2015年2月10日火曜日

介護のための退職者、年間10万人(2)

それから、Iさんは週末になると新潟の実家に戻り、母親の世話をする日々を続けた。父親を亡くしてからの母親は、喪失感からか一気に老いが進んだ感があり、物忘れも激しくなっていったという。
 Iさんは「体力的にはまだなんとかなっているのですが、母を1人にさせておくのがすごく心配になりました」と退職の理由を語る。現在、横浜で妻と2人暮らしをしており、Iさんは横浜での同居を希望しているものの、老齢の母親は都会暮らしを不安に思って拒否しているようだ。一方、Iさんの妻は60歳を過ぎていきなり姑を抱え込むことに難色を示している。

「結局、自分が実家に戻って母を介護することにしました」。Iさんは決断し、昨年末に会社を退職した。社長から一転して、介護のための単身赴任者となったのである。

 
 また、大手金融機関で年金問題の専門家として名を馳せたEさんも、老親の介護のために退職せざるを得なかった。Eさんは退職後、社会保険労務士として自宅兼事務所で開業している。
 IさんやEさんのように、働き盛りでなおかつ経営者や専門家であっても、親の介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護によるキャリア中断」が社会問題となっている。会社の中で最も責任が重く重要なポジションを担っているのは、多くが50代から60代だ。しかし、この世代は親が80代から90代となっており、最も介護の手が必要な状況にある。


(この項 続く)

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