2019年5月31日金曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(9)

松本氏に対する社内からの反発は、さらに強いものがあった。瀬戸社長が松本氏を電光石火に招聘決定した昨年3月のRIZAPの決算数字が、未曾有の好結果となったことがあげられる。

昨年5月に発表された2018年3月期のグループ売上高は1,362億円(対前年比43%増)、経常利益120億円(同25%増)と大幅な増収増益であり、株価はその時点で964円と18年の最高値をつけていた(今回の決算発表翌日5月16日の株価は245円)。

 いわばグループ挙げての好況感に沸いている状態で、社員や関係者はさぞ“ハイ”な心理にあったことだろう。

 一方、松本氏が着任する数年前から加速していたM&A路線の結果、18年9月の段階でグループ傘下の企業数は85社までに拡大していた。いわば、2週間に1社、外部企業の買収が発表されてきたのである。そんな好決算とM&Aフィーバーに水をかけたのが、外部からひとり落下傘降下してきたプロ経営者だったのだ。

(この項 続く)

2019年5月30日木曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(8)

瀬戸社長が新氏に事前に相談していたら、松本氏の着任はあのような電光石火の展開にならなかったのではないかと私は思っている。というのは、新氏は1990年まで8年間ジョンソン&ジョンソン日本法人の社長を務めていた。松本氏は93年に同社に参画し、やがて社長を務めた。

J&J社で2人の社歴が重なり合っているわけではないが、同じ会社で近い時期にCEOであった経営者同士が意識し合わないことはない。そんな事情を忖度せずに松本氏招聘に走った瀬戸社長の行動は、拙速だったのではないか。

 招聘された松本氏は昨年6月の株主総会で代表取締役COOに着任した。すると、その総会で新氏は取締役を退任して最高顧問という職に引き下がってしまった。新しい首相が決定したらそれまでの与党幹事長は入閣に応じずに無役に下ってしまったような現象が見られたのである。

私は、新氏が松本氏にとっての反対勢力だった、と言っているわけではない。しかし、着任したRIZAPで「J&Jつながり」がある有力者から協力体制を取り付けるかたちは取れなかった。

(この項 続く)

2019年5月29日水曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(7)

外部から舞い降りるプロ経営者が直面するのが社内の抵抗勢力


 松本氏がカルビーからの退任を発表したその日に、RIZAPの瀬戸健社長が自ら松本氏に電話を入れてRIZAPへの入社を懇請した。この迅速さ、率直さに打たれた松本氏は、その要請を受け入れたわけだ。

 瀬戸社長の電光石火の働きかけは、創業社長でなければできないものだ。また、相手の懐に飛び込むという率直さは、新将命(あたらしまさみ)現最高顧問を迎え入れたときにも発揮されていた。まだ若手経営者といってもよい瀬戸社長の年齢(41歳)もあり、瀬戸社長には「ジジ殺し」の性向があるのだろう。

 松本氏を招聘したとき、そのタイミングや成り行きから、瀬戸社長が社内で衆議に諮ったとは考えられない。「経営家庭教師」ともいうべき新社外取締役(当時)にも相談せずの行動だったと思われる。

 (この項 続く)

2019年5月28日火曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(6)

数十社の赤字が集積するという悪夢


 4月に入りRIZAPはグループ企業の再編を発表している。そこに添付された「RIZAPグループ体制図」によると、子会社群は10の中核企業群に集約されたかのように見える。しかし、内部を精査して見ると、たとえば中核会社の一つとされたRIZAP株式会社の下には10社以上の子会社を収載したりして、トータルすると、いまだに子会社の数が数十社という規模感のままである。18年9月現在では85社あると発表されていた。

 RIZAPがこれらの数十に上る多くが不調な子会社を保持していけば、毎年莫大な赤字が発生する。18年11月の発表では「1年以内にグループ入りした企業の赤字合計額が増加している」とされた。RIZAPは買収した会社の建て直しが得意な会社ではないのだ。売却できたとしても足元を見られ、多額の売却損を覚悟しなければならない。

