三宅社長時代の5年間、それはキリンHDにとっては暗転の時代だった。直近の14年度中間期決算(1-6月)では売上高が前年同期比3.6%減の1兆562億円となり、サントリーHDの後塵を拝してしまった。純利益は実に76.5%減の140億円となった。サントリーHDの純利益は171億円で、通期でもキリンHDはサントリーHDを下回ると予想されている。
サントリーHDの佐治信忠会長は果断な経営を展開してきた。中でも大きな意思決定としては、世界最大の蒸留酒メーカー、米ビーム社の買収と、ローソン会長だった新浪剛史氏の社長スカウトが挙げられる。いずれもオーナー経営者でなければ実現できない大胆な意思決定だった。
そしてこれらの佐治氏の意思決定には、キリンHDとの統合破談がモメンタム(経営力学)として働いたのではないか。つまり、ビーム買収は「キリンHDより大きな規模になるためにM&Aを実現する」という意思、そして新浪氏の獲得は「大企業キリンHDの能吏型サラリーマン経営者とは対極にある個性派カリスマ経営者を後継に」という意思の表れだと受け止められる。
(この項 続く)
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