2016年6月16日木曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(4)


大塚久美子社長の経営で大塚家具は低迷している。

戦略的には勝久氏の高級路線を否定して中級路線に打って出ようとしていると理解できるのだが、それが徹底しないか、消費者にうまく訴求できていないか、だ。パブリシティ的には昨年の経営権争奪合戦からこれ以上無い注目と露出があるのだが、それを活かす知恵が足りない。つまり戦略が無いか、的を外れている。

 

2009年3月の株主総会で久美子氏は社長に就任したのだけれど、その年の年商は580億円だった。

爾来、今回の年商下方修正見込みに至るまで久美子社長の経営の元、大塚家具が600億円以上の年商を記録したことは一度も無い。ちなみに同社の最高年商は2003年の730億円だった。

勝久氏が2014年に久美子社長を更迭したのも理由の無いことではなかったし、会社のトップもボトムも何年も低迷させている経営者はその資質を問われる。
 
(この項 続く)

2016年6月15日水曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(3)


 l  「売れないポジション」へ自らシフト


家具業界での勝ち組はニトリとイケアの低価格路線と、カッシーナ・イクスシーの高級路線である。大塚家具では創業の勝久氏は高級路線を選択して、順調に成長した。

しかし、富裕層は無限に存在しない。その証拠にカッシーナ・イクスシーの年商は100億円強で、店舗数は大都市に4つにとどめている。大塚家具は本日現在17店舗有しているけれど、高級路線としては成長限界に来ていて過大な店舗数だ。

一方、ニトリは5月末現在で391店を展開している。

 

大塚久美子社長の経営で大塚家具は低迷している。
 
(この項 続く)

2016年6月14日火曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(2)


  l 赤字転落の原因は売上高の急落である


赤字転落の原因は売上高の急落である。トップが落ちればボトムは大きく損なわれる。

今回の修正発表では、今期の売上高は前期比42億円減の538億円と、マイナス7%強の落ち込みを予想している。過去15年間で最低になる売り上げ見込みだ。

この数字だけを見ると、昨年の株主総会で公然と対立して実父会長を追放してまで得た経営権を、大塚久美子社長は活かしきれなかったと指摘されても仕方が無い。

 

今期の通期売り上げを下方修正したのだが、「これで終わるのか」という不安は残る。というのは、年が明けてからの月次の売り上げ傾向がジリ貧で始末が悪いのだ。1月から既存店の減少傾向が続いており、引越しシーズンだった稼ぎ時の3月には前年同月期比11.8%減となってしまった。あわてて5月は「大感謝会」と銘打った集客策を実施したものの、今年は不発に終わり、同46.2%減とほぼ半減した。
 
(この項 続く)

 

2016年6月13日月曜日

沈み始めた大塚家具 父・勝久氏は春日部店で娘と正面対決 かぐや姫は月に登れるか(1)


週刊ポストから、大塚家具についてのコメントを求められた。同誌面(6月24日号・発売6月13日)では簡単にまとめられてしまうので、本記事で意を尽くすことにする。

 

大塚家具が6月3日に2016年12月期の業績予想の下方修正を発表したのが発端だ。

営業利益を見ると、前期2105年12月期の実績が4億円の黒字だった。今期の従来予想ではそれを上回る5億円が発表されていた。それが、今回一転して15億円強の赤字に修正した。これはリーマンショックの影響で14億円の営業赤字に陥った、2009年12月期をも超える赤字幅である。最終損益も6年ぶりの赤字に転落すると修正発表された。

 

週刊ポストからの取材のポイントは二つあった。

1.  一転しての赤字予想となった原因は何か。

2.  大塚久美子社長の父で前会長でもあった大塚勝久氏が昨年創業した匠大塚社が大塚家具のビジネスを奪ったのか。

(この項 続く) 

2016年6月11日土曜日

リーダーズブートキャンプ 発進!

経営者やそれに準ずる各界リーダーの学びの場となるリーダーズブートキャンプが賑々しくスタートした。

以前に教えていたコースの関係者、OBの皆さんの暖かい励ましとご協力、ご尽力のおかげだ。

コースの運営にも万全を期し、「リーダーズブートキャンプ」を商標登録などもした。短い準備期間の割には盛況となり、懇親会で参加者の皆さんに話をうかがっても、その満足度は高い。

今回は全8講と時間もとったので、今日もしっかり内容を話すことが出来た。まだ途中からの参加希望が来ている状況だ。市場での評価に感謝している。

2016年6月9日木曜日

大塚家具 再び

日本経済新聞より
昨日(6月8日)九州で講演をしていたら、携帯にしきりに電話が入って、困った。会場に時計が無かったので、マナーモードにして壇上に隠しておいた。

ブザー音でもマイクが拾ってしまわないかと、そのたびにステージ上に歩み出て話をした。終了して、返電したら週間ポストで、「来週の記事にコメントをお願いしたいので、何度もすみません」
と。

