日本経済新聞出版社、2009年刊。 "Hug Your People"が原題。”Hug”は「抱きしめる」だから、「社員を大事にする」が原題の直訳。著者の前著は"Hug Your Custoemrs(お客を抱きしめよう)”2003でブレークした。
本著の方は、社員との社内コミュニケーションの大切さと、自社での実践事例を書いている。著者の「5つの原則」とは ― 誠意を尽くす ― 信頼する ― 誇りを持つ ― つながる ― 認めるということで、全く異論がないばかりか、その徹底と成功ぶりには驚くほどで、著者が北米であまたの大企業でスピーカーとして招かれているというのが納得できる。
天の邪鬼な私は「オーナー経営者が自分と自社のことを吠えているのでは?」と斜めに読んだが、著者とその会社Michells/Richards/marshallsが北米で幾つもの経営に関する賞を得ているので、本物と考えて良い。
「普通の会社にここまで出来るのか?」という更なる、私の天の邪鬼な疑問の方は、しかし少し有効なようだ。
1.当社は完全なファミリー・ビジネスで企業規模60名ほど。そのうち同族が10名程度勤務。
2.高級テーラー(紳士服仕立て)業で、3つの店舗しか有していない。年商60億円ほど。
つまり、テーラー業界の「ザ・カールリッツトン」だと思うとその企業文化に理解が行く。そして、その限界にも気がつく。当社は成長を希求していない、少なくとも大規模チェーンなどは目指していない。働く少数の人たち(学校の1学年にも満たない)と所有ファミリーの最大幸福を願っていられる。そして、富裕層顧客(少数でよい)との長期でとても良好な関係の確立がこの会社の成功の方程式な訳である。
この環境に当てはまらない会社が、この会社の企業文化をここまで追い求めることは出来ない。追い求めることが出来ず、実現できないので、本著書の提言に魅了される。「顧客満足度はある水準を超えた時点から売上げ高への影響が殆どなくなる」(日経ビジネス2012.3.5)という指摘もある。
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