前述のオカダ・カズチカがアメリカから凱旋帰国して、当時のIWGPチャンピオン棚橋選手に緊急挑戦して大きな話題とブーイングを浴びたのが、まさに12年1月のことだった。木谷氏が本格関与してから、新時代の幕が上がったのである。回復の立役者はここでも新経営者だった。
現在では「スイーツ真壁」と異名を取り人気者となった真壁刀義選手などを筆頭に、選手をテレビタレントとしてマスコミでの露出も活発にさせている。
木谷氏が「業界一番手」として目標にしているのが、アメリカのプロレス団体WWEだ。WWEはニューヨーク株式市場に上場している公開会社で、年商5.4億ドル強(約650億円)を誇る、一大スポーツエンターテイメント企業だ。
WWEで興味深いのは、試合構成についてシナリオライターがいることを公式に認めていることだ。日本で興業を催す場合も「東京公演」としていて、選手たちは大会のことを「ビッグショー」と呼んでいる。日本のプロレスについても、「八百長かショーか」という議論は今ではなくなったといっていい。
特に新日本プロレスでレフェリーだったミスター高橋が著した『流血の魔術最強の演技―すべてのプロレスはショーである』(講談社、2001年)が決定的だった。とはいえ、レスラーたちがあれだけのことをできるのはやはり大したものだ。
(この項 続く)
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