2011年6月29日水曜日
「プロフェッショナル・リーダー」アマゾン書評に興味深い1件
本日現在6件のレビューが投稿されている。5件はおかげさまで星5つという評価。
「星一つ」という評価が1件。私自身もアマゾンに投稿する書評には星一つから五つまで付ける。つまり、他人様の評価にはとやかく言えないし、尊重すべきだという立場だ。
ちなみにこの「星一つ」という評は次のようなものだ。
17 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「相変わらずの低レベル
5人の雁首並べても、たいした講師がいない。なぜこの人たちが凄いのか?理解できない。特にリクルート上りは玉石混合、まさにそれを如実に示してくれる良書だ。軽く薄い、中身で要は経営者JPの宣伝だ。宣伝費の代わりに出版ではいかがなものか。」(本日のブログ・タイトルからリンクを張った)
「相変わらず」という言葉から共著者の誰かの読者だとうかがえる。本そのもの、あるいは共著者・編者でない「経営者JP]という指摘が出てくるということは、逆に何らかの関係があった人と思われる。
実は、アマゾンのレビューはいろいろつつき回すと、投稿者の実名が表示される(!)という仕組みになっている。私も時々辛口「星一つ」の投稿(私のアマゾンIDは「香港」という)をすることがあるのだが、そのうち著者の皆さんから直接の反論をいただくこともあるのではないか。そんなことがあれば楽しいかも知れない。
戦略学会、研究会「サービスサイエンス」(2)
二つ目の発表は、とある研究団体の方によるもの。テーマは「サービス・サイエンス」。
「サービス・サイエンス」概念の発祥は、2005年にIBMによって提唱されたものだとのこと。「サービス・サイエンス」の現状やらこれからのことについて報告をしてくれた。関連して、「そもそも最初の時の考え方は、、」という説明もあり、司会の先生とやりとりがあった。
私が挙手して発言したのは、
「2005年にIBMが提唱したということですね。その時は既にメインフレームの時代が終わり、パソコン事業を手放そうとしていたときな訳です。IBMとしては(ハードではなく)サービスで生きていく他はなかった」
「そこでそれを宣言するアドバルーンとして何か“かっこいい”言葉が必要だったということでは。ぶち上げることが重要で、その内容やコンセプトがしっかりしていたとは限らないのでは」
ということだった。
私もただの仮説というか、「ありそうな思い付き」を述べたわけだが、発表者の報告も仮説な訳なので私のコメントも否定されない。研究者やコンサルタントの出席者が多く、経営者からの視点には虚を突かれたような成り行きだった。
2011年6月28日火曜日
戦略学会、研究会「サービスサイエンス」(1)
国際経営戦略研究学会の理論・実践研究会に参加。今夕は二つの発表に対して発言。
一つ目は日本を代表する重電器メーカーの方が、自社を事例として開陳しながら「サービス事業化と利益創出モデル」について発表。
縷々説明してくれて、QAで私が貴社の売上げ(数兆円!)のうち、サービスでの売上げはどれだけあるのですか?と尋ねた。残念ながら、数字が上がっていないということで、推定も難しいということだ。
この報告の視点は、学術的な分析と並んで、経営幹部への提言ということだった。しかし、私が経営陣なら、推奨されるサービス事業の総売上や、何より利益の推定値が示され、それをどうシフトするとどのように利益構造が変わるのかというシナリオ(それももちろん推定で良い)を話してもらえなければ、とても困ることだと思った。だがそのことは表明しなかった。
「経営幹部が会社を潰す!」連載(17)
◆腹をくくって、経営チームを見直せ
そうすると、「社長の次に重要な」役員や部門長などの経営幹部に目を向けることになる。経営会議などの構成員である自社の経営チームの出来・不出来が、決定的に重要というわけだ。
経営チームの人数がたとえば10名近くいる場合、全員が「現在も」有能ということはない。前回(2011.3.8 No.11-044)、「経営幹部は有能だ」と述べた。しかし実は「有能だったから昇進してきた」が真実であり、今現在では「成功の復讐」に捕らわれてしまった幹部と、そうでない幹部がいる。
「成功の復讐」に捕らわれて「今では有能とは言えない」幹部は、排除しなければならない。経営チームに数名、必ずいるはずだ。そんな幹部がいるから、会社の業績が遅滞してしまっているのだ。
2011年6月26日日曜日
「プロフェッショナルリーダーの教科書」(4)書評84
