2014年9月1日月曜日

ミラノの思い出 (6)

「パスポートぉっ!!」
猛ダッシュして私もホームに駆け下りた。先頭車両からで、ホームの出口は最後尾車両の方にしかない。

半分(それでも100メートルはあった)を走りきったら、何と女三人が警官に補足されているではないか!制服、私服の警官数名に取り囲まれている。

頻発する常習掏りを警戒巡邏していた彼らの目の前にジプシーの女三人組が逃げ出してきた、それも走り出そうとしていた特急から。職務質問に留めない方がおかしい。

「パスポート、オフィサー、マイ・パスポート、、」
おめく私に、女三人は知らないと言う。怒りながらも念のために鞄を探ってみると、、、有った、、、隠しポケットに。

(ええーっ、、!よかった、、)
どっと脱力して去ろうとした私を刑事が呼び止めた。
「あなたが調書を作ってくれれば、この女たちを逮捕起訴できる、、」
特急は走り出そうとしていた。私もまた走った。刑事が追いかけてきた。実際、腕に手を掛けられた。
「フィレンツエでなら、、フィレンツエでなら」
言質を残し、私は家人が乗っていた先頭車両に飛び乗った。その時、特急が動き出した。

(この項 終わり)