2017年1月31日火曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(6)

経営体力」をどう付ける?



『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)で著名なクレイトン・クリステンセン博士は、イノベーティブ(革新的)な考え方をできる経営者の特質は、という点でも興味深い研究を発表している(『イノベーションのDNA』<同>)。

 クリステンセンは約80名のイノベータ(過去にイノベーションを起こした実績のある経営者)と400名の非イノベータの企業幹部を調査して、前者をかたちづくった共通的な資質を抽出した。

1.関連づける力
2.質問力
3.観察力
4.ネットワーク力
5.実験力


 これらの要素のうち、最後の「5.実験力」だけはオーナー経営者でなければ簡単に発動させることができない経営力の範疇だろう。しかし、1-4の要素は、経営者や幹部がこれから「経営体力」を高めようとするなら有用な指針となるものだ。
 クリステンセンの4指針は、順番を代えて次のように読み下すことができる。

(この項 続く)

2017年1月30日月曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(5)

それぞれのステップで「戦略カード」を使って「一人ブレーンストーミング」をしながら、できるだけ多くの要素を言語化するのが「カード出し」。それが終わったら、優先度による「カード選び」をする。そして次のステップに進んでいく。5つのステップのなかで、「3.解決策の策定」がいわゆる「アクション・プラン」となるわけだ。ここのステップで重要となるのが「思いつき」だ。

 戦略策定指導で私がいつも強調しているのが、「今まで当社で採用していなかったやり方、できれば突飛に思われるようなカードを出してください」ということだ。考えてみれば当たり前である。今までの、そして現在のやり方でうまくいかないのである。れで新しく3年戦略を立てよう、ということなので、何か新しい施策を検討しなければならない。ある方から、次のような質問が上がった。

「山田先生が自社事例として示してくれたような、うまい解決策が思いつけるとは思いません」

 それはそうかもしれない。でも私があなたの代わりにあなたの戦略を立てるのではない。あなたの戦略とはあなたの「経営体力」の範囲内でしか立ち上がってこないのだ。20名にテニスを教えても、強い子、弱い子が出るのと同じことだ。

(この項 続く)

2017年1月29日日曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(4)


「皆さんが求められているのは、ラリーをできるレベルではないでしょう」

 質問者を私が鼓舞した。

「皆さんは経営幹部であり、近い将来は経営者たるべき方々です。学生テニスのプレイヤーでいえば、体育会に所属する競技者として第一線で戦いに参加しています。期待されていることは、そしてご自身が目指すべきことは大会に参戦して勝ち上がる強さのはずです。それには、スキルとそれを駆使できる体力が必要なのです」

アクションプランを思いつける「経営体力」とは


 全社戦略や部門戦略を立てるにあたり、「経営体力」が大きく影響するのはどんな部分なのか。
「戦略カード」を駆使して展開する「シナリオ・ライティング技法」には次の5つのステップがある。

1.目標の設定
2.課題の発見
3.解決策の策定
4.派生問題と対処
5.発表と共有

 

(この項 続く)

2017年1月28日土曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(3)

「戦略の立て方を教えてもらっているわけですが、だからといって良い戦略が立てられるわけではないでしょう?」

 これはまったくその通りで、「良い質問です」と返した。「戦略の立て方」とは技法、つまりスキルなので学び習得することができるのだが、それを十全に活用するには使いこなす力、「経営体力」が必要なのだ。


体育会で大会を戦うレベルを目指せ


 戦略の立て方を教えるとは、テニスでいうとストロークの打ち方を教えるのと同じだと思ってもらえればいい。「ボールを見て、ラケットを後ろに引いて、ヒッティングポイントで打って、フォロースルーする」という類の指導である。技術、技法だからそんな説明やデモンストレーションで伝授できる。

しかし、それを実戦で活用するとなると、止まっているボールを打つわけではない。そして相手のあることだ。速く、強いボールを打たなければ相手を負かすことはできない。遠くに打たれたボールを拾って打つには、素早い判断力や速く走れる瞬発力が必要だ。ストロークを打つという技法を実戦で活用するには、それを駆使する、できる体力が必要なのだ。

(この項 続く)

2017年1月27日金曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(2)

「いい戦略」をどう立てる?