第5講「プロフェッショナルリーダーの条件」を講義してくれたのが、経営者JPを創業した井上和幸氏。本書の帯では「社長のヘッドハンター」と異名されているが、私は「日本一のヘッドハンター」と紹介している。
前職がリクルート・エグゼクティブ社のトップ・コンサルタント。今までに面談したエグゼクティブは6千人を超えたという。経営幹部以上の転職は、エゴンゼンダ-やスペンサー・スチュアートなどの外資系がトップを張っていたものだが、リクルート・エグゼクティブが活動を開始してから、締結案件数で独走してしまった。そして、その枢要を担ったのが井上さんだった。
経営者JPとして独立してからも、昨年日本で一番優秀とする幹部斡旋人材業の賞を、法人と個人コンサルタントの両方で受賞してしまっている。「日本一の社長ヘッドハンター」なわけだ。
その井上講師が説く第5講は、キャリア開発をめざすエグゼクティブや候補にとって大きな示唆に富んでいる。「お墨付き人材とお値打ち人材」など、是非読んで欲しい。
2011年6月25日土曜日
「プロフェッショナルリーダーの教科書」(3)
本書も無事発刊となった。できるだけ多くの経営者やマネジャーの方々に参考にしていただきたい。
第4講「潰されない会社の作り方」を講じてくれているのは、福田秀人氏。同書の帯では「ランチェスター戦略の権威」と紹介され、ランチェスター戦略学会の副会長である。立教大学院の教授などを歴任され、学者でもあられるが、私は「戦う教授」と裏でお呼びしている。
経営者の集まりである経営者ブートキャンプに、例外的に教授である福田さんにお出ましをいただいたのは、福田さんが元経営者、しかも何社も手がけてきているという実践があるからだ。その実践の体験から、本書でも「下手なイノベーション・セオリーに惑わされることなく、ランチェスター戦略を学び、応用しよう」と呼びかけてくれている。
全国470万企業の99.7%は大企業でない。そうであるとすると、北米発の諸々の競争戦略より、福田さんの指摘から学べることの方が大きい。
2011年6月23日木曜日
「経営幹部が会社を潰す!」連載(17)
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ(5)
第8章「パワー・スクール」は大著である本書の中でも、際だって貧弱な章である。
まず、このスクール(学説グループ)を立てるだけの文献の集合が少ない。そして有力な文献がない。それにもかわらずスクール立てをしたのは、ミンツバーグの思い入れがあったからだろう。
しかし、そのミンツバーグ本人からして、しっかりした論理構成が出来ているようには思えない。例えば冒頭に次のような記述がある。
営利組織の目的が、経済市場において「合法的に」競争をすることであるならば、「政治的」というレッテルは、いわゆる合法的ではない行為に対して用いられるに違いないからだ。言い換えれば、非合法的、ないしは完全には合法的ではないと言うことである。
この引用部分には、論理的に二つの破綻がある。一つは、「政治的」という言葉の対義語が(引用部分の前のところを一生懸命探したあげく)「経済的」という語であると理解できる。「経済的」と「政治的」が対義語-対立概念-であるということへの理論立て、説得に大いに欠けている。
次に、「政治的」であるということが「非合法的」あるいは「合法的ではない」ということの証明である。証明以前に、論理が単純に繋がっていない。
この章全体の貧弱さと相まって、大ミンツバーグはこの章を起草しているとき酔っ払っていたのではないか。何しろ大著なのでそんな時もあったのでは。
まず、このスクール(学説グループ)を立てるだけの文献の集合が少ない。そして有力な文献がない。それにもかわらずスクール立てをしたのは、ミンツバーグの思い入れがあったからだろう。
しかし、そのミンツバーグ本人からして、しっかりした論理構成が出来ているようには思えない。例えば冒頭に次のような記述がある。
営利組織の目的が、経済市場において「合法的に」競争をすることであるならば、「政治的」というレッテルは、いわゆる合法的ではない行為に対して用いられるに違いないからだ。言い換えれば、非合法的、ないしは完全には合法的ではないと言うことである。
この引用部分には、論理的に二つの破綻がある。一つは、「政治的」という言葉の対義語が(引用部分の前のところを一生懸命探したあげく)「経済的」という語であると理解できる。「経済的」と「政治的」が対義語-対立概念-であるということへの理論立て、説得に大いに欠けている。
