両社を統合まで追い込んだ新技術はデジタルカメラだった。デジカメの出現、そして普及により銀塩フィルムを使っていた従来型カメラの需要は限りなく減少し、両者のマーケットは壊滅したわけだ。コニカミノルタは、前身2社の主要ビジネスだった銀塩フィルムとカメラの両方から06年に撤退している。
ある産業でそれまで勝ち組だった企業が、新技術の出現にもかかわらずその領域に参入することなく敗退していく現象は、「イノベーションのジレンマ」として知られている。コニカミノルタにおける銀塩フィルムとカメラの両ビジネスは、まさにこの「イノベーションのジレンマ」により敗退していったのである。
銀塩フィルムの主要プレイヤーで生き残った優良事例としてよく知られているのが、富士フイルムだ。富士フイルムでは、古森重隆会長の先見の明と強いリーダーシップにより業態の完全な入れ替えに成功して、その後の急成長を実現している。同社のように「企業ドメイン(ビジネスを展開する領域)」を変革する例は「転地経営」ともよばれる。
コニカミノルタの場合は、富士フイルムの事例ほど転身を華麗に果たしたわけではない。しかし、同じ領域ではアメリカのコダックの例もあった。コダックはアメリカにおいて「ブルーチップ(優良企業)」の代表例とも謳われていたが、「イノベーションのジレンマ」の前に為すすべなく、マーケットから退場していった。
富士フイルムの場合を例外的な成功例と見れば、「あのコダックも倒産したビジネス状況下で」コニカミノルタが生存を続け、曲がりなりにも年商を拡大しているのは実は驚異的なこととも評価できる。この状況を「コニカミノルタの奇跡」と呼ぶならば、その奇跡は果たして松崎前CEOがもたらしたといってよいのだろうか。
(この項 続く)
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