先日とある大企業で執行役員を対象とした幹部研修に呼んでいただいた。1日だけで戦略策定の技法を駆け足で学んでもらう。

 もちろん、1日だけでは本格的な戦略を立ててもらうわけにはいかない。しかし、その方法論を学んでもらうために、参加者皆さんが率いている部門の3年戦略を駆け足で立ててもらう。リーダーズブートキャンプなどで本格的な3年戦略を立ててもらうには、数カ月を使って詳細に組み立ててもらうのだが、今回は短時間でその技法のエッセンスを学ぶという研修だ。

 私が指導しているのは「課題解決型の戦略策定法」といい、策定ツールとして「戦略カードとシナリオ・ライティング」という技法を駆使する。このメソッドの構成を1日で“触り”として体験してもらい、技法として習得してもらうというのが今回の研修だった。

 研修の途中で質問をもらった。


(この項 続く)

2017年1月26日木曜日

御社がダメな原因は、もう通用しない「これまでのやり方」…従来と違う戦略の立て方(1)

「Thinkstock」より
私はいろいろなところで「経営戦略」を教えている。主宰している「リーダーズブートキャンプ」を嚆矢として、各地の公開セミナーはもちろん、企業での経営指導に駆け回っているわけだが、私の「戦略指導」とは、「戦略の立て方を教える、参加者に自分で戦略を立ててもらう」というユニークなものだ。

 策定の指導なので、私が経営戦略をつくるのではなく、「その会社の経営者、あるいは幹部の方たちに経営戦略を立ててもらう」というものだ。皆さんがご自身の経営戦略を立てるお手伝いをする。だから業界、業種を問わない。全社戦略だったり、部門別戦略だったり、なんでもござれだ。3年戦略が標準なので、中期経営計画を立てようとしている会社にも好適となっている。

「いい戦略」をどう立てる?


(この項 続く)

2017年1月25日水曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(8)

所得水準の平均からいえば高くはないはずの市場で、うまく滑り出せた。

「それから面白いのは、SNSがタイでは日本より進んでいます。その結果、口コミのマーケティング効果が高く、THREEの商品特性にぴったり合致したのです」

アジアから世界へ


「アジアのスピードはものすごいものがあります」
 タイでは17年にチェンマイにショップが出るという。

「台湾に代理店を決めたら、いきなり15年に5店舗出してくれました。マレーシアでは16年4月に1号店が出たと思ったら、今では3店舗を運営してくれています。香港では17年の9月にコーズウェイベイのSOGOデパートに出ます」

 シンガポールには17年度に出店予定で、18年にはオーチャード通りに3店体制にするという。

「海外では代理店に任せます」
 ACROとして直接進出はまだ行っていない、という。また現地製造ではなく、製品輸出モデルだ。

「国産材料、日本文化、そういうものとして受け入れてもらっています」
 ただし、中国市場だけは日本からの製品輸出モデルとは制度的に合わないところがあり、見送っているという。

 66歳となった創業経営者だが、創業暦は10年にも満たない。THREEの世界展開をどこまで突き詰めていけるのだろうか。大きな可能性が世界に広がっている構造だ。

(この項 終わり)

2017年1月24日火曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(7)

きっかけはあちらから


 とはいえ、ACROの海外進出の歴史は始まったばかりだ。

「12年の春に、トルコのイスタンブールで化粧品に関する世界コンファレンスがあったんですね。そこで私がTHREEを紹介する機会がありました」

 THREE製品に共通なシンプルなガラス容器(他社のブランドは樹脂容器)や、国産の植物由来の精油からくる癒される香りなどが高く評価されたという。そのコンファレンスの後、進出を要請する引き合いが世界中から殺到したという。