次に、「政治的」であるということが「非合法的」あるいは「合法的ではない」ということの証明である。証明以前に、論理が単純に繋がっていない。
この章全体の貧弱さと相まって、大ミンツバーグはこの章を起草しているとき酔っ払っていたのではないか。何しろ大著なのでそんな時もあったのでは。
2011年6月21日火曜日
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ(4)
「直観力」、だよね。
「戦略サファリ」は大著で、かつ突っ込みどころの多い文献なので、まだ取り上げている。本日は、第6章「コグニティブ・スクール」から。
サイモンの指摘、「直観と判断、少なくとも良い判断は、単に分析が固まって習慣になったもので、認知を通じて早い反応が出来るようになったものである」を引用した上で、「しかし、この見解には疑問の余地がある」とミンツバーグは批判している。
ミンツバーグに同感である。大体、サイモンの「経営行動」はおよそ分かりにくい書物で、私は分かりにくい書物というのは論理立てに欠陥がある、少なくとも素直な流れでないから分かりにくいと思っている。一方、分かりにくい学説を立てる学者を珍重する向きはずいぶんあり、サイモンがノーベル賞を受賞したことと矛盾しない。
ミンツバーグは、サイモンのコメントを紹介した後に対照的な、エドウィン・ランドがポラロイド・カメラのアイデアを自分の中で収斂させた状況のことを紹介している。それは、3才になる娘が、「写した写真をなぜすぐ見れないのか」という疑問を提出したことから、一気に収斂したという。
偉大なアイデアは-それにはとても有効でしかし突飛に思われる経営戦略も含まれる-が創出される契機にはそのようなものが多い。私の場合で言えば、ぼけーっとして、あーでもない、こーでもない、としているときに「あー、これだ」と思いついたことがある。どうもサイモンの方のアプローチではないような。
「戦略サファリ」は大著で、かつ突っ込みどころの多い文献なので、まだ取り上げている。本日は、第6章「コグニティブ・スクール」から。
サイモンの指摘、「直観と判断、少なくとも良い判断は、単に分析が固まって習慣になったもので、認知を通じて早い反応が出来るようになったものである」を引用した上で、「しかし、この見解には疑問の余地がある」とミンツバーグは批判している。
ミンツバーグに同感である。大体、サイモンの「経営行動」はおよそ分かりにくい書物で、私は分かりにくい書物というのは論理立てに欠陥がある、少なくとも素直な流れでないから分かりにくいと思っている。一方、分かりにくい学説を立てる学者を珍重する向きはずいぶんあり、サイモンがノーベル賞を受賞したことと矛盾しない。
ミンツバーグは、サイモンのコメントを紹介した後に対照的な、エドウィン・ランドがポラロイド・カメラのアイデアを自分の中で収斂させた状況のことを紹介している。それは、3才になる娘が、「写した写真をなぜすぐ見れないのか」という疑問を提出したことから、一気に収斂したという。
偉大なアイデアは-それにはとても有効でしかし突飛に思われる経営戦略も含まれる-が創出される契機にはそのようなものが多い。私の場合で言えば、ぼけーっとして、あーでもない、こーでもない、としているときに「あー、これだ」と思いついたことがある。どうもサイモンの方のアプローチではないような。
経営者ブートキャンプのサイトが開設
2011年6月20日月曜日
「プロフェッショナルリーダーの教科書」(2)
第3講を講義してくれているのが池本克之氏。
池本さんは、化粧品のドクター・シーラボ社を通販に特化させ大成長させ、上場させた。その後ネットプライス社の経営を引き受け、これも上場に導いた。現在は「経営プロコーチ」としてコンサルタントとして活躍中。
池本さんの得意分野はネットや通販なわけだが、それは外に対しての販売チャネル形態にすぎない。もちろん経営者として企業という全組織を率いていたわけだ。池本さんの講義をクラスで拝聴していると、そのお人柄から来る素晴らしいリーダーシップがよく分かる。
池本さんの個人としての基本的な哲学は「困っている人を助ける」ということだという。そこから醸成されてきた社員の巻き込み方はとてもユニークだが有効なものである。いわく、「社員と友達になろう」「朝早く行きたくなる職場にしよう」「小さなことを多数回祝おう」他である。
このようなアプローチで、社長就任で売上げを400倍にしたわけだ。400倍に売上げを伸ばした経営者など、上場企業で他に出現したのかしら?
