宮川選手の記者会見における「陳述書」で時系列的に「誰が何を言ったか」を追っていけば、「故意の暴力の強制」は明々白々といえよう。事前にその指示は井上コーチを通じて行われ、宮川選手がその趣旨を内田監督に確認して「決意」を表明している。試合の前には上級生OBからも念を押され、試合後には監督やコーチから叱責されることもない。指示を実行した組織の「鉄砲玉」に対する態度だ。
問題が大きくなり、宮川選手が父親とともに内田監督、井上コーチに「真実を明らかにさせてほしい」と申し入れたときも、監督は「しばらく待ってほしい」とした。つまり、指示があったという事実を否定していない。
これらの事実の指摘、列挙を聞いた上で、日大広報部はなぜ上述のようなコメントを出せるのか。広報部も含めて日大という組織には、組織運営について、あるいは社会的なモラルの保持において大きな欠陥があると思わざるを得ない。
この問題で内田元監督擁護のようなコメントを出し続けている日大広報部も、担当者個人ベースでは「無理筋」の見解を出さざるを得ないことに矛盾を感じているかもしれない。というのは、関学大の被害者選手側が21日、大阪府警に被害届を提出したとき、次のような報道があった。
「千代田区にある日大本部には多くの報道陣が詰めかけ、日大側のコメントを求めたが、なぜか守衛の男性が対応。『取り次げません。「記者会見はありません」と伝えてくれと言われてます。(広報対応は)「物理的に無理」とのことです』と、広報機能が麻痺していることを伺わせた」(21日付デイリースポーツ)
(この項 続く)
2018年5月31日木曜日
2018年5月30日水曜日
頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(2)
宮川選手と日本大学、どちらが信じられるのか
まず、その日大のコメント全文は以下の通り。
「アメリカンフットボール部・宮川選手の会見について
2018年5月22日
本日、本学アメリカンフットボール部の宮川泰介選手が、関西学院大学フットボール部との定期戦でルール違反のタックルをし、相手選手にけがを負わせた件につきまして、心境を吐露する会見を行いました。厳しい状況にありながら、あえて会見を行われた気持ちを察するに、心痛む思いです。本学といたしまして、大変申し訳なく思います。
会見全体において、監督が違反プレーを指示したという発言はありませんでしたが、コーチから『1プレー目で(相手の)QBをつぶせ』という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味です。誤解を招いたとすれば、言葉足らずであったと心苦しく思います。
また、宮川選手が会見で話されたとおり、本人と監督は話す機会がほとんどない状況でありました。宮川選手と監督・コーチとのコミュニケーションが不足していたことにつきまして、反省いたしております。
日本大学広報部」
これはあまりに内田前監督サイドを擁護しようとする強弁であり、日大の広報部が本当にこんなことを信じて書いたのか、大いに疑問である。
(この項 続く)
2018年5月29日火曜日
頑なに内田前監督を擁護する日大経営陣は機能麻痺…巨大学校法人として終わっている(1)
関西学院大学の選手に、悪質なタックルを仕掛けて負傷させた問題で、緊急会見を開いた日本大学の内田正人前監督と井上奨コーチ(日刊現代/アフロ) |
5月6日の日本大学対関西学院大学のアメリカンフットボール定期戦で、プレーと関係のないところで関学大のQB(クォーターバック)にタックルを行った日大の宮川泰介選手が22日、謝罪会見を行った。宮川選手は悪質なタックルをした理由について、内田正人前監督と井上奨コーチから「1プレー目で相手のQBを潰せ」「潰したら(試合に)使ってやる」などと指示を受けていたことを公表した。
これを受けて、同日夜に日大広報部がコメントを発表した。しかし、その内容は内田前監督や井上コーチを擁護しようとする組織防衛的なもので、何も新しい情報や見解のない、空しいものとしかいいようがない。
(この項 続く)
2018年5月27日日曜日
若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(4)
