2010年8月17日火曜日

「トヨタ生産方式」大野耐一、ダイヤモンド社 書評(45)




1978年初版と言うから、もう30年以上前に書かれた本だ。トヨタ自工の副社長(製造担当)だった著者は、20年前に没している。それにもかかわらず、私の手元に来た本は、2007年第102刷りだという。100刷りを超えるロングセラーには初めてお目にかかった。
それだけ影響力が大きく、日本型経営のバイブル的な本となったのだろう。日本型経営って、それは製造業で一番強みを発揮しているわけで、製造業っていうのは村型文化が最も強みを発揮する業態でもある。つまり、同じ人たちが同じ場所にい続けて、限りなく同じことを繰り返しながら改善していく、という意味で米作りと共通する。村では草むしりも同じ時期にしないと効果が十全に担保しない、など。

本書が含蓄するところはもちろんとても大きい。しかし私が内容とは別に興味を持ったのは、
「企業人はなぜ自社の得意技を公開してしまうのか」
ということだ。

一方で、「競争戦略」などといって、競合を出しぬくことに全力を尽くし、工場見学をさせる場合も写真は遠慮してもらうし、ビデオを王氏港建社の工場(中国広州省)でまわした日本のメーカーの客人がほとんど怒鳴りつけられたのを思い出す。

それをここでは、トヨタにとっての最高の知的(経営)資産をその最高責任者がとても分かりやすく公開してしまっている。本書はその内容が重要なだけに、「誰の便宜のために」書かれたのだろうか。故人に聞いてみたい。

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