次に、豊田社長がまさに今大苦闘している「社外勢力との協業、提携」に対して、孫社長は大きな助勢を与えることができるからだ。孫社長のことを私は近年「デジタル・インベスティング・モンスター」と尊称している。
古くはヤフー(米国)があり、上場前のアリババ(中国)、さらにはアーム(イギリス)と、大胆で先見性のある投資を行ってきた。「10兆円ファンド」と呼ばれるソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じての世界での投資活動も枚挙に暇がない。今回、豊田社長が「ドアを開ければ」と孫社長の先回りに舌を巻いたライドシェア各社への先行投資など、デジタル・インベスティング・モンスターにとってはほんの氷山の一角にすぎない。
今回の新会社設立発表会での壇上対談でのやり取りを見聞きしていると、2人の大経営者は相性がよさそうに見える。孫社長が自社の社外取締役として迎えたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長や日本電産の永守重信会長兼社長などと同じくらいに豊田社長と胸襟を開き合うことになれば、孫社長は豊田社長にとってはこれ以上ない大きな味方となるだろう。トヨタが望んでやまない社外のデジタル・ビジネス・ソサエティへの強力な紹介状がもらえるからだ。
ビッグ・ビジネスも最後は人間が行う所業である。それには相性や好悪の要素も大きく入る。豊田社長が繰り返している「自動車産業100年に一度の危機」は正しい。このタイミングでの孫社長との遭遇は図らずも「トヨタ100年目の好機」をもたらすのだろうか。
(この項 終わり)
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