また、日大アメフット部や内田監督らへの思いを尋ねる質問については、「僕は今日ここに来たのは謝罪をするため、真実を話すために来たので、今後のチームのことなどは僕の口からいうべきではないと思います」と回答。さらに自身の今後について聞かれると「もちろん、アメフットを続けていくという権利はないと思っていますし、この先、アメフトをやるつもりもありません」と競技復帰を明確に否定した。TOKIOの山口達也メンバーが先の謝罪会見で「席があれば、またTOKIOとしてやっていけたらなあって」と未練がましいことを口走ってしまい、他のメンバーからさえバッシングされたのとは大きな違いだった。
宮川選手の会見を受け、関学大や被害者側はその反省する態度を好意的に受け止めているようだ。
「日大選手(宮川君)の行為そのものは許されることではないが、勇気を出して真実を語ってくれたことには敬意を表したい。立派な態度だった」(関学大アメフト部の鳥内秀晃監督)
「今回の会見を見て刑事告訴も検討せざるをえない状況だ。24日の日大からの回答を待って、家族、本人、関学アメリカンフットボール部とも相談して結論を出したい。日大選手(宮川君)は自分のしてしまったことを償い、再生していただきたい。勇気をもって真実を話してくれたことに感謝する」(被害選手の父、奥野康俊氏)
刑事事件として立件されれば、宮川選手は加害者として傷害罪に問われ、有罪となる可能性もある。そうなれば20歳の将来ある若者の経歴に、大きな汚点となってしまう。選手としても学生日本代表に選ばれるほどのこの有望選手は、すでに退部の意思を表明している。
記者会見では好青年という印象を世間に与えた宮川選手を、そこまで追い詰めた内田監督と井上コーチの責任は、どうなるのだろうか。
(この項 終わり)
宮川選手の会見を受け、関学大や被害者側はその反省する態度を好意的に受け止めているようだ。
「日大選手(宮川君)の行為そのものは許されることではないが、勇気を出して真実を語ってくれたことには敬意を表したい。立派な態度だった」(関学大アメフト部の鳥内秀晃監督)
「今回の会見を見て刑事告訴も検討せざるをえない状況だ。24日の日大からの回答を待って、家族、本人、関学アメリカンフットボール部とも相談して結論を出したい。日大選手(宮川君)は自分のしてしまったことを償い、再生していただきたい。勇気をもって真実を話してくれたことに感謝する」(被害選手の父、奥野康俊氏)
刑事事件として立件されれば、宮川選手は加害者として傷害罪に問われ、有罪となる可能性もある。そうなれば20歳の将来ある若者の経歴に、大きな汚点となってしまう。選手としても学生日本代表に選ばれるほどのこの有望選手は、すでに退部の意思を表明している。
記者会見では好青年という印象を世間に与えた宮川選手を、そこまで追い詰めた内田監督と井上コーチの責任は、どうなるのだろうか。
(この項 終わり)
2018年5月26日土曜日
若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(3)
将来をつぶされた加害選手も被害者だ
企業や有名人の不適切行動に関する謝罪会見は多く、最近ではTOKIOの山口達也メンバーのわいせつ行為をめぐる謝罪会見が記憶に新しい。そうした会見のたびに危機管理専門家やコンサルタントが実施方法やメッセージの出し方などについて、批判的な指摘を行っている。今回の宮川選手の謝罪会見は、ここ数年でもっとも成功した例だ。
成功した1つ目の要因は、会見の趣旨について「謝罪をしたい」そして「真実を明らかにしたい」とはっきりさせ、それを何度も繰り返したことだ。2つ目は、方法論として「陳述書」という書面をあらかじめ用意して、これを読み上げるというかたちをとったことだ。それは、問題が起きた試合の前の段階から、日付入りの時系列で起きた事実と自らの感想が書かれており、登場人物の個人名も記され、十分に説得力があり、人々が経緯をよく理解できた。