「大塚家具が今期の業績を下方修正したことについて解説をお願いしたい」

「大塚家具の不調は、前会長(父親)大塚勝久氏が創業した巧大塚社の影響、顧客の奪取という要素はどのくらいあるか」

など。見解を伝え、6月13日発売号で記事となるという。週間ポストとは別に私も別途記事を起こすことにした。

講演のほうは、北九州地区の経営者の皆さんが150名も集まってくださり、大盛況。

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(8)

社外取締役への需要はこれから急増していくのだが、対応できる現役経営者の数的制限、制度的な制約の増大、時間的な制約などを考えると、これからは「プロ経営者」に続いて「プロ社外取締役」という概念が生まれてくるのではないか。

 つまり、経営者の現役を卒業して、「他社・他業界のことでも説明を受ければ構造的に理解できる」「当社経営の構造的な問題を直覚的に把握できる」「業界的な桎梏(しっこく)の延長線上での惰性的な経営執行の理解」、そしてそれよりも何よりも「そんなことを忌憚なく指摘できる」という性向だ。指摘できれば良く、その解決策を社外取締役が考え付く必要はない。それは社内経営陣の解決責任となる。

(この項 終わり)

2016年6月8日水曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(7)

もうひとつ候補者とすり合わせをしなければならないのが、社外取締役となった場合のスケジュール確保だ。原則、月1回の役員会だけの出席だが、年にすれば12日である。加えて株主総会がある。地方企業の取締役を受ければ、前泊も必要となる。役員会の前の別日に社外取締役だけにブリーフィングを行う企業も出てきた。

 ソフトバンクは社外取締役にファーストリテイリング社長の柳井正氏、日本電産社長の永守重信氏という超大物お二人が社外取締役におり、役員会では実際に丁々発止と孫正義社長に切り込んでいるという。それはソフトバンクにとって幸せなことだが、現役経営者が他社でも取締役として活動することは時間的な制約があるし、何より自社の株主から注文が付けられることにもなりかねない。

 特定の人材が社外役員を何社も掛け持ちするのを防ぐ動きも出てきている。3月の段階で日経平均株価採用の225社のうち71社がなんらかの制限を付けていた(QUICK ESG研究所調べ)。

(この項 続く)

2016年6月7日火曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(6)

しかし、そんな要件の設定もあり、1部上場企業以外では社外取締役の選任は緒に就いたばかりだ。東証2部企業の2割、ジャスダック上場企業では4割もが独立社外取締役の選任に至っていない(コーポレートガバナンス報告書の集計による)。

当面需要が急増している社外取締役であるが、実際に着任している人材は重複していることも多い。理由は、ガバナンス・コードの導入により「とりあえず需要」が起こったこと、それから1部上場大企業に見られる「実績優先」から、他社での着任実績を優先したことにある。

社外取締役のほうも責任を果たしたい


 しかし、もうひとつの理由は「本当はうるさくない社外取締役を」という企業側の本音がある。私もガバナンス・コードが導入される状況が明らかになった昨年のある時期に、関西の1部上場企業から社外取締役就任の打診を受けた。しかし、その会社の総務担当執行役員との面談で「役員会の案件にできるだけご理解をいただき、ご支援をお願いしたい」などと言われ、結局着任しなかった。独立的な立場にある社外取締役候補なら誰でも、「それならお友達を連れてきなさい」と思うのではないか。

(この項 続く)

2016年6月6日月曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(5)

候補は少なく掛け持ちにも制限が


 セブン&アイHDでの伊藤教授のようにアクティブな役割を果たす社外取締役は、これからも増えていくだろう。

社外取締役は、東証1部上場企業では幅広く設置されるようになった。きっかけは、昨年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の適用が始まったことだ。東京証券取引所と金融庁による同指針では、上場企業に2名以上の社外取締役の選任を求めている。それ以来、東証1部企業では9割以上が選任済みとなった(2名以上選任したのは6割)。

 ガバナンス・コードでは社外取締役の要件として、「経営から独立した立場」を求めている。つまり、現経営陣の「社外のお友達人脈」による馴れ合い的な経営行動の承認を忌避しようとしているわけだ。

(この項 続く)

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2016年6月5日日曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(4)

私自身も数社で実質的に社外取締役として活動している(1社で社外監査役、同族企業2社で特別顧問として役員会に毎月出席)が、着任するまでその会社はもちろん当該業界について知識があったわけではない。

それぞれの会社での役員会では、社外取締役という異分子である私への説明責任は、会社側にある。

 執行役でもある社内取締役の大部分は、長年その会社に勤め上げて出世の報酬として役員会に名を連ねている。社内の役員たちには自明なことでも、社外の当方には合理的、整合的な説明が必要となる。そして、当方は経営の仕組みについては経験が深い。そんな私を社内取締役の皆さんは納得させ、説得しなければならない。そこで「ムラの論理」の限界が露呈する。

そして、まさにそれが社外取締役の起用によって実現が求められている企業ガバナンスの発露となるのだ。

(この項 続く)

2016年6月4日土曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(3)

