2010年6月9日水曜日
「フリー」クリス・アンダーソン 書評(32)
NHK出版。経営者ブートキャンプ参加者の「推奨図書」。
著者は、ネット通販における「ロングテール」の存在を指摘し、その言葉を用語として世間一般に広めたあの人物。ネットの社会での新しい現象をかぎ分け、ネーミングを行い、理論化し説明し、つまり世間に新しい知識を提供できる稀有な著者と言える。
本書も、デジタルの世界では提供する情報の複製コストは限りなくゼロとなることから、単なる情報提供料も無料とする多数のサービスが出現していることを指摘、そのことの商業的価値を明快に論じている。その方向がこれからも広がっていくことが予想されることからも、ネットビジネスの「預言者」と言ってもよいような切り口だ。
本書はしかし、厚過ぎる。この三分の一で同じことは提示できるだろう。不要に厚くなってしまった原因は、過去のつまりネットビジネス以前の通常ビジネス時代の「無料サービス」事例を集めたり、その解説に紙数を費やしたため。
ネット世界以外の「無料」関連ビジネスと言うことなら、現在の「おまけ」とか「無料」とか「サンプル提供」などの事例の方を集めてくれた方がありがたかった。
NHK出版も、その厚さほどの価値は無いだろうということで、本書の価格は謙虚に1,800円としている。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
前回の九段クラブでもそれをお話しさせていただきました。
返信削除インターネット上のデジタル情報の場合、
・追加生産の限界費用がほぼゼロ
・供給能力の限界なし
・市場が完全情報
ですので
・固定費用を割った(操業停止点以下の)価格発生
・セグメント化が徹底され、市場調達・垂直統合の活用
・在庫費用(記憶装置価格)低下によるロングテール
市場競争の結果は一人勝ちが多く、その地位も不安定です。
もっともそれが最初から解っていれば、
「フリー」ソフト(Red Hat)には行かなかった筈ですがw