 私にも観察できるこんな悪夢を、松本氏のような「プロ経営者」が短期に見抜けないわけはない。招聘されたところが実は“蟻地獄”だったことに、松本氏は現場を回ってすぐ気がついたのだ。

社内の抵抗と反発


(この項 続く)

2019年5月27日月曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(5)

それぞれの子会社を再生できればいいのだが、プロ経営者といえども、不調の会社の業績をターンアラウンドさせるには尋常でない集中を必要とする。つまり、数年に一つずつしか行えないのだ。

「数十もの会社を再生してほしい」とか「そうでなければその数の再生経営者を同時に育ててほしい」などということを期待したとしたら、それは“ないものねだり”というほかはない。

この構造をすぐに見抜いた松本氏は、不調会社の切り離し、つまり再売却に動いた。しかし実現したのは、SDエンターテイメント(昨年11月に一部譲渡)、ジャパンゲートウェイ(19年1月に売却)、タツミプランニング(同3月に一部譲渡)など、指を折るほどの数にもならなかった。それも松本氏がCOOから離任したあとの実現だった。

 会社を売却することは、買収するよりはるかに難しい。売却先候補を見つけ、資産査定を相互で行い、交渉する。弁護士など多くの専門家が関与し、1件だけでも気の遠くなるような時間と労力が必要だ。それを何十社もしなければならないというわけで、松本氏は慄然としたはずだ。

数十社の赤字が集積するという悪夢


(この項 続く)

2019年5月26日日曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(4)

整理しきれない子会社群


 瀬戸社長が松本COOに期待したことは、膨れ上がった子会社群の経営であり、建て直しだった。ところが、一回り現場を回ったこのプロ経営者は、瀬戸社長に重大な経営方針転換を提言したのだ。

 それはRIZAPが突き進んできたM&A路線の凍結であり、子会社群の整理であった。松本氏はRIZAPの子会社群を当初「おもちゃ箱のようだ」とそのバリエーションの広がりを評していたが、内実を吟味するにつれ「壊れたおもちゃも、あるかもしれない」と、それまでのM&A路線を酷評するようになった。

 2年半に60社強を手当たり次第に買い漁ってきたといわれる子会社の多くが赤字に沈んでいた。RIZAPはそれらの不調会社を、評価資産価格以下で買い叩いてきた。そうすると、財務的には「逆のれん代」(適正評価額との乖離額を利益として計上する)として本社の決算数字がよく見えるのだ。この「逆のれんM&A」を永遠に回せれば、個別の会社の経営状況など関係のない、という事態が生まれる。しかし、永久運動機関が存在しないように、そんなM&Aは持続するはずもない。

 赤字の会社を連結決算していけば、RIZAP本体の各年の経常利益は大きく損なわれていく。買収した会社の事業内容をそれぞれ迅速に改善できなければ、RIZAPは早晩行き詰まる。

(この項 続く)

2019年5月25日土曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(3)

松本氏の主要な業務管掌は、多数・多岐に渡ってしまっていたRIZAPの子会社群の経営建て直しということだった。着任した松本氏はカルビー時代同様に、それぞれの事業所(子会社)を自ら回って現場の社員の声を聞くことから始めた。

松本氏はしかし、正式着任して半年もたたないうちにCOOを離任してしまう。昨年10月にそれが発表され、肩書きは「構造改革担当」ということになり、代表取締役も外れた。取締役としての籍が正式に外れるのは6月の株主総会だが、RIZAPでの経営トップとしての活動は昨年の10月に終了してしまったという状況だった。「プロ経営者の半年逃亡劇」と私が評する所以だ。

 創業経営者に丁重に迎え入れられたプロ経営者は、なぜ半年も持たずにその会社を見限ることになったのか。私は3つの要因があると見ている。


整理しきれない子会社群


(この項 続く)

2019年5月24日金曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(2)

