイトだと、ブランドごとにカートが変わることがあり煩わしい」

「カートが変わる」とは、そのたびに購入決済をしなければならないことを意味する。そのため商品が各アパレル・メーカーなどからバラバラに郵送されてくる。一方、ZOZOTOWNは自社で巨大な物流倉庫を有し、そこに各出店社は在庫を預けるため、「ブランドの自社サイト上で在庫がないものでも、ゾゾに行くと大抵あるのよね」(前述女性ユーザー)という状況になっているのだ。そして、出店社側としては「ゾゾに在庫を置きさえすれば、飛ぶように売れる」という状況にもなり得る。

 ファッションのネット通販にはモール型だけでなく、アパレル各社が自社で運営するサイトもある。この分野で国内最高の売上高を誇るのは「ユニクロ公式オンラインストア」だが、その売上高は420億円(2016年)であり、ユニクロ全体でのEC販売比率は5.3%にすぎない。2位以下はアダストリア、TSIホールディングス、千趣会、ベイクルーズが並ぶが、いずれも200億円台でZOZOTOWNの背中ははるかに遠い(以上のデータは17年10月5日付日本ネット経済新聞より)。

次回以降は、ZOZOTOWNの成長余力をマーケティングの4Pの領域で分析してみる。

(この項 続く)

2018年8月6日月曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(3)

スタートトゥデイの19年3月期第1四半期の商品取扱高は704億円強だったが、そのうち97%に当たる683億円もがZOZOTOWN事業で占められている。

その他の事業としてはプライベート・ブランド事業(自社開発によるファッション製品)やBtoB事業、広告事業などが報告されているが、それらを合わせても全体の3%に満たない規模だ。今のところ同社はZOZOTOWN運営がメインの会社であり、社名もこの10月1日に「ZOZO」に変更する。

 前述のとおりネット通販のビジネスモデルとしてZOZOTOWNは楽天と同様に多数のブランドが出店するプラットフォームであり、「モール型EC」ということになる。出店会社は1139店、それらが出店しているブランド数は6820にも及んでいる。

そしてZOZOTOWNの強みは、これら多数のブランドが出店する無数ともいえる商品を、ブランド横断的、出店社横断的に選択できることだ。モール型ファッション専門ECとして先行した強みもあり、そのブランド集約力は圧倒的なものになった。実店舗型衣料販売としてファーストリテイリングに次ぐしまむらは、ネット販売を開始するにあたり、自社サイトではなく18年7月からZOZOTOWNに出店したほどである。

(この項 続く)

2018年8月5日日曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(2)

同社の主要事業であるZOZOTOWNは、楽天と同じ出店モール型のネット通販サイトなので、同サイトで売り上げた出店社の売上合計が同社の商品取扱高となる。同社は商品取扱高から10%以上とされる手数料を徴収し、その手数料収入が同社の売上高となる。

 実は今四半期の直前(18年3月期第4四半期)は商品取扱高が前年同期比14.9%増となっており、一般的には“二桁成長”ともてはやされるところだが、16年3月期は33%、17年3月期は28%とその額を伸ばしてきた同社としては、一服感を免れない。前四半期の業績について同社は「巡航運転の時期」という説明をしていたが、今四半期は利益額ベースでのマイナス成長となった。本当に短期的な「巡航運転、そして巡航成長」なのか、「成長の踊り場」なのか、それとも「成長のピーク」がやってきているのだろうか。

ZOZOTOWNはファッションECとしてガリバー


 ZOZOTOWNでの年間購入者は739万人(7月31日同社発表資料、以下同じ)にも達しているが、男女比をみると女性が68%と圧倒的に多い。アクティブ会員(過去1年に購入した登録がある会員)の平均年齢は33歳だが、20~30代でZOZOTOWNを知らない人は少ない。

(この項 続く)

2018年8月4日土曜日

ゾゾタウン運営会社、利益大幅減で株価急落…成長のピーク到来か(1)

ZOZOTOWN HPより





















ファッションECサイトの最大手「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を展開するスタートトゥデイが7月31日、2019年3月期第1四半期(4-6月)決算発表を行い、株式市場では株価の急落という評価を受けた。同日の終値4485円に対して、翌8月1日の始値は4150円と実に7.5%もの株価下落から始まってしまった。

 時代を席巻してきたZOZOTOWNが成長の踊り場を迎えているのか、さらなる成長の一手をどこに求めようとしているのか。今回の発表や直近の前澤友作社長の発言から分析してみよう。

営業利益が大幅減

市場が嫌気を示した最大の原因は、第1四半期の営業利益(連結ベース、以下同様)58億円強が、前年同期比で26.4%減というマイナス成長で終わったことだろう。この営業利益額は「商品取扱高」704億円に対して8.3%という水準で、企業としては悪くない数字だが、前年、前々年と12%台で走ってきた同社だけに失望感が広がった。

(この項 続く)