社外取締役は、ビジネスの内容に精通する必要はない


 日本取締役協会の会長、宮内義彦氏(オリックス シニア・チェアマン)は社外取締役の役割について次のように述べている。

「社外取締役の導入に反対する人の意見に『高度で複雑な我が社の事業内容が外部の人にわかるわけがない』というものがあります。ごもっともですが、私に言わせれば、わかる必要は必須ではありません。『事業内容はさっぱりわかりませんが、ひどい業績ですな。なぜこれしか利益を出せないのですか』と質問し、答えを引き出して、評価できればいいのです」(4月17日付日本経済新聞電子版)

(この項 つづく)

2016年6月3日金曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(2)

企業ガバナンスの本家としての矜持


伊藤教授は実は単なる経営学者ではない。経済産業省が取り組んだ「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトで座長を務め、2014年秋に「最終報告書(伊藤レポート)」をまとめた。伊藤レポートは日本における企業ガバナンスへの本格的な提言として、海外でも高い評価を得た。

 また、1月に日本取締役協会が初の「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」としてブリヂストンを大賞とするなど5社を選出したおりにも、審査委員に名を連ねている。日本のコーポレート・ガバナンスにおける理論面の総本山みたいなお立場の人だ。

 企業ガバナンスについて強い信念を持つ伊藤教授だからこそ、セブン&アイHDのカリスマだった鈴木氏が提示した井阪更迭案件に対しても、強い姿勢で臨めたのだろう。会社側がもし「お飾りで名目だけの」社外取締役としての役割を期待して伊藤教授を招聘していたのなら、その当ては外れたことになる。

(この項 続く)

2016年6月2日木曜日

セブン&アイ鈴木前会長を放逐した伊藤邦雄とは何者?社外取締役が大企業に激震呼ぶ時代に(1)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)の株主総会が5月26日に開かれ、鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が取締役を退任し、名誉顧問となった。24年ぶりのトップ交代となった引き金は、新たに社長に就任した井阪隆一氏の処遇をめぐっての年初来の出来事だったのは周知のとおりである(本連載『老害化した天才経営者・鈴木セブン&アイ会長、なぜ退任に?一介の雇われ経営者の末路』)。
鈴木敏文会長(ロイター/アフロ)

 鈴木氏が策動した井阪氏更迭の動きに対して、イトーヨーカドー創業家の伊藤家やアクティビスト・ファンド(物言う投資家)である米サード・ポイントが批判的となった。

しかし、セブン&アイHDの内部で正式なガバナンスとして機能したのは、2人の社外取締役がいる指名・報酬委員会であった。同委員会で否決された案件を、鈴木氏はあえて4月の取締役会に諮ったのだが、ここでも社外取締役の伊藤邦雄氏(一橋大学特任教授)の「無記名投票にゆだねよう」という動議の結果、否決されたことからて鈴木氏の急転直下の辞任会見へと展開した。

企業ガバナンスの本家としての矜持


(この項 つづく)


2016年6月1日水曜日

九段クラブ 月例会でIoT/CPSを学ぶ

月例の勉強会「九段クラブ」に私が入会してから、今年でちょうど30年がたつ。

恩師だった故水谷栄二先生に誘っていただいた。先生の教え子有志が結成していて、教え子など先生と関係がある人たちが集まって今日に至っている。

「隠れた日本の知性」とお呼びしていた先生のお弟子さんたちで向学心に燃えたメンバーが切磋琢磨して30年を過ごしてきた。キャリアの現役を終了した会員たちの到達点は高い。博士も何人もいるし、1部上場企業の大取りを務めた人も。

5月28日の例会ではIBMで今年定年を迎えたI会員が「IoT/CPSを活用した競争優位」というテーマで講話をしてくれた。大変興味深い話だったので、リーダーズブートキャンプで話してもらおうと相談した。

I会員は世界の著名B-スクールでエグゼクティブ・プログラムに参加してきた方だ。ハーバードとスタンフォードの両校を制覇したリアル・パーソンとして私が唯一知っている方だ。






2016年5月31日火曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(9)

華人型経営に見られる家族型経営が織り成す別の性格は、「家族になれなければドライな関係」というものだ。そのため、東南アジアでの華人型企業での年間離職率は30%を超えることも珍しくない。3年たつと幹部以外皆違う人という世界だ。

ゴウ氏にとって、シャープはまだ「家族として扱えない」段階だ。だから高橋氏も躊躇なく更迭された。この先、シャープへの出資が完了して同社が名実ともに鴻海の手中となったら、シャープはどのように発展、あるいは切り刻まれるのだろうか。

 三菱自を傘下に入れた日産のゴーン氏、念願のシャープを手中にしようとしている鴻海のゴウ氏。両社それぞれ新しいオーナーシップのもと、どのような変容や発展を遂げていくのだろうか。しばらくは目が離せない。

(この項 終わり)

2016年5月30日月曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(8)

華人型経営ではオーナー会長は独裁者


 私は香港に上場している大手企業の日本法人社長も数年勤め、華人企業をも内部から観察、体験している。華人企業のマネジメントスタイルは、アメリカやヨーロッパ型、そして日本型の経営とも大きく異なる。いってみれば「どんなに社員が多くなっても家族経営」というものだ。

