2017年10月31日火曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(7)

迷走する戦略策定



 イオンの問題は、経営者自身がこの構造を理解していないことにあるのかもしれない。今年5月の株主総会で、同社は20年2月期に営業利益2900億円とする目標を発表した。いわゆる3年計画で、今回上方修正した18年2月期の2000億円から半分近くも営業利益を積み上げる、とした。ただし、この段階では目標だけをぶち上げたものの、そのための達成手段やいわゆるアクション・プランは示さなかった。

 実は株主総会に先立つ今年4月には17~19年度を対象とする新しい中期経営計画を公表していたのだが、「グループ事業構造の改革」「事業基盤の刷新」といった課題の列挙にとどまり、具体的な施策は明らかにしなかった、あるいはできなかったという経緯がある。今回10月4日の決算発表では、イオンリテールの岡崎社長が「11月には中長期の経営計画を発表する」とし、宿題への答案を提出する構えを見せた。

 さて、同社はまず「目標」を設定してしまった。その目標への道程は示さないままに、と非難もされている。しかし戦略策定のステップからみると、実はそれで良いのである。「目標」はその時限内での到達したい「経営者の志」なので、何をぶち上げても構わない。

(この項 続く)

2017年10月30日月曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(6)

売上を見ると、イオングループは従来型流通業の巨大企業のように見えるが、利益で見ると様相は一変する。(1)~(3)の流通業セグメントが上げた前半期の営業利益額は142億円にすぎない。この金額は3つのセグメントの売上総額約3兆5000億円に対して、ないに等しい。

 一方、(4)~(7)の非流通セグメントの営業利益の合計は704億円に上り、実に前半期グループ合計の営業利益額850億円のほとんどを叩き出している。特に(4)総合金融事業の329億円、(5)ディベロッパー事業の235億円という営業利益額は、イオングループが実はこれら2つの事業に大きく支えられていることを示している。

 イオンの2つの柱の事業というと、実は金融と不動産開発であることを指摘しておきたい。実態は、大規模な流通業の展開を表の顔として、その顧客である消費者に金融サービスを提供して儲け、自らのGMS店舗などを核としたショッピング・モールを立ち上げて外部の店舗を招聘してテナント家賃を稼いでいる、という業態なのだ。

利益分析的には、イオンの流通店舗群は、真の利益構築への導線、あるいは隠れ蓑として理解できる。

(この項 続く)

2017年10月29日日曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(5)

しかし実態は、「流通を表の顔として、本業は不動産開発と金融サービス」というのが正しい。イオンは展開している事業を7つの「セグメント」として分類している。今回発表した前半期決算について紹介しよう。

 総売上は4兆1586億円、そのうちの大きなセグメントは以下のとおり。

(1)GMS(総合スーパー)事業:1兆5251億円
(2)SM(マックスバリューなど、イオン以外のスーパーマーケット)事業:1兆6228億円
(3)ドラッグ・ファーマシー(ウエルシア薬局など)事業:3411億円

 これらの流通事業御三家の売上合計は3兆4890億円に上り、総売上の83%を占めた。

非流通事業は以下のとおり。
(4)総合金融(金融、保険、銀行など)事業:1979億円
(5)ディベロッパー(イオンモールなど)事業:1649億円
(6)サービス・専門店(ツヴァイ、メガスポーツなど)事業:3977億円
(7)国際事業(海外店舗展開)事業:2039億円
 これらの合計が総売上の17%となった。

(この項 続く)

2017年10月27日金曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(3)

儲けの源泉は非流通業



 10月5日付日本経済新聞は、今回の上方修正を次のように報じた

「イオンは4日、2018年2月期に本業のもうけを示す連結営業利益が前期比8%増の2000億円になりそうだと発表した。従来予想から50億円上方修正し、12年2月期(1986億円)以来6期ぶりに最高となる」

 イオンとその株主にとっては、めでたい上方修正だ。しかし、同記事内の「本業のもうけを示す連結営業利益」という表現が、実は曲者である。

私が注目するのは、イオングループの「本業」、そして「本業のもうけ」とは何か、ということだ。同記事では「本業のスーパーを中心に停滞感はなお強い」とあるので、イオンの本業はスーパーであると日経新聞はとらえているらしい。

