M&A増加の背景に後継者不足問題
競合するレコフの調査によれば、日本におけるM&A件数は06年に約2700件とピークを付けた後、08年のリーマン・ショックで停滞したが、11年を底として急速に回復してきている。14年には約2300件まで回復し、日本M&Aセンターの主セグメントとなっている「In-In(国内企業同士のディール)」も総計1500件を超えた。
中堅、中小企業のM&Aが増えてきた背景には、創業経営者やオーナー経営者の高齢化と後継経営者不足がある。子息や同族が経営承継してくれればいいが、そうでない場合、つまり従業員経営者を求める場合にネックとなるのが、資本承継と金融機関に対する信用保証である。創業経営者が数十億円を限度とした個人保証を銀行に入れているような場合、従業員経営者ではそれにとても対応できない。社員としての退職金では数千万円を積めるのがせいぜいだろう。後継経営者を確保できず、黒字廃業などが多数みられるようになってきている。
そうした企業を救う選択肢として利用されているのが事業売却だ。事業売却が実現されれば、オーナー経営者は結構なキャッシュを懐に引退できるし、社員の雇用は継続される。つまり、経営者と社員は「Win-Win」となる。
「本当に事業を売却することなどできるのだろうか」と疑う経営者も多いが、あるM&A仲介コンサルタントは「必ず売れる。不動産と同じで、適正価格がいずれ形成されるからだ」と断言する。何より、近年の傾向として「時間を買う」「段階上がり的な業績向上を目指す」経営技法としてM&Aが広く認知されてきたことが大きい。筆者もオーナー経営者などに積極的にM&Aの活用を勧めているが、実は買収を希望する企業が多くて簡単に決められないというのが現状だ。
(この項 続く)
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