 企業内家長であるオーナー会長の意向が絶対であって、組織の細部までオーナーの意向が及ぶ。鴻海のように年商15兆円規模の大企業となると、もちろん同族だけで経営するわけにはいかない。その代わり、華人企業のトップ幹部になるには、オーナーと家族同様の価値観や忠誠心を共有する必要がある。いわば経営幹部は擬似家族なのだ。ゴウ氏の弟、郭台強氏もフォックスリンクの董事長として周辺企業を経営している。

(この項 続く)

2016年5月29日日曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(7)

社員をリストラしない、としていた点も、買収調印の時点では「40代以下は残ってもらう」に後退し、それ以降は「追加で2000人の人員削減が必要だ」とシャープに強く迫っているという。

 私が興味を持ったのは、4月中旬にゴウ会長からシャープに「関帝像」が送られたということだ。これは三国志に出てくる英雄のひとりで関羽のことだが、後世の人間に神格化され、関帝(関聖帝君・関帝聖君)という神とされた。

 関帝は特に華僑(中国本土から外に出て活躍の場を求めた初代、2代目以降の現地定住者は華人と呼ばれて区別される)から守り神として信仰を受けている。日本でも横浜中華街など、関帝廟が祀られているところは少なくない。

 ゴウ氏は両親が中国本土から台湾に渡った「華僑」、本人は台湾生まれで「華人」ということになる。極貧家庭育ちの中卒から15兆円規模の大企業グループ総帥となったゴウ氏は、典型的な華僑・華人実業家だ。それゆえ華人実業家であるゴウ氏が関帝像を送ったということは、企業文化的に大きな意味がある。「自分のテリトリー」あるいは「帝国への併合」宣言であり、華人企業化の開始が告げられた。

(この項 続く)

2016年5月28日土曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(6)

まず、距離感と節度がないのがゴウ氏のスタイルだ。そもそも買収契約が締結されたのは4月2日で、出資期限とされたのは10月5日であり、出資はまだ実施されていない。鴻海はまだシャープの株主ではない。

 それにもかかわらずゴウ氏はもちろん、鴻海側のチームはシャープの工場や事業所に遠慮なく立ち入り、在庫の資料などを精査している。台湾、中国のホンハイ事業所ではシャープ製品の即売会を行うなど、「もうすっかり子会社」という扱いだ。

シャープに対するゴウ会長の取り組みは、よくいえば朝令暮改、わるく表現すれば傲岸不遜とも形容できる。出資予定額も買収契約締結後に1000億円も減額するなど傍若無人、やりたい放題である。

 買収調印前には、現経営陣の温存とシャープ従業員をリストラしないなどとしていたが、5月12日に至り、シャープは次期社長に鴻海の戴正呉副総裁が就任すると表明した。高橋興三社長が実質更迭されることについて快哉を覚えるシャープ社員も多いことだろうが、「鴻海に付けば安泰だ」と高橋氏が思っていたとしたら当てが外れたことだろう。

(この項 続く)

2016年5月27日金曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(5)

私がフィリップス日本法人社長時代に観察したのは、ヨーロッパ人は植民地あるいは出先企業からの利益吸い上げ、すなわち収奪が実にうまく、洗練されている、ということだ。外見上では、当方は丁寧に扱われ励まされる。がんばれ、しっかり働け、というわけだ。とはいえ、自身が実際に乗り出してくれるわけではなく、手を汚そうとはしない。自分が飼っている豚を一生懸命太らせようとするのだ。

 賢いやり方であり、ゴーン氏は何も非難されることはない。

鴻海はシャープを自らの帝国に組み込む


 親会社出現ということで話題となっているもうひとつの大企業がシャープだ。こちらは台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収される。鴻海の総帥、郭台銘(テリー・ゴウ)会長のシャープへの対し方は、ゴーン氏の三菱自へのそれとは大きく異なっている。

(この項 続く)

2016年5月26日木曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(4)

相手の自主性を重んじ、自助努力を促す。このようなアプローチを私は「植民地経営」と呼ぶ。私がオランダのフィリップスの日本法人社長を務めていたときに痛感した、ヨーロッパ型の経営の特徴だ。

 植民地経営では、傘下に収めた相手方企業に一定の統治を認める、あるいは推奨する。自助努力を親会社はできるだけ助力してあげるという位置にとどまる。親会社を「ヨーロッパの本国」、相手方企業を「植民地」と読み替えれば、ヨーロッパ列強が展開してきた植民地経営の手法となる。

 ゴーン社長はレバノン系だが、予備校から仏パリで学びエリート養成大学として知られるエコール・ポリテクニークからさらにパリ国立高等鉱業学校で工学博士号を取得している。フランスの名門企業ミシュランでキャリアをスタートするなど、ビジネス文化的にはヨーロッパ人のそれと考えられる。しかもクラス社会であるヨーロッパの一番上のエリート層に組み入れられた存在だ。

(この項 続く)

2016年5月25日水曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(3)

自主性を重んじるポーズ


 ゴーン社長はさらに5月16日に報道数社とのインタビューで、三菱自の再生に向けた課題を「信頼回復が第一だ。三菱自が自ら取り組むしかない」とし、「日産は求められれば支援を惜しまない」と協力の意向を示したとされる。

