2013年3月30日土曜日

『親父の小言』 大聖寺暁仙和尚 書評168(5)

親父じゃあないぞ!(ジム・コリンズ)
無数にある「経営行動」の中から、経営者が「当社の成功に特に重要だ」と自分で思って、意識して心の中あるいは会社全体に表して標語化したものを「経営規範」と言います。

『ビジョナリー・カンパニー』が導き出した経営規範群は、北米の大企業の中でも抜群に成功した会社のもので、日本で私たちが経営する会社の環境や規模と余りにかけ離れています。しかも、その抽出法についても根強い批判、疑問があります。独自の家訓や社訓を作成し、掲げること自体はとても良いことだと思います。しかし、それらは根源的に経営者自身の価値観の体現でなければなりません。借り物の経営規範は役に立たないということを心に銘じてください。

世に知られた経営セオリーの中でも特に有名なものについて、上記の様な判断と解説をしてみました。それが今回の新刊、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(山田修、ぱる出版)です。経営戦略に興味のある方には参考となるはずです。ご一読を御願いします。
また出版記念講座を4月11日(木)に行います。2時間講座。詳細は下記から。
 
(この項 終わり)

2013年3月29日金曜日

『親父の小言』 大聖寺暁仙和尚 書評168(4)

例えば、ビ-①「社運を賭けた大胆な目標をもつ」より親父-①「働いて儲けて使え」の方が重要だ、有効だと信じる経営者仲間をどう説得できるというのでしょう。あるいはビ-②「カルトのような強力な企業文化の構築」の方が親父-②「初心は忘れるな」より優れている、あるいは優先するとどう証明すればよいのでしょうか。そもそもビ-②の方が親父-②より価値があるのか。
 
ビジョナリー・カンパニー・グループと親父の小言・グループでそれぞれの優先を判断する、ましてや証明することは至難な技です。つまり、そんなことは結局経営者個々人の価値観の問題だということがわかります
 
(この項 続く)

2013年3月28日木曜日

『親父の小言』 大聖寺暁仙和尚 書評168(3)

まず「価値」ではなく「価格」ということになると、それは「親父の小言」に軍配が上がります。『ビジョナリー・カンパニー』は売価2,039円ですが、「親父の小言」手ぬぐいは420円でした。
 
さらに前者は読了するのに少なくとも数日間はかかるでしょうが、後者は広げてすぐに笑えます。情報取得に要する時間消費という効率面では圧倒的に「親父の小言」が勝ります
 
でも出典をこう種明かしをすると、「価値」という面ではどうも『ビジョナリー・カンパニー』の方があるように思えるでしょう。何しろ、ベストセラーとして世界中の経営者に迎えられてきたのですから。しかし、、、
 
(この項 続く)

新刊を出版前に進呈(サイン付き)!


http://www.keieisha.jp/seminar130411.html
本書の内容+αを集中講義!◎どこへ消えたか、あの『エクセレント・カンパニー』たち…。
◎コダックは滅び、ユニクロは栄えた。
どの戦略を捨て、どれを使うか。そこで経営者の力量が試されます。
今回の特別講座では山田修先生に、マイケル・ポーターから楠木建教授まで、
著名戦略セオリーの有効性と限界を一挙読み解きます!

ポーター以来、世に溢れてきた経営セオリーで主要なモノを取り上げ、
それぞれの限界や実経営にそぐわない点を挙げ、理由を解説。
さらに実経営に貢献できる経営セオリーを指摘し、その活用法を紹介

新刊を出版前に進呈(サイン付き)!

2013年3月27日水曜日

『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』 予約開始 (5)

4月13日発売予定。

アマゾン予約開始。
http://www.amazon.co.jp/dp/4827207879

       どこへ消えたか、あの『エクセレント・カンパニー』(はじめに)      

第1章 「使える戦略」で読むユニクロの成功とコダックの倒産
第2章
伸びる会社は戦略で勝負している
第3章 「戦略カードとシナリオ・ライティング」で自社戦略を立てる
第4章 社員に火を付ける戦略とは
第5章 使えない、大企業御用達の戦略セオリー
第6章 SWOTは分析ツール、戦略ではない
第7章 神様、マイケル・ポーターがやって来た
第8章 学者は新学説を、コンサルタントは請求書を求めて



これで語れる、立てられる(終わりに)

(この項 続く)

『親父の小言』 大聖寺暁仙和尚 書評168(2)

