今回の提携で大きな利を得るのはトヨタ側だというのが私の見方である。
というのは、この提携でトヨタ側が求めたものは、「ライドシェアのトップグループ」の知見だった、という見方があるのだ(10月5日付BUSINESS INSIDER JAPAN記事『トヨタ×ソフトバンク提携には「必然」しかない』<西田宗千佳>)。
ソフトバンクGはウーバー(北米・欧州)、DiDi(中国)、グラブ(東南アジア)、Ora(インド)といった、ライドシェア大手の筆頭株主になっている。
「『4社で全世界のライドシェアの乗車回数の90%を占めている』と孫社長が語るほど、影響力は大きい。そして何より重要なのは、巨大なシェアを背景に『配車』『運転』に関する情報が集まり続けている、ということだ」(前出BUSINESS INSIDER記事より)
一方、豊田社長は今年の初めにトヨタを単なるモノとしての自動車製造業者から、人の移動にフォーカスした「モビリティ・カンパニー」にすると宣言した。そしてこの方向性の実現のために、外部の非製造業者との資本あるいは業務提携に力を入れてきた。
ライドシェアの分野では17年に東南アジア8カ国で配車サービス(ライドシェア)を展開するグラブ(Grab Holdings Inc.)と提携を始めると、18年6月にはグラブに対して10億ドルを出資。その2カ月後には米ウーバーに5億ドルを投入した。
ところがトヨタが勇んで出資したこの2社の筆頭株主はソフトバンクGだったのである。今回の新会社設立発表会の壇上で豊田社長が「ドアを開けると、そこには孫さんがすでに座っていた」と慨嘆とも賛嘆したともいえる状態だったのだ。
今回発表された新会社モネ テクノロジーズの株式持分は、ソフトバンクGが50.25%、トヨタが49.75%とされた。あの大トヨタがわずかとはいえマイノリティ株主となったことも驚きとされたが、ライドシェア分野でのソフトバンクGの先行を考えれば順当なところとも考えられる。
(この項 続く)
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