 さらに三菱自のブランドも残し、経営陣も日産からは送り込まないとした。三菱自の相川哲郎社長が5月17日に至り辞任の意向を発表したが、それは通常の引責辞任で日産側の意向ではないとされ、社長職は益子氏が兼任する。開発部門の責任者だけは「三菱自の要請により」(ゴーン氏)送り込む。

これら一連の取り組みを見ると、日産は傘下に収めた三菱自を直接経営するのではなく、少し距離を置いていくやり方を選択している。そもそも出資比率も34%と、過半数までに踏み込まなかった。

(この項 続く)

2016年5月24日火曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(2)

「燃費の不正問題が発覚した段階で、こういうことになると予想はしていない。当然、状況把握を待った。そして、益子氏との対話のなかで、今回の資本提携という結論に至った。これまで、互いに信頼を築いてきたなかで、いつかの段階で資本提携を行う可能性は話に上っていたが、今回の事象で加速した感はある」

 5月の大型連休中に益子氏と会談を行って、一気に走り出したということだ。やり手で断固とした意思決定をするゴーン氏のことなので、その通りなのだろう。

 三菱自の株価も、燃費偽装問題が発覚して急落していた。ゴーン氏としては、問題発覚前より1500億円ほども割安に同社を取得できる状況となっていた。

(この項 続く)

2016年5月23日月曜日

鴻海、早くもシャープを子会社扱いでやりたい放題…日産は三菱自を「植民地化」(1)

テリー・コウ会長と高橋社長
5月11日掲載の本連載前回記事『「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先』で私は、三菱自動車を強く批判し、「自浄力がなく、責任を取って廃業せよ、金曜会など他の三菱グループ企業も支援すべきでない」と主張した。

 その後、事態は急転直下、カルロス・ゴーン社長兼CEO率いる日産自動車が2000億円強を出資し、三菱自株式の34%を握り筆頭株主となり、実質的に傘下に収めることが発表された。

ゴーン氏の野望としたたかなアプローチ


 発表会見はゴーン氏と益子修三菱自会長により、5月12日に行われた。三菱自の燃費不正が発覚したのが4月20日のことだったから、わずか3週間後の電撃的なディールである。あまりに短期間の展開に、燃費不正問題そのものが「三菱自を傘下に収めるための、両者の事前合意があった出来レースではないか」との指摘も出ているが、ゴーン氏は同日の会見でこう否定している。

(この項 続く)

2016年5月17日火曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(7)

不買運動と株主訴訟で追い詰めるべき


 重大なコンプライアンス違反を犯した会社は、相応のペナルティを受けてきた。雪印乳業やライブドア、船場吉兆は市場から退出したし、赤福や石屋製菓(「白い恋人」の販売元)はしばらくの間販売停止に追い込まれた。

 死者まで出したリコール隠しをしていた三菱自には、今度こそ廃業してもらうべきだと私は思う。それにはどうしたらいいのか。
 ひとつは、単純に同社製品への不買などを求める消費者運動の高まりに期待したい。

しかし、「三菱重工は三菱自動車の株を持っていますからね。株主としては支援はしなきゃイカン。それは当然のことでしょう」(同)と、相川氏は三菱グループとして三菱自動車を擁護する姿勢を示した。このようなグループとしての反社会的な行為を阻止するためにはどうしたらよいか。

 私が三菱重工の株主だったら、同社が三菱自の救済措置を取ったら取締役に対しての株主訴訟を考える。つまり、反社会的集団への支援ということで取締役の善管注意義務違反を問う。

 また、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文前会長を辞任に追いやったアクティビスト株主の出現にも期待したい。三菱重工に書簡を送り、反社会的な投資や援助行動を取ることは公企業の行動倫理に反し、最終的に株主に対する企業価値を毀損することを指摘してけん制してもらいたい。あるいは、議決権行使助言会社が株主総会を前にして、会社を特定して、あるいは一般論として反社会的な企業行動を取らないよう見解を出すなどだ。

 私たちは資本主義社会に生きている。それは優勝劣敗の社会だ。しかし、「儲かるのなら何をしてもよい」ということでは決してない。

(この項 終わり)

2016年5月16日月曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(6)

反社会的な存在ということは、暴力団と同じだというとわかりやすい。そして、暴力団は駆逐されるべきだ。

相川賢太郎氏は「会社(三菱自動車)が潰れたら3万人の従業員が路頭に迷うことになるんですから、そんなに簡単に潰せるもんじゃないんです」(同)ともコメントしているが、暴力団を廃業させる場合でも組員の就業対策が必要となる。同じことではないか。

「彼らを咎めちゃいけない。三菱自動車のことを一生懸命考えて、過ちを犯したんだから。(略)武士の情け、そういう気持ちも大事ですよ」(同)とも語っているが、そのために2度も死亡事故を起こし、今回も社会的影響は計り知れない。

相川賢太郎氏の見解は、外部に迷惑をかけても仕方がないということだ。三菱グループ以外の外部というのは、すなわち私たち市民社会である。それに迷惑をかけても渡世のためには仕方がないというのは、反社会勢力の考え方だ。三菱グループは三菱自動車の件に関して反社会勢力となることを同氏は自認したことになる。