『ビジョナリー・カンパニー』(J.コリンズ他、日経BP出版センター、1995年)が主張する「時代を超える生存の原則」は、次の6つです。


     社運を賭けた大胆な目標をもつ
     カルトのような強力な企業文化の構築
     実験精神とリスクを厭わない姿勢を養う
     人材を育成し、生え抜きの経営陣とする
     決して満足しない
     意思決定と行動を導く基本理念を持つ
 
さてこれらの「原則」がどれだけ「親父の小言」より優れているかというと、
 
(この項 続く)


『親父の小言』 大聖寺暁仙和尚 書評168(1)

先日温泉旅行をした折りに土産物屋で見つけた手ぬぐいに刷られていた金言集。後で調べたら1928年にまとめられたと言う(一説、の類か)。

手ぬぐいには38の「小言」があったが、次のような項目は経営にも通じる。

     働いて儲けて使え
     初心は忘れるな
     借りて使うな
     貧乏は苦にするな
     家業には精を出せ
     火事は覚悟しておけ
     家内は笑って暮せ
 
さてこれらの「経営金言」を『ビジョナリー・カンパニー』のそれと比べると、

(この項 続く)
 

2013年3月26日火曜日

新将命さん、箱田忠昭さんと会食

箱田忠昭さん
新将命(あたらし・まさみ)さん
お二人と久しぶりの会食。三人会としてほぼ半年おきに会う。箱田さんには30年来、新さんとは25年来、兄事させていただいている。

箱田さんから「今年に入りすでに4冊」のご本をお出しになったとうかがう。新さんは近々「新全集」というか「ベスト」的な刊行物をお出しになるとか。

私を含めて3人会で160冊以上の書籍を出してきた。もしかして生涯200冊が実現されないか。お二人ともこれからもお元気で、私など後輩を指導していただきたいと思うや切である。



2013年3月25日月曜日

『V字回復の経営』三枝匡 書評167(4)

本書の企業再生譚を、私がフィリップス・ライティング社で展開したそれに引きつけて考えてみた。
最大の違いは事業規模かな。本書でのアスター事業部は売上げ410億円、710名とある。私のケースは、回復後200億円、300名。私の方が半分か。

読み始めたとき、モデルが東証1部でというので、規模感が違うのかなと思った。しかしフィリップスの親会社は数兆円規模なのでここと遜色ないどころか、ということだ。

このケースにおける「日本の会社の面倒くささ」は、新しい経営戦略の策定作業と、その導入過程のところで観察できる。私が一人でやったことを何人かで分担して策定しているし、事業部内説得にも時間がかかっている。「徹底的な新しいやり方」を「崖っぷち」で志向している割には「雇用には手を付けない」などと悠長なことも言っている。

とはいえしかし、それらのことは本書の優秀さを大きく損なうものではない。類書が私の作品くらいしか見当たらない状況で、大きな味方を見いだした感が強い。納得感、賛同の方がずっと大きい。

(この項 終わり)

『V字回復の経営』三枝匡 書評167(3)

美点の第2は、回復プログラムの「時間枠」が示されていることだ。

売上げと利益の減少という負のスパイラルに陥っている企業にとって残された時間は少ない。というのは、その負のスパイラルは加速するものだからだ。拱手傍観などしている雇われ経営者が任に当たっていれば、その企業はあっという間に地獄の淵を覗く。

三枝氏が2年という時間枠で回復プログラムを走らせようとしたことは正しいし、「駄目なら廃業だ」と背水の陣を張ったのも実に正しい。プログラムの策定に6月というのが時間がかかったかな、と思うがそれは僅かな瑕疵と言うべきだろう。

(この項 続く)

2013年3月24日日曜日

『V字回復の経営』三枝匡 書評167(2)

本書の美点の第一は、文章がうまいということだ。構成も優れている。著者が戦略家として秀逸な証左だ。

経営戦略というのはまず言語行為である。何が問題で、どんな新しいやり方を導入するか、それを言語パッケージ化して、戦略プログラムが確定する。

そうしたら、そのプログラムが組織で実践されるように、しっかり伝わるように構成、表現しなければならない。これらの一連の戦略策定行為は、思索や概念を明示化するという言語行動なのだ。

(この項 続く)

2013年3月23日土曜日

『V字回復の経営』三枝匡 書評167(1)

日経ビジネス文庫。原書は2001年に日本経済新聞社刊。

優れた企業再生本だ。著者はボストン・コンサルティング・グループで日本第1号のコンサルタントとして出発した。

企業再生案件を幾つも手がけた後、2001年に電子部品メーカーのミスミに招かれ、現在は代取会長。ミスミを、2012年までに売上高2倍以上、営業利益3倍以上に成長させている。刮目すべき経営者だ。

