2010年6月2日水曜日

「東京島」桐野夏生 書評(30)


以前にもブログに書いたが、桐野夏生女史は私のスキー仲間で20代の初めに何シーズンもご一緒させていただいた。学習院のスキー仲間と、私が教えていた某短大スキー部の部員たちが卒業してから作っていたスキーチームがあり、そこの一員だった。各シーズン15日程度はスキー行をご一緒している。

ブログに書いたので、久しぶりに桐野作品に手が伸びた。本の惹句はこうだ。

32 人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。
いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。
果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。
欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、
読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

桐野さんの構想力はいつも雄大で、現代作家の中でも屈指だろう。ストーリーが次々と展開して驚きが続く。「え、そんな展開が?」なんてこともあるのだが、何しろ作家は神なのだから「面白ければ勝ち」だと思う。
しかし、桐野作品に通底している、暗さ、気味悪さ、グロテスクさなどのため、私のFAVORITE WRITERではない。

離れ島漂着譚というと、どうしてもノーベル文学賞のゴールディング「蝿の王」が出てくる。「蝿の王」が示した宗教性、聖性、人間との直面などには、桐野夏生をもってしても達していない。エンターティンメントとしては十分勝っているのだが。がんばれ、まり子ちゃん。

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