「でも結局、縁と熱心さが決め手だったんでしょうか」

 タイの現代理店が一番熱心で、来日もしてくれたこともあり、石橋社長のバンコク視察を強く要請した、というのである。

「今ではバンコクだけで17のショップを展開してくれています。思いがけなかったことは、タイでの客単価が高い、ということなんですね。なんと日本での客単価の倍の売り上げがあります。というのは、多くのショップがデパートの中にあるのですが、タイではデパートに来るのは富裕層だけというか、収入により買い物をするショップが分かれているのです」

(この項 続く)

2017年1月23日月曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(6)

創業7年目のB to C企業としては海外比率が大きい。

「創業した当初から海外展開を考えていました。というより、ニューヨークやロンドンで通用する日本の化粧品ブランドにしよう、と思っていたのです」

 石橋社長は世界を目指してきた。

「日本の製品で世界一のものは多い。車がそうだし、電気製品の多くもそうだった。また世界中を歩いてみて、東京が文化的に世界最大の都市だと思います」

 しかし、ファッション関係の業界で世界を目指しているのは、石橋社長に言わせるとファーストリテイリングぐらいだという。
「和食ブームに見られるように、日本文化が世界を席巻する時代がやってくると思うんですね」

(この項 続く)

2017年1月22日日曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(5)

設立以来THREEは急成長し、ポーラ・オルビスグループのなかでブランド・ポートフォリオの拡充と成長に貢献してきた。公開会社ではないので財務内容は公表されていないが、売上高は毎年2ケタ増という勢いで伸び、14年はファンデーションの大ヒットが寄与して前期比5割増、15年も6割増を記録したと報じられている。

「おかげさまで既存店の売り上げもここ2年間対前年で5割増しです」

 快進撃を続けてきているACROのビジネス構成でユニークなのは、店舗展開の構成である。当初からデパートでの対面販売ブランドとして参入した。


「最初の店は伊勢丹でした。現在では、国内は39店、海外は28店、全部がアジアです」


(この項 続く)

2017年1月21日土曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(4)

女性誌「VOCE(ヴォーチェ)」(講談社)が毎年発表している「VOCEベストコスメ」賞は、消費者に大きな影響力を持つ賞である。13年の同賞のスキンケア編でTHREEの製品が6点も入賞した。実は11年にも先行して同賞スキンケア編で3点が同年入賞(上期と下期に顕彰がある)していて話題を呼んでいた。

「今年購入されたお客様の半分以上が20代でした」
 若い女性にも手が届く上級化粧品として認知されている。

最初から海外展開を目指していた


 石橋社長は創業社長だがオーナー社長ではない。ACROは化粧品大手、ポーラ・オルビスホールディングスの子会社として設立されたのだ。石橋社長はそれまでカネボウ化粧品に勤務していて、「RMK」(アール・エム・ケー)、「SUQQU」(スック)などのブランドを立ち上げていた。ところがカネボウの化粧品事業部が06年に花王に売却されたことを契機に、転進を考え始めた。

「ポーラ・オルビスの鈴木郷史社長が、『資金は出すが口は出さない、好きなようにブランドを立ち上げてほしい』と言ってくださった」

 意気に感じた、ということだったのだろう。

(この項 続く)

2017年1月20日金曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(3)

その結果、国産素材の植物成分を取り入れたことが、THREE製品のひとつの特徴として打ち出された。今冬でいえば、柚子の精油を初めて化粧品に使った「THREE アロマハンドクリームY」などのシリーズだ。

「製品化する際に社内で徹底させたのは『半歩先を行け』ということです」

 差別化を強調しすぎると、現今にある消費者の認識から乖離してしまい受け入れられない、という社長の判断だ。


09年に船出した同社だったが、その前年にリーマンショックがあったことや、あえてユニークなポジショニングで市場参入したことから、当初の売れ行きは今ひとつだった。11年には東日本大震災による市況の落ち込みもあった。

 しかし、その天然由来成分を従来の化学素材とうまく融合したスキンケア製品が次第に支持を受けるようになった。愛用するようになった女優やタレントなどが自らのSNSで発信、推奨したりして知名度が上がってきたのである。著名な女性芸能人の多くが支持してくれた。