さて本書の美点の第一は、

(この項 続く)

2013年3月17日日曜日

『本当に使える経営戦略』 出版記念特別講座 4月11日(木)


http://www.keieisha.jp/seminar130411.html
本書の内容+αを集中講義!◎どこへ消えたか、あの『エクセレント・カンパニー』たち…。
◎コダックは滅び、ユニクロは栄えた。
どの戦略を捨て、どれを使うか。そこで経営者の力量が試されます。
今回の特別講座では山田修先生に、マイケル・ポーターから楠木建教授まで、
著名戦略セオリーの有効性と限界を一挙読み解きます!

ポーター以来、世に溢れてきた経営セオリーで主要なモノを取り上げ、
それぞれの限界や実経営にそぐわない点を挙げ、理由を解説。
さらに実経営に貢献できる経営セオリーを指摘し、その活用法を紹介
本書で紹介されている内容+本には書けなかった「本音」のエピソード、事例も飛び出すかも?!



『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』 予約開始 (4)

4月13日発売予定。

アマゾン予約開始。
http://www.amazon.co.jp/dp/4827207879

■カバー表1そで
― コダックは滅び、ユニクロは栄えた。
どの戦略を捨て、どれを使うか。経営者の力量が試される。


― 本書はマイケル・ポーター以来、世に溢れてきた経営セオリーで主要なモノを取り上げ、それぞれの限界や実経営にそぐわない点を挙げ、理由を述べる。さらに実経営に貢献できる経営セオリーを指摘し、その活用方を示す。

 ― 
「戦略カード」と「シナリオ・ライティング技法」で自社戦略を立てる!

(この項 続く)

次世代経営幹部研修 佳境に(4)

長野県のとある製造業メーカーで、昨年末から「次世代幹部養成研修」を行っている。

読んで貰っている本:
『雇われ社長のプロの仕事術』(山田修、ぱる出版):事前
『マーケティングの基本』(安原智樹、日本実業出版社):第1講
『できる人の話し方&コミュニケーション術』(箱田忠昭、フォレスト出版):第2講
『プロフェッショナル・リーダーの教科書』(山田修、新将命他、東洋経済新報社):第3講
『ビジネス実戦マンガ ランチェスター戦略』福永雅文 PHP研究所):第4講

(この項 続く)

2013年3月16日土曜日

ベンチャーリンク 『社長が自分と自分の会社を診断する本』小林 忠嗣 書評166(3)

小林氏の書状は真摯なもので、京都で展開しているコンサル会社日本エル・シー・エーを何とか東上させたい、首都圏に打って出たいと望まれていた。私の著作を見て、是非東京での展開を相談したい、と懇請いただいた。

生憎なことに私は昔もその後も、アントレプレナー型の経営には興味が無く、まだ社長でもなかった。小林氏とは結局面談することもなく、その後ベンチャーリンク社の興隆を感心して拝見していた。

日本エル・シーエーもベンチャーリンクも舞台から昨年去って行ってしまった。小林氏の再登場を期待している。

(この項 終わり)

2013年3月15日金曜日

『社長が自分と自分の会社を診断する本』小林 忠嗣 書評166(2)

小林氏がベンチャーリンクを創設したのが1990年だから、本書を著したのは日本エル・シー・エー社で社長・経営コンサルとして青雲の志に燃えていた頃。本書も「経営の成功」について真っ向から見解を述べていて、説得的であるし、今でも多くを学べる。

1985年に私が処女作『アメリカンビジネススクール決算記』を新潮社から出した時、小林氏から懇切な自筆の手紙を頂いた。

(この項 続く)

2013年3月12日火曜日

『社長が自分と自分の会社を診断する本』小林 忠嗣 書評166(1)

日本実業出版社、1982年刊。古い時代の本を取り上げたのは、著者に興味が有ったから。小林氏の処女作。

日本エル・シー・エー社を有力なコンサル会社に仕立て上げ、あの(株)ベンチャー・リンクを創業するなど、一世を風靡した起業家でもある(両社とも2012年に倒産)。


著者が新進気鋭の経営コンサルタント時代に著した本書は悪くない。私が入手したのは、2001年の版で第20刷である。日本エル・シー・エルの攻勢と共に版を重ねたものと見られる。

だが、、、

(この項 続く)
 

2013年3月11日月曜日

経営者ブートキャンプ 戦略発表会 第6期修了(4)

同じ人の最後のスライドから抜粋。

 
 <ブートキャンプに参加した感想>
念頭にあった計画と全く異なる計画になった。
的確な短い言葉に込められた、深い経験値の一端を知ることができた。
「成長戦略」「組織戦略」「モチベーション」「コミュニケーション」の全てを実践できる経営者になります。
半年後か1年後にまた参加します!