2011年6月19日日曜日
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ(3)
第7章「ラーニング・スクール」から何点か。
こんな記述が。
「なぜなら、現場の行動に最も密接に繋がっている部隊の最前線が、戦略に対して最も大きい影響力を持つからだ」
どうしてそんなことが言い切れるのだろうか。戦略に対して影響力を持つモデルはいくらでも有り得るし、事業会社により異なるだろう。上述のように断定できるのなら、次の章の「パワー・スクール」での議論、すなわち「誰が戦略決定に影響力を行使するのか」などは不要と成るはずである。
戦略形成プロセスのところでの「ホンダの北米マーケットにおけるオートバイ市場参入」のケースがおもしろい。
BCGが当初分析・報告したのが、ホンダはその参入に当たり「注意深く考え抜かれた計画的戦略」によりそれを実行・成功したという。1975年の報告であった。
ところが1984年のリチャード・パスカルの後追い研究が発表された。パスカルは実際にホンダで現地での参入を実施したマネジャーにインタビューして確かめたという。それによれば「特に戦略があったわけではないのです」、と。
当初ホンダは北米で中型オートバイを売ろうと考えていたが、全くだめで、担当マネジャーが事務所の周りの足として使っていたスーパー・カブ(50cc)が現地で話題になり、売り出したところ、爆発的な人気を呼んだという。つまりMarket Pullそれも偶然の産物で、競争戦略論の領域でなかったという。
最初のBCGレポートは絵に描いたような(虚構の)競争戦略を叙述し、皮肉なことにパスカルの報告で覆されるまではハーバードなどの名だたるBスクールで「参入戦略の典型的な成功事例」教材として教えられたと言う。
著名コンサルの中身が透けて見える話ではないか。
こんな記述が。
「なぜなら、現場の行動に最も密接に繋がっている部隊の最前線が、戦略に対して最も大きい影響力を持つからだ」
どうしてそんなことが言い切れるのだろうか。戦略に対して影響力を持つモデルはいくらでも有り得るし、事業会社により異なるだろう。上述のように断定できるのなら、次の章の「パワー・スクール」での議論、すなわち「誰が戦略決定に影響力を行使するのか」などは不要と成るはずである。
戦略形成プロセスのところでの「ホンダの北米マーケットにおけるオートバイ市場参入」のケースがおもしろい。
BCGが当初分析・報告したのが、ホンダはその参入に当たり「注意深く考え抜かれた計画的戦略」によりそれを実行・成功したという。1975年の報告であった。
ところが1984年のリチャード・パスカルの後追い研究が発表された。パスカルは実際にホンダで現地での参入を実施したマネジャーにインタビューして確かめたという。それによれば「特に戦略があったわけではないのです」、と。
当初ホンダは北米で中型オートバイを売ろうと考えていたが、全くだめで、担当マネジャーが事務所の周りの足として使っていたスーパー・カブ(50cc)が現地で話題になり、売り出したところ、爆発的な人気を呼んだという。つまりMarket Pullそれも偶然の産物で、競争戦略論の領域でなかったという。
最初のBCGレポートは絵に描いたような(虚構の)競争戦略を叙述し、皮肉なことにパスカルの報告で覆されるまではハーバードなどの名だたるBスクールで「参入戦略の典型的な成功事例」教材として教えられたと言う。
著名コンサルの中身が透けて見える話ではないか。
「プロフェッショナルリーダーの教科書」山田修 他 (1) 書評84
東洋経済新報社、6月23日発刊。自著に書評を加えるのもなじまないので、共著者を順次紹介。私との関係に焦点を当てる。4名の共著者が居るので、4回にわたり書く。
新 将命 氏:「伝説の外資カリスマ経営者」
私が20代の終わりの頃(つまり30年以上も前、コーニング社に勤めていた時代)新さんのお名前は既に外資の世界でとどろいていた。
「日本コカコーラにすごい日本人が居て、30代の部長なのに年収xx貰っているんだって」
と同僚の平社員から聞いたのが初めてだった。xxとは2千万円だったか。とにかく
「スゲー」
と思い、
「いやー、そんなになれればいいね」
「でもとてもそんなの無理だ」
などという会話があったことを記憶している。