(この項 続く)

2016年5月15日日曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(5)

昨年から今年にかけて、消費者や社会を裏切るような意図的なビジネス事件を思い浮かべてみる。

・独フォルクスワーゲンのディーゼル偽装
・東洋ゴムの免震装置ゴム不正問題
・東芝の利益操作 
・三菱自の燃費データ偽装


 いずれも大企業、つまり大組織である。それぞれの事象を引き起こした経営者あるいは担当者は、社外つまり社会や消費者の損益よりも、自分が属する組織内での損得や価値観、行動規範を優先させ、その結果として反社会的な企業内行動を取ってしまったという構造で理解できる。

相川哲郎社長の謝罪会見を見ていて違和感を覚えたのは、軽の供給先の日産のことを「日産様」と「様」付けで何度も丁寧に格上呼称していたことだ。「この会社は対消費者目線がないんだな」と感じた。今回の問題で一番被害を受けているのはユーザーであり、社会である。それが直接の取引先のことしかとりあえず念頭にないのだ。社会的視点が欠落している大企業が反社会的なことをしでかしてしまっている。

(この項 続く)

2016年5月14日土曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(4)

しかし、それに続いて「従業員は一生懸命やっていますから。会社のためと思ったのが裏目に出たわけですよ」(同)と見解を述べているのは看過しがたい。

B to Cの製造業会社が、消費者の安全より会社のため、あるいは組織適応を優先して起こしてきたのが一連の三菱自の不正事件ではなかったか。

「買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ」(同)と相川氏は放言しているが、「だからいいんだ」という価値観の袋小路の行き先が、2度にわたる死亡事故だったのではないか。

大企業を崖っぷちに追いやる、いびつなムラ社会論理


 実は相川氏は、三菱自の相川哲郎現社長の実父である。つまり、2人は三菱グループというムラ社会どころか家族なので、応援発言に熱が入ってしまうのも理解できなくはない。しかし、グループの実力者のこの発言は「贔屓の引き倒し」のような向きを否めない。

(この項 続く)

2016年5月13日金曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(3)

三菱自を延命させてきた三菱グループの総意


 過去の2回にわたるリコール隠しで経営危機に陥った三菱自動車を救ってきたのは三菱グループだ。三菱グループ主要29社は「金曜会」という親睦会を形成している。グループの御三家と呼ばれるのが三菱商事、三菱重工業、そして三菱東京UFJ銀行である。この御三家が資金的にも人材的にも支えることで三菱自は過去の危機を乗り越えてこられた。

 今回のいわば「三度目の大罪」に対しても、「三菱グループの天皇」と呼ばれる相川賢太郎氏(三菱重工相談役)は「絶対に潰しちゃイカンですよ。(略)皆で助け合ってやっていこうというのが、三菱グループ29社の精神ですから」(「週刊新潮」<新潮社/5月12日号>より)と語っている。

(この項 続く)

2016年5月12日木曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先(2)

石井啓一国土交通大臣は4月22日の会見で、「日本ブランドに対する信頼・信用を失墜させ、ユーザーに対しても多大な迷惑を掛けていることについて猛省を促したい」と三菱自を厳しく批判した。25年にもわたって燃費データ不正を続けていた同社は、経営トップが関知していたかは別にして、「不正に対しての組織的確信犯」というしかない。

 同社は過去にも23年以上にわたって不具合情報を多数も隠蔽し(2000年発覚)、関連して2件の死亡事故が起きている(02年)。法人としての同社と子会社の三菱ふそう、そして三菱自の副社長以下経営幹部複数名が刑事有罪となった。

 安全にかかわる事項について意図的に隠蔽して死者を出した。司法的にも有罪が確定した。つまり、三菱自は犯罪を重ねてきた会社であり、それがまた性懲りもなく反社会的な行為をしでかしたというのが今回の構造である。こんな会社の存続を許してはならない。

(この項 続く)

2016年5月11日水曜日

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先 (1)

燃費試験の不正行為について会見する
三菱自動車工業・相川哲郎社長
燃費データ不正に揺れる三菱自動車工業の4月の軽自動車販売は、前年同月比44.9%減と大きく落ち込んだ(全国軽自動車協会連合会が5月2日に発表)。

4月20日に不正を発表して以降、問題車種の販売を停止しており、5月はさらに落ち込む見通しだ。

 同社は水島製作所(岡山県倉敷市)で軽の生産を止め、全工場従業員約3600人のうち約1300人が一時帰休させられている。影響は三菱自だけでなく取引先にも広がり、同社から供給を受けていた日産自動車の4月軽自動車販売が昨年対比51.2%のマイナスとなった。

懲りない会社の自業自得


(この項 続く)

2016年5月10日火曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』が アマゾンで

拙著『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディア・パブリッシング)が、アマゾンでプッシュされている。

キンドル版が767円と、特別セール中。是非この機会に。

2016年5月9日月曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(7)