(この項 続く)

2017年10月26日木曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(2)

従来型流通の最大グループのひとつであるイオンの利益率から見ても、同業態の苦悩が読み取れる。というのは、日本企業では規模の大小や業界、業態を問わず対売上営業利益率は4%前後とされているからである(15年度の推定:「企業利益率を維持した日本経済-平成27年度法人企業統計年次別調査より-」財務総合政策研究所副所長・高田潔氏による)。

 今期の好決算を受け同日、イオンは18年2月期最終業績の上方修正も発表した。それによると、通年での連結営業利益額は2000億円となるという。上半期で850億円を出したので、下半期は1150億円の営業利益となる見通しだ。儲けが加速する、という強気の読みである。

(この項 続く)

2017年10月25日水曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(1)

イオンは10月4日、2017年度第2四半期(3月―8月)連結決算を発表した。イオンリテールの岡崎双一社長が、持ち株会社イオン傘下のイオングループ全体と事業セグメント別の業績を発表した。

 この決算数字を見る限り、足元の業績は好調に推移している。しかし、イオンは「次の一手」というべき本格的なグループ全体としての戦略の構築に難渋している。

半期の営業利益、11年ぶりの高記録


今回の発表の目玉として、営業利益が850億円となったことが挙げられた。この数字は前年同期比18%増であり、半期の営業利益額の記録としては11年ぶりに過去最高となった。営業収益(売上高に相当)は4兆1686億円で、前年同期比1.4%増という若干の伸びだったので、営業利益の改善は確かに目に付くものだ。しかし、対売上営業利益率としてみると、2.0%にとどまる。

(この項 続く)

2017年10月24日火曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(7)

クリステンセン博士の『イノベーションのジレンマ』では、巨大百貨店に対抗するイノベーションであるZOZOTOWNの存在を「破壊的技術」と呼ぶ。

ここでいう「イノベーション」とは単にテクノロジーだけの革新に終わらない。それはサービスであったり、ZOZOTOWNの場合はそのまだ唯一無二というべきビジネス・モデルだろう。

 同書によれば、「破壊的技術」は先行大企業のビジネスを破壊してしまう。だからこそ「破壊的技術」なのだ。

 衣料品流通の場合、破壊されるのは百貨店の衣料品ビジネスである。10年後に百貨店のファッション売り場は果たして残っているのか、そして主力売り場を失った百貨店というビジネス・モデルはどのように変容しているのだろうか。

(この項 終わり)

2017年10月23日月曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(6)

ZOZOTOWNが流通ジャイアントたちの視界に入って来ていなかった今世紀の初頭、百貨店がネット通販を行っていなかったのかといえば、そんなことはなかった。私は当時もお中元やお歳暮は高島屋などのネット通販を使っていた記憶がある。

 つまり、自前の技術もあれば、IT技術やプラットフォームに投資する資本もある、人材も社内にいなければいくらでも外部リソースを使うことができただろう。それが当時の百貨店の状況だ。

 つまり、欠けていたものは「意思」だけだったのである。

 出店社ブランドの売上が100億円に満たないZOZOTOWNのビジネス・モデルに降りていけなかった百貨店。その結果、百貨店の衣料品売上はこの10年間で3割以上減少してしまった。この10年間で日本の百貨店は総売上が約1.6兆円減少したが、そのうち衣料品の減少幅は約5000億円にも達している(日本百貨店協会の資料による)。さらに、17年7月まで百貨店総計では、衣料品が21カ月連続で前年同期売上を割り込んでいて、回復の傾向は一切見られない。

(この項 続く)

2017年10月22日日曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(5)

ZOZOTOWNが成長を加速したのは、05年に国内最大手のセレクトショップであるユナイテッドアローズが本格出店したことだといわれる。つまり、ZOZOTOWNはサイトを開設した04年から07年まで、業容的には本当に小さな存在だった。サイトの総売上が100億円にやっと届いた(07年)、百貨店の大型店舗ひとつにも及ばない存在だったのである。