拙速果断な招聘とプロ経営者が直面した3つの困難


 松本氏はジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長在任9年の間に年間売上を4倍に伸ばし大幅な黒字を達成、続くカルビーでは8期連続で増収増益を続けるなど、「カリスマ経営者」との呼称をほしいままにしていた。

 ところが絶好調を続けたカルビーの業績は、2018年第3四半期(17年10月―12月)に久しぶりに対前年比で大幅に悪化してしまった。私はこの時点でカルビーでの松本経営が限界点に来たことを指摘し、「外に出て次の機会を見出したら」と提言した(18年2月16日付記事『カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機』)。

 この拙記事が松本氏の目に留まったとも仄聞しているのだが、同氏が唐突にカルビー退任を発表したのがその翌月のことだった。そして松本氏の退任報道に即応したのが、RIZAPの瀬戸社長だった。瀬戸社長は即日、松本氏に直接電話を入れ、RIZAP経営陣への参加を懇請した。

 松本氏は瀬戸社長の迅速な要請に打たれるところもあって、RIZAPへの入社を受諾したという。松本氏は昨年6月の株主総会でRIZAPの代表取締役COO(最高執行責任者)に着任した。

(この項 続く)

2019年5月23日木曜日

ライザップ、松本晃氏が半年で敵前逃亡した“蟻地獄”…数十社の不振子会社群に慄然(1)

(写真:東洋経済/アフロ)
RIZAPグループ(以下、RIZAP)は6月の株主総会で中井戸信英(のぶひで)氏を取締役会議長として選任し、創業経営者である瀬戸健社長を強力にバックアップする体制に入る。外部から再びプロ経営者を招聘したかたちだ。

 瀬戸社長が昨年、「プロ経営者」の松本晃氏を招聘し、COO(最高執行責任者)として経営の建て直しを委嘱したことは記憶に新しい。中井戸氏の前に短期間在任した松本氏の去就を振り返り、RIZAP改革の道に横たわる困難を概観してみる。

拙速果断な招聘とプロ経営者が直面した3つの困難

(この項 続く)

2019年5月22日水曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(7)

RIZAPが買い集めてしまった企業群は不調にあえいでいたところが多い。つまり、それらの経営者の資質には疑問点が残るだろう。一方、住友商事のような一流商社は、人材の宝庫といっていい。任せられる経営者人材の不足に直面する中井戸氏に、新しい挑戦が待ち受けている。

プロ経営者、松本氏はなぜ逃げ出したのか


 今回のトップ人事に至った、松本氏のCOO半年辞任、私は評論としてそれを「逃亡」と呼ばせてもらう。次稿ではプロ経営者の名声が高い松本氏をしてRIZAP経営から逃亡するに至った事由を検証する。


※後編に続く

2019年5月21日火曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(6)

大会社の経営者がRIZAPで直面するチャレンジとは


 住友商事、そしてSCSKで名声をほしいままにした中井戸氏が、瀬戸社長の要請に応えてRIZAPをV字回復させることができるのか。大いに注目されるところだ。

 中井戸氏は、しかしRIZAPで大いに戸惑うことになるのではないか。少なくともその着任当初は。

 ひとつめの理由は、組織規模の違いである。住友商事やSCSKは大手で、業界で先達的な企業だった。一方、RIZAPは創業社長に率いられて上場してきた、まだまだ新興の会社で、中井戸氏が在任した2社と比べて企業成熟度が大きく遅れている。大会社、大組織を率いてきた中井戸氏がその違いにうまく、そして素早く対応できるかということだ。

 2つめの理由は、RIZAPが拡大しきってしまった子会社群をどう統治していくか、ということだ。住友商事のような総合商社には、事業部門も子会社も無数にあり、一見構造的に類似する構成のように見える。しかし、決定的に異なるのは、それらの多数の会社を経営していくための経営者人材のプールだろう。

(この項 続く)

2019年5月20日月曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(5)