私がフィリップスライティング社の社長に着任したとき、新さんは日本フィリップス社で代表取締役副社長だった。後者は日本におけるフィリップスグループの地域本部会社(コーポレート)だった。それから2年ほど直接親しく経営を教えて貰い、それから兄事させてもらって今に至っている。私の人生のロールモデルだ。経営し、話し、書き、教えて上げる。
そのご人徳の故に、様々な有為な人材が新さんを取り囲んでいて、沢山の人を紹介して貰った。別の共著者である井上和幸さんも新さんを通じての出会いだ。
新さんは、私たち後輩経営者にいつも励ましと勇気を与えてくれる。私にとっては、現世にいらっしゃる最後のメンターでもある。どうかいつまでもお元気で、私たちの経営者ブートキャンプ運動を見守っていただきたい。
2011年6月18日土曜日
2011年6月17日金曜日
三遊亭 勉強会 小咄三題
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ(2)
「戦略サファリ」での10のスクールの一つに「アントレプレナー・スクール」が立てられている。その中で「起業家的人格」という項目があり、「企業創設者」という研究(コリンズとムーア)が次の知見を提出したと紹介されている。
「子供の頃から何かを成し遂げること、独立することに対して強い欲求を持っていた、タフで実践主義の人々の姿である。それぞれの起業家たちは、人生のある時点で非常に困難な状況に直面し(「アイデンティティの崩壊」)、そこが独立の契機となったのである。」
これは私のことかと思うほど、描写が立ちふさがった。ただ、私は家族から独立したのだけれど、ビジネス的に独立したり起業したわけではない。
経営者としての私についての研究インタビューが今年発表されていて、それは本日のブログ・タイトルをクリックするとリンクが張ってある。
2011年6月16日木曜日
「経営幹部が会社を潰す!」連載(16)
◆戦略力は学ぶもの
幹部に対して一番期待するのは、戦略の立案とその展開力である。
有効な戦略は、まず自社や自業界以外のことを知ることからはじまる。本を読んだり異業種交流をしたりして、「セオリーと知識」を仕入れさせなければならない。次に、自社や自部門の現状を分析し、直面している重要な経営課題を識別・認識する能力も必要だ。
課題認識ができたら、それに対する可能な限りの解決策を想定し、その中から最も有効と思われるものを選択する。これが戦略となる。これらのことをコミュニケータブルで説得力のあるステップにまとめたものを、「戦略シナリオ」と私は呼んでいる。
この一連のステップは、実は学習により幹部たちに獲得してもらえる。下の<図>は、私が提唱・伝授している「戦略カードとシナリオ・ライティング」による戦略立案の概念図である。市販の情報カードを使い、「目標」「課題」「解決策」「派生問題と対処」などの各ステップで、アイデアを戦略カードに書き込む。それぞれ多数のカードを出し、絞り込んでゆく。残ったカードがそのまま戦略シナリオになる。これを論理的にかつ想像力をもって膨らませ、創造・展開していく、という手法だ。
是非参考にして、貴社の幹部の皆さんの能力開発に役立ててほしい。
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ(1) 書評83
齋藤嘉則 監訳、東洋経済新報社、1999年。原書は1998年。
20世紀における戦略セオリーのカタログと思えばよい。それまでの先行文献や研究を10のスクール(グループ)に分けて、それぞれの特徴や批判を掲げている。ミンツバーグの前には戦略論というのは数十年の歴史しかないので、とても微に入り細に入り、という具合だ。参考文献として掲げられているものも膨大で、この時点までの戦略セオリーの事典としての性格も強い。
大著であることもあるし、網羅的な文献である。経営はエキサイティングな行為であるが、経営学は退屈な営為であることが理解できる。国文学の専門分野で、「研究史の研究」がそうだった。源氏物語で言えば、あれが書き上げられたとたんに興味の対象となり、それはすなわち研究の始まりで、源氏物語の研究は何と1千年もの歴史がある。書かれた文献は無慮数千件(たぶん万の単位の研究文献!)。というわけで「研究史の研究」という学問分野が存在するに至る。