それにしてもこんな大企業を率いていく組織形態というのは一筋縄ではいかないもので、その証拠に前述のマトリックス構造に加えて、トヨタは技術分野別の3カンパニーを設置した。これらのカンパニーは、機能別組織となる。

 トヨタの新体制は、こうしてみると「あれやこれや」で代表的な組織構造を3つまでも混在させようとしている。このような新奇で大胆な組織体制が機能するのか、貢献するのか、大いに注目されるところだ。

 さらにトヨタの場合、特異的な経営要素としてみておかなければならないのは、豊田社長の存在だ。同氏は米国公聴会を契機に「吹っ切れた」(前出・週刊東洋経済記事)と自認しており、外部から言わせると「一皮剥けた」という表現ができる。創業家出身という出自も踏まえて、その求心力を大きく強めてきた。大トヨタを率いるヘッドオフィス機構として今回は4人の副社長を配置し、磐石の体制を敷いたようにみえる。

 新体制をロールアウトしたトヨタは、そして豊田氏はどんな地点まで到達しようとするのか。できるならば「21世紀の松下幸之助」と言われるまでのレベルを目指してほしい。

(この項 終わり)

2016年5月8日日曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(6)

さらに機能別カンパニーまで、社長の求心力とのバランスはどうなる


「組織は戦略に従う」という有名な言葉がある。経営史学者のアルフレッド・チャンドラーが1962年に著した書籍の翻訳タイトルから有名になった。これをもじって、「組織は規模に従う」という傾向を指摘できる。

 初動段階の企業は、その組織形態としては自然発生的に「機能別組織」をとる。業容や規模が拡大していくと事業部別組織を選択することがある。さらにトヨタのように大きくなるとマトリックス型組織に進む、という傾向が観察できる。

 しかし、組織形態はあくまで経営者の選択によるものだから、このステップを必ずしも踏むわけでもない。トヨタを見ても、メーカーとしてのトヨタ自動車工業からトヨタ自動車販売が1950年に分離設立されたのは機能別組織を強化する動きだったが、82年には自工・自販の合併により現在のトヨタとなった。

 そして大トヨタのなかで、豊田章男社長指揮下ですでに3回目となる今回の組織大変更だ。組織の変更が経営者の意思表明だと私は解説しているが、その時々の状況においての対応最適を目指すのなら、組織体制は停滞していてはならない。

(この項 続く)

2016年5月7日土曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(5)

私はビジネスマン時代、米誌「フォーチュン」が毎年選ぶ優れた500社、いわゆるフォーチュン500社のうちの1社、社長時代にあっては別の同様企業や蘭フィリップスなどでマトリックス組織のなかで働いた。

 正直に言って、組織の内側で働く立場になると、マトリックス組織は面倒で不効率に思えた。というのは、レポート先が2つ存在するからだ。そしてとあるビジネス・イシューで見解が分かれると、両者の上層での合意、調整に時間を要することになる。場合によってはどこにも進めない事態に陥る。

 しかし、トヨタのように全世界で33万人もの従業員が働く巨大企業になると、マトリックス組織のように一見複雑な組織形態を採用しないとかえって不効率となり、組織運営そのものが円滑に進まないということは予想できる。

(この項 続く)

2016年5月6日金曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(4)

グルーバル大企業で避けられない複層構造


 さて、トヨタは日本を代表する製造業企業として世界中でビジネスを展開している。その場合、各国でのビジネスは3種類の組織にどのように管掌されるのだろうか。答えは「全部が絡む」ということになる。

 マーケティングあるいは販売という切り口でみると、たとえばある国における小型車のビジネスは小型車というカンパニー、つまりプロダクト別の事業部に統括される。それぞれのモデルについては車種別カンパニーのなかにいるチーフエンジニアがその車の仕様について、また製造や生産においても権限と責任を持つ。

 ところが一方、その特定国をマーケットと見ると、「第1トヨタ」か「第2トヨタ」に分類される。

 このように、ある国でのあるビジネスについて複数の責任組織が介在するのを「マトリックス組織」という。「組み合わせ組織」または「交差組織」と理解すればいい。

(この項 続く)

2016年5月5日木曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(3)

事業部別組織と地域別組織


 2回の体制変更を経ての今回の新体制は、トヨタという巨大企業におけるいくつかの組織軸に沿って構成されているので、外部からは一見して理解しにくい。

 新設されたカンパニーから解説していく。前述した車のタイプごとの4カンパニーは、「事業部別組織」だ。それぞれのカンパニーという名前の事業部には製造子会社も含まれ、チーフエンジニアが複数いる。これは特定の車種について全権限を持つとされる。つまりパッケージ・グッズの会社におけるプロダクト・マネジャーである。

 短中期の新車種開発はもちろん、人事や調達などの機能も各車種別カンパニーが担う。プレジデントは年間60万台から500万台を販売する車メーカーの経営者の役割を果たしていくことになった。

 一方、技術分野ごとの3カンパニーは機能別組織ということになる。今回の新体制では、さらに以前から存した第1トヨタと第2トヨタという市場別組織がある。この2組織は当該地域・国別でのマーケティング上のアプローチに意を尽くすという役割だ。「地域別組織」としておく。