さて、新氏は03年から11年まで、住友商事でアドバイザリーボードメンバーとして経営幹部の指導の任に当たっていた。この期間、住友商事で要職にあった中井戸氏の知遇を受け、両氏は肝胆相照らす信頼関係を構築し、中井戸氏がSCSKに転出した後もその関係は続いていた。

 松本氏がCOOの退任を発表したのが昨年の10月だった。瀬戸社長としては、松本氏を失った後に残るRIZAPの惨状をどう舵取りしていくか、自分だけでやっていくことに自信が持てなかったに違いない。経営家庭教師である新顧問に相談したところ、新氏自身は高齢なこともあり現場復帰に興味がないこともあり、知友の中井戸氏を推挙した、といういきさつである。

 中井戸氏は16年にSCSKでは相談役に退いていたところでもあり、要請に応じられる状況だった。同氏は今年72歳で、経営者として現場復帰にまったく問題がない年齢であり、経営意欲も十分なことだったろう。

 私のこの推定についてRIZAPの広報に確認したところ、「瀬戸社長が10年来師事を仰いできた方が、20年来のお知り合いというかたちで中井戸氏を推挙された」と、実質的に肯定された。

大会社の経営者がRIZAPで直面するチャレンジとは


(この項 続く)

2019年5月19日日曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(4)

中井戸氏登板の背景には大物最高顧問の存在が


 危急存亡の秋(とき)を迎えているようなRIZAPの瀬戸社長が、ここでなぜ中井戸氏を招聘できたのだろうか。まさか中井戸氏がRIZAPでボディメイクに励んでいたわけでもないだろう。

 中井戸氏を瀬戸社長に推挙したのは、著名な経営評論家の新将命(あたらしまさみ)氏だった。新氏は自身がジョンソン&ジョンソン日本法人など大手外資数社で社長を務めてきた「伝説の外資経営者」で、『経営の教科書』(ダイヤモンド社)など多くの経営書を通じてのファンが多い。

 新氏が11年にとあるところで経営セミナーを行っていたところ、聴講していた瀬戸社長が感心して、その場でRIZAPでの経営指導を懇請した。新氏はRIZAPで社外取締役でもあったが、松本氏が着任した昨年の株主総会で取締役を退任した。現在はRIZAPの最高顧問という肩書きである。いってみれば、瀬戸社長の経営家庭教師のような存在だと私はみている。

 瀬戸社長は創業オーナー経営者にありがちな直情径行的な、よくいえば率直で果断なところがある。新氏を招聘したときもそうだが、昨年松本氏のカルビー退任が報じられるや、即日に直接電話を入れてRIZAPへの助力を求めたと報じられている。松本氏は瀬戸氏の即応性と意気に感じてその招聘を受けたとされた。

(この項 続く)

2019年5月18日土曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(3)

SCSKは法人向けのITサービス会社なので一般的な知名度は高くないが、年商3000億円超で従業員数1万人以上、業界第6位の大企業だ。

住商情報システムと業界の草分け的存在だったCSKが11年に合併してSCSKに商号変更した。合併当時から住商出身の中井戸氏がトップを務め、任期中に同業界のBest of CEOに選出されたこともある。16年からは相談役として同社では非常勤となっていた。

 中井戸氏を迎えることになったRIZAP側の業容はというと、連結では従業員数こそ7000人超でその年商は1360億円(18年3月期、以下同じ)だが、それらの数字には2年半で60社以上を傘下に入れたといわれる子会社群のものが含まれる。いわば水ぶくれした連結数字である。本業ともいえるボディメイク事業を行っているRIZAP株式会社の年商は約329億円にすぎない。

 いってみれば、新興の上場企業に1桁上の大企業から大経営者が舞い降りた、というのが中井戸氏の着任なのだ。

中井戸氏登板の背景には大物最高顧問の存在が


(この項 続く)

2019年5月17日金曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(2)

創業経営者である瀬戸健社長は報酬の全額返上をすでに表明してその決意を表していたが、今回は中井戸信英(のぶひで)氏を取締役会議長として招聘し、多くを委任したかたちである。中井戸氏は6月の株主総会で正式に着任する。