(この項 続く)

2017年1月19日木曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(2)

そんな群雄割拠の業界で、ACROは09年創業の新興ともいえる化粧品メーカーだ。しかし同社が展開しているブランド「THREE」の知名度は近年突出してきた。

THREEの特徴は、植物由来を主として国産原料にこだわっている点で、ナチュラル志向の女性に人気がある化粧品ブランドである。石橋社長がそのストーリーを語ってくれた。

「『THREE』というのは、数字の3です。プラスとマイナス、陰と陽のように2つだけの極に3つ目の概念を入れよう、と思い名づけました。形を考えても三角形は安定していますし、3はラッキーナンバーでもあります」(石橋氏、以下同)

「『水と油』が主体の化粧品素材の油に『茶のオイル:ティーシールドオイル』を採用しました。また、ブランドを発進するに当たって先行他社ブランドとは競合しないことを目指しました。『競合と同じ土俵に上がるな』ということです」

(この項 続く)

2017年1月18日水曜日

多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走(1)

株式会社ACRO・石橋寧社長
私が主宰している経営戦略策定道場「リーダーズブートキャンプ」の勉強会に、株式会社ACRO(アクロ)石橋寧(やすし)社長においでいただき、お話をうかがった。ACRO化粧品メーカーで、ブランドの「THREE(スリー)」がよく知られている。今回は石橋社長が展開してきた海外進出戦略に焦点をあてて報告する。

天然素材の活用で女性からの支持


日本の化粧品業界の規模は、出荷額で1兆5000億円強(2015年、経済産業省の生産動態統計)である。また、化粧品製造販売業が3,624社あるといわれる(15年3月末現在、厚生労働省発表)。化粧品の場合、製造販売する会社は複数のブランドを有することが多いので、化粧品ブランドの総数は数千以上ということになる。

(この項 続く)

2017年1月10日火曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(9)

「資本家残念大賞」を出光昭介氏に


 番外だが、「16年 資本家残念大賞」を出光昭介氏に贈りたい。出光興産と昭和シェル石油の合併に異を唱え、面談さえ頑なに拒んでいる様子は、いかなるものか。かつて自らが率いた出光は「従業員一人当たり営業利益が少ない会社」(16年7月12日付東洋経済オンライン記事より)でワースト99位の213万円損、昭和シェルは同じく93位、256万円も損を出している。

 みんな苦しんでいるのだ。出光の伝統、「和らぎの精神」はどこへいったのか。

(この項 終わり)

2017年1月9日月曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(8)

ところが大塚家具の筆頭株主はききょう企画で(129万株保有)、ききょう企画の代表取締役は大塚社長だ。わかりやすくいえば、大塚社長側に約1億320万円の配当が転がり込むことになる。赤字会社の転がし方としては「見事」ということになる。

 さらに大塚社長の巧みなことは、この赤字会社の配当原資をどう用意しようか、というところで妙手を打とうとしている。埼玉県春日部市で同社が所有する約5000坪の空き地を不動産投資ファンドに年内中に売却すると報じられた(12月12日付ダイヤモンド・オンライン記事『大塚家具が業績悪化で窮地、久美子体制2つの過ち』)。同記事によると、売却予定額は約20億円超で、10~12億円の売却益が得られる予定だという。

 この土地は、久美子社長が15年の株主総会で追放した大塚勝久前会長が購入決定していたものだ。父親というのはありがたいもので、そこにいなくても足の脛をかじらせてくれるものだ。

(この項 続く)

2017年1月8日日曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(7)

16年1-9月の売上高は前年同期比18%減だったが、10月は対前年同月比8.4%減で踏みとどまったかに見えた。ところが、11月の全店売上高はなんと同41.5%減となってしまったのである。

