実は安倍首相は若い時に2年間、米南カリフォルニア大学で学んだ(卒業はしていない)。また、新卒入社の神戸製鋼時代には米ニューヨーク駐在の経験もある。つまり、英語の素養は一定程度あるし、東京五輪招致の際にIOC総会に乗り込んでスピーチしたことは記憶に新しい。そんな場馴れした安倍首相なのに、これだけ準備する。いや、学んだからこそ英語の難しさ、準備の大切さを痛感しているのだ。
興ざめさせないためのテクニック
今回、安倍首相はプロンプターを使わなかった。欧米では重要な演説の際、演説者の目の前に透明なボードが2枚置かれていることがよくある。ボード上に原稿が流れて、演説者には見えるのだが聴衆からは見えない。総理は代わりにカンペを使った。映像に写ったカンペには比較的大きな文字列が映っていた。つまり逐語的な原稿ではない。これも大事なことだ。
スピーチやプレゼンで、用意した手元の原稿を棒読みされることほど興ざめすることはない。お勧めするのは、話そうとする各段(パラグラフ)の冒頭を列記しておくスタイルである。「そこで、売り上げ金額についてですが」「人事についてはこう考えています」などとだけ、メモっておく。各段で話す内容はもちろん決めておくが、こうやってトピックだけを語り出す形式にしておけば、内容については自然と言葉が出ていくはずだ。各段の内容を項目的に「(1)売り上げ金額、(2)人事」と箇条書きにしておくのは、スムーズなスピーチの醸成になじまない。
話す内容・構成についても、もちろんしっかりした準備が必要だ。「言葉で人を、部下を動かす」。それがビジネス・リーダーなのだ。コミュニケーションの達人を目指してほしい。
(この項 終わり)
0 件のコメント:
コメントを投稿