2011年6月9日木曜日

「帝王学 貞観政要の読み方」山本七平 書評81



日経ビジネス文庫。オリジナルは1983年刊。
学習院大学在学時代、国語学の演習で大野晋先生が冒頭に、「日本人とユダヤ人を読んだ。いやー、こんなにおもしろい本は久しぶりに読んだ」と高揚して話してくれた。大野先生ほどの大碩学・大知性を興奮させた書物はいかなるものがと、早速私も読了したことを覚えている。

ユダヤ人やキリスト教に関する深い造詣を元に評論活動を出発させた著書がその後日本人論へと進み、さらに漢籍にまで守備範囲を広げていたことはおぼろに知っていたことではあるが、「日本人とユダヤ人」以降のものは読まず嫌いでいた。基本的に評論には興味がない。

今回、経営者ブートキャンプの参加社から「推薦図書」の一つに挙げられたので文庫版を入手、読了した。内容よりも、著者の知識人としての幅の広さに感銘を受けた。漢籍とキリスト教では洋の両極であり、両方を自家薬籠中のものとして論じることは難しい。例えばあの司馬遼太郎でさえ、欧米についてのコメントは余り足に地が付いていたものとは言い難い。

浅見貞男という聖書学者は、山本七平が掲げた論点の幾つかについて正確度に掛けることなど批判しているが、学者による重箱の隅の突っつきと言うべきだろう。今回の図書を読了しての山本七平の知性の太さに対しての驚きは、イザヤ・ベンダさんとしての登場の時と変わらない。

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