さらに特筆しておきたいのは、ZOZOTOWNでの販売手数料は30%ほどといわれるので、企業としてのスタートトゥデイの年商はその時代30億円に届かない状況と推定されることだ。この規模感は、まったくの中小企業だろう。

 ひるがえって、現在百貨店首位である三越伊勢丹ホールディングスの05年段階の年商は、伊勢丹だけで7600億円(06年3月期)、三越は8041億円(同年2月期)と、合わせて1兆円を優に超える流通ジャイアントだった。ちなみに百貨店全体での服飾総売上は05年に3兆150億円もあった(日本百貨店協会による)。

 百貨店の企業価値は何かというと、良質な顧客にアピールすることだろう。その極地として「お帳場」などと呼ばれる、特定の富裕顧客に対する担当店員の張り付け、そして外商制度などだ。ファッションの分野でいえば、中流の上のカテゴリーに入る女性客に店頭でいかに比較的高額な衣料を売り込むかが、伝統的なビジネス・モデルだった。

(この項 続く)

2017年10月21日土曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(4)

クリステンセン博士は、1990年代におけるコンピューターの記憶装置(ディスク)ビジネスの変遷を調査して上記を説明した。メインフレームに接続する大型ディスク・メーカーが、5インチなどの小型フロッピーディスクの出現に手をこまねいて、衰退していった。

 私は旧著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)で、写真フィルムとデジタル・カメラの例で説明した。デジタル・カメラを発明したのは、皮肉なことに倒産した写真フィルムの老舗、コダックだったのだ。

象はなぜ子犬にまけてしまうのか



 スタートトゥデイがZOZOTOWNを開設したのは、04年のことだ。当初は収載していた商品は、ブランド数で17しかなかった。同社がマザーズに上場したのが07年のことなので、それ以降は業績が開示され、財務数値を追うことができる。07年3月期、つまりZOZOTOWNを開始して3年たって、ブランド数は680に、ブランド(出店者)の商品取扱高は112億円、ZOZOTOWN側の取り扱い手数料が主となるスタートトゥデイの売上高は60億円にすぎなかった。

(この項 続く)

2017年10月20日金曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(3)

そんなスタートトゥデイは、自らをファッションのカテゴリー・キラーとして認識していて、競合は強いて言えば百貨店だとしている(柳澤孝旨副社長、「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/17年9月23日号>より)。

 カテゴリー・キラーとしてのZOZOTOWNと、競合認識された総合百貨店の関係が、「イノベーションのジレンマ・セオリー」に当てはまるので解説したい。


大きな会社ほど新しいビジネス・モデルに対応できない



『イノベーションのジレンマ』(翔泳社/01年)は、米ハーバード・ビジネス・スクール教授クレイトン・クリステンセン博士が著した経営戦略の名著だ。

 成功している大企業は、現在奉仕している大顧客の顧客満足度をいっそう高めようとする。その結果、現在商品や技術の機能改善、向上に全力を注ぎ、多くの場合、価格も改訂(値上げ)することができる。

そんな企業は、市場の片隅に出現した新奇な技術や商品(=イノベーション)について力を注ぐことはできにくい。イノベーションの技術要素については大企業のほうが凌駕していても、である。

そうこうしているうちに、イノベーションである新商品・サービスは急速にビジネス規模を拡大し、やがて既存大企業をも凌いでしまう、というのがこのセオリーの骨子だ。

(この項 続く)

2017年10月19日木曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(2)

競合は百貨店


ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ(前澤友作社長)の業績は絶好調だ。同サイトは楽天のように外部の会社が商品を出品して販売するモール型ECサイトで、ファッションに特化している。男性ものも扱っているが、女性ものがメインである。現下の出店ブランド数は6000を超え、それらのブランドがZOZOTOWNで売り上げた年間商品取扱高は2120億円(2017年3月期、以下同)、そこから発生している同社の年間売上(主として販売手数料)は763億円、営業利益は264億円を記録した。

 ECサイト企業として高収入・高収益なだけでなく、急激な成長を続けていることでも知られてきた。今期に入ってZOZOTOWNの売上(取扱高)は前年比40%増ともいわれ、この8月には株価時価総額で1兆円を達成した。