(この項 続く)

2016年5月4日水曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(2)

7カンパニーと第1トヨタ、第2トヨタにはトップとして「プレジデント」(これも法人の社長という意味ではなく社内肩書きである)が置かれた。7カンパニーにはトヨタの専務が、第2トヨタには常務が任命された。第1トヨタのみトヨタ初の外国人副社長としてディディエ・ルロワ氏がルノーから移籍、着任した。

豊田社長、3度目の最大の組織改造


 豊田章男は2009年に社長に就任した。それ以降、大きな組織改造は今回が3回目でもっとも大きい。豊田氏が大胆な組織改造を行うようになったのは、トヨタ製車両の突然の加速問題をめぐり10年2月、米議会の公聴会に召喚されて証言をしてからのことだ。

「転機となったのは公聴会です」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/4月9日号>より)

 こう自ら認めているように、修羅場くぐりを果たした経営者は、この大企業を自信に満ちて取り回すようになった。11年には取締役を27人から11人に削減し、意思決定の迅速化を図った。13年には第1トヨタ、第2トヨタという世界地域別のビジネスユニット制を導入している。

(この項 続く)

2016年5月3日火曜日

トヨタ、複雑怪奇な組織体制へ異次元改造始動…なぜ機能する?(1)

トヨタ自動車の新組織が4月18日に発足した。今回注目されるのは、同社としては初めて導入されたカンパニー制だ。カンパニーといっても法人という意味ではない。子会社なども取り込んでいる「社内カンパニー」のことである。

 社内カンパニーには2種類あり、「小型車」「乗用車」「商用車」「高級車(レクサス)」という車のタイプごとの4カンパニーと、「先進技術」(自動ブレーキ、自動運転など)、「パワートレーン」(エンジン、トランスミッションなど)、「コネクティッド」(カーナビ、ネット対応など)の技術分野ごとの3カンパニーだ。

 新体制では、上記社内7カンパニーのほかに地域別事業責任主体として「第1トヨタ」(日本、北米、ヨーロッパなど先進国担当)と「第2トヨタ」(中国、東南アジア、中南米など新興国担当)が置かれた。

(この項 続く)

2016年5月2日月曜日

(株)松田商工 ゼロから創業60年、成長し続ける秘密…新卒入社の退職者ゼロ(6)

中小企業の生き残り戦略とは


 松田社長にインタビューして感じたことは、数十名規模の会社が堅実に伸びていくには、やはりその規模に適した戦略がある、ということだ。ポイントを集約すると、次のようなことになる。

1.社員を大事にする。会社は社長ひとりでは回せない、育てられない。
2.小さいなりに特色を出す。戦略的には差別化点をつくれ、ということだ。
3.
経営者が経営に絶対的に集中すること。それを見て社員も奮起する。

 松田商工を取材してもうひとつ感じたのは、同族企業における経営陣の確保ということだ。東工建もまた第3工場を保有していた会社も、後継経営者の確保が問題となり、松田商工に後を託した。

 対照的に松田商工は、1代目から3代目までの社長が同族内で順調に承継されてきた。さらに現経営陣を見ると、副社長が社長の実弟、取締役が社長の義理の弟で年代的にそんなに離れていないということもあり「松田3兄弟」による経営が具現化されている。そして拝見したところ、とてもチームワークがよさそうだ。

 これは、日本で99%以上を占める同族企業にとってはうらやましい状況のはずだ。着実な体制で固めている同社の未来は、明るいのではないか。

(この項 終わり)

2016年5月1日日曜日

(株)松田商工 ゼロから創業60年、成長し続ける秘密…新卒入社の退職者ゼロ(5)

社員を大事にして次のステージへ


――社長が社員の人たちに呼びかけているのは、どのようなことでしょうか。
松田氏 大層に聞こえるかもしれませんが、「東日本NO.1の鋼板加工会社になる」ということを呼びかけています。特に、鉄板の「折り曲げ」と「ロール」という技術分野にこだわっていこうと言っています。

――失礼ながら、結構具体的で明確に進んでいらっしゃるのですね。
松田氏 何とかそうしよう、と(笑い)。でも、それを実現してくれるのはお客様と社員たちです。当社のお客様は、取引の歴史も長く、“松田商工の技術力”を信頼してご依頼いただいております。高いご期待に応えていく、やりがいを実感できます。

――現場で拝見したのですが、たとえば鉄板を幅広側の径が1メートル以上もある大きな漏斗状に加工するなどしていました。
松田 はい。手作業加工で、一発勝負で仕上げます。

――本当に匠のわざですね。社員の皆さんもイキイキとされているようにみえます。
松田氏 大卒の新卒採用を5年前から始めました。おかげさまで退職者はゼロです。社員には、安定した生活を送りながら充実した仕事をしてほしい、と願っています。東工建も入れれば、4工場となったので着実に130名体制を実現したい。

――中途採用も進めていくということですか。
松田氏 はい。現場のほうも経験者は大歓迎します。当社で何より匠の技術を向上してもらえれば、それに越したことはありません。

(この項 続く)