2014年6月7日土曜日

本を書く (26) 丸谷才一、大野晋、谷崎潤一郎 (書評198)

大野晋先生が、クラスで話されたことは
「谷崎源氏は、新訳、新々訳と3つありますが、新訳が一番いい」
と。

それで私は『新訳谷崎源氏』を研究室から借り出して読破した。同訳についての感想は、しかし思い出の彼方だ。なにしろ半世紀前の読書だし、原典の『源氏物語』の印象の方だけ残っている有様である。

しかし、当時定番であった岩波日本古典文学大系での活字による『源氏物語』でも全54帖読破するのに多大な時間を要する大古典である(私も平安文学専攻の端くれ、こちらも読んだ)。大谷崎が自分の文業をなげうって3度も現代語に訳出した。そしてあの大碩学の大野晋先生は、厳しい学究生活の合間にそれを3つながらに読んで、評を述べられた。

これらは皆、『源氏物語』の魅力、昭和に生きた大文豪や大学者、そして不肖私をもとらえて放さない、代えることの出来ない魅力の大きさを示している。実際、『源氏物語』の魅力に憑かれて現代語訳を世に問うた小説家は少なくなく、、、


(この項 続く、 しかし飛び飛び)