 瀬戸社長は、昨年は「プロ経営者」としてその名も高い松本晃氏をCOO(最高執行責任者)として招聘した。ところが昨年6月に就任した松本氏は10月には早くもCOOを退任し、6月の株主総会では取締役からも離任するという。いわば助っ人のエース経営者が交代するわけだ。

 期待を集めた松本氏の早期退任と、入れ替わるかたちとなる中井戸氏の登場の背景を分析する。本稿ではまず、中井戸氏着任の事情から検証したい。

またも大物経営者、中井戸氏の登板


 前COOの松本氏がカルビーというよく知られた食品会社を立て直して抜群の知名度を持っていたことに比べると、中井戸氏はそれほど知られていない。しかし、経営者としての「大物感」とその経営実績は赫々たるものがある。中井戸氏は総合商社の住友商事で代表取締役副社長まで勤め上げ、09年からSCSKの代表取締役会長兼社長だった。

(この項 続く)

2019年5月16日木曜日

ライザップ、営業赤字94億円…大物経営者招聘の裏に、瀬戸社長の“経営家庭教師”の存在(1)

RIZAP GROUP(ライザップグループ、以下RIZAP)が5月15日に決算発表(2019年3月期通年)を行った。

 年間売上は2225億円で対前年比82.3%増となった。通常の単一事業会社の決算としたら、すばらしい進捗である。しかし、RIZAPの場合、今回の発表で注目されていたのが、利益のほうである。前年の18年3月期は136億円の営業利益をたたき出し、年度初めの19年3月期利益予想額は230億円と野心的なものだった。

 ところが、昨年11月に修正予想として33億円の営業損失と大幅な減額が実施された。今回の発表前には100億円の赤字になるとの予想も報道されていたのである。正式発表された営業赤字は94億円で、100億円まではいっていなかったものの、1年前の大躍進感が打って変わって株式市場では「墜ちた偶像」的な銘柄と成り果てた。

 RIZAPにとって最大の興味は、この「底を打った」と評することもできる状況から、未来に向けてどのようにターンアラウンドを実現していけるかだろう。

(この項 続く)

2019年1月17日木曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(7)

「ブランディング」というのは、著者のセルフ・プロデュース、つまり「自分ブランド」が著書刊行により形成される、ということだ。

 しかし私には、この形態の場合、著者となる社長さんの個人ブランド形成よりも、その人が率いる会社のプロデュースや商品の販促に使えるとみえた。何しろ、本となると200ページ以上で字数にして10万字くらいの情報量が普通だ。パンフレットとは桁違いな情報発信だ。それも書籍として構成展開される「ストーリー」を持っているので、説得力が段違いである。取引先や既存客、見込み客へのPR、はたまた社員募集にも強力なツールとなるだろう。だから、会社の広告経費として出費すればよいのだ。

 このような強みを持つブランディング出版は、当然ながらこじんまりとした自費出版より経費がかかる。私に説明してくれた編集者の話では、「ライターが付いて概算で500万円、6カ月で出版します」としていた。

 通常の商業出版と思われているブランディング出版の数は以外に多く、その出版社だけで1600冊以上の実績があるというではないか。「もしかすると、あの本も」という状況なのだ。新聞広告や雑誌広告と比べるとどうなのだろう。効果・機能的には明らかに異なるアプローチである。なにより、広告であると気が付かれずに強い説得力や影響力を発揮することになる。

 私は、今までいくつもの会社の経営者や独立系コンサルタントに商業出版の紹介の労を取ってきた。正直言って、商業出版の壁はずいぶん高い。しかし、自費出版やブランディング出版なら経費を負担する予算があれば、お勧めだと思った。興味のある向きは連絡してくれれば、紹介することも可能だ。自社と自分個人の広告のバリエーションとして知っておいてよいだろう。

(この項 終わり)

2019年1月16日水曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(6)

