2014年5月13日火曜日

孫正義と柳井正 科学的なユニクロ、勝負のソフトバンク(11)

ユニクロ柳井正の農耕民族経営 同じことの繰り返し&精緻化で同一事業領域を深掘り

●柳井氏の農耕民族経営

 いずれにせよ、5兆円を目標として意欲的に事業拡大を続けている柳井経営は、ドメイン的には同じ領域の中での展開です。ファストリ・グループの今までの成長は、展開地域がグローバルになり、複数ブランドの所有だったり、他社のブランドや流通力を買収したり、というようなことにより実現されてきましたが、事業領域的には集中して衣料および関連流通業の領域にとどまっています。

 柳井氏の経営の特徴はつまり、衣料事業というカテゴリーの中で独自のビジネス・モデルを構築し、それを徹底的に精緻化して磨き込んできたところにあるのです。
「ビジネス・モデル」というのは「独自な仕事のやり方の合わせ技」と言い換えることができますが、柳井氏が実現したビジネス・モデルには次のような合わせ技があります。

(1)ユニクロというブランド・ショップを始めて、それを多店舗展開してチェーン化をした。
(2)ファストリにより有名となったSPA(製造小売り)方式の本格的な導入
(3)中国での大量委託製造とそのコントロール(サプライ・チェーン・マネジメントの確立)
(3)新素材開発のため、東レとの戦略的で本格的な提携
(4)対面販売でなく、顧客が自分で選んで会計を済ませるセルフ方式の徹底
(5)「使った後でも返品自由」などの、顧客との信頼感醸成策

 そして確立したこれらのビジネス・モデルを地域的に、あるいは他社を買収したりして拡大しようとしています。これは、同じことを繰り返し、その精度を年々上げていこう、そして同じ土地で実現していこうという、農業の方法論と通じるところがあると思います。
 
(この項 続く)