3つ目の理由として、宮川選手が「そもそもの指示があったにしろ、やってしまったのは私です。人のせいにするのではなく、やってしまった事実がある以上、私が反省することだと思います」「自分で判断できなかった、自分の弱さだと思う」などと明言して、他の誰も非難しようとしなかったことだ。記者からの質問で、内田監督や井上奨コーチへの感想を何度も求められた。それは、監督らへの非難コメントを誘導するようなものでもあったが、宮川選手は監督、コーチ、あるいはアメフト部を非難することなく、「監督とコーチ陣からのプレッシャーがあっても、自分で正常な判断をすべきだった」などというコメントに終始した。
(この項 続く)
2018年5月25日金曜日
若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(2)
陳述書によれば、5月11日に宮川選手と両親が内田監督と面会し、監督による反則指示の公表を求めたが拒否されたという。退部も決意していて思い悩んだ宮川選手の父親が弁護士に代理人を依頼したのが、15日だったという(代理人の冒頭説明)。18日には、選手と家族だけで被害者である関学大選手への謝罪訪問を実施していることから、代理人を選任したことで、宮川選手が“日大の呪縛”から逃れ始めたように私は理解した。
日大は事実関係の確認作業などを進めて24日をメドに改めて関学大に回答するとしていたが、代理人は「監督、コーチから事実を聞きたいというお話は、今までただの一度もありません」と話し、部としての事情聞き取りの予定がないことから、急遽22日の会見をセットしたと説明した。
記者会見の段取り、準備も周到なものだった。会場を提供した日本記者クラブは、通例では会見に臨むのは当事者本人のみで、弁護士などの同席を認めていないが、「本人が20歳を超えたばかりの未成年に近い青年なので」(代理人)例外として認められたという。記者からの質問に適宜割って入るなど、宮川選手にとっては心強い存在だったであろう。何しろ、20歳の青年が突然100名を超える報道陣と多数のテレビカメラの前に立たされたのだ。大きな試練であり、勇気がなければできることではない。
(この項 続く)
日大は事実関係の確認作業などを進めて24日をメドに改めて関学大に回答するとしていたが、代理人は「監督、コーチから事実を聞きたいというお話は、今までただの一度もありません」と話し、部としての事情聞き取りの予定がないことから、急遽22日の会見をセットしたと説明した。
記者会見の段取り、準備も周到なものだった。会場を提供した日本記者クラブは、通例では会見に臨むのは当事者本人のみで、弁護士などの同席を認めていないが、「本人が20歳を超えたばかりの未成年に近い青年なので」(代理人)例外として認められたという。記者からの質問に適宜割って入るなど、宮川選手にとっては心強い存在だったであろう。何しろ、20歳の青年が突然100名を超える報道陣と多数のテレビカメラの前に立たされたのだ。大きな試練であり、勇気がなければできることではない。
(この項 続く)
2018年5月24日木曜日
若き有望アメフト選手を加害者に仕立てた「日大の異常な経営体質」…逃げ回る田中理事長(1)
関学との試合で悪質な反則行為を行ったことに関し、記者会見をする日本大学宮川泰介選手(日刊現代/アフロ) |
関西学院大学とのアメリカンフットボール定期戦で相手側のクォーターバック選手に対して故意の反則タックルを仕掛けた日本大学の選手が22日、謝罪会見を開いた。本人の反省、謝罪は真摯で誠意あるものとして世間に受け取られたが、他の加害関係者、ひいては組織としての日本大学の対応は稚拙で、いたずらに時間を要している。結果、誠意ある対応がないと関学大側から指摘されている。
本件で反則行為の指示を出したとされる内田正人前監督の責任はもちろん重いが、その監督責任者で組織上の上司である田中英壽理事長は、まったく表に出てこない。日大の経営ガバナンスはどうなっているのか。
タイミングのよい記者会見
問題の反則行為を行ったのは、日大3年生の宮川泰介選手。その前日に実施が決定したという会見は、冒頭の代理人弁護士からの経過説明を含め、1時間という長時間にわたった。宮川選手は詳細な「陳述書」を用意して、日付ごとに時系列で出来事を報告し、自身の時々の感懐を明かした。陳述書によれば、、、
(この項 続く)
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