(この項 終わり)

経営者ブートキャンプ 戦略発表会 第6期修了(3)

もう一人の優秀賞は、地方の大手印刷会社の経営者。実際は、買収したファンドからの派遣経営者。彼の発表の最初の方のスライドから抜粋。
 
 <ブートキャンプに参加するまでは・・・>
制作から印刷まで、持てる機能や設備をフルに活用して、提案営業を通じて総合印刷として伸びていくという、過去の延長線上の戦略を考えていた。
しかし、これでは縮小均衡の繰り返し・・・
「自社の強み」を再度考える中で、「フォーカス」すべき領域を再認識した。

(この項 続く)

経営者ブートキャンプ 戦略発表会 第6期修了(2)

首都圏ある地域での人材会社の社長が優秀発表の一人。

ブートキャンプに参加した当初は、他地域への拡大を志向していた。それが、地域一番人材会社を目指す、と方針転換。3年戦略の緻密な構成と、「第2創業」を宣言した経営意欲が、他の参加者から指示を受けた。

「解決策」として掲げたアクション・プランも鬼面人を驚かすような奇抜なものは無いが、有り得る施策をよくカバーしているという納得感があった。

もう一人の優秀賞は、、、

(この項 続く)

2013年3月10日日曜日

経営者ブートキャンプ 戦略発表会 第6期修了(1)

7講に渡って展開してきた経営者ブートキャンプ第6期の最終講が3月9日(土)に行われた。最後はいつものように戦略発表大会。

前講までに討議を重ねて練り上げられた各自の3年経営戦略が発表された。発表が25分程度、代表コメント2名とフリー質疑が15分、計40分で進行。それぞれの発表の後に、他の参加者は「助言シート」を書き込み、かつ評点(1-5)を付ける。最後に集められ、平均評点が計算される。匿名式なので、誰が誰に何点付けたかは分からない。

参加者同士の相互評価により、2名の優秀発表が選出された。それは、、、

(この項 続く)

2013年3月7日木曜日

「必ず実現する経営戦略は、こう立てろ!」特別セミナー 3月6日

構築メソッドを短期間で集中レクチャーする公開セミナーを実施。
16時と19時からそれぞれ2時間、2回を実施。両会とも定員を超す大盛況。

参加費1万円にしては多くの皆さんが聞きに来てくれて、私も力が入った。以前、同様なセミナーを啓蒙のために無料でやったことがあった。その時はずいぶん多数が参加したが、私としては愉快なところが少なかった。というのは、20代の一般社員の参加が増え、「経営者のため」の助言提言が上滑りしてしまった。しかも、無料のためか当日欠席も結構出た。

参加費を取るのは「学習意欲」と「経営職適格」の足切りとして機能していると思う。私の著書をサイン入りで贈呈もしている。

2013年3月2日土曜日

『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』 予約開始 (3)

4月13日発売予定。

アマゾン予約開始。
http://www.amazon.co.jp/dp/4827207879

山田さんとは今回2冊目のお付き合いです。今回、とくに感心したことは、けっこう重厚で密度の濃い内容をあっさりと書かれていて読みやすい点。経営者にとってはまさに「目からウロコ」の新発見が続々と見つかるはずです。

(出版社からのコメント:アマゾン)

『やんちゃであれ』須田将啓、田中禎人 書評165




(株)エニグモを創業した二人のCo-CEOによる著書。ディスカヴァー・トゥエンティワン社、新刊。

副題に「U25サバイバル・マニュアル」、つまり「25才以下向け」とあり若手ビジネスパーソン向けを謳っていて、編集や語り口もそのように装っている。読みやすいように字は大きいし、ページはすかすかで写真だらけ、厚くない。

ところが、内容の充実は端倪すべからずものが有る。起業譚として恐ろしくおもしろいし、アントレプレナーとしての教訓に充ち満ちている。須田氏は昨年、ダボス会議でヤング・グローバル・リーダーズに選出された「本物」だ。みかけのスタイルの蔭に切れ味鋭い名刀を携えている。

単なる読み物ではない、経営者と経営者を志す人が学べる本だ。とてもお薦め。