2015年5月3日日曜日

富士フイルム、そのエクセレントな転地経営(4)

転地経営という荒事

 これらの一連の発表をみると、富士フイルムHDが一昔前には写真フィルムメーカーだったということが嘘のようだ。

 一般的に多角化とは、業態が隣接する分野、つまり連続するドメインに進出していくのが定番である。しかし、同社は基幹業態だった銀塩フィルムが消滅する変革事態に遭遇し、一見すると連続しないような業界セグメントに打って出た。これを「転地経営」と呼ぶ。写真フィルムメーカーとしては世界最大だったコダックが破綻し、富士フイルムは現在の繁栄に至った。その違いについて、筆者は拙著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)で古森重隆会長の戦略的経営を高く評価した。

 古森会長の時代の先を見る見識や洞察力は、とても優れている。しかし、経営者としては、それだけでは大成しない。先見力を実際にどのように自社の事業展開へ、戦略として書き下ろせるのか。そしてそれを信念を持って実現していくことができるのか。それらの能力を併せ持つ経営者だけが「転地経営」のような荒事を実現していける。

 今回、富士フイルムグループ各社が一連の発表を同日に集めたのも偶然ではないだろう。戦略的経営を続ける同グループは、ますます発展していくに違いない

(この項 終わり)

0 件のコメント:

コメントを投稿