恐らく特許の無償公開だけでは陣営づくりは進まない、と筆者は見ている。たとえトヨタがOEM供給(相手先ブランド名製造)をしようにも、現時点では同社の製造キャパシティは圧倒的に小さい。といって、まさかトヨタが他社に補助金をばらまくわけにもいかないだろう。
例えば、アライアンスを組んでくれる自動車メーカーの販売エリアにおける水素ステーション開設支援というのが、トヨタがすべき提案なのではないか。水素ステーションを1カ所新たに開設するには5億円ほどかかるとされている。純利益2兆円のトヨタなら、4000ステーションも設置できる。もちろん、トヨタ自身が開設するのではなく、それぞれの国で有力な水素ステーション会社へ出資したり、融資などを行うかたちで展開するのがいい。
FCVの全面的な普及のためには、アライアンスづくり、そしてインフラづくりまでトヨタが戦略を策定・実施していく必要があるだろう。モノをつくらせれば世界屈指であるこの偉大な三河の田舎企業が、世界的な合従連衡を仕切っていく洗練した外交を発揮することができるのか。けだし見物である。
(この項 終わり)
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