2018年12月4日火曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(8)

松本氏がカルビーを退任すると報道されたその夜に、瀬戸氏は自ら電話を入れたと伝えられる。当初、松本氏をCOOとして迎えたのは、85社を見てほしい、との希望だったのだろう。しかし、いかにプロ経営者だとしても、それを自ら執行していくのは不可能だ。プロ経営者ができるのは、85社の経営を監督、指導する「仕組みをつくる」ことだ。

 着任して早々に10社以上の子会社の社員たちと交流会を持ったという松本氏は、すぐにそのことに気がついたのだろう。直接統治という職制ではない、「構造改革担当」の代表取締役という肩書きに収まった。

 ついでに言えば、松本氏と経営陣との意見の相違があったと報道された。松本氏は「私と瀬戸さんが対立したことは一切ない」としているが、瀬戸社長を取り巻く既存の幹部、役員とは相克があったはずだ。今までの路線にストップをかけられる、つまり自分たちのやってきたことを否定されるわけだから、対立がないはずはない。しかし、そんな動きは外部から着任するプロ経営者にとっては当たり前の「反対勢力」なわけだ。

 瀬戸社長の松本氏への信任は厚いように見える。松本氏は外部での活動もあり、フルタイムでRIZAPの経営に没入しているわけでもないらしい。そういうことなら、いっそう現場を預かるCOOより現在の肩書きのほうが寄与しやすいのだろう。

 松本氏や私のような世代、経営者としての先輩から見ると、瀬戸氏は好感あふれる若手実業家だ。決算発表会で自らの責任を語るとき、真摯な表情を見せたし、その後の社内説明会では涙を流したという。人間としての率直さ、感受性をベースとして人を巻き込んできたのが瀬戸氏の経営技法、能力の一つと見た。

 松本氏の助言により、RIZAPは新しいM&Aを当面凍結するという。「自己投資産業グローバルNo.1へ」という同社のグループ・ビジョンはわかりやすく、すばらしい方向付けだ。願わくば、今回の方針転換により暫時の雌伏の時を経て、近い将来、快進撃を再開してほしいものだ。

(この項 終わり)

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