ブランディング出版は変形広告と思えばいい


 先日、とある中堅出版社の編集者と次の出版について打ち合わせていた。もちろん私の場合は通常の商業出版での話である。雑談に入り、その人が「ウチは自費出版もブランディング出版もしています」と言う。

 第3の出版形態であるブランディング出版について説明を受けた。その出版社の定型パターンでは、次のような特徴があるという。

1.出版部数は4000部を基本とする。
2.ライターを付ける。「著者」は執筆しなくてよい。ライターから取材(インタビュー)を数回受ければよい。ライターから挙がってきた原稿に赤を入れる。
3.テーマ、題名、構成について著者の意向が強く反映される。
4.ISBNコードが付き、国会図書館にも納本される。
5.何より、通常の書籍流通ルートで販売される。全国の書店やアマゾンに配本される。
6.書評担当など、各メディアに出版社が献本してくれる。書店販促も通常書籍と同じく行う。
7.初版の印税はないが、2刷りから印税が支払われる。

 つまり、文章が苦手な社長さんでも代理執筆や編集、出版まですべて出版社側がやってくれる、というのだ。

(この項 続く)

2019年1月15日火曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(5)

「自分史」のバリエーションとして「50周年記念誌」などの「社史」や、会社が発行するPR本がある。また、商業出版になじまない個人の研究や趣味のまとめなどもある。

 自費出版の場合は、もちろん印税をもらえない。ISBNコードも付かない。逆に編集、出版の費用として200~300万円が出版社に支払われる。これは200ページ前後の、通常書店で手にするような厚さの本の場合で、個人研究を小冊子仕立ての小ぶりの書として出すような場合は100万円の負担金でも可能なこととなる。

いわゆるゴースト・ライターをお願いする場合には、上記のほかに50~100万円弱の費用を見込むことになる。

 出版部数は1000部程度が通常だ。個人出版の場合は、そんなに配るところもないはずだ。出している年賀状の数と同じくらいしか配布できないだろう。会社が出す場合は、取引先の数が目安だ。歯医者さんの場合は、受付において患者に自由に持っていってもらうという配布形態がある。これでも、ただのパンフレットよりはよほど訴求力、説得力が出る。自著の出版とは業績であり権威となるからだ。ISBNコードの有無などに注意する読者はあまりいないので、自費出版と商業出版は見かけではその違いはわかりにくい。

ブランディング出版は変形広告と思えばいい


(この項 続く)

2019年1月14日月曜日

密かに増加の「ブランディング出版」、単なる企業広告より絶大な効果?その仕組みとは?(4)


自費出版とは自腹で本を出すこと


 著書を出版するのは、ビジネス的に大きな好影響がある。自社の商品やビジネスについて知ってもらう、また、それを創業したり責任者として展開している経営者自身を知ってもらい、親身な感覚が読者に醸成される。特にコンサルタントや士業(税理士、会計士、弁理士など)の専門家にとっては、著書があるのとないのとでは、その権威付けに大きな違いが出る。

 また、私が指導してきた経営者のなかには、いくつかの会社を任されてきたプロ経営者が何人かいたが、その人たちには必ず自著を出すことを勧めてきた。私自身が経営者としてのキャリアをたどってきた過程で、自著があったおかげで次の挑戦機会を与えてもらったという実感があったからだ。自著を刊行することによる効能について感度がよい経営者は、実は多くない。筆の立つ社長さんというのはさらに少ない。

 また、商業出版の場合はISBNコード(日本図書コード)という13桁の番号が付けられ、1冊は国立国会図書館に納本することが国立国会図書館法で定められている。「自分の本が国会図書館に納められている」ということが、個人著者の大きな誇り、励みになっているところもある。

 しかし、出版社側としては部数が読めない、知名度の低い会社や経営者の本を早々に刊行してくれるわけではない。そこで次善策として知られてきたのが「自費出版」だ。書籍の体裁の本を印刷してもらい、印刷してもらった分は自分が引き取る。それを知り合いや友人、お世話になった人や組織に進呈して読んでもらう。引退してから人生を振り返る「自分史」が典型だ。

(この項 続く)