「戦略サファリ」が取り上げている研究史の時間枠は数十年しかないので、その網羅性は恐ろしく、網羅すれば網羅するほど退屈な分類作業となる。
ミンツバーグは戦略論におけるグル(教祖)の一人だそうだが、自分のオリジナルをはっきり打ち出せないこのような学説紹介作業は、学者としてもエキサイティングでない領域だと忖度する。
とはいえ、後学の私たちには益のある作業で、つまり誰かがやってくれればありがたい便利な整理なので、この本の整理に触発されて後数回取り上げることにする。
2011年6月13日月曜日
三遊亭圓窓師匠に弟子入り
弟子入り、といってもインサイトラーニング社縁の講師たちで本日から始まった落語習得会。参加者はインサイトラーニング社の箱田忠昭御大(社長)初め、十名。「講しっ子連」という名前を貰った全6回、今日からは第2期が始まり、それに参加させて貰った。
師匠が見本として4席の小ネタを実演してくれる。実に贅沢。私は古典落語の「変わり目」を割り当てられる。
小ネタとはいえ、20分以上の、デビュー演目としては大ネタの部類。ちなみに私は全く落語の経験や素養などはない。
日本一の講演セミナー講師として隠れもない箱田先生がこのキャリアにしてなおこのような勉強会を企画、主宰されていることにまた感心。私も「いい年をして」などと思わず、素直に勉強の機会を喜びたい。「家で大きな声を出して稽古するように」と師匠から指導された。さて、どんな反応が出ることやら。
2011年6月12日日曜日
「シェア」ボッツマン+ロジャース 書評82
NHK出版、2010年12月刊。経営者ブートキャンプ第3期生からの「他の受講生に読んで貰いたい私からの3冊」で出て来た本。
とてもおもしろい。「おもしろい」ということは「知らないことを沢山教えて貰えた」という意味。
自転車を地域内で共同で使い回すという例などは知られてきているが、そのような実社会での共同消費や貸し借りなどの事例から始まり、メインな内容としてはインターネットを介在したそのようなサービスを多数紹介し、その背景を解説している。
インターネットの発明は、第2の産業革命だったわけだが、私たちはその黎明期に生きていて、この新しい産業革命がどの方向に進んでいくのか不透明感を持っていたかと思う。
インターネットはますメールなどの導入や、サイト検索などにより知識の同時性や通信の即時性を導入した。
次の段階としては、種々のSNSの普及により人々の結びつきをつまり、社会的な変革をもたらしつつある。
中近東ではこれらのビークルを背景にして革命まで起こってしまっている。
そして、本書では消費行動ーそれは供給する側からみればビジネス行動-まで大きく変容し始めていることを示した。私は5年ほど前に
「Web2.0などと言われ始めているが そんなものは実態としてどこにあるのか、大きな現象として起きているのか」
と疑問を呈した。本書を読むと、インターネットを媒介として個人や消費者がとても大きな規模でマルチに直接繋がり始めたことが分かる。第2の産業革命はこの方向に進んでいくのだろうか。
2011年6月11日土曜日
修羅場の定義
本日は、経営者ブートキャンプ第3期の2講目。クラスの一コマで「経営者にとっての修羅場体験」を話す。こんな単元は経営学にはないので、私の体験談を開陳した。
「修羅場」の定義としては次を掲げた。
次の三つを兼ね備えた出来事。
― 決定的な負(ビジネス上、キャリア上)の可能性がある
― 深刻な心理的なプレッシャー
― 予断を許さない状況の持続 (数週間以上)
「修羅場」は経営者に何を残すか
それを体験して経営者として勝ち残れれば次の幾つか、あるいは全部が起こる
― 経営に対する価値観の確立
― プレッシャー状態への強靱な耐性
― 意思決定のスピードの向上、確信感の向上
― 自身と、外部から(部下も含む)の評価の高まり
問題は、「修羅場」など求めても体験できるものではないこと、そして上述のような資質が得られたとしても
重ねて経験したいものではないこと(苦痛を伴う)
2011年6月10日金曜日
学会の部会で活発に討議する
2011年6月9日木曜日
「経営幹部が会社を潰す!」連載(15)
◆「成功の復讐」に捉われる幹部たち
企業の中で、20年、30年という長い時間枠での選抜を幹部たちは駆け上がってきた。それには、積み上げてきた貢献があったわけだ。だから幹部たちは自信にあふれている。自信があるから声も出るし、リーダーシップに優れている。また、チームを率いて実績を出してきている。だから幹部たちは、コミュニケーション能力にも秀でている。
