2015年4月15日水曜日

『人と企業はどこで間違えるのか?』ジョン・ブルックス 書評221(2)

なぜこんな本当にClassicな書が訳出出版されたかというと、それは単純におもしろいからだ。

ジョン・ブルックスは雑誌『ニューヨーカー』で金融経済分野専門の記者として活躍したが、小説も何冊か発表している。つまり作家としての顔もあり、本書に収められた10の企業事例の描出においてその才能を発揮している。つまり、ストーリー・テリングに優れている。

各事例では、実名と当時の肩書きで関連者が登場し、それぞれのケースを臨場感に溢れて展開させている。それも社長クラスの経営者だけでなく、実務を担当したマネジャークラスまで登場させてリアル感(実際リアルなのだが)を出している。

1963年に起こったハウプト証券の破綻と、その扱いによっては未曾有の金融危機が起こった危機(第4章「もう一つの大事件」)など、「エー、そんなことがあったの」と、驚いた。事態が進行する当日にケネディ大統領の暗殺が起こり、アメリカ中が騒然となる中、債権銀行の同意を取り付けにニューヨーク証券取引所の主人公がロンドンに乗り込む所など、息を呑ませる。

それぞれのケースは半世紀も前のことなので、読者が本書から直接的なビジネス・ヒントを得られるかは保証しない。しかし、私たち日本のビジネス・パーソンが知りもしなかったアメリカでのビジネス上の大事件が実によく取材され、そして-本書の手柄だがー再構成されている。肩を張らずに読める「知られざる経済大事件集」だ。

(この項 終わり)

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