2013年10月24日木曜日

『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』坂本幸雄 書評183(6) 吼える破産経営者

坂本幸雄前社長が、中小企業などのオーナー社長だったとしたら、倒産後に本書に見るように声高に他の経営者に助言するような余裕は無かっただろう。いや、ダイエー中内功創業者の例にあるように、私財を全て差し出されるようなことはこの世に多い(というか圧倒的多数である)。

「エルピーダメモリの社長に就任して以来、この10年9ヶ月は1日も休まずに必死で働いてきました。」(p1)
ーーーそして4,500億円という巨額の債務を累積させて倒産させた。

ちなみに、今年のオレオレ詐欺の年間被害総額は400億円を超える勢いで、大きな社会問題として取り上げられている。坂本氏は勿論クリミナル(犯罪者)ではないが、社会に迷惑を掛けた金額で考えれば、「一人でその10倍以上」というパフォーマンスの良さだ。

同氏は現在、半導体業界でコンサルタントとして活動なさっているという。更正法適用により減額されたり塩漬けされた金額の大きさからその責任を考えれば、蟄居して襟を正しているくらいの矜持があって良いのではないか。

(この項 終わり)