ZOZOTOWNがスタートしたのが04年だったので、実質的に13年で「企業価値1兆円」を実現した。

 同じくECサイトの雄、米アマゾンが1兆円を達成したのが、ちょうど設立13年目で、これより早く達成した大企業は米グーグル(9年)、中国シャオミ(5年)くらいしか見当たらない。もちろん日本企業としては最速だ。


(この項 続く)

2017年10月18日水曜日

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失(1)

ファッションEC最大手ZOZOTOWNが、10月1日から配送料金を変更した。同日、同サイト上には次の記載が現れた。

「本日10月1日よりZOZOTOWNの送料は、お客様に自由に決めていただけるようになりました。お客様のご都合やお気持ちに合わせご自由に設定ください」

 新しい配送料金体系として、デフォルト(初期表示)では1件当たり400円という料金が表示されており、消費者は自由に料金を設定できる。これまでは、購入代金4998円(税込)以下の場合は送料399円(同)、それ以上の場合は無料だった。

 10月1日といえば、ヤマト運輸が一般の宅配料金の値上げを開始した日でもある。その逆の道を選んだのがZOZOTOWNで、あくまでもユニークな企業スタンスを崩さない、興味の尽きない会社だ。

(この項 続く)

2017年10月17日火曜日

リーダーズブートキャンプ第4講 佳境に(2)

ランチの時間を遅くして、私が「戦略セオリー」から「使える戦略」としてPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)とランチェスター戦略を簡単に解説。

1:30から新将命特別講師が「勝ち残る組織の原理・原則とリーダーシップ」の第2回目。3:15まで密接なクラス討議を入れながら、ぐいぐい話された。

新先生はその後、3:30から4:30まで、小グループ討議の一つにコメンテーターとして入ってくれた。4:40から5:45まではまた私がの講義で「組織戦略」セッションの後半を完了。

次講から皆さんいよいよ戦略策定の「解決策の提示」のステップに入る。今日のところまででそれぞれが「重要課題」を絞れてきたので、よろしいかと。絞込みにグループ討議、他の参加者の視点、意見がとても有用だ。

(この講 終わり)

2017年10月16日月曜日

リーダーズブートキャンプ第4講 佳境に(1)

リーダーズブートキャンプ第3期は、10月14日(土)に第4講を迎え、ちょうど折り返し点に来た。クラスの出席率もよく、皆よく準備してきてくれている。

朝1番は、課題図書の方向と討議。2冊目の本としてまた『日本電産流V字回復経営の教科書」(川勝宣昭、東洋経済新報社)を取り上げている。

「また」というのは、本書は前期でも取り上げたから。2期連続で同じ本を読むのは異例というか、初めてだが、本書への評価の高さ(前期のクラスでの)からのことだ。

この日は、第1章と第3章をそれぞれ別の参加者が報告、クラス討議した。まあ、大学のゼミのやり方である。

(この講 続く)

2017年10月15日日曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(9)

ヤマトといえば、すぐに思い出すのが名著『小倉昌男 経営学』(小倉昌男/日経BP社/1999年)だ。宅急便の創始者、小倉氏は前例のない事業を推し進めるため、国と訴訟を構えることもいとわなかった。腰の据わった、すばらしい経営者だった。

 振り返ってヤマトの現状を見れば、昨年来の残業代未払い事件を発端に、そのサービス改革への社会的な理解はかつてないほど高まっている。むしろ、社会的要請といってもよい。

 そのような状況にあって現経営陣は、なんだかわからない、そして実現性が薄い「新スライド価格決定方式」なるものを導入して問題を営業現場に押し付けようとしている。これは、個数のボリューム増という問題をすべてセールス・ドライバーという現場に押し付けてきた経営姿勢と一貫しているものだ。

 大口の法人顧客には、むしろ個人客より高額な価格を要求するなど、発想の転換をしたほうがよい。ヤマトで変わるべきは価格方式よりも、状況に対応できないままできた経営陣なのではないか。

(この項 終わり)

2017年10月14日土曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(8)

