2011年2月4日金曜日
「ダイナミック戦略論」(3)コア・コンピタンス論者の敗退
前項(2)で「戦略論者の死屍累々」という副題をつけた。本項では著者の河合忠彦教授の叙述により、G.ハメル(Gary Hamel)という戦略学者の主張をたどってみる。
ハメルは1990年代前半、C.プラハラッドなどとあの一世を風靡した「コア・コンピタンス」の概念を提出した学者だそうだ(これもこれ以降も大部分が河合著書からの学恩:別名受け売り)。
その時に「コア・コンピタンスにより競争優位を獲得している」と持ち上げられたのが、NECのC&C、ソニーの小型化技術、そしてホンダのの技術などだったそうだ。
「NECのC&C?] あれには「今は亡き」という枕詞をつけるべきだろう。
「ソニー?」 盛田会長亡き後、出井社長が決定的に企業価値を棄損して現在はなお悪い
「ホンダ」 成功のきっかけは北米でのマーケティングであり、そのきっかけは偶然的な四輪車へのシフトだったというのが今では通説。 (この段落は山田のコメント)
そして専門語を創出した栄誉を担った(山田コメント)「コア・コンピタンス」論者が提唱したことが、たとえば「5年後、10年後、15年後にどのような新しい消費者ニーズに応えようとするのか」、などだったそうだ。
15年後?うーん。15年後と言わず、上記の理論を発表して6年後の2000年に著した著書で、G.ハメルは次のように記述しているそうだ。私のブログの引用としては異常に長い。
「”唯一の”確かな競争優位性の源泉は、“ビジネス・コンセプト”のイノベーション”、さらにはそれを見つける”洞察力”である」
コア・コンピタンスからビジネス・コンセプト・イノベーション能力だと。なんだか分からん。ハメルは続ける。
「その核心は”富を生み出す新戦略”を創出する能力である」
だそうだ。
”何を馬鹿なことを言っているんだ”と言いたくなるのだが、実はそうではなく、「馬鹿なことも含めて、何も言っていないじゃないか」と私は突っ込みたい。
我々実務家は、「それじゃその”新戦略を生み出す”方法を教えてくれ、その“能力”とやらを獲得する方法を示してほしい」という立場だ。”唯一の確かな源泉が洞察力”だというのなら、洞察力とは深く人格に根ざしている、つまり属人的なものだから、結局は「経営者次第だ」とハメルさんは喝破している。でもそれなら戦略論の学者なんか出てくることはないではないか。
それにそもそも、
「ハメルさん、あれだけ担いでいたコア・コンピタンスはどこに置いてきちゃったの?それまず落とし前つけてくれない?」
などと、お会いしたら是非申し上げたい。まだ生きていらっしゃるのだろうから。
ブログタイトルから「コア・コンピタンス」への私の書評へリンクが。
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