祥伝社新書 2009年刊、但し原著は1974年に中公新書より。
経営戦略で温故知新で学ぶというと、「東の孫子の兵法」とならんで「西のドイツ陸軍参謀モルトケ」ということだろう。これに加えて「織田信長以下の戦国武将」というのが、企業経営者以外から経営戦略を学ぶ三大カテゴリーとして定番となってきている。
しかし大モルトケの出現と、その活躍をその前後のプロイセン―ドイツの戦争史にからめて、日本人読者に活写啓蒙したのは、まさしく著者の功績で、本書が渡部昇一の「出世作」として認識されている由縁でもある。
経営戦略論的な立場からは、モルトケに関しては本書を読んでおけば十分であろう。新書ではあるが、その書き込みと分析、位置づけは犀利なものなので、経営戦略の先史的な教養としては必要にして十分だ。
末尾の方で著者が開陳している分析、
「リーダー(ここでは政治指導者:ビスマルク)と軍事参謀(モルトケ)の両輪が揃い初めて大きなコトが成されるので、重要なことは2者の存在とそのバランスである」
というのも大いに納得できる。
40年経っても色あせない名著。
本題ではないが、ベストセラーにしてロングセラーである本書が中公新書から祥伝社新書へと発行元を変遷させた経緯について著者が後書きで詳しく書いていて、知識人の矜持というものが理解できて興味深い。
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