 ちなみに16年12月期は最終赤字43億5,800万円という大幅減益が予想されている(前期は3億6000万円の黒字)。しかも、これらの当期末予想は8月に下方修正発表されたものであり、さらなる悪化での着地となると市場への信頼を揺るがせかねない。16年12月期の年商予測の下割れはなんとしても避けたい、そんな大塚久美子社長の叱咤激励が聞こえてくるような12月チラシなのだ。

 大塚社長はしかし、「残念大賞」を受賞しなかった。一つは、今期がどれだけ赤字でも株主配当は一株当たり80円を公約していて、それは現在の株価に対して約6.3%の利回りに該当する。すべての上場株式の中で一番の配当利回りなのである。

(この項 続く)

2017年1月7日土曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(6)

大塚家具:大塚久美子社長



 大塚家具が積極的な営業攻勢をかけている。首都圏では16年12月に入り、同社の折込チラシが多くの家庭に配布され、話題となった。A3サイズ相当で見開き計4ページのそのチラシの冒頭には「大クリアランスセール」「50%オフ」の大文字が踊る。もっとも、それぞれの前には「店頭掲示品」と「最大」という文字が小さくかぶってはいるけれど。

 チラシを見開くと、中の2ページには家具の写真とともに「●%オフ」という表示が。数字は50%オフがもっとも多く、下は25%オフが少数ある。中には「10000円均一」という商品も紹介されている。印象は町のスーパーの叩き売りと同じだ。

 12月が会計年度末となる大塚家具が当月の売上に追い込みを掛けているのには、もちろん事情がある。15年12月期の同社の年商は580億円だったが、16年12月期の予想では483億2700円と前年から100億円も減る。これは割合とすると16.7%減であるが、この減衰率の保持さえ危惧されているのだ。

(この項 続く)

2017年1月6日金曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(5)

14年7月に中国で製造されていたチキンナゲットに賞味期限切れ食材が使われていた事件、15年1月に発覚した異物混入、両事件に対するカサノバ社長の対応は消費者の反感を買い、日本マクドナルドにとって傷口を広げるような格好となった。さらに、そんなカサノバ社長が1億円以上の年俸を受けていることも、業績結果との対照から批判されるところだろう。

 カサノバ社長が「残念大賞」の選に漏れたのは、16年に入って日本マクドナルドの業績が底を打った兆しがあるからだ。
 45周年キャンペーンとして「チーズカツバーガー」や「かるびマック」が登場した11月は、既存店の売上高が前年同月比で11.3%増、客数は同8.0%増となり、16年は年初月から既存店売上高が、前年同月比で2ケタの伸びを維持している。ポケモンGOとのコラボでも話題を呼んだ。

 17年にカサノバ社長が当賞の選考対象から遠く離れることを期待したい。何しろ、16年7月12日付東洋経済オンライン記事によれば、同社は従業員一人当たりの営業損失が968万円、つまり年収よりも大きい損失を全員がたたき出していて、その規模は上場会社中輝く37位という効率の悪さを造り上げてきた。改善余地はとても大きい。

(この項 続く)

2017年1月5日木曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(4)

日本マクドナルドホールディングス:サラ・カサノバ社長



 日本マクドナルドホールディングス(HD)のサラ・カサノバ社長は、13年8月に外人としては初めて日本マクドナルド社長兼CEOに就任。14年3月には日本マクドナルドHD社長兼CEOに就任している。

 日本におけるマクドナルドのビジネスにおける直接の最高責任者として現職にあり続けたので、「残念大賞」の選考対象に残った有力候補だった。

 実際カサノバ社長の指揮の下、同社の業績の墜落ぶりは際立っていた。年商でいえば前任者時代の最終決算となった12年12月期の2947億円から15年1894億円へと35%減、営業利益は同248億円の黒字から同234億円の赤字と、見事にプラスとマイナスを入れ替えてしまった。年商額も営業利益額もこの4年間回復することのない一途な転落だった。

こんな業績の経営者が外資で留任を認められるなんて、私が現役の時代には考えられなかったことだ。これはマクドナルド米国本社でのCEO交代、日本法人の売却検討と実際に打診など、本社側が迷走状態であったこと以外に理由は考えられない。