ところが、これらの過去の成功体験が、今となっては曲者なのだ。
というのは、経営者や幹部となると、その役割は、会社の進む方向を見極め決めること、すなわち経営戦略を立てることに大きな比重が置かれる。戦略とは、わかりやすく言えば「ビジネスのやり方」だ。つまり、「戦略を考えろ」と言うことは、「やり方を変えろ」と言わざるを得ない状況に企業が直面していることを意味する。
それなのに幹部たちは、「成功の復讐」とも言うべき「成功体験」に捉われて、「変われない」「考えつかない」「変えさせない」ことが多い。
「帝王学 貞観政要の読み方」山本七平 書評81
日経ビジネス文庫。オリジナルは1983年刊。
学習院大学在学時代、国語学の演習で大野晋先生が冒頭に、「日本人とユダヤ人を読んだ。いやー、こんなにおもしろい本は久しぶりに読んだ」と高揚して話してくれた。大野先生ほどの大碩学・大知性を興奮させた書物はいかなるものがと、早速私も読了したことを覚えている。
ユダヤ人やキリスト教に関する深い造詣を元に評論活動を出発させた著書がその後日本人論へと進み、さらに漢籍にまで守備範囲を広げていたことはおぼろに知っていたことではあるが、「日本人とユダヤ人」以降のものは読まず嫌いでいた。基本的に評論には興味がない。
今回、経営者ブートキャンプの参加社から「推薦図書」の一つに挙げられたので文庫版を入手、読了した。内容よりも、著者の知識人としての幅の広さに感銘を受けた。漢籍とキリスト教では洋の両極であり、両方を自家薬籠中のものとして論じることは難しい。例えばあの司馬遼太郎でさえ、欧米についてのコメントは余り足に地が付いていたものとは言い難い。
浅見貞男という聖書学者は、山本七平が掲げた論点の幾つかについて正確度に掛けることなど批判しているが、学者による重箱の隅の突っつきと言うべきだろう。今回の図書を読了しての山本七平の知性の太さに対しての驚きは、イザヤ・ベンダさんとしての登場の時と変わらない。
2011年6月7日火曜日
「経営者の器」連載記事 3回目を書く
2011年6月3日金曜日
「組織論」桑田耕太郎・田尾雅夫 書評80
「組織デザイン」沼上幹 書評79
「経営幹部が会社を潰す!」連載(14)
りそなマネジメントスクールで戦略・組織論を担当
クライアント同士を紹介
経営者・役員の皆さんに戦略立案指導をした地方クライアントが飲食系のフランチャイズを展開している。今年2月のフランチャイズ・ショーに出展したところ、問い合わせ件数で上位数社に入った注目チェーンである。
一方、部長8名を預かり、部門戦略立案兼部長研修を半年に展開してきた東京のクライアントがあった。こちらの方は、従来のメインの事業以外での展開を模索していた。
私は、後者が既に保有している経営資源が、前者のフランチャイズ・ビジネスにとても適していると見た。今週、前者でFC開発を担当している取締役の方を帯同して、後者の社長以下を訪問、紹介の労を執らせて貰った。
2時間弱のミーティングとなり、両者とも興味の度合いが高まった。両方とも私が指導した会社同士なので、実際のビジネスが始まることになればとても喜ばしいこととなる。期待している。
数兆円企業の小会社経営者への講演依頼
6月の株主総会で、今年も多数の新取締役が選任される。新経営者、新役員が輩出される季節がやってきた。
日本を代表する某大手企業から、関連小会社での新経営者、新役員たちに向けてこの時期に開講している6日間セミナーの最終講での講話を頼まれた。出講は7月であるが、今週その打ち合わせを本社側の人事部と行う。
本社から出向というか、派遣される形の新経営者の皆さんだという。私の体験談、エピソードを出来るだけ話して欲しい、とのコトなので「新しい会社で私がやったこと」というのをタイトルにしようかと思っている。
ご本社の部長職と、小会社といえど社長では、その実感は恐ろしく違う。組織の大小に関係なく、トップというのは一人しか居なくて、とても特殊なポジションなわけだ。これはやはり体験者が話すのが一番良いと思う。
皆さんの参考になる話として、そのプログラムの締めくくりとなるべく準備をするつもりだ。
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