経営者には覚悟と責任が



 ヤマトの宅急便ビジネスが社会的に注目を浴びたのは、16年に発覚した大規模な残業代未払い事件だった。同社は17年2月に至り、組合との春季交渉で宅配便の総量抑制の要請を受け、「申し入れを真摯に受け止め、対策を図る」とした。そして、再配達の手順見直し、価格値上げ、働き方改革などを打ち出してきたわけだ。

 今回の中計では、荷物の総量を18年3月期までには17億7000万個まで減らし、体制を整え直した後に再上昇に転じる、とした。

 しかし、総量減活動の途中結果はどうか。8月末に発表された直近の同社資料では、4月から8月までの今期累計で、宅急便取り扱い個数は対前年比104.2%と増えている。ついでながら17年3月期で取り扱い価格は、対前年比で3.3%減じていた。

 山内社長は中計で素敵な絵を見せてくれたが、足元ではまだ組合との2月の約束以来、何も起こっていない。夜間配達専用セールス・ドライバー1万人新雇用なども実現性はどの程度あるのか。

(この項 続く)

2017年10月13日金曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(7)

それを獲得したのがヤマトだが、当時のヤマト経営陣は価格について交渉することなく、アマゾンの配送を引き受けてきてしまった。この「アマゾン獲得」の凱旋報告に出席した社員が、その交渉の稚拙さに大いに怒っていたことを思い出す。その時困っていたのは、アマゾンのほうだったのだ。

 この結果、アマゾンを引き渡した佐川急便では売上が減少したが営業利益は大幅に改善した。引き渡されたヤマトでは逆に売り上げは急進したが、営業利益は大幅に毀損してしまった。トップを大きく伸ばして、ボトムを急落させるという、下手な経営を絵に描いたような交渉が行われたのである。

 そして今回の「スライド式新価格体系」だが、それが通用するかは見ものである。今までやらなかった、毎年の交渉ごとを現場の営業に押し付けるだけで、あとはトップとしては「うちの営業は……」と嘆くだけではないのか。

(この項 続く)

2017年10月12日木曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(6)

実際、ヤマトは2014年から大手法人顧客向け価格の値上げを断続的に行ってきたが、その都度競合との価格競争に巻き込まれて長期的な単価引き下げと営業利益率低下という負のスパイラルを繰り返してきている。

 今回の新方式の発表に当たり、ヤマト幹部は「(人手不足で人件費が上昇している背景から)コストに連動する形でサービスの価格が決まる考え方が日本に定着してほしい」(9月27日付朝日新聞記事)と語っているが、他人事のような物言いで、ただの願望であり、とてもその実現に自信があるとは感じられない。

染み付いた交渉下手



 ヤマトという会社の、いざという時の交渉下手には定評がある。宅配便で日本最大の顧客は、もちろんアマゾンである。アマゾンはもともと佐川急便にその最大ロットを依頼していた。ところが、低価格設定でコストをあまりに圧迫するので、佐川では13年に至り値上げという口実でビジネスを返上した。

(この項 続く)

2017年10月11日水曜日

ヤマト、経営陣は問題をすべて営業現場へ丸投げ…一斉大幅値上げで社員の労働改善(5)

毎年価格を自動的に上げられる?



 さらにヤマトでは、法人価格についてはこれから毎年価格改定を行っていくという。新しい運賃体系では、大口の法人顧客ごとに荷物1個当たりのコスト計算をして、その顧客に対する運賃を算出する。それをもとに個別に交渉して価格設定をし直すという。従来の方式では、一度合意された価格がなかなか改定されず、何年も適用されてきた。

 新しいやり方では、いわゆるインデックス方式を採用するという。これは、スタート時の価格を100とすると、毎年の変動係数によりそれを改定していくというものだ。ヤマト側の腹算用としては、上のほうに動いていくことを想定しているのだろう。

変動係数として社内で統一的に使うのは、(1)人件費の変動、(2)燃料費の変動、(3)ヤマトの配送作業の効率化への協力度合い、の3要素だという。

 しかしこの方式では毎年、翌年の価格について営業担当者が顧客とタフ・ネゴシエーションをしなければならない。そして、交渉により価格上昇に落ち着くかわからない。交渉に入ること自体がヤマトにとってヤブヘビ、つまり値切られてしまうこともあるだろう。

(この項 続く)