(この項 続く)

2017年1月4日水曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(3)

これにより「特設注意市場銘柄」としての東芝株式への東証審査は厳しさを増すことは確実で、審査が期限の17年3月15日を過ぎてしまうと、同社株は自動的に「監理銘柄」に区分される。そうなれば、東証からの上場廃止は十分に起こりえる、同社にとって危機的な状況となる。

これだけの経済事案がなぜ「残念大賞」に選考されなかったかというと、責任者とされる歴代3社長が、16年中に在任でなかったからだ。

・15代 西田厚聰氏(05年6月~09年6月)
・16代 佐々木則夫氏(09年6月~13年6月)
・17代 田中久雄氏(13年6月~15年7月)


日本マクドナルドホールディングス:サラ・カサノバ社長


(この項 続く)

2017年1月3日火曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(2)

東芝、経済事件としてのインパクトは最大


電機業界にあって日本を代表する名門企業だった東芝の名声は地に墜ちた。いうまでも無く15年9月に公表した、歴代3社長時代に行われた累計2248億円の利益水増しと、16年3月に公表した、10~14年度に行われたとされる累計58億円の追加利益水増し事件によってである。

 インパクトからいえば、東芝の不正会計問題は15年から16年にかけて最大級の経済事件だった。社会に対して大きな衝撃を与えただけでなく、本事件により東芝自体も深く傷ついた。一連の不祥事により、15年9月に東京証券取引所によって「特設注意市場銘柄」に指定されてしまい、企業としての信用が大きく損なわれた。

 さらに16年11月に至り、あろうことか子会社の東芝EIコントロールシステムが16年9月末まで架空売り上げを計上し続け、水増しの累計額は5億2000万円に拡大していたと報告された。

(この項 続く)

2017年1月2日月曜日

「2016年 経営者残念大賞」着外 東芝、マグドナルド、大塚家具、出光昭介氏(1)

2016年、業績を大きく落とした、成長機会を逃した、企業価値を大きく毀損した、危機的状況に際して拱手傍観してしまい窮地に陥る状況としてしまった、経営者としての倫理にもとった、社会に大きな損害あるいはリスクや不安を与え強く指弾された――、などの残念な結果を残した経営者を顕彰する、「2016年経営者残念大賞」。

 本連載では過去3回にわたり、第3位にシャープの高橋興三前社長、第2位に三菱自動車工業の益子修社長兼CEO(最高経営責任者)、輝くグランプリに電通の石井直社長を発表した。

 今回は上位3氏ほどまでは顕著な経営残念度ではなかったが、16年にその活動や実績が報道され話題となった経営者諸氏の何人かを取り上げ、その事跡を振り返ってみたい。

東芝、経済事件としてのインパクトは最大


(この項 続く)

2017年1月1日日曜日

謹賀新年

新年 明けましておめでとうございます。

うららかな日となり、まことにめでたく心安らぐ元旦ですね。
現役の経営者を離れて7年目となります。今年も昨年と同じ途を歩いて行きたいと思っています。

一つは、後輩の経営者を助け、育て、その繁栄に寄与すること。ブートキャンプ活動を主として、戦略策定の技法を伝授したり、直接助言したり、ネットワークを強化してあげたり。
恩師だった故水谷栄二先生(http://www.hmv.co.jp/artist_%E6%B0%B4%E8%B0%B7%E6%A0%84%E4%BA%8C_200000000434153/biography/media_all/)がなさっていたことを辿って行きたい。

二つは、ビジネス評論、絞って言えば経営者の評価、出処進退などについて私見を述べて行きたい。組織に一つしかないポジションにいるCEOたちの苦悩や矜持などは、そこを体験してきた私のような物書きでなければ説明しにくいところがある。卑見を述べて社会の忖度に付して行きたい。

Quallity of Lifeの見地からはのんびりと健康で、今のペースで進んでいければと願っている。

皆さんの繁栄を祈念するとともに、本年もよろしくのご助力